ブログの過去記事で取り上げたことがありますが、北米で発展した野外救命法(ウィルダネス・ファーストエイド)プログラムが日本国内で広がるにあたり、そこに含まれる医行為の法的位置づけが問題となっています。
「山と渓谷」ウィルダネス・ファーストエイド記事補完(2011年7月20日)
ウィルダネス・ファーストエイドの医行為に関する法的考察(2010年9月16日)
先ごろ、おそらく日本国内でもっともアクティブに活動しているウィルダネス・ファーストエイド教育プロバイダーのWMA JAPANが、ウィルダネス・ファーストエイドに含まれる医行為に関する声明を発表しました。
WMA JAPANは以前から、厚労省への照会や顧問弁護士を付ける等の法的な取り組みをしていることを広報しており、法的問題には積極的に取り組んできた団体と認識しています。
今回の声明も、業界としては非常に画期的な出来事であろうと思います。
中身はというと、法律の話なので、読み手によっては理解しづらいところもあるように感じますので、すこし解説を加えようと思います。
この公式見解は、一般社団法人 ウィルダネス メディカル アソシエイツ ジャパンのFacebookページで公開されています。まずはこちらをご覧ください。
WMA野外・災害救急法への法的な懸念
論旨をまとめますと、まず、結論は下記のとおりです。
「したがって、WMA野外災害救急法を躊躇せずに、参加者の命を救うべきである。」
命題は、3つです。
・医師法違反への懸念
・傷害罪(刑法)への懸念
・緊急時無管理(民事責任)への懸念
この3点に関する懸念に対して検討した結果ということで、上記のように述べているという論理構造になっています。ひとつひとつ解説していきます。
1.医師法違反への懸念
これは、WMA JAPANの声明の通り、医師法違反を問われる可能性は低いと考えられます。反復継続の意志の有無が問題となるわけですが、厚生労働省見解として、学校教職員がエピペン注射をするにあたって反復継続の意志がないと考えるという前例を作っています。
学校教職員は、必要とあれば2度目でも3度目でもエピペン注射をする心づもりがあり、訓練を受けているわけですが、それであっても「反復継続の意志はない」と判断されている以上、ウィルダネス・ファーストエイドにおいても、同様の判断がされるだろうと考えられます。
2.傷害罪(刑法)への懸念
これについての、WMA声明での論拠部分を引用します。
「刑法上、違法性を阻却する緊急避難は、要件が厳しく、参加者の生命・身体を守るために処置した行為が救助しようとした結果を実現しない限り、要件を満たさない危険をはらむ。そこで、より広く違法性阻却の道を確保するために、刑法35条の正当行為としての違法性阻却を認めるべきであると考える。」
この文章だけをみると、声明の結論である「したがって、WMA野外災害救急法を躊躇せずに、参加者の命を救うべきである」という文章とは、まったくつながりません。
ゆえに間をつなぐかのような下記のような一文があります。
「WMA野外災害救急法により結果的に危害を生じさせてしまった場合、弁護士により処置の必要性・相当性等が証明できれば緊急避難や正当行為として傷害罪等の刑事上の責任を問われない可能性は十分にある。」
つまり、無免許者が医行為を行ったことで危害を生じさせた場合、傷害罪を問われないためには、弁護士により処置の必要性・相当性を証明してもらう必要がある、というように読み取れます。
これをもって躊躇せずに、と結論付けられると、なるほど、と納得できる人は多くはないのではないでしょうか?
3.緊急事務管理(民事責任)への懸念
この項目では、「WMA野外救急法の手順を適切に遵守するときは重大な過失なしとされる可能性が高い」と結論づけていますが、その医行為の手順が医学的に検証されたものであったとしても、日本の法律では医師以外が医行為を行うことは想定されていないため、素人が「手順通りにやった」といって、どれだけ信用されるかは未知数です。
また本文中にも書かれていますが、緊急事務管理とは「業務上の注意義務がない時の行動を規定する」ものですから、この部分は、山岳ガイドやアウトドアガイドなど、業務として救助を行う人には適応されません。この点は十分に注意が必要です。
4.「プロトコル許可書への医師からのサイン」とはなにか?
なにより、この声明で疑問視されるのは、最初の方にある下記の一文です。
「なお、WMAカリキュラムの内容と教授法そのものへの相当性は、プロトコル許可書への医師からのサイン、ならびに医師からの証言で既に証明されていることを附言する。」
プロトコル許可証への医師からのサインがある、ということが正当性の根拠のように書かれていますが、医師を始め、医療従事者の皆さんはこれをどう理解しますか?
プロトコルで動くと言ったら救急救命士のメディカルコントロールをはじめ、看護師の特定行為についての指示書が思い浮かびます。
ウィルダネス・ファーストエイドの実施者のほとんどは医療者免許を持たない人たちなわけですが、そういった不特定多数の人たち(つまり講習受講者たち)に「プロトコル許可書」なるものを医師が発行し、サインしているという事自体がにわかには信じられないことです。
これが事実だとすれば、法的論拠や市民が行う医行為の責任の所在という点で、決定打になる可能性があるものとも考えられますが、非常に曖昧な表記となっており、詳細はうかがい知れません。この点、具体的な詳細情報が望まれます。
また後者の「医師からの証言」なるもので「証明」されていると結論付けるのには乱暴さを感じます。「ある医師が大丈夫といったから問題ないと証明された」というのであれば、その医師が誰でどのように証言したのか明示されていなければ、証明とは言えません。
この点は、この声明を当事者として受け取り、医師免許なしに医療行為を行うことを想定しているウィルダネス・ファーストエイド・プロバイダーはきちんと吟味する必要があるでしょう。
この声明は、実施者の責任を負ってくれる免罪符ではないという点、言うまでもないと思いますが、強調しておきたいと思います。
2017年09月03日
考察「ウィルダネス・ファーストエイドの法的懸念に対する声明」
posted by めっつぇんばーむ at 23:32
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| ウィルダネス・ファーストエイド
2011年07月20日
「山と渓谷」ウィルダネス・ファーストエイド記事補完
書くか書かないか、非常に悩みました。
しかし、これまで情報発信し、周知や普及に関わった立場として、やはり言っておかなければならないと判断しました。
何かというと、現在書店に並んでいる「山と渓谷」誌に連載されている「登山で活かすウィルダネス・ファーストエイド」の記事についてです。
あえてこの記事を読んでくださいとは言いません。
私もこれまで宣伝してきたこともあり、すでに誌面に目を通している人に向けてのメッセージとご理解ください。
あえて刺激的な言葉を使って書きます。
快く思わない方もいるでしょう。でもあえて、そうさせてください。
「登山で活かすウィルダネス・ファーストエイド」連載3回目の今回は、ウィルダネス・プロトコルという超法規的措置がテーマとなっています。
一言で言えば、これをやったら医師法違反か傷害罪で逮捕されておかしくない、という危険な医療行為の紹介です。
この特殊性と危険性は冒頭のイントロダクションで書かれています。
しかし、「弱い!」と私は感じました。
また日本の事情を踏まえていない不正確な情報もあります。
この記事は特定WFA普及団体とのタイアップ記事のようですが、団体からの情報提供と本国アメリカの事情だけで書かれている模様。用語の使い方や内容を見る限り、少なくとも日本の医療監修を経た記事ではありません。この点、読み手は注意をする必要があります。
この記事だけを読んで、すぐに実践できるほどの丁寧さはないので、現実、問題が起きることはないだろうと思いますが、「山と渓谷」という硬派な業界トップメディアの影響力の強さを考えると書かざるを得ませんでした。
もっとも本記事がタイアップしている財団法人日本アウトワードバウンド協会主催のウィルダネス・アドバンスド・ファーストエイド(WAFA)講習の中では、日本の法律事情や一般救急法との差異や注意点へのアナウンスは基本的にありません。「アメリカの講習ですから」の一点張りで、日本のフィールドで活動する日本人受講者への配慮はゼロです。(この点は複数の受講者が主催者側に直接質問、問題提起していますが、回答ならびに改善は得られていないようです)
それを考えれば、本記事では弱いながらも、危険性を訴えているのは評価できるのですが、やはり弱いし、正確ではないのです。
脊椎損傷と頚椎保護、これは大事な割には、日本の救急法ではほとんど教えない部分なので、目新しく感じた人も多いかもしれません。それゆえに常識的判断ができない可能性が高い危険な部分です。
アセスメント(評価)
脊椎損傷が疑われた場合には、STEP3の後に「脊椎損傷アセスメント」を行う。(中略)すべてをクリアした場合は、脊椎損傷の疑いがないと評価し、傷病者の体を動かしてよいとされる。(山と渓谷2011年8月号179ページより引用)
これは、日本の医療関係者や救急隊員が聞いたらびっくりたまげるような内容です。
X線を撮らない限り脊椎損傷の疑いがないとは評価できない、それが日本の医療の常識だからです。
救急隊員は脊椎損傷の可能性がある高エネルギー事故(交通事故や墜落など)では、症状のあるなしに関わりなく、脊椎を固定して搬送します。それを解除できるのは病院についてX線を撮ってからです。
X線以外の方法で脊椎損傷の疑いがないと判断する方法を日本の医師や救急隊員は知りません。もしこんな素人が教わってその場できるような簡単なテストで脊椎損傷の可能性がないと言い切れるのであれば、大げさで時間がかかる全脊柱固定など行うわけがありません。
この重みを認識すべきです。(教えるほうも教わるほうも)
現実問題、野外環境下ではいつまでも頚椎保護をしているわけには行かないので、このような緊急避難的な大雑把な判断でもしないといけないという点、私も登山者ですからわかりますが、日本の医師ですらそんな危険な判断はしないというレベルのものであることは知っておくべきです。
この項目は大きな問題はないのですが、用語の定義が間違っているのが1点。
高エネルギー外傷を「墜落により脳の内部が露出しているようなひどい外傷」と手意義づけていますが、日本の救急医療で認識されている「高エネルギー外傷」とはニュアンスが違うので注意!
日本で認知されている高エネルギー外傷は下記のとおりです。
「高所からの転落」「ある程度のスピード以上での自動車事故」など、「目に見える徴候がなくても、受傷機転から考えて生命に危険のある損傷を負っている可能性が無視できない状態」を高エネルギー外傷という。(ウィキペディア「外傷病院前救護ガイドライン」より)
もともとガイドライン2000の時代から、論文としては外傷性心停止は蘇生を行う必要はないという意見はありました。恐らくそこから派生した内容と思われますが、脳が脱出しているというのはすでに社会死ですから、どちらかというと「1.死亡していることが明らかである」という項目の範疇かと思われます。
「刺さったものは抜くのが原則」とあるが、日本の救急法や救急隊員による処置でも抜かないのが原則。この文章だけ読むと、野外ゆえの特殊性という点が伝わらず、全般的なルールかのように受け取られかねないことを危惧した。冒頭のウィルダネス・プロトコルの説明を理解し、覚えている状態でこの項目を読む人がどれだけいるのか、、、、、
脱臼は医師にかかるべきケガです。自分で治すものではありません。山行を続けるために、その場で心得がある人が治す、というものでもありません。退避のためにどうしても必要であれば、、、、という命と天秤にかけての最後の手段です。
さして緊急性があったけでもないのに、知っているからやりたくなる、やってしまったという不適切な事例を実際に耳にしています。
エピネフィリンという単語は日本では正確ではありません。現在はアドレナリンが正式。古い言い方でもエピネフリン、でしょうか。
エピネフリン注射(エピペン)に関しての日本事情の説明は不正確です。一般処方薬とは性質がまったく違います。処方箋があれば買えるというものではなく、登録した医師のみが本人専用として出すことができます。
また、2度打ちできる自動注射器は日本には入ってきていませんので、5分後に再度注射ということは日本ではありえません。
エピペンはアナフィラキシーショックのリスクがある人が、自分専用に、ということに限って購入できるものです。ファーストエイド・プロバイダーが不特定多数の使用に備えて準備しておくというものでは決してありません。
この号に書かれている処置のほとんどは、日本の医療常識からするととんでもないものばかりです。
それに対して日本の医療が封建的で遅れているだけという意見もあることでしょう。否定はしません。
それでもあえて実践しなければいけない場面がウィルダネスではあるかもしれない。
しかしそれは究極の選択のはずです。
もう一度書きます。
生きるか死ぬかの究極の選択。
それによって傷病者は生きるかもしれない。しかし、逆に脱臼の整復に失敗して一生残る後遺症を負わせるかもしれない、薬剤投与でアナフィラキシーショックを起こして死なせるかもしれない。また、医師法違反や傷害罪で訴追されて自分自身が社会的に抹殺されるかもしれない。
そんなリスクを負ってまで行う必然性があるのか?
わかった上でYesというなら何も言いません。自己責任が山の常識ですから。
しかしそのリスクを理解しないでおいそれと気軽に禁断のウィルダネス・プロトコルを多用するコース受講者が頻発しているのも事実です。
それは、講習のあり方に問題があるのは明白ですが、この記事がそれを助長することがあったら、筆者も不本意なはず。
だからこそ、細かいようですが、懐疑的な意見を書かせてもらいました。
私自身はウィルダネス・ファーストエイドこそ日本に必要なものと思っています。しかし非常に危険なものであるとも認識しています。その危険性を理解したうえで、あえて使いこなす大人であってほしい、すべての関係者が。
そんな思いでこれを書きました。
しかし、これまで情報発信し、周知や普及に関わった立場として、やはり言っておかなければならないと判断しました。
何かというと、現在書店に並んでいる「山と渓谷」誌に連載されている「登山で活かすウィルダネス・ファーストエイド」の記事についてです。
あえてこの記事を読んでくださいとは言いません。
私もこれまで宣伝してきたこともあり、すでに誌面に目を通している人に向けてのメッセージとご理解ください。
あえて刺激的な言葉を使って書きます。
快く思わない方もいるでしょう。でもあえて、そうさせてください。
「登山で活かすウィルダネス・ファーストエイド」連載3回目の今回は、ウィルダネス・プロトコルという超法規的措置がテーマとなっています。
一言で言えば、これをやったら医師法違反か傷害罪で逮捕されておかしくない、という危険な医療行為の紹介です。
この特殊性と危険性は冒頭のイントロダクションで書かれています。
しかし、「弱い!」と私は感じました。
また日本の事情を踏まえていない不正確な情報もあります。
この記事は特定WFA普及団体とのタイアップ記事のようですが、団体からの情報提供と本国アメリカの事情だけで書かれている模様。用語の使い方や内容を見る限り、少なくとも日本の医療監修を経た記事ではありません。この点、読み手は注意をする必要があります。
この記事だけを読んで、すぐに実践できるほどの丁寧さはないので、現実、問題が起きることはないだろうと思いますが、「山と渓谷」という硬派な業界トップメディアの影響力の強さを考えると書かざるを得ませんでした。
もっとも本記事がタイアップしている財団法人日本アウトワードバウンド協会主催のウィルダネス・アドバンスド・ファーストエイド(WAFA)講習の中では、日本の法律事情や一般救急法との差異や注意点へのアナウンスは基本的にありません。「アメリカの講習ですから」の一点張りで、日本のフィールドで活動する日本人受講者への配慮はゼロです。(この点は複数の受講者が主催者側に直接質問、問題提起していますが、回答ならびに改善は得られていないようです)
それを考えれば、本記事では弱いながらも、危険性を訴えているのは評価できるのですが、やはり弱いし、正確ではないのです。
1.脊椎損傷の評価
脊椎損傷と頚椎保護、これは大事な割には、日本の救急法ではほとんど教えない部分なので、目新しく感じた人も多いかもしれません。それゆえに常識的判断ができない可能性が高い危険な部分です。
アセスメント(評価)
脊椎損傷が疑われた場合には、STEP3の後に「脊椎損傷アセスメント」を行う。(中略)すべてをクリアした場合は、脊椎損傷の疑いがないと評価し、傷病者の体を動かしてよいとされる。(山と渓谷2011年8月号179ページより引用)
これは、日本の医療関係者や救急隊員が聞いたらびっくりたまげるような内容です。
X線を撮らない限り脊椎損傷の疑いがないとは評価できない、それが日本の医療の常識だからです。
救急隊員は脊椎損傷の可能性がある高エネルギー事故(交通事故や墜落など)では、症状のあるなしに関わりなく、脊椎を固定して搬送します。それを解除できるのは病院についてX線を撮ってからです。
X線以外の方法で脊椎損傷の疑いがないと判断する方法を日本の医師や救急隊員は知りません。もしこんな素人が教わってその場できるような簡単なテストで脊椎損傷の可能性がないと言い切れるのであれば、大げさで時間がかかる全脊柱固定など行うわけがありません。
この重みを認識すべきです。(教えるほうも教わるほうも)
現実問題、野外環境下ではいつまでも頚椎保護をしているわけには行かないので、このような緊急避難的な大雑把な判断でもしないといけないという点、私も登山者ですからわかりますが、日本の医師ですらそんな危険な判断はしないというレベルのものであることは知っておくべきです。
2.心肺蘇生の開始と停止
この項目は大きな問題はないのですが、用語の定義が間違っているのが1点。
高エネルギー外傷を「墜落により脳の内部が露出しているようなひどい外傷」と手意義づけていますが、日本の救急医療で認識されている「高エネルギー外傷」とはニュアンスが違うので注意!
日本で認知されている高エネルギー外傷は下記のとおりです。
「高所からの転落」「ある程度のスピード以上での自動車事故」など、「目に見える徴候がなくても、受傷機転から考えて生命に危険のある損傷を負っている可能性が無視できない状態」を高エネルギー外傷という。(ウィキペディア「外傷病院前救護ガイドライン」より)
もともとガイドライン2000の時代から、論文としては外傷性心停止は蘇生を行う必要はないという意見はありました。恐らくそこから派生した内容と思われますが、脳が脱出しているというのはすでに社会死ですから、どちらかというと「1.死亡していることが明らかである」という項目の範疇かと思われます。
3.創傷の処置
「刺さったものは抜くのが原則」とあるが、日本の救急法や救急隊員による処置でも抜かないのが原則。この文章だけ読むと、野外ゆえの特殊性という点が伝わらず、全般的なルールかのように受け取られかねないことを危惧した。冒頭のウィルダネス・プロトコルの説明を理解し、覚えている状態でこの項目を読む人がどれだけいるのか、、、、、
4.脱臼の整復
脱臼は医師にかかるべきケガです。自分で治すものではありません。山行を続けるために、その場で心得がある人が治す、というものでもありません。退避のためにどうしても必要であれば、、、、という命と天秤にかけての最後の手段です。
さして緊急性があったけでもないのに、知っているからやりたくなる、やってしまったという不適切な事例を実際に耳にしています。
5.アナフィラキシーに対する救急薬物投与
エピネフィリンという単語は日本では正確ではありません。現在はアドレナリンが正式。古い言い方でもエピネフリン、でしょうか。
エピネフリン注射(エピペン)に関しての日本事情の説明は不正確です。一般処方薬とは性質がまったく違います。処方箋があれば買えるというものではなく、登録した医師のみが本人専用として出すことができます。
また、2度打ちできる自動注射器は日本には入ってきていませんので、5分後に再度注射ということは日本ではありえません。
エピペンはアナフィラキシーショックのリスクがある人が、自分専用に、ということに限って購入できるものです。ファーストエイド・プロバイダーが不特定多数の使用に備えて準備しておくというものでは決してありません。
この号に書かれている処置のほとんどは、日本の医療常識からするととんでもないものばかりです。
それに対して日本の医療が封建的で遅れているだけという意見もあることでしょう。否定はしません。
それでもあえて実践しなければいけない場面がウィルダネスではあるかもしれない。
しかしそれは究極の選択のはずです。
もう一度書きます。
生きるか死ぬかの究極の選択。
それによって傷病者は生きるかもしれない。しかし、逆に脱臼の整復に失敗して一生残る後遺症を負わせるかもしれない、薬剤投与でアナフィラキシーショックを起こして死なせるかもしれない。また、医師法違反や傷害罪で訴追されて自分自身が社会的に抹殺されるかもしれない。
そんなリスクを負ってまで行う必然性があるのか?
わかった上でYesというなら何も言いません。自己責任が山の常識ですから。
しかしそのリスクを理解しないでおいそれと気軽に禁断のウィルダネス・プロトコルを多用するコース受講者が頻発しているのも事実です。
それは、講習のあり方に問題があるのは明白ですが、この記事がそれを助長することがあったら、筆者も不本意なはず。
だからこそ、細かいようですが、懐疑的な意見を書かせてもらいました。
私自身はウィルダネス・ファーストエイドこそ日本に必要なものと思っています。しかし非常に危険なものであるとも認識しています。その危険性を理解したうえで、あえて使いこなす大人であってほしい、すべての関係者が。
そんな思いでこれを書きました。
2010年12月04日
市民による医行為の是非は医師法ではなく刑法で考えるべきでは!?
12月3日付で、救急救命士、学校教職員、保育士、看護師以外の一般市民の立場の人が、急性アレルギーを起こした本人に代わってエピペン注射をすることは医師法違反にならない可能性が高い、という話を書きました。
そこで大切な点を書き漏らしましたので補足します。
前回説明したように、医師法というのは「業務としての偽医者」を規制するのが目的の法律です。ですから素人が一回きりの医療行為をしても医師法には抵触しません。業として行っていたか、つまり反復継続の意志を持って行ったかどうかが問われるからです。
ですから、そもそも現場にたまたま居合わせた人(=バイスタンダー)は、反復継続の意志なんてありませんから、偶発的な応急処置として医療行為を行ってしまったとしても医師法には抵触しません。
つまり、冷静に考えれば、救急現場でのバイスタンダーのエピペン使用に関して、医師法に照らして合法性を考えるのは、そもそも根本的に間違っているんじゃないの? という気がするのです。
極端なことをいうと、素人がテレビドラマのマネをして、喉に物が詰まって息ができなくなった人の喉に刃物を突き刺して「外科的気道確保」をしたとしても、それは医師法違反にはなりません。(そのために専用メスを持ち歩いていたというのでもない限り、反復継続の意志を持っていたとは認定されないでしょうから)
この場合、罪を問われるとしたらおそらく刑法の傷害罪です。
学校教職員がエピペンを使用してもいいとする文科省見解の根拠となっているのは、厚労省からの医師法に抵触しないという回答。
それをもって、学校教職員がエピペンを使える根拠としているようですが、そこからしておかしいのでは? というのが本稿のテーマです。
文科省の「医師法違反ではないよね?」という質問に対して厚労省が「その通りです」と答えている。
もしこれが、エピペンではなく、先ほどあげた外科的気道確保のような極端な例であっても、焦点となるのは「反復継続の意志」の有無だけですから、きっと厚労省は医師法違反にはあたらないと答えるのでは?
医師法違反じゃないから、法律的に問題ないとは言えないですよね。
無我夢中でやったとはいえ、傷害罪や暴行罪で逮捕されることは否定できません。
それと同じロジックが、エピペンに関しても残されている、と私には思えるのですが、、、
市民の医行為を規制するのは医師法、という出発点の考え方からして文科省の勘違いだったとしたら、、、
このあたりの法律の問題に詳しい方、教えていただけると嬉しいです。
そこで大切な点を書き漏らしましたので補足します。
前回説明したように、医師法というのは「業務としての偽医者」を規制するのが目的の法律です。ですから素人が一回きりの医療行為をしても医師法には抵触しません。業として行っていたか、つまり反復継続の意志を持って行ったかどうかが問われるからです。
ですから、そもそも現場にたまたま居合わせた人(=バイスタンダー)は、反復継続の意志なんてありませんから、偶発的な応急処置として医療行為を行ってしまったとしても医師法には抵触しません。
つまり、冷静に考えれば、救急現場でのバイスタンダーのエピペン使用に関して、医師法に照らして合法性を考えるのは、そもそも根本的に間違っているんじゃないの? という気がするのです。
極端なことをいうと、素人がテレビドラマのマネをして、喉に物が詰まって息ができなくなった人の喉に刃物を突き刺して「外科的気道確保」をしたとしても、それは医師法違反にはなりません。(そのために専用メスを持ち歩いていたというのでもない限り、反復継続の意志を持っていたとは認定されないでしょうから)
この場合、罪を問われるとしたらおそらく刑法の傷害罪です。
学校教職員がエピペンを使用してもいいとする文科省見解の根拠となっているのは、厚労省からの医師法に抵触しないという回答。
それをもって、学校教職員がエピペンを使える根拠としているようですが、そこからしておかしいのでは? というのが本稿のテーマです。
文科省の「医師法違反ではないよね?」という質問に対して厚労省が「その通りです」と答えている。
もしこれが、エピペンではなく、先ほどあげた外科的気道確保のような極端な例であっても、焦点となるのは「反復継続の意志」の有無だけですから、きっと厚労省は医師法違反にはあたらないと答えるのでは?
医師法違反じゃないから、法律的に問題ないとは言えないですよね。
無我夢中でやったとはいえ、傷害罪や暴行罪で逮捕されることは否定できません。
それと同じロジックが、エピペンに関しても残されている、と私には思えるのですが、、、
市民の医行為を規制するのは医師法、という出発点の考え方からして文科省の勘違いだったとしたら、、、
このあたりの法律の問題に詳しい方、教えていただけると嬉しいです。
2010年09月16日
ウィルダネス・ファーストエイドの医行為に関する法的考察
またまた Twitter でつぶやいた一連の話のまとめ記事です。
ウィルダネス・ファーストエイドとは、北米で発達した人里離れた場所で活動する人向けの野外救急法。日本では考えられない高度な内容で、部分的に医療行為も含まれています。
ここ最近、北米からやってきたインストラクターが日本国内でウィルダネス・ファーストエイドを開講していて、業界ではそこそこ知られるようになってきていますが、医行為を巡る日本の法律的な問題については、外国人インストラクターは関知しておらず、いろいろ問題もあったりします。
そんなことをテーマにつぶやいた内容です。
北米で市民向けに開催されているウィルダネス・ファーストエイドに含まれる医行為=脱臼の整復、アドレナリン注射(場合によってはアンプルからシリンジで吸って)、抗ヒスタミン剤の経口投与、骨折の整復、頸椎保護解除のためのSpine test。他になにかあったっけ? あ、止血帯もあった。
ウィルダネス・ファーストエイドの医行為について書きますが、あまり耳障りのいい話ではない点はあらかじめご了承くださいませ。結論のある話ではないので。ただ、日本の法律上の混沌とした現実は知っておいた方がいいと思ってます。
一回限りの医行為を規制する法律は日本にはない。だからウィルダネスで必要に応じて例えば脱臼の整復を行っても即違法とはならない。ただし、うまくいかず、かえって状況を悪くした場合は、その必要性があったのか、また手技に問題はなかったか、などは問われる可能性あり。もし罪状がつくならおそらく傷害罪。
手技の妥当性が問われた場合、日本では医師以外は行わないことになっている行為だから、訓練を受けアメリカのライセンスを持っているといっても、日本の司法に通用するかは疑問。うまくいけばいいけど、そうでない場合を考えると、ホントにいま自分がそこで行う必要がある行為かは吟味する必要がある。
ウィルダネス・ファーストエイドとふつうの救急法の適応の違いを十分認識して「大人の判断」で行う上では、とても有用。アウトドアをする人すべてに知っていてほしい知識と技術という私の思いは変わらない。
別の視点で注意しなくてはいけないのは、山岳ガイドや自然教室の引率者など。この場合、「業として処置を行う」という視点がでてくるので、反復継続の意志があると見なされ医師法違反を問われる可能性がでてくる。ここでもホントは必要としている人の方が制約が大きいというAEDと同じジレンマが発生。
反復継続を拡大解釈すると、ウィルダネス・ファーストエイド講習を受けていざというときに備えようとした時点で、すでに「反復継続の意志」があると見なされるという解釈もある。
こうなると八方ふさがり。訓練は受けるがライセンスは受けないことで受講事実を隠して医師法違反を棄却する? とか不思議な発想にもなっていく。
もう考えるべきは、法律上の「緊急避難」。ホントに必要性があり、やむを得ない場合は違法性が棄却されるというもの。これが適応されれば傷害罪も医師法違反も問われないけど、正当防衛と同じでこれが認められるまでのプロセスは大変。ましてや日本の社会通念では医師以外の医行為は「あり得ない事」なので難しそう。
そこで私が自分自身の「保険」として知識武装しているのは、国家資格である船舶衛生管理者の業務について。医師でも看護師でもないのに薬剤投与や注射が許されている資格があることはあまり知られていない。すぐに医療機関に書かれないRemoteな状況下では、ほとんど素人と変わらない船舶衛生管理者に注射まで許可しているのだ。これとの対比でウィルダネスでの医行為の妥当性を説明できるのではないか、と。
ウィルダネス・ファーストエイドとは、北米で発達した人里離れた場所で活動する人向けの野外救急法。日本では考えられない高度な内容で、部分的に医療行為も含まれています。
ここ最近、北米からやってきたインストラクターが日本国内でウィルダネス・ファーストエイドを開講していて、業界ではそこそこ知られるようになってきていますが、医行為を巡る日本の法律的な問題については、外国人インストラクターは関知しておらず、いろいろ問題もあったりします。
そんなことをテーマにつぶやいた内容です。
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北米で市民向けに開催されているウィルダネス・ファーストエイドに含まれる医行為=脱臼の整復、アドレナリン注射(場合によってはアンプルからシリンジで吸って)、抗ヒスタミン剤の経口投与、骨折の整復、頸椎保護解除のためのSpine test。他になにかあったっけ? あ、止血帯もあった。
ウィルダネス・ファーストエイドの医行為について書きますが、あまり耳障りのいい話ではない点はあらかじめご了承くださいませ。結論のある話ではないので。ただ、日本の法律上の混沌とした現実は知っておいた方がいいと思ってます。
一回限りの医行為を規制する法律は日本にはない。だからウィルダネスで必要に応じて例えば脱臼の整復を行っても即違法とはならない。ただし、うまくいかず、かえって状況を悪くした場合は、その必要性があったのか、また手技に問題はなかったか、などは問われる可能性あり。もし罪状がつくならおそらく傷害罪。
手技の妥当性が問われた場合、日本では医師以外は行わないことになっている行為だから、訓練を受けアメリカのライセンスを持っているといっても、日本の司法に通用するかは疑問。うまくいけばいいけど、そうでない場合を考えると、ホントにいま自分がそこで行う必要がある行為かは吟味する必要がある。
ウィルダネス・ファーストエイドとふつうの救急法の適応の違いを十分認識して「大人の判断」で行う上では、とても有用。アウトドアをする人すべてに知っていてほしい知識と技術という私の思いは変わらない。
別の視点で注意しなくてはいけないのは、山岳ガイドや自然教室の引率者など。この場合、「業として処置を行う」という視点がでてくるので、反復継続の意志があると見なされ医師法違反を問われる可能性がでてくる。ここでもホントは必要としている人の方が制約が大きいというAEDと同じジレンマが発生。
反復継続を拡大解釈すると、ウィルダネス・ファーストエイド講習を受けていざというときに備えようとした時点で、すでに「反復継続の意志」があると見なされるという解釈もある。
こうなると八方ふさがり。訓練は受けるがライセンスは受けないことで受講事実を隠して医師法違反を棄却する? とか不思議な発想にもなっていく。
もう考えるべきは、法律上の「緊急避難」。ホントに必要性があり、やむを得ない場合は違法性が棄却されるというもの。これが適応されれば傷害罪も医師法違反も問われないけど、正当防衛と同じでこれが認められるまでのプロセスは大変。ましてや日本の社会通念では医師以外の医行為は「あり得ない事」なので難しそう。
そこで私が自分自身の「保険」として知識武装しているのは、国家資格である船舶衛生管理者の業務について。医師でも看護師でもないのに薬剤投与や注射が許されている資格があることはあまり知られていない。すぐに医療機関に書かれないRemoteな状況下では、ほとんど素人と変わらない船舶衛生管理者に注射まで許可しているのだ。これとの対比でウィルダネスでの医行為の妥当性を説明できるのではないか、と。
2010年05月24日
WRFAインストラクターコース
プロバイダーコースに続いて、インストラクターコースが始まりました。
ウィルダネス&リモート・ファーストエイド・インストラクターコースです。

American Red Cross(アメリカ赤十字)のインストラクターマニュアルは、はじめて見ましたが、さすがアメリカ系。AHAのインストラクターマニュアルととてもよく似た造りになっています。
レッスンマップの内容はというと、BLSよりはACLS寄り。
でもACLSみたいに決まり切ったことをやればいいというわけではなく、フィールドによってシナリオを作り替える必要があって、準備や企画力、ファシリテーションに相当高い能力が求められそうです。
ちょっと前までは蘇生教育といえばBLSが一大ブームでした。
それも過ぎ去り、今はACLSの教育がメインテーマになっていそうな感じですが、考えてみればファーストエイド教育となると、インストラクターのコンピテンシーも不明確だし、その教育手法もまったく未開の地。
でもARCのインストラクターコースを受けていると、今後はファーストエイド教育が市民インストラクターの間でブームになるんじゃないか、そんな予感すらします。
インストラクターコースは明日の昼頃に修了予定。
また今度詳しく書きます。
ウィルダネス&リモート・ファーストエイド・インストラクターコースです。

American Red Cross(アメリカ赤十字)のインストラクターマニュアルは、はじめて見ましたが、さすがアメリカ系。AHAのインストラクターマニュアルととてもよく似た造りになっています。
レッスンマップの内容はというと、BLSよりはACLS寄り。
でもACLSみたいに決まり切ったことをやればいいというわけではなく、フィールドによってシナリオを作り替える必要があって、準備や企画力、ファシリテーションに相当高い能力が求められそうです。
ちょっと前までは蘇生教育といえばBLSが一大ブームでした。
それも過ぎ去り、今はACLSの教育がメインテーマになっていそうな感じですが、考えてみればファーストエイド教育となると、インストラクターのコンピテンシーも不明確だし、その教育手法もまったく未開の地。
でもARCのインストラクターコースを受けていると、今後はファーストエイド教育が市民インストラクターの間でブームになるんじゃないか、そんな予感すらします。
インストラクターコースは明日の昼頃に修了予定。
また今度詳しく書きます。
2010年05月23日
ウィルダネス・ファーストエイドコース水難救助編
今日は午前中は、ウィルダネス&リモート・ファーストエイド・コースの後半戦。
最終シナリオは雨の降る河原に下りて、水難救助。
受講者の一人が寒い中、本当に全身水につかって、ロープで引き上げるところからスタート。そこまでやるとはびっくりです。
ロープが絡まり、うまく投げられずに時間ロス。
シミュレーションといっても、ウェットスーツを着ているわけでもなく、5月の川の水は肌を刺すよう。急がないとホントに危ないです。
引き上げて服を脱がせて全身を拭いて、寝袋にくるんで保温。
受講者の装備の中にあったタープとウォーキングポールで仮設テントを立てたり、お湯を沸かして水筒で湯たんぽを作ったり、、、
周りは本当に雨で寒いし、傷病者役もホントに震えているし、恐るべしアメリカ赤十字です。

↑寒い中、ホントに水につかった人を引き上げてケアしているところ。
大雨が降ってます。使う器材は受講者が日頃使っている山道具だけ。
最初は、雨の中、わざわざ外でシナリオトレーニングをするのがイヤだなぁと思ってましたが、実際にやってみると、その価値が身に染みてわかりました。反対に雨が降っていてくれて良かったと思えるほどに。
最後の筆記試験は、恥ずかしながらかろうじての合格。(だって英語の講義なんですもん)
晴れてアメリカ赤十字 Wilderness & Remote First Aid Probvider になりました。
修了カードが送られてくるのが楽しみです。
最終シナリオは雨の降る河原に下りて、水難救助。
受講者の一人が寒い中、本当に全身水につかって、ロープで引き上げるところからスタート。そこまでやるとはびっくりです。
ロープが絡まり、うまく投げられずに時間ロス。
シミュレーションといっても、ウェットスーツを着ているわけでもなく、5月の川の水は肌を刺すよう。急がないとホントに危ないです。
引き上げて服を脱がせて全身を拭いて、寝袋にくるんで保温。
受講者の装備の中にあったタープとウォーキングポールで仮設テントを立てたり、お湯を沸かして水筒で湯たんぽを作ったり、、、
周りは本当に雨で寒いし、傷病者役もホントに震えているし、恐るべしアメリカ赤十字です。

↑寒い中、ホントに水につかった人を引き上げてケアしているところ。
大雨が降ってます。使う器材は受講者が日頃使っている山道具だけ。
最初は、雨の中、わざわざ外でシナリオトレーニングをするのがイヤだなぁと思ってましたが、実際にやってみると、その価値が身に染みてわかりました。反対に雨が降っていてくれて良かったと思えるほどに。
最後の筆記試験は、恥ずかしながらかろうじての合格。(だって英語の講義なんですもん)
晴れてアメリカ赤十字 Wilderness & Remote First Aid Probvider になりました。
修了カードが送られてくるのが楽しみです。
夜間の原野での救助訓練
晴天の中、始まったアメリカ赤十字の野外救急法講習。

書きたいことは色々ありますが、今日は1点だけ。
ウィルダネス・ファーストエイドの受講は初めてではありませんが、このアメリカ赤十字コースで驚いたのは夜間に屋外でのシミュレーショントレーニングがあったこと。どうやらシナリオ的に必須のようです。
私は、夜の原野に倒れている傷病者役で、足の大きな解放創と活動性出血、頭部外傷で嘔吐があるという設定。
顔と足には血糊を塗られ、腹部には打撲を示すペイント。
救助者が来るまで10分くらい、真っ暗な原っぱにぽつり倒れた状態で待機。
久しぶりに土のにおいをかぎながら、ゆっくり時間が流れるのを感じたなぁと思いました。
さて、救助者が来て、初期評価、一次評価が終わった後は、後続の救助隊は朝まで来ないということで、その場でビバーグ。
本当にたき火を起こしたりして、そこまでやるんだとびっくり。
まあ、最後はインストラクターの time up! のかけ声で、シナリオは終了したけど、2時間近くはやってたと思います。
観察・アセスメントと最低限の処置が済んだ私は、キャンプ用ロールマットに寝かされて、体には保温用のエマージェンシーブランケット。
エマージェンシー・ブランケットは薄いアルミ箔みたいな大きなシート。久しぶりに本格的にくるまれましたが、やっぱり暖かいです。外はだいぶ冷え込んできて、処置中なんかは寒かったけど(だって足や顔の傷に川から汲んできた水で本当に創洗浄するんですもん)、ブランケットを掛けられてからは反対に暑いくらい。
2時間近くも屋外で寝転んでいたら、否が応でもありがたみがよくわかります。
まあ、欠点として、蒸れて蒸し暑い感じになるというのはご愛敬。
夜、ヘッドライトの明かりだけで傷病者を捜し出し、評価・処置していくという難しさを患者の立場で感じましたが、これって実際にやってみないとわからないことがたくさんあったと思います。
夜間のフィールドでの救助訓練。
これが今回の体験のなかで一番大きかったかなと思います。

書きたいことは色々ありますが、今日は1点だけ。
ウィルダネス・ファーストエイドの受講は初めてではありませんが、このアメリカ赤十字コースで驚いたのは夜間に屋外でのシミュレーショントレーニングがあったこと。どうやらシナリオ的に必須のようです。
私は、夜の原野に倒れている傷病者役で、足の大きな解放創と活動性出血、頭部外傷で嘔吐があるという設定。
顔と足には血糊を塗られ、腹部には打撲を示すペイント。
救助者が来るまで10分くらい、真っ暗な原っぱにぽつり倒れた状態で待機。
久しぶりに土のにおいをかぎながら、ゆっくり時間が流れるのを感じたなぁと思いました。
さて、救助者が来て、初期評価、一次評価が終わった後は、後続の救助隊は朝まで来ないということで、その場でビバーグ。
本当にたき火を起こしたりして、そこまでやるんだとびっくり。
まあ、最後はインストラクターの time up! のかけ声で、シナリオは終了したけど、2時間近くはやってたと思います。
観察・アセスメントと最低限の処置が済んだ私は、キャンプ用ロールマットに寝かされて、体には保温用のエマージェンシーブランケット。
エマージェンシー・ブランケットは薄いアルミ箔みたいな大きなシート。久しぶりに本格的にくるまれましたが、やっぱり暖かいです。外はだいぶ冷え込んできて、処置中なんかは寒かったけど(だって足や顔の傷に川から汲んできた水で本当に創洗浄するんですもん)、ブランケットを掛けられてからは反対に暑いくらい。
2時間近くも屋外で寝転んでいたら、否が応でもありがたみがよくわかります。
まあ、欠点として、蒸れて蒸し暑い感じになるというのはご愛敬。
夜、ヘッドライトの明かりだけで傷病者を捜し出し、評価・処置していくという難しさを患者の立場で感じましたが、これって実際にやってみないとわからないことがたくさんあったと思います。
夜間のフィールドでの救助訓練。
これが今回の体験のなかで一番大きかったかなと思います。
2010年05月22日
ARCウィルダネス・ファーストエイドコース・プレ
当直明けで、車を飛ばして埼玉秩父へ。
ウィルダネス&リモート・ファーストエイドコース前日。
来日したアメリカ人インストラクターと周辺の野山のフィールドチェック。
まだコースのシナリオは明かされていないけど、シナリオに合わせた場所を探している様子。
夕食後のプレレクチャーは、さらっとながら見事なファシリーテーション。説教調になることなく、質問を投げかけながら、明日から展開されるウィルダネス・ファーストエイドの基本コンセプトを説明。
その後は解散となって、合宿のお決まり、お酒を飲みながらの懇親会。まあ、いろいろな話が飛び交いましたが、その後一部の人が残って明日からの講習に備えて自主勉強。
先ほど渡された英語テキストをああでもない、こうでもないと読解。
明日は、午前中は傷病者アセスメントのレクチャーのあと、午後から屋外で実技練習。夕食後の夜には近隣の林でシミュレーショントレーニングとのこと。
懐中電灯を持ってこいとはいわれていたけど、mustなシミュレーションに夜間の対応も含まれているんでしょうね。
ウィルダネス&リモート・ファーストエイドコース前日。
来日したアメリカ人インストラクターと周辺の野山のフィールドチェック。
まだコースのシナリオは明かされていないけど、シナリオに合わせた場所を探している様子。
夕食後のプレレクチャーは、さらっとながら見事なファシリーテーション。説教調になることなく、質問を投げかけながら、明日から展開されるウィルダネス・ファーストエイドの基本コンセプトを説明。
その後は解散となって、合宿のお決まり、お酒を飲みながらの懇親会。まあ、いろいろな話が飛び交いましたが、その後一部の人が残って明日からの講習に備えて自主勉強。
先ほど渡された英語テキストをああでもない、こうでもないと読解。
明日は、午前中は傷病者アセスメントのレクチャーのあと、午後から屋外で実技練習。夕食後の夜には近隣の林でシミュレーショントレーニングとのこと。
懐中電灯を持ってこいとはいわれていたけど、mustなシミュレーションに夜間の対応も含まれているんでしょうね。
2010年05月20日
Wilderness & Remote First Aid
去年から何度も話題にしているWilderness & Remote First Aidコース、アメリカ赤十字(American Red Cross)公式コースの日本初開催がいよいよ数日後に迫ってきました。
今回のフィールドは、埼玉県の長瀞周辺の野山。
主にスタッフ側の負担を考えて宿泊まりとなりましたが、本来はキャンプをしながら2日かけて開催するものらしい、、、、
50時間コースとかがざらにあるウィルダネス・ファーストエイドの中でも軽いBasicの16時間なのに、なかなかやるじゃんAmerican Red Cross!
という感じです。
そのテキストがようやくアメリカから届きました。

当初は翻訳を、なんて思っていましたが、明らかに時間なさ過ぎで、今回は口頭での補足でコースが進みそうです。もっとも写真の多いテキストなので、パラパラ見ているだけでもなんとなくわかるので、大丈夫かなと思います。
コースが始まって、余裕があったら経過をレポートします。
今回のフィールドは、埼玉県の長瀞周辺の野山。
主にスタッフ側の負担を考えて宿泊まりとなりましたが、本来はキャンプをしながら2日かけて開催するものらしい、、、、
50時間コースとかがざらにあるウィルダネス・ファーストエイドの中でも軽いBasicの16時間なのに、なかなかやるじゃんAmerican Red Cross!
という感じです。
そのテキストがようやくアメリカから届きました。

当初は翻訳を、なんて思っていましたが、明らかに時間なさ過ぎで、今回は口頭での補足でコースが進みそうです。もっとも写真の多いテキストなので、パラパラ見ているだけでもなんとなくわかるので、大丈夫かなと思います。
コースが始まって、余裕があったら経過をレポートします。
2010年05月12日
使える救急法には傷病者アセスメントシステムが絶対必要
今月末に日本で開催予定のアメリカ赤十字のウィルダネス・ファーストエイド(Wilderness & Remote First Aid)コースの資料がボチボチと届きはじめました。
テキストはまだで、内部資料的なものなのですが、そこからコース内容がだいぶ見えてきました。
やっぱり、実践的なファーストエイドには、「傷病者評価・アセスメントシステム」が必須なんですね。
今回受講するコースは2日間で、ウィルダネス・ファーストエイドとしては、Basicの位置づけになります。
以前、受講した別団体のウィルダネス・ファーストエイドは、Advancedコースで4日間。
上級コースだから、あそこまで細かく心拍数や呼吸数から体の中で起きていることをアセスメントするのかなと思っていましたが、今回の資料の中にも、American Red Crossの傷病者アセスメントシートがしっかり入っていました。やはりファーストエイドでは必須なんだということを再確認。
傷病者アセスメントシートに含まれている内容は、状況評価から始まって、心拍数、呼吸数、意識レベル(ABPU)、問診(SAMPLE)、全身評価など。
きっと繰り返されるシナリオトレーニングで、この用紙を記入しながら、傷病者アセスメント、何を観察し、なにが問題でどう優先順位を付けて対処していくか、を訓練していくのでしょう。
私が以前に受けた Wilderness Advanced First Aid でも、この思考パターン形成と、そのバッググラウンドにある医学知識の理解・習得に主眼が置かれていました。
骨折だったらどうするとか、火傷ならどうするとか、そういう各論的なことは、ある意味おまけみたいなもの、サプリメントといったら大げさでしょうか。
幹となる傷病者アセスメントができないで、サプリメントだけを知っていても、優先順位が付けられず決定的に悲しい出来事が起こりそう。
とかく日本の救急法は、枝ばっかりの羅列で、それらの有機的なつながりを教わることがないような気がします。
傷病者アセスメントの理屈がわかれば、その後に学ぶ各論の意味が有機的につながってきて、本当に使えるファーストエイドになると思うんですよね。(ショックの病態とバイタルサインの見方がわかるとだいぶ違いますよね)
CPRはある意味簡単です。
やることは決まっていて、不確定な要素があまりないから。
だからCPRは体育の授業と同じで繰り返しのトレーニングが強調されますが、ファーストエイドは体育会系のノリだけではダメ。
エビデンスのあることが少なく、この先も大きく変わっていく可能性が大です。ですから、幹となる医学知識と考え方をしっかり理解して、その末端部分はフレキシブルに対応。
そんなスタンスがファーストエイドを極めることになる気がします。
日本でもCPR教育はだいぶこなれた感じになってきました。煮詰まってきています。
しかしファーストエイド(応急手当)はまだまだ未開の地。
だからこそ勉強し甲斐があるというものです。
医療従事者にとっても、ファーストエイドの傷病者アセスメントの訓練は意味があることなんじゃないかなと思います。
テキストはまだで、内部資料的なものなのですが、そこからコース内容がだいぶ見えてきました。
やっぱり、実践的なファーストエイドには、「傷病者評価・アセスメントシステム」が必須なんですね。
今回受講するコースは2日間で、ウィルダネス・ファーストエイドとしては、Basicの位置づけになります。
以前、受講した別団体のウィルダネス・ファーストエイドは、Advancedコースで4日間。
上級コースだから、あそこまで細かく心拍数や呼吸数から体の中で起きていることをアセスメントするのかなと思っていましたが、今回の資料の中にも、American Red Crossの傷病者アセスメントシートがしっかり入っていました。やはりファーストエイドでは必須なんだということを再確認。
傷病者アセスメントシートに含まれている内容は、状況評価から始まって、心拍数、呼吸数、意識レベル(ABPU)、問診(SAMPLE)、全身評価など。
きっと繰り返されるシナリオトレーニングで、この用紙を記入しながら、傷病者アセスメント、何を観察し、なにが問題でどう優先順位を付けて対処していくか、を訓練していくのでしょう。
私が以前に受けた Wilderness Advanced First Aid でも、この思考パターン形成と、そのバッググラウンドにある医学知識の理解・習得に主眼が置かれていました。
骨折だったらどうするとか、火傷ならどうするとか、そういう各論的なことは、ある意味おまけみたいなもの、サプリメントといったら大げさでしょうか。
幹となる傷病者アセスメントができないで、サプリメントだけを知っていても、優先順位が付けられず決定的に悲しい出来事が起こりそう。
とかく日本の救急法は、枝ばっかりの羅列で、それらの有機的なつながりを教わることがないような気がします。
傷病者アセスメントの理屈がわかれば、その後に学ぶ各論の意味が有機的につながってきて、本当に使えるファーストエイドになると思うんですよね。(ショックの病態とバイタルサインの見方がわかるとだいぶ違いますよね)
CPRはある意味簡単です。
やることは決まっていて、不確定な要素があまりないから。
だからCPRは体育の授業と同じで繰り返しのトレーニングが強調されますが、ファーストエイドは体育会系のノリだけではダメ。
エビデンスのあることが少なく、この先も大きく変わっていく可能性が大です。ですから、幹となる医学知識と考え方をしっかり理解して、その末端部分はフレキシブルに対応。
そんなスタンスがファーストエイドを極めることになる気がします。
日本でもCPR教育はだいぶこなれた感じになってきました。煮詰まってきています。
しかしファーストエイド(応急手当)はまだまだ未開の地。
だからこそ勉強し甲斐があるというものです。
医療従事者にとっても、ファーストエイドの傷病者アセスメントの訓練は意味があることなんじゃないかなと思います。
2010年01月16日
ウィルダネス・ファーストエイドの受講対象と特殊性
前回取り上げたウィルダネス・ファーストエイドに関してご質問をいただきましたので、この場でお返事させていただこうと思います。
その通りです。ウィルダネス・ファーストエイド(WFA)は必ずしも大自然の中という訳ではなく、医療資源(病院だったり医療従事者)に容易にアクセスできない環境すべてを「ウィルダネス環境下」として扱っています。
ですから、東京のど真ん中であっても大災害時は「ウィルダネス」となり得ます。
そう考えますと、ウィルダネスファーストエイドの受講対象は、
1.アウトドアフィールドで活動する人
2.高度な救急法・ファーストエイドの必要を感じる人
3.災害時救急法に興味関心がある人
ということになりそうです。
高度な心肺蘇生法に関しては、アメリカ心臓協会(AHA)の BLSヘルスケアプロバイダーコース や、ACLSプロバイダーコース などがありますが、高度なファーストエイドとなると、実は日本にはありませんでした。
強いて言えば、日本赤十字社が展開している 救急法救急員講習 (24時間)が、災害時ボランティアを意識した高度なファーストエイドを含んではいますが、後述しますが、ウィルダネス・ファーストエイドとは中身は全然違います。
日本の既存の救急法・心肺蘇生法と比べて、ウィルダネス・ファーストエイド講習の特殊性を大別すると以下の二つに集約されると思います。
1.傷病者アセスメントシステム
2.ウィルダネス・プロトコル
傷病者アセスメントシステムというのは、乱暴に言ってしまえば診察法です。なにが起きたかわからない状況下で傷病者と接する際、何を観察して、どう評価して、どう判断(分類)して、優先順位をつけて対処していくか、という流れをシステマチックに学びます。
具体的には、呼吸器系・循環器系、神経系の解剖生理を学び、その評価観察の仕方を身につけます。ウィルダネス・ファーストエイドでもランクがありますが、上級コースになれば聴診や血圧測定(うろ覚え、、、ごめんなさい)なども含まれ、それらのバイタルが意味することを理解し、判断できるように訓練します。(予備知識のない市民が理解して判断できるようにさせるという点がポイント。インストラクショナル・デザイン的にこれが日本の救急法に欠けています)
ウィルダネス・プロトコルというのは、医療資源への搬送が間に合わないようなウィルダネス環境下でのみ許容される特殊な判断基準・処置です。たとえば脊椎保護を解除する脊椎テスト法、アナフィラキシーへのアドレナリン注射・抗ヒスタミン薬投与など。
これらの二本柱のうち、ウィルダネス・プロトコルに関しては、日本の医師法の関係上、注意が必要な場合がありますが、前者の傷病者アセスメントシステムは、ウィルダネス環境下に関わらずすべての場面で有効に使えます。
この部分を学ぶだけでもウィルダネス・ファーストエイドを学ぶ価値があると私は考えています。
やることは、救急隊員向けの外傷標準化プログラム( JPTEC や ITLS )とほとんど同じなのですが、それを予備知識のない市民にどうやって教えてどう訓練するかというのが、アメリカで培われてきたウィルダネス・ファーストエイドの数十年のノウハウなんだと思います。
それにITLSもJPTECも一般市民には受講の機会を与えていませんので、市民の立場で学びたい人が学べる環境というのはこれまで日本にありませんでした。
ウィルダネス・ファーストエイド(WFA)に関して書きたいと思ったことはほぼ言ってしまいましたが、なんとなくWFAの概要が伝わったでしょうか?
ウィルダネス・ファーストエイドをネットで調べてみましたが、アウトドア等で有効な救命処置との事ですが、地震等で救急車や医療機関への搬送がすぐには困難な場合にも応用的に当てはまりますでしょうか?
その通りです。ウィルダネス・ファーストエイド(WFA)は必ずしも大自然の中という訳ではなく、医療資源(病院だったり医療従事者)に容易にアクセスできない環境すべてを「ウィルダネス環境下」として扱っています。
ですから、東京のど真ん中であっても大災害時は「ウィルダネス」となり得ます。
そう考えますと、ウィルダネスファーストエイドの受講対象は、
1.アウトドアフィールドで活動する人
2.高度な救急法・ファーストエイドの必要を感じる人
3.災害時救急法に興味関心がある人
ということになりそうです。
高度な心肺蘇生法に関しては、アメリカ心臓協会(AHA)の BLSヘルスケアプロバイダーコース や、ACLSプロバイダーコース などがありますが、高度なファーストエイドとなると、実は日本にはありませんでした。
強いて言えば、日本赤十字社が展開している 救急法救急員講習 (24時間)が、災害時ボランティアを意識した高度なファーストエイドを含んではいますが、後述しますが、ウィルダネス・ファーストエイドとは中身は全然違います。
日本の既存の救急法・心肺蘇生法と比べて、ウィルダネス・ファーストエイド講習の特殊性を大別すると以下の二つに集約されると思います。
1.傷病者アセスメントシステム
2.ウィルダネス・プロトコル
傷病者アセスメントシステムというのは、乱暴に言ってしまえば診察法です。なにが起きたかわからない状況下で傷病者と接する際、何を観察して、どう評価して、どう判断(分類)して、優先順位をつけて対処していくか、という流れをシステマチックに学びます。
具体的には、呼吸器系・循環器系、神経系の解剖生理を学び、その評価観察の仕方を身につけます。ウィルダネス・ファーストエイドでもランクがありますが、上級コースになれば聴診や血圧測定(うろ覚え、、、ごめんなさい)なども含まれ、それらのバイタルが意味することを理解し、判断できるように訓練します。(予備知識のない市民が理解して判断できるようにさせるという点がポイント。インストラクショナル・デザイン的にこれが日本の救急法に欠けています)
ウィルダネス・プロトコルというのは、医療資源への搬送が間に合わないようなウィルダネス環境下でのみ許容される特殊な判断基準・処置です。たとえば脊椎保護を解除する脊椎テスト法、アナフィラキシーへのアドレナリン注射・抗ヒスタミン薬投与など。
これらの二本柱のうち、ウィルダネス・プロトコルに関しては、日本の医師法の関係上、注意が必要な場合がありますが、前者の傷病者アセスメントシステムは、ウィルダネス環境下に関わらずすべての場面で有効に使えます。
この部分を学ぶだけでもウィルダネス・ファーストエイドを学ぶ価値があると私は考えています。
やることは、救急隊員向けの外傷標準化プログラム( JPTEC や ITLS )とほとんど同じなのですが、それを予備知識のない市民にどうやって教えてどう訓練するかというのが、アメリカで培われてきたウィルダネス・ファーストエイドの数十年のノウハウなんだと思います。
それにITLSもJPTECも一般市民には受講の機会を与えていませんので、市民の立場で学びたい人が学べる環境というのはこれまで日本にありませんでした。
ウィルダネス・ファーストエイド(WFA)に関して書きたいと思ったことはほぼ言ってしまいましたが、なんとなくWFAの概要が伝わったでしょうか?
2010年01月15日
ウィルダネス・ファーストエイド
一部ネットでも開示されている情報なんで、いいかなと思って書いてしまいますが、、、
5月にとあるアメリカ超大手団体主催の Wilderness & Remote First Aid コースを日本初開催しようという企画が進んでいます。
アメリカ合衆国などでは確立した概念となっているこのウィルダネス・ファーストエイドですが、日本ではあまりなじみがないかもしれません。
ウィルダネス Wilderness とは、直訳すると荒野とか、原野、未開の地といった意味。
イメージしやすいところでは、歩いて何日もかかるような山の中や離島などを指します。
そうした医療資源に乏しい環境下でのファーストエイド(応急処置)は、町中での応急処置とはかなり違います。
「119番して待つ」という通常の対処では間に合わないことが多いからです。
ウィルダネス環境下では、ウィルダネス・プロトコル Wilderness Protocol と呼ばれる、通常のファーストエイドでは適応されない特殊な約束事がいくつか入ってきます。
また、様子を見ていいのか、すぐにでもどうにかしなくてはいけないのかといった緊急度を判断するためのちょっとした診察テクニックを学んだりもします。
日本だと医師法の絡みで「診療行為」とも判断されがちな内容を含むため、意見は分かれるところではありますが、アメリカではアウトドアフィールドで活躍するプロフェッショナルを中心に、いくつかの団体が公式なサティフィケイトを発行するコースとして、このウィルダネス・ファーストエイドプログラムが広く普及しています。
山岳ガイドやネーチャーガイドなど、大自然をフィールドにプロとして活動する人には必須の資格です。
日本でもすでにいくつかの団体が、アメリカやカナダからインストラクターを招聘して、日本国内でコース開催をしていますが、今回はそれらのどれとも関係のないところからの初日本上陸。おそらくネームバリュー的にはトップクラスでしょう。
5月開催に向けてまだプランニングが始まったばかりですが、どうなるのか楽しみです。
そんなこともあって、今後、何回かに分けて、ウィルダネス・ファーストエイドとはなんなのかという点を書いてみようと思います。
5月にとあるアメリカ超大手団体主催の Wilderness & Remote First Aid コースを日本初開催しようという企画が進んでいます。
ウィルダネス・ファーストエイド
アメリカ合衆国などでは確立した概念となっているこのウィルダネス・ファーストエイドですが、日本ではあまりなじみがないかもしれません。
ウィルダネス Wilderness とは、直訳すると荒野とか、原野、未開の地といった意味。
イメージしやすいところでは、歩いて何日もかかるような山の中や離島などを指します。
そうした医療資源に乏しい環境下でのファーストエイド(応急処置)は、町中での応急処置とはかなり違います。
「119番して待つ」という通常の対処では間に合わないことが多いからです。
ウィルダネス環境下では、ウィルダネス・プロトコル Wilderness Protocol と呼ばれる、通常のファーストエイドでは適応されない特殊な約束事がいくつか入ってきます。
また、様子を見ていいのか、すぐにでもどうにかしなくてはいけないのかといった緊急度を判断するためのちょっとした診察テクニックを学んだりもします。
日本だと医師法の絡みで「診療行為」とも判断されがちな内容を含むため、意見は分かれるところではありますが、アメリカではアウトドアフィールドで活躍するプロフェッショナルを中心に、いくつかの団体が公式なサティフィケイトを発行するコースとして、このウィルダネス・ファーストエイドプログラムが広く普及しています。
山岳ガイドやネーチャーガイドなど、大自然をフィールドにプロとして活動する人には必須の資格です。
日本でもすでにいくつかの団体が、アメリカやカナダからインストラクターを招聘して、日本国内でコース開催をしていますが、今回はそれらのどれとも関係のないところからの初日本上陸。おそらくネームバリュー的にはトップクラスでしょう。
5月開催に向けてまだプランニングが始まったばかりですが、どうなるのか楽しみです。
そんなこともあって、今後、何回かに分けて、ウィルダネス・ファーストエイドとはなんなのかという点を書いてみようと思います。
2009年12月06日
ファーストエイド評価プロトコルの大切さ
学びの多い4日間でした。
やっぱりいちばん取り入れたいのは、傷病者アセスメントの部分ですね。
BLSは意識がなくて呼吸がなくて、脈がないのが大前提。
これが人間として最悪の事態で、そこだけでも反射的に体が動けば、、、ということでやっているわけですが、ところがどっこい私たちが日常的に遭遇するのは「大丈夫ですか?」と聞けば、「はい、大丈夫です」と返事が返ってくるパターン。
返事があれば、(心停止を考えれば)とりあえず緊急事態ではありません。
もし救助者がただのBLSプロバイダーであれば、ここでおしまい。
BLSプロバイダーの出番はありません。
でも、その救助者がファーストエイド・プロバイダーであれば、対応がまた違ってきます。
いちおうアメリカの労働基準の中では、ファーストエイドとCPRは別物として位置づけられているようですが、どっちが広い概念・守備範囲かといえば、もちろんファーストエイド。
ファーストエイドの選択肢としてCPRはあり得ますが、その逆パターンがなかなかないのは、AHA関係の皆さんは特に実感されているところだと思います。
ファーストエイドは、定義だったりとか範疇が広すぎて教えるのはけっこう大変です。状況に合わせてどこまで教えるかということも考えなくちゃいけないし、、、、
その点、CPRはやることは決まっているので、教える方もある意味楽ちん。
BLSは人間としての常識、というくらいに義務的に裾野が広がるべきだと思っているけど、いまの段階でCPRの必要性を認識しているような人たちだったら、BLS/CPRの枠を越えて是非、ファーストエイドの範疇まで興味を持って勉強してほしいなと考えるようになりました。
そこで、最低限のことと思うのが、最初に書いた傷病者アセスメント。
日本の救急法だと、「脳卒中の対応」とか「痙攣の場合」といった感じで症例毎に説明しがちですが、あれってあまり意味がありません。そもそもそれが脳卒中と認識できなければなにもはじめられないからです。
具合の悪そうな人をみたら、まずはどこに着目して何を確認していったらいいのか?
どんな情報を取っていけばいいのか?
たいていの場合は、急いで病院に行くような事態ではないことが多いと思いますが、それを「大丈夫」と自信を持って言えるためにはなにをチェックしたらいいのか。
病名を言い当てるような指導パターンだと、消去法でこの病気ではないとは言えるかもしれないけど、なんだかわからない症状が問題のある状態かそうでないかは判断できず、結果的に「実用」にはなりません。
せっかく身につけたBLSの技術を自信に変えて使える技術に高めるためには、ファーストエイドの知識が必要で、さらにはファーストエイドとBLSを切り分けない傷病者アセスメントの知識・テクニックを身につけることで、有機的に有効なテクニックとして生きてくるのでは? というのがこの4日間の研修で感じたこと。
これは、ここしばらく話題にしていたAHA PEARSコースの大切さ、というのともつながっています。PEARSのときは、看護師教育の中で体系だった患者アセスメント・テクニックの必要性を取り上げていましたが、今回は看護師であろうと市民であろうと、ヘルスケアに関わるすべての人にとって必要なこと、と考えるようになりました。
なんていったらいいんでしょう? BLS(CPRとAED)はただのテクニカル・スキル。
それだけでも心停止時には、有効に作用するけど、もっと有機的に発揮するためにはダイナミックなオペレーティングシステムが必要で、それが傷病者アセスメント・プロトコル。なんていうと大げさかな。
傷病者アセスメントはAHAではPALSとPEARS以外は含まれていません。
たしかメディック・ファーストエイドでも患者評価システムのようなものがあったような記憶が、、、 私が受講したのはガイドライン2000版だったので、今度、勉強のためにMFAを再受講しなくちゃなとも思ってます。
読者の方でMFAの評価システムについて情報があったら、いただけたらうれしいです。
やっぱりいちばん取り入れたいのは、傷病者アセスメントの部分ですね。
BLSは意識がなくて呼吸がなくて、脈がないのが大前提。
これが人間として最悪の事態で、そこだけでも反射的に体が動けば、、、ということでやっているわけですが、ところがどっこい私たちが日常的に遭遇するのは「大丈夫ですか?」と聞けば、「はい、大丈夫です」と返事が返ってくるパターン。
返事があれば、(心停止を考えれば)とりあえず緊急事態ではありません。
もし救助者がただのBLSプロバイダーであれば、ここでおしまい。
BLSプロバイダーの出番はありません。
でも、その救助者がファーストエイド・プロバイダーであれば、対応がまた違ってきます。
いちおうアメリカの労働基準の中では、ファーストエイドとCPRは別物として位置づけられているようですが、どっちが広い概念・守備範囲かといえば、もちろんファーストエイド。
ファーストエイドの選択肢としてCPRはあり得ますが、その逆パターンがなかなかないのは、AHA関係の皆さんは特に実感されているところだと思います。
ファーストエイドは、定義だったりとか範疇が広すぎて教えるのはけっこう大変です。状況に合わせてどこまで教えるかということも考えなくちゃいけないし、、、、
その点、CPRはやることは決まっているので、教える方もある意味楽ちん。
BLSは人間としての常識、というくらいに義務的に裾野が広がるべきだと思っているけど、いまの段階でCPRの必要性を認識しているような人たちだったら、BLS/CPRの枠を越えて是非、ファーストエイドの範疇まで興味を持って勉強してほしいなと考えるようになりました。
そこで、最低限のことと思うのが、最初に書いた傷病者アセスメント。
日本の救急法だと、「脳卒中の対応」とか「痙攣の場合」といった感じで症例毎に説明しがちですが、あれってあまり意味がありません。そもそもそれが脳卒中と認識できなければなにもはじめられないからです。
具合の悪そうな人をみたら、まずはどこに着目して何を確認していったらいいのか?
どんな情報を取っていけばいいのか?
たいていの場合は、急いで病院に行くような事態ではないことが多いと思いますが、それを「大丈夫」と自信を持って言えるためにはなにをチェックしたらいいのか。
病名を言い当てるような指導パターンだと、消去法でこの病気ではないとは言えるかもしれないけど、なんだかわからない症状が問題のある状態かそうでないかは判断できず、結果的に「実用」にはなりません。
せっかく身につけたBLSの技術を自信に変えて使える技術に高めるためには、ファーストエイドの知識が必要で、さらにはファーストエイドとBLSを切り分けない傷病者アセスメントの知識・テクニックを身につけることで、有機的に有効なテクニックとして生きてくるのでは? というのがこの4日間の研修で感じたこと。
これは、ここしばらく話題にしていたAHA PEARSコースの大切さ、というのともつながっています。PEARSのときは、看護師教育の中で体系だった患者アセスメント・テクニックの必要性を取り上げていましたが、今回は看護師であろうと市民であろうと、ヘルスケアに関わるすべての人にとって必要なこと、と考えるようになりました。
なんていったらいいんでしょう? BLS(CPRとAED)はただのテクニカル・スキル。
それだけでも心停止時には、有効に作用するけど、もっと有機的に発揮するためにはダイナミックなオペレーティングシステムが必要で、それが傷病者アセスメント・プロトコル。なんていうと大げさかな。
傷病者アセスメントはAHAではPALSとPEARS以外は含まれていません。
たしかメディック・ファーストエイドでも患者評価システムのようなものがあったような記憶が、、、 私が受講したのはガイドライン2000版だったので、今度、勉強のためにMFAを再受講しなくちゃなとも思ってます。
読者の方でMFAの評価システムについて情報があったら、いただけたらうれしいです。
市民に医療行為を教えることの意味
いま受けているアウトドア・ファーストエイドコースは、医療者向けのものではありません。でも、救助隊が来るまでに何日もかかるような辺境での緊急事態を想定していますから、いわゆるファーストエイドの領域を越えた、「医療行為」の範疇も含んでいます。
そんな特殊なコースも佳境に入り、今日はアナフィラキシーショックの講義。
けっこう本格的にアナフィラキシーの作用機序、治療法を説明していて驚きました。
受講者の大半は医療の知識はほとんどない市民の立場の人たちですが、アメリカ人インストラクターは例えを使いながらうまく教えていました。
このコースの中では、二つの薬剤が出てきます。
ひとつはおなじみのアドレナリン(エピネフリン)筋注。
もう一つは内服の抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン)。
アドレナリンは作用時間が短い対症療養。それで症状が落ち着いたら抗ヒスタミン剤を、というような流れで教えていきます。
このへんで作用機序を巡って混乱している受講者が何名かいましたが、質疑応答でほぼクリア。
予備知識のない一般市民にもここまで教えることができるんだなぁと感心しました。
そう、このコースの特徴は対処法(治療法)を機械的に教えるのではなく、その仕組みを理解させるように設計されています。
アナフィラキシーに関しても、単にそこだけを学ぶのではなく、すでに前日に学んでいるVascular Shock(日本語でなんて言うんでしたっけ? 血管拡張ショック? 血液分布異常性ショック?)の仕組みとリンクさせて、体の異常を理解させる。
正直、それがどれだけ受講者の中に残るのか、という疑問もないわけではないですが、どうすべき、という答えがないアウトドアの世界で、自分で考えて対応できる術を身につけさせようというコンセプトが貫かれています。
素人は口を出すな! というある意味、日本では聖域になっている医療界からするとびっくりな感じですが、市民に対して、ここまで門戸を開いているというのは、いい試金石になると思います。
いちおうアメリカでは、この領域(ウィルダネス・ファーストエイド)が確立していて、教育の歴史としても数十年あり、このような講習を開く団体がたくさんあるとか。
日本人の市民の中でも求めている人は求めているんです。
日本国土に限らず、世界のウィルダネスに向けて遠征(expedition)するような日本人も珍しくありません。
日本国外では日本の医師法なんて関係ありませんし、頼れるのは自分だけ。
大学の探検部や山岳部、海外で山岳ガイドとして活躍する日本人等々。
そんな人たちが日本中はもとより、海外からもこのコースに参加してきています。
明日、いよいよ最終日。
修了試験、どうなるかなぁ。
そんな特殊なコースも佳境に入り、今日はアナフィラキシーショックの講義。
けっこう本格的にアナフィラキシーの作用機序、治療法を説明していて驚きました。
受講者の大半は医療の知識はほとんどない市民の立場の人たちですが、アメリカ人インストラクターは例えを使いながらうまく教えていました。
このコースの中では、二つの薬剤が出てきます。
ひとつはおなじみのアドレナリン(エピネフリン)筋注。
もう一つは内服の抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン)。
アドレナリンは作用時間が短い対症療養。それで症状が落ち着いたら抗ヒスタミン剤を、というような流れで教えていきます。
このへんで作用機序を巡って混乱している受講者が何名かいましたが、質疑応答でほぼクリア。
予備知識のない一般市民にもここまで教えることができるんだなぁと感心しました。
そう、このコースの特徴は対処法(治療法)を機械的に教えるのではなく、その仕組みを理解させるように設計されています。
アナフィラキシーに関しても、単にそこだけを学ぶのではなく、すでに前日に学んでいるVascular Shock(日本語でなんて言うんでしたっけ? 血管拡張ショック? 血液分布異常性ショック?)の仕組みとリンクさせて、体の異常を理解させる。
正直、それがどれだけ受講者の中に残るのか、という疑問もないわけではないですが、どうすべき、という答えがないアウトドアの世界で、自分で考えて対応できる術を身につけさせようというコンセプトが貫かれています。
素人は口を出すな! というある意味、日本では聖域になっている医療界からするとびっくりな感じですが、市民に対して、ここまで門戸を開いているというのは、いい試金石になると思います。
いちおうアメリカでは、この領域(ウィルダネス・ファーストエイド)が確立していて、教育の歴史としても数十年あり、このような講習を開く団体がたくさんあるとか。
日本人の市民の中でも求めている人は求めているんです。
日本国土に限らず、世界のウィルダネスに向けて遠征(expedition)するような日本人も珍しくありません。
日本国外では日本の医師法なんて関係ありませんし、頼れるのは自分だけ。
大学の探検部や山岳部、海外で山岳ガイドとして活躍する日本人等々。
そんな人たちが日本中はもとより、海外からもこのコースに参加してきています。
明日、いよいよ最終日。
修了試験、どうなるかなぁ。
2009年12月04日
特殊なプロトコル、日本の常識との違い、法的問題
さて、アウトドア・ファーストエイド講習2日目です。
今日のヤマ場は、脊椎損傷を疑った場合の脊椎固定。
JPTECなどの外傷コースでおなじみのパターンで、状況などから脊椎損傷が疑われる場合は、頭部保持を行います。そのまま、さらに評価を続けていくわけですが、困ってしまうのが、ここが救急車が入れるような都市部ではないという点。(そういう想定のファーストエイドを学ぶコースです)
救急隊向けのコースでもありませんから、バッグボードなんてものがあるわけではなく、それ以上の問題がなければ頭を両手で保持したところで動きはストップしてしまいます。
そこで、アウトドア・ファーストエイドでは、頭部保持を解除していい場合、というのを教えています。
簡単にいうと、両手両足のしびれ具合を確認、脊椎を一つ一つ圧迫して圧痛を確認、筋力検査、知覚の検査を行って、問題なければ明らかな脊損がないと判断します。
JPTECやITLS(BTLS)を受けたのはずいぶん前であまり自信がありませんが、こういったプロトコルはITLSでもなかったですよね?
いま受講中のコースでも、これは Wilderness Protocol ということで、容易に救助が得られない場所での特別事項として扱われています。
この Wilderness Protocol というのが、アウトドア・ファーストエイドの肝でもあり、私が学びたかったことでもあるのですが、実際に受けてみると違和感があったというのも正直なところです。
いちおうコースの最初で、 Wilderness Protocol は特殊な条件下で許させる特別なことなんだよという前置きというか、前提条件の説明はあるのですが、コースが進むにつれてその意識はだんだん薄くなっていきます。
私の場合、JPTECなどで脊椎固定の大切さはたたき込まれましたし、それを解除していいのは病院到着後、X-Pで明らかに脊損がないとわかった場合、という原則も知っています。
だからこそ、この Wilderness Protocol の特殊性がよくわかるのですが、普通にこのコースだけを受けると、脊椎損傷疑い時の標準的な対処方法が、この「脊椎テスト」を行うことかのような印象を受けます。
この教育カリキュラムの中でも、この「脊椎テスト」を行うことは、たとえば東京の町中の交通事故の対応では適応されないという前提になっているのですが、そのことが適切に受講者に伝わったとは正直思えませんでした。
まあ、もともとアウトドア現場、それも救助まで何日もかかるような場所を前提としたコースを受けに来た人たちで、町中はそもそも想定されていないと言われれば確かにそうなのですが、日本での外傷処置の「常識」つまりベーシックを知らないままにアドバンスドの部分だけを知ってしまうというのがどうなのかなと感じています。
今回の講師はアメリカから招聘されてきた生粋のアメリカ人です。
日本の法律や、業界の常識などはまったく知りません。
通訳に当たっている人たちも、日本の医療や法律に造詣がある人ではありません。
つまり、このコースの内容を日本で適応する場合の注意点、また問題点について理解している人が誰もいないのです。
そもそもアメリカの団体が日本で出張コースを開くのを、お手伝いしているだけというのが日本側企画者の主催者のスタンス。
本来はアメリカに行かなくては学べなかったことが日本で、日本語を介して学べるというのは非常にありがたいことで、とても感謝していますし、否定をするつもりはまったくありません。
基本スタンスはアメリカに行って現地のコースを受けてきたになるわけですから、なにも問題はないのですが、これを正式に日本に導入するとなると、日本の医療・法律事情についても検討してカリキュラムに追加していく必要があるのかなと思います。
考えてみれば、似たような問題は、ITLSやACLSにもあります。看護師や救急救命士が国家資格的に許されない薬物投与や外科的気道確保などを学ぶわけですから。
でもこれはみんな国家資格を持っている人が受けると言うことで、法律的な枠組みはわかっていて当たり前という前提条件があります。
しかし、このアウトドア・ファーストエイドに関しては、なにも知らない一般市民受講者を前提としています。
だからこそ、余計なことかもしれませんが心配してしまうのです。
コース開催に日本の資格を持った医師を立ち会わせろ、とは言いませんが、少なくとも周辺の日本国内事情について説明できる人、質問に答えられる人がいてほしいと思います。
日本の提携団体としては、そうした情報を持っていてもいいと思うのですが、そこまでは介入しておらず、ただ通訳をしているだけで、主催はアメリカの団体というスタンスでいるようです。
反対に考えると、そういうスタンスだからこそ、この医療法規の厳しい日本で開講できているのかもしれません。
マジメに考えて、医療監修を立てたり、厚生労働省に問い合わせをしたりすると、かえって面倒くさいことになって、そもそも日本では開講は無理ということになってしまいかねない点も想像に難くありません。
考えてみれば自分自身、AHAのハートセイバーファーストエイド・コースを日本で開講するためにずいぶん苦労したのを思い出しました。(日本では一般に使用が認められていないエピペンの使い方を教えることの是非について)
聞くところによると、AHAファーストエイドコースと同じOSHA規格で動いているメディックファーストエイドでは、実は日本ではエピペンは教えないことにしているという噂も。
今受講中のアウトドア・ファーストエイドコース、日本にも絶対に必要と思います。
本来は法律的な問題もクリアして堂々と開講できるようになるべきと思いますが、現状としてはアメリカのコースだから、という免罪符付きで開講されているというのが現状のようです。
それだけでも実は十分ありがたいこと。
今回受講の機会が得られたことに感謝しつつ、残りの2日間、学ばせてもらいたいと思います。
今日のヤマ場は、脊椎損傷を疑った場合の脊椎固定。
JPTECなどの外傷コースでおなじみのパターンで、状況などから脊椎損傷が疑われる場合は、頭部保持を行います。そのまま、さらに評価を続けていくわけですが、困ってしまうのが、ここが救急車が入れるような都市部ではないという点。(そういう想定のファーストエイドを学ぶコースです)
救急隊向けのコースでもありませんから、バッグボードなんてものがあるわけではなく、それ以上の問題がなければ頭を両手で保持したところで動きはストップしてしまいます。
そこで、アウトドア・ファーストエイドでは、頭部保持を解除していい場合、というのを教えています。
簡単にいうと、両手両足のしびれ具合を確認、脊椎を一つ一つ圧迫して圧痛を確認、筋力検査、知覚の検査を行って、問題なければ明らかな脊損がないと判断します。
JPTECやITLS(BTLS)を受けたのはずいぶん前であまり自信がありませんが、こういったプロトコルはITLSでもなかったですよね?
いま受講中のコースでも、これは Wilderness Protocol ということで、容易に救助が得られない場所での特別事項として扱われています。
この Wilderness Protocol というのが、アウトドア・ファーストエイドの肝でもあり、私が学びたかったことでもあるのですが、実際に受けてみると違和感があったというのも正直なところです。
いちおうコースの最初で、 Wilderness Protocol は特殊な条件下で許させる特別なことなんだよという前置きというか、前提条件の説明はあるのですが、コースが進むにつれてその意識はだんだん薄くなっていきます。
私の場合、JPTECなどで脊椎固定の大切さはたたき込まれましたし、それを解除していいのは病院到着後、X-Pで明らかに脊損がないとわかった場合、という原則も知っています。
だからこそ、この Wilderness Protocol の特殊性がよくわかるのですが、普通にこのコースだけを受けると、脊椎損傷疑い時の標準的な対処方法が、この「脊椎テスト」を行うことかのような印象を受けます。
この教育カリキュラムの中でも、この「脊椎テスト」を行うことは、たとえば東京の町中の交通事故の対応では適応されないという前提になっているのですが、そのことが適切に受講者に伝わったとは正直思えませんでした。
まあ、もともとアウトドア現場、それも救助まで何日もかかるような場所を前提としたコースを受けに来た人たちで、町中はそもそも想定されていないと言われれば確かにそうなのですが、日本での外傷処置の「常識」つまりベーシックを知らないままにアドバンスドの部分だけを知ってしまうというのがどうなのかなと感じています。
今回の講師はアメリカから招聘されてきた生粋のアメリカ人です。
日本の法律や、業界の常識などはまったく知りません。
通訳に当たっている人たちも、日本の医療や法律に造詣がある人ではありません。
つまり、このコースの内容を日本で適応する場合の注意点、また問題点について理解している人が誰もいないのです。
そもそもアメリカの団体が日本で出張コースを開くのを、お手伝いしているだけというのが日本側企画者の主催者のスタンス。
本来はアメリカに行かなくては学べなかったことが日本で、日本語を介して学べるというのは非常にありがたいことで、とても感謝していますし、否定をするつもりはまったくありません。
基本スタンスはアメリカに行って現地のコースを受けてきたになるわけですから、なにも問題はないのですが、これを正式に日本に導入するとなると、日本の医療・法律事情についても検討してカリキュラムに追加していく必要があるのかなと思います。
考えてみれば、似たような問題は、ITLSやACLSにもあります。看護師や救急救命士が国家資格的に許されない薬物投与や外科的気道確保などを学ぶわけですから。
でもこれはみんな国家資格を持っている人が受けると言うことで、法律的な枠組みはわかっていて当たり前という前提条件があります。
しかし、このアウトドア・ファーストエイドに関しては、なにも知らない一般市民受講者を前提としています。
だからこそ、余計なことかもしれませんが心配してしまうのです。
コース開催に日本の資格を持った医師を立ち会わせろ、とは言いませんが、少なくとも周辺の日本国内事情について説明できる人、質問に答えられる人がいてほしいと思います。
日本の提携団体としては、そうした情報を持っていてもいいと思うのですが、そこまでは介入しておらず、ただ通訳をしているだけで、主催はアメリカの団体というスタンスでいるようです。
反対に考えると、そういうスタンスだからこそ、この医療法規の厳しい日本で開講できているのかもしれません。
マジメに考えて、医療監修を立てたり、厚生労働省に問い合わせをしたりすると、かえって面倒くさいことになって、そもそも日本では開講は無理ということになってしまいかねない点も想像に難くありません。
考えてみれば自分自身、AHAのハートセイバーファーストエイド・コースを日本で開講するためにずいぶん苦労したのを思い出しました。(日本では一般に使用が認められていないエピペンの使い方を教えることの是非について)
聞くところによると、AHAファーストエイドコースと同じOSHA規格で動いているメディックファーストエイドでは、実は日本ではエピペンは教えないことにしているという噂も。
今受講中のアウトドア・ファーストエイドコース、日本にも絶対に必要と思います。
本来は法律的な問題もクリアして堂々と開講できるようになるべきと思いますが、現状としてはアメリカのコースだから、という免罪符付きで開講されているというのが現状のようです。
それだけでも実は十分ありがたいこと。
今回受講の機会が得られたことに感謝しつつ、残りの2日間、学ばせてもらいたいと思います。
2009年12月03日
アウトドアのファーストエイド・CPR
今日から、アウトドアに特化したファーストエイド講習を受けに来ています。
ガイドライン2005になって、シンプル化が叫ばれている昨今には珍しい4日間の濃密なコースでおもしろいです。
市民向け応急処置講習では、「○○しましょう」という結論を伝えるだけで終わるところを、救急車が来ない環境のファーストエイドでは、講習アプローチが全然違います。
解剖整理を、循環器系、呼吸器系、神経系に分けて説明。正常な働きを理解してから、それが阻害された場合を説明。そうやって命の危険がある状態と対処を理解して覚えましょう、という感じで教えていきます。
循環器系、呼吸器系、神経系をそれぞれ1時間程度はかけて説明していきますから、そりゃ1日じゃ無理だな、という感じです。
受講者の多くは市民ですが、理解して判断できるような感じできちんと進行しています。
さらに医療者にとってもいいなと思うのは、AVPUと言った意識評価スケール、二次評価のSAMPLE聴取、無線等での状況報告の仕方などが標準で含まれていて、BLS/ACLSにはないところもシミュレーショントレーニングを繰り返しますので、アウトドアに限らず実践的。
胸骨圧迫も、ふつうのBLSやCPR訓練では、もっとも標準的な仰臥位でしか練習しませんが、院外の急変を考えれば仰臥位で倒れている人の方がまれ。
そういったことで、このコースでは腹臥位から仰臥位への体交がかなりの頻度含まれています。シミュレーションをしていると、急に嘔吐したという神の声が。慌てて頸椎保護を意識しつつ側臥位にしたり、と実際にありえるよなぁというシチュエーションがいろいろと。
初めて受ける人には決して勧められないコースですが、必要性を感じる人にはこれくらいのことを練習できるコースはあってもいいと思います。
Advanced BLSコース。
ヘンな英語ですが、そんな感じ。
今度、BLSインストラクター方たちと一緒に、これをマネした勉強会を企画してみようと思っています。
ガイドライン2005になって、シンプル化が叫ばれている昨今には珍しい4日間の濃密なコースでおもしろいです。
市民向け応急処置講習では、「○○しましょう」という結論を伝えるだけで終わるところを、救急車が来ない環境のファーストエイドでは、講習アプローチが全然違います。
解剖整理を、循環器系、呼吸器系、神経系に分けて説明。正常な働きを理解してから、それが阻害された場合を説明。そうやって命の危険がある状態と対処を理解して覚えましょう、という感じで教えていきます。
循環器系、呼吸器系、神経系をそれぞれ1時間程度はかけて説明していきますから、そりゃ1日じゃ無理だな、という感じです。
受講者の多くは市民ですが、理解して判断できるような感じできちんと進行しています。
さらに医療者にとってもいいなと思うのは、AVPUと言った意識評価スケール、二次評価のSAMPLE聴取、無線等での状況報告の仕方などが標準で含まれていて、BLS/ACLSにはないところもシミュレーショントレーニングを繰り返しますので、アウトドアに限らず実践的。
胸骨圧迫も、ふつうのBLSやCPR訓練では、もっとも標準的な仰臥位でしか練習しませんが、院外の急変を考えれば仰臥位で倒れている人の方がまれ。
そういったことで、このコースでは腹臥位から仰臥位への体交がかなりの頻度含まれています。シミュレーションをしていると、急に嘔吐したという神の声が。慌てて頸椎保護を意識しつつ側臥位にしたり、と実際にありえるよなぁというシチュエーションがいろいろと。
初めて受ける人には決して勧められないコースですが、必要性を感じる人にはこれくらいのことを練習できるコースはあってもいいと思います。
Advanced BLSコース。
ヘンな英語ですが、そんな感じ。
今度、BLSインストラクター方たちと一緒に、これをマネした勉強会を企画してみようと思っています。







