市民向け心肺蘇生法講習をガイドライン2010で開催してみての感想、第二弾です。
ガイドライン2005と比べると、建前と現実のギャップが少なくなってやりやすくなったといえるかなと思いました。
実は、BLSの流れなんかは、実際の行動レベルでいうと、ガイドライン2005も2010もあまり変ってはいないんです。
これは主に人工呼吸の扱いについて言っていますが、旧来のガイドライン2005でも、人工呼吸は省略可でした。特に見ず知らずの人に蘇生を行う場合や、業務としての蘇生の場合は、口対口人工呼吸はあり得ませんから、感染防護具を使うことになります。
で、ポケットマスクやバッグバルブマスクを持ち合わせていればいいですけど、ふつうはそんなシチュエーションはなかなかありません。そこで現実の蘇生は第一発見時は人工呼吸が省略されるのが圧倒的多数、というか標準でした。
それが現実で、そのことはガイドライン2005でも許容されているというか、想定の範囲内となっていました。
ですから、きちんとガイドラインを読んでいて内容を理解している人は、人工呼吸はAEDなどと一緒にバリアデバイスが届いて、最初のショック後から開始する、という流れで病院内の蘇生プロトコルを作成していたのではないでしょうか?
それがようやくガイドライン本編として記載されるようになった、というのが今回のガイドライン2010。
わかっている人は前からの手順でなにも変っていない、と感じているかも知れません。
今回、私にとって「なるほど」と思ったのは、「見て聞いて感じて」の廃止でした。
最初は「だったら他にどうやって呼吸確認するの?」と懐疑的な気持ちが先に来ましたが、実際に市民向け講習としてガイドライン2010でやってみると、このことのメリットが次々に見えてきて、さすが! 思うようになりました。
その話は前回書いたとおりですが、そのほか、死戦期呼吸を見落とさないという意味でも、「見て聞いて感じて」を廃止したことは非常に有効と思われます。
特に問題は「聞いて」の部分。
死戦期呼吸、音がするんですよね。いびきみたいな。
音が聞こえちゃったら、そりゃ、呼吸ありと判断しちゃいますよね。
ましてや、自分の顔を至近距離に近づけている、傷病者の顎が動いているのが目に飛び込んでくれば、まさか心停止だなんて信じられません。
心停止であっても、発生直後で死戦期呼吸が出ていれば、顎は動くし、音は聞こえるし、場合によっては手も動いているし、、、
こんな状況で「有効な呼吸ではない」「心停止」「蘇生が必要」と判断するにはどうしたらいいか? そこで見るべきは胸の動き。
胸郭や呼吸に伴う腹部の動きを見るというのが、もっとも確かであろう判断材料。
ということなのでしょう。
いままでも講習会では「人工呼吸はしたくないと思ったらやらなくてもいいですよ」とは言っていました。
しかし、どうしても「本来はしなくちゃいけないものをしないのは良くないのでは?」という受講者さんの懐疑心をクリアにすることはできませんでした。
でも C-A-B の流れになれば、胸骨圧迫開始までは、一切の掛け値なしで指導できるし、やって貰えます。で、その後、人工呼吸をするかどうかという判断は、胸骨圧迫をしながら考えることなので、少なくとも悩むあまり、CPRを着手しないということにはなり得ません。
そんな意味で、最低限やってもらいたいことまではスムーズに導入でき、その後、その蘇生の質を左右する選択は後回しというのも非常に合理的。
ガイドラインが変ったことで、あまりに簡略化されすぎて蘇生自体の質が落ちたと感じる人もいるかも知れません。
小児の場合など、それはある意味否定はしませんが、ガイドライン自体が目指す方向性を正しく理解して、対象に応じて正しく伝えることが重要。
かつてのガイドライン2000の時のような、猫も杓子もガイドライン、というのとはちょっと様相が変ってきています。
ガイドラインが目指しているものをしっかり理解して、その対象外に対する適切なアプローチも含めて、蘇生のインストラクターはガイドラインを外から俯瞰する視点と勉強が必要かも知れません。
2010年11月26日
2010年11月25日
ガイドライン2010で市民向け蘇生講習をしてきました
近くの公民館で市民向け心肺蘇生法講習を開催しました。
新しい心肺蘇生ガイドライン2010の流れで行う初めての講習会です。
やってみて思いましたが、いいですね! ガイドライン2010。
教えやすいし、受講者さんたちも、途中引っかかることがサクサクと練習がすすんでいきます。
AHAのガイドライン2010ハイライトの冊子にも書かれていましたが、この方法が当たり前に普及すると、バイスタンダーのCPR着手率は上がるだろうなと実感しました。
ガイドライン2010の市民向けCPRのいいところは、
気持ち的に「イヤだなぁ」と思う手技が後回し、もしくはしなくても良い
というところにあると思います。
大丈夫ですか? と服の上から肩を叩いた後、次に傷病者に触れるのは胸骨圧迫。おそらくこれも服の上からになるはず。
そう、心肺蘇生法で一番大切な胸骨圧迫(心臓マッサージ)を始めるまでに、傷病者の素肌に触れなくても良いのです。
これは大きいと思います。
医療者であれば何でもないことかも知れませんが、赤の他人の体の触れるという行為は、ふつうの人にとっては、それだけで勇気が要ります。
服の上からならまだしも、他人の素肌に直接触れるということは日常生活にはありませんから。
これまでは呼吸確認をするためには、気道確保(頭部後屈あご先挙上)が必要とされていましたから、胸骨圧迫をはじめる前にはどうしても倒れた人の頭やあごに触れる必要がありました。
あまり問題にされたことはありませんでしたが、実はこれだけでも大きな「障壁」だったと思うんです。
AHAガイドライン2010では、呼吸確認に気道確保は不要になりました。また「見て聞いて感じて」がなくなりましたから、必要以上に傷病者の顔に自分の顔を近づける必要もなくなりました。(見ず知らずの他人の顔面に自分の顔を近づけるという動作も、日常的にはありえない異常な行為ですよね)
というわけで、「なんだかイヤだなぁ〜」と思いがちな蘇生テクニックがなくなったお陰で、誰もが自然と胸骨圧迫を開始できる、これがG2010の最大のポイントかと思います。
バイスタンダーCPRで問題になるのは、手技のうまいへたとかではなく、手を出すか出さないかが最大の問題です。
このガイドライン2010の作戦が功を奏して、数年後の救命率に大きく貢献することを祈っています。
新しい心肺蘇生ガイドライン2010の流れで行う初めての講習会です。
やってみて思いましたが、いいですね! ガイドライン2010。
教えやすいし、受講者さんたちも、途中引っかかることがサクサクと練習がすすんでいきます。
AHAのガイドライン2010ハイライトの冊子にも書かれていましたが、この方法が当たり前に普及すると、バイスタンダーのCPR着手率は上がるだろうなと実感しました。
ガイドライン2010の市民向けCPRのいいところは、
気持ち的に「イヤだなぁ」と思う手技が後回し、もしくはしなくても良い
というところにあると思います。
大丈夫ですか? と服の上から肩を叩いた後、次に傷病者に触れるのは胸骨圧迫。おそらくこれも服の上からになるはず。
そう、心肺蘇生法で一番大切な胸骨圧迫(心臓マッサージ)を始めるまでに、傷病者の素肌に触れなくても良いのです。
これは大きいと思います。
医療者であれば何でもないことかも知れませんが、赤の他人の体の触れるという行為は、ふつうの人にとっては、それだけで勇気が要ります。
服の上からならまだしも、他人の素肌に直接触れるということは日常生活にはありませんから。
これまでは呼吸確認をするためには、気道確保(頭部後屈あご先挙上)が必要とされていましたから、胸骨圧迫をはじめる前にはどうしても倒れた人の頭やあごに触れる必要がありました。
あまり問題にされたことはありませんでしたが、実はこれだけでも大きな「障壁」だったと思うんです。
AHAガイドライン2010では、呼吸確認に気道確保は不要になりました。また「見て聞いて感じて」がなくなりましたから、必要以上に傷病者の顔に自分の顔を近づける必要もなくなりました。(見ず知らずの他人の顔面に自分の顔を近づけるという動作も、日常的にはありえない異常な行為ですよね)
というわけで、「なんだかイヤだなぁ〜」と思いがちな蘇生テクニックがなくなったお陰で、誰もが自然と胸骨圧迫を開始できる、これがG2010の最大のポイントかと思います。
バイスタンダーCPRで問題になるのは、手技のうまいへたとかではなく、手を出すか出さないかが最大の問題です。
このガイドライン2010の作戦が功を奏して、数年後の救命率に大きく貢献することを祈っています。
2010年11月13日
AHAガイドライン2010 インストラクター・カンファレンス,シカゴ速報
2010年11月12日、アメリカシカゴで開催されたAHAガイドライン2010 インストラクター・カンファレンスに参加してきてきました。
この国際的なイベントは、ガイドライン2010のインターネット上での発表後、初めての公式なインストラクターアップデートになります。
そこで発表された今後のAHA ECCコースの展開について、概略のみですが、ご紹介します。
ちなみに今回は新しいDVD教材の視聴などはなく、補足教材を用いてG2005教材を使ってG2010対応コースを行うための案内が中心でした。
・新しい教材ができるまでは、G2005教材をベースにレッスンマップに変更を加え、G2010対応としていく。
・2011年3月1日以降はG2010対応コースを開かなくてはいけない
・G2010対応コースはアップデートを済ませたインストラクターが行う
・インストラクターアップデートはonlineで行う。オンライン教材は日本語版もできる予定
・新しいスキルチェックシートとCABシーケンスのデモンストレーションビデオはインストラクターネットワークで公開される
・新しい筆記試験問題はトレーニングセンターを通して提供される
・G2005教材を使っていいのは、G2010日本語教材が出てから60日(参加者からの質問に対しての回答)
・新しい筆記試験やスキルチェックシートのダウロードに関しては、質問に対してsoonと答えていた。目安としては12月の第一週
いろいろ書きたいことはありますが、全体的な印象としては、具体的なコース内容についてはまだ十分に整理されていない感じです。
今回、最大の変更点かもしれない C-A-B の流れにしても、どうやって呼吸確認をするのか、インストラクターは受講者の動作をどう評価したらいいのかは、参加者からの質問への回答を見ても、十分なものとは言えませんでした。
ハートセイバーコースとヘルスケアプロバイダーコースの新しいスキルチェックシートが提示されましたが、そこでは、反応の確認と呼吸の確認が別のチェックボックスになっています。
あれ? 同時に確認するんだったよね?
ん? 5秒以上、10秒以内?
このあたりの流れを説明するために、インストラクターネットワークを通して、C-A-B Sequence Video というのが配信される予定になっています。
現コースビデオの傷病者評価の部分では、それを流すことでG2010対応とすることになるのですが、そのビデオの出来が今は試作品のためか、ちょっとイマイチです。
反応の確認の時に、マネキンの胸腹部がスクロールするようにアップで写されるので、このように胸の動きを注視して呼吸がないか、死戦期呼吸かどうかを確認しろ、ということなのでしょうけど、思いの外サラッとしか説明されていません。
このとき、マネキンの衣類ははだけられています。
麻酔科医師や手術室のナースならわかると思いますが、通常呼吸確認は服をはだけて直接胸を見ます。そうでないと分かり難いです。
さて、新しいBLSの手順の中では、どう扱うのでしょう?
胸骨圧迫の手順を遅らせないというガイドライン改定の最大のポイントからすると、反応確認の段階で、胸をはだけるなんてあり得ません。
かといって、今のような季節で服を着込んでいるときに服の上から胸の上下運動を視認するのはかなり困難。
ビデオのサラッとしたつくりや、あまり具体的ではないAHAの説明からすると、実は私たちが考える以上に呼吸確認は重要ではないと考えるのが妥当と思えます。
方法云々はこだわらず、ぱっと胸のあたりをみて、明らかに正常な呼吸をしていると自信を持って言えるとき以外は、深く考えずに胸骨圧迫開始、という感じなんでしょうね。
もともとHands only CPRを提唱して、呼吸確認なんてなしで胸骨圧迫を始めさせていることを考えれば、訓練を受けた人は可能ならちょっとは呼吸も気にしてみてね、という程度に軽く考えればいいのかもしれません。
以前もどこかで指摘した新しいシーケンスでの人工呼吸の開始のタイミング、それについては具体的な方向性は見えませんでした。
とりあえず胸骨圧迫を早く開始するのが今回のガイドライン2010の基本方針です。
30回の圧迫後に準備ができていれば人工呼吸を2回行うわけですが、一人法である限り、ここでは口対口人工呼吸以外の選択肢はありません。
応援が来て、バッグマスクやフェイスマスク(ポケットマスク)を準備してくれていればいいのですが、そうでなければ、胸骨圧迫を中断すべきではありませんので、ポケットマスクの組み立てを行えません。
この点、新しいコース展開ではどう教えるのか? 疑問です。
ちなみにアップデートで提示されたデモビデオでは、緊急通報をして、次に脈の確認をするときにはなぜかすでに口の上にポケットマスクが置かれており、これに関しては会場からもブーイングの声が(笑)
12月の第1週くらいまでには、正式な映像教材とスキルチェックシートなど、G2010への移行コースの資料が揃うはずなので、そこでもうちょっと具体的な指示があればいいのですが、そうでないと、インストラクターの間でも相当混乱が起きそうです。
以上、簡単ではありましたが、シカゴでのインストラクター・アップデートの速報でした。
この国際的なイベントは、ガイドライン2010のインターネット上での発表後、初めての公式なインストラクターアップデートになります。
そこで発表された今後のAHA ECCコースの展開について、概略のみですが、ご紹介します。
ちなみに今回は新しいDVD教材の視聴などはなく、補足教材を用いてG2005教材を使ってG2010対応コースを行うための案内が中心でした。
・新しい教材ができるまでは、G2005教材をベースにレッスンマップに変更を加え、G2010対応としていく。
・2011年3月1日以降はG2010対応コースを開かなくてはいけない
・G2010対応コースはアップデートを済ませたインストラクターが行う
・インストラクターアップデートはonlineで行う。オンライン教材は日本語版もできる予定
・新しいスキルチェックシートとCABシーケンスのデモンストレーションビデオはインストラクターネットワークで公開される
・新しい筆記試験問題はトレーニングセンターを通して提供される
・G2005教材を使っていいのは、G2010日本語教材が出てから60日(参加者からの質問に対しての回答)
・新しい筆記試験やスキルチェックシートのダウロードに関しては、質問に対してsoonと答えていた。目安としては12月の第一週
いろいろ書きたいことはありますが、全体的な印象としては、具体的なコース内容についてはまだ十分に整理されていない感じです。
今回、最大の変更点かもしれない C-A-B の流れにしても、どうやって呼吸確認をするのか、インストラクターは受講者の動作をどう評価したらいいのかは、参加者からの質問への回答を見ても、十分なものとは言えませんでした。
ハートセイバーコースとヘルスケアプロバイダーコースの新しいスキルチェックシートが提示されましたが、そこでは、反応の確認と呼吸の確認が別のチェックボックスになっています。
あれ? 同時に確認するんだったよね?
ん? 5秒以上、10秒以内?
このあたりの流れを説明するために、インストラクターネットワークを通して、C-A-B Sequence Video というのが配信される予定になっています。
現コースビデオの傷病者評価の部分では、それを流すことでG2010対応とすることになるのですが、そのビデオの出来が今は試作品のためか、ちょっとイマイチです。
反応の確認の時に、マネキンの胸腹部がスクロールするようにアップで写されるので、このように胸の動きを注視して呼吸がないか、死戦期呼吸かどうかを確認しろ、ということなのでしょうけど、思いの外サラッとしか説明されていません。
このとき、マネキンの衣類ははだけられています。
麻酔科医師や手術室のナースならわかると思いますが、通常呼吸確認は服をはだけて直接胸を見ます。そうでないと分かり難いです。
さて、新しいBLSの手順の中では、どう扱うのでしょう?
胸骨圧迫の手順を遅らせないというガイドライン改定の最大のポイントからすると、反応確認の段階で、胸をはだけるなんてあり得ません。
かといって、今のような季節で服を着込んでいるときに服の上から胸の上下運動を視認するのはかなり困難。
ビデオのサラッとしたつくりや、あまり具体的ではないAHAの説明からすると、実は私たちが考える以上に呼吸確認は重要ではないと考えるのが妥当と思えます。
方法云々はこだわらず、ぱっと胸のあたりをみて、明らかに正常な呼吸をしていると自信を持って言えるとき以外は、深く考えずに胸骨圧迫開始、という感じなんでしょうね。
もともとHands only CPRを提唱して、呼吸確認なんてなしで胸骨圧迫を始めさせていることを考えれば、訓練を受けた人は可能ならちょっとは呼吸も気にしてみてね、という程度に軽く考えればいいのかもしれません。
以前もどこかで指摘した新しいシーケンスでの人工呼吸の開始のタイミング、それについては具体的な方向性は見えませんでした。
とりあえず胸骨圧迫を早く開始するのが今回のガイドライン2010の基本方針です。
30回の圧迫後に準備ができていれば人工呼吸を2回行うわけですが、一人法である限り、ここでは口対口人工呼吸以外の選択肢はありません。
応援が来て、バッグマスクやフェイスマスク(ポケットマスク)を準備してくれていればいいのですが、そうでなければ、胸骨圧迫を中断すべきではありませんので、ポケットマスクの組み立てを行えません。
この点、新しいコース展開ではどう教えるのか? 疑問です。
ちなみにアップデートで提示されたデモビデオでは、緊急通報をして、次に脈の確認をするときにはなぜかすでに口の上にポケットマスクが置かれており、これに関しては会場からもブーイングの声が(笑)
12月の第1週くらいまでには、正式な映像教材とスキルチェックシートなど、G2010への移行コースの資料が揃うはずなので、そこでもうちょっと具体的な指示があればいいのですが、そうでないと、インストラクターの間でも相当混乱が起きそうです。
以上、簡単ではありましたが、シカゴでのインストラクター・アップデートの速報でした。
2010年11月05日
AHAガイドライン2010で英語を学ぼう!
American Heart Associationは言わずと知れたアメリカの団体です。
そのAHAのインストラクターになるということは、米国団体のスタッフになるということ。
いうなれば外資系企業に就職したようなものです。
外資系企業では、内部通達文書は基本的に英語ですし、下手すると会議の公用語も英語!?
今でこそ、インストラクターマニュアルまで日本語化されていますが、それでもAHAのインストラクターである以上、英語は避けては通れません。
新しいガイドライン2010対応の受講者向けテキストやインストラクターマニュアルも当然最初は英語です。
おそらく今回は比較的早い時期に日本語版がでるかと思いますが、だからといって英語から目を背けてばかりもいられません。
また2015年になったときには同じことが繰り返されるのですから。
そこで、今日の話題は「AHAガイドライン2010で英語を学ぼう!」です。
AHAインストラクターなら、きっとガイドライン2010で何が変ったのか興味津々なはずですよね?
幸い、今回は AHAガイドライン2010ハイライト(PDF) という日本語資料が同時発表されましたが、それはあくまでもダイジェスト。その背後にはもっともっと興味深い事実が眠っています。
この機会に、英語嫌いな人も毛嫌いしないでAHAガイドライン2010の原著にトライしてはいかがでしょう?
幸い、AHA版ガイドライン2010 はセクション毎にPDFファイルが分れています。
(ERC版みたいに何百ページも一気にダウンロードしてしまうと、どこから手を付けていいのかということになってしまいます、、、)
まずはBLSのセクションだけでも読んでみては? 読むというより眺めるだけでも是非!
今回は 日本版ガイドラインのドラフト もPDFで無料公開されていますから、まずそっちを日本語で読んで、G2010-BLSの概要を頭に入れてから、トライすれば、単語を拾うだけでだいたいの内容は判別できると思います。
学術論文というと難しそうですが、実は反対。論文の方が文章構造はすっきりしていますし、英語にありがちな比喩表現などもありませんから、思いの外、わかりやすい、と感じるはず。
それに蘇生業界に携わっている方なら、専門用語もそれなりにわかりますし、おそらくハリーポッターを原著で読むよりは断然簡単です。
「なんだ、思ったよりわかるじゃん!」と思えたらしめたもの。
必要なら辞書を引きつつでもAHAガイドライン2010に馴染んでおけば、次回2015年の頃にはサラッと概要をつかめるくらいにはなっているはず。
せっかく、AHAというアメリカ団体に所属していて、英語を使う必要性に迫られているのですから、これをチャンスととらえて、ガイドラインへの知識欲に乗じて英語学習にも気持ちを振り分けてみてはいかがでしょう?
単語一つ一つきちんと読もうとすると、受験勉強と同じでイヤになっちゃいます。
知っている単語を拾って意味を推察するだけでOK。何となくわかるはず。
「意味がわからないこの単語ひとつがわかれば意味が通じるのにな」なんて思ったら初めて辞書を引けばいいんです。パズルを解くみたいにつながっていきます。一語一句調べる必要はありません。
読もうとするのではなく、「内容を拾う」つもりで気軽な気持ちで。
参考まで、BLSインストラクターなら是非目を通しておきたいのは下記の章です。
Part 4: CPR Overview:
http://circ.ahajournals.org/cgi/reprint/122/18_suppl_3/S676
Part 5: Adult Basic Life Support:
http://circ.ahajournals.org/cgi/reprint/122/18_suppl_3/S685
Part 7: CPR Techniques and Devices:
http://circ.ahajournals.org/cgi/reprint/122/18_suppl_3/S720
Part 13: Pediatric Basic Life Support:
http://circ.ahajournals.org/cgi/reprint/122/18_suppl_3/S862
Part 16: Education, Implementation, and Teams:
http://circ.ahajournals.org/cgi/reprint/122/18_suppl_3/S920
私もまだ拾い読みの域を抜けれていません。
もっと本腰を入れて読み込まなくては!
そのAHAのインストラクターになるということは、米国団体のスタッフになるということ。
いうなれば外資系企業に就職したようなものです。
外資系企業では、内部通達文書は基本的に英語ですし、下手すると会議の公用語も英語!?
今でこそ、インストラクターマニュアルまで日本語化されていますが、それでもAHAのインストラクターである以上、英語は避けては通れません。
新しいガイドライン2010対応の受講者向けテキストやインストラクターマニュアルも当然最初は英語です。
おそらく今回は比較的早い時期に日本語版がでるかと思いますが、だからといって英語から目を背けてばかりもいられません。
また2015年になったときには同じことが繰り返されるのですから。
そこで、今日の話題は「AHAガイドライン2010で英語を学ぼう!」です。
AHAインストラクターなら、きっとガイドライン2010で何が変ったのか興味津々なはずですよね?
幸い、今回は AHAガイドライン2010ハイライト(PDF) という日本語資料が同時発表されましたが、それはあくまでもダイジェスト。その背後にはもっともっと興味深い事実が眠っています。
この機会に、英語嫌いな人も毛嫌いしないでAHAガイドライン2010の原著にトライしてはいかがでしょう?
幸い、AHA版ガイドライン2010 はセクション毎にPDFファイルが分れています。
(ERC版みたいに何百ページも一気にダウンロードしてしまうと、どこから手を付けていいのかということになってしまいます、、、)
まずはBLSのセクションだけでも読んでみては? 読むというより眺めるだけでも是非!
今回は 日本版ガイドラインのドラフト もPDFで無料公開されていますから、まずそっちを日本語で読んで、G2010-BLSの概要を頭に入れてから、トライすれば、単語を拾うだけでだいたいの内容は判別できると思います。
学術論文というと難しそうですが、実は反対。論文の方が文章構造はすっきりしていますし、英語にありがちな比喩表現などもありませんから、思いの外、わかりやすい、と感じるはず。
それに蘇生業界に携わっている方なら、専門用語もそれなりにわかりますし、おそらくハリーポッターを原著で読むよりは断然簡単です。
「なんだ、思ったよりわかるじゃん!」と思えたらしめたもの。
必要なら辞書を引きつつでもAHAガイドライン2010に馴染んでおけば、次回2015年の頃にはサラッと概要をつかめるくらいにはなっているはず。
せっかく、AHAというアメリカ団体に所属していて、英語を使う必要性に迫られているのですから、これをチャンスととらえて、ガイドラインへの知識欲に乗じて英語学習にも気持ちを振り分けてみてはいかがでしょう?
単語一つ一つきちんと読もうとすると、受験勉強と同じでイヤになっちゃいます。
知っている単語を拾って意味を推察するだけでOK。何となくわかるはず。
「意味がわからないこの単語ひとつがわかれば意味が通じるのにな」なんて思ったら初めて辞書を引けばいいんです。パズルを解くみたいにつながっていきます。一語一句調べる必要はありません。
読もうとするのではなく、「内容を拾う」つもりで気軽な気持ちで。
参考まで、BLSインストラクターなら是非目を通しておきたいのは下記の章です。
Part 4: CPR Overview:
http://circ.ahajournals.org/cgi/reprint/122/18_suppl_3/S676
Part 5: Adult Basic Life Support:
http://circ.ahajournals.org/cgi/reprint/122/18_suppl_3/S685
Part 7: CPR Techniques and Devices:
http://circ.ahajournals.org/cgi/reprint/122/18_suppl_3/S720
Part 13: Pediatric Basic Life Support:
http://circ.ahajournals.org/cgi/reprint/122/18_suppl_3/S862
Part 16: Education, Implementation, and Teams:
http://circ.ahajournals.org/cgi/reprint/122/18_suppl_3/S920
私もまだ拾い読みの域を抜けれていません。
もっと本腰を入れて読み込まなくては!
2010年10月20日
驚き! 感染防護具なしの人工呼吸を推奨〜日本版ガイドライン2010
2010年10月19日に公開された日本オリジナルの蘇生ガイドライン2010の草稿。
オープンと同時にダウンロードしてむさぼるように目を通したのですが、そこには目を疑うような記載があって、先を進む目がどうしても留まってしまいました。
感染防護具
院外における感染の危険性はきわめて低いので、感染防護具なしでも人工呼吸を実施してよい。可能であれば、救助者は感染防護具の使用を考慮する。ただし院内などで医療従事者が業務としてCPRを行う場合、および患者が危険な感染症(ヒト免疫不全ウィルス:HIV、結核菌、B型肝炎、重症急性呼吸器症候群:SARS)であることがわかっている場合は、安全予防策を講じるべきである。
(1章 一次救命処置(BLS) p.6より)
普通に読んだら、まっとうな医療従事者が書いた文章には見えません。
わざわざ書いている位だからそれなりにエビデンスはあるはずです。そう信じています。でも感覚的に受け入れられない。(今公開されているのはドラフト版で出典等は省略されています)
院外で倒れる傷病者は病気を持っていないだろうから、直接口を付けて人工呼吸をしてよい?
感染症を持っている人だけ感染防護をすればいい?
ユニバーサル・プリコーションは何処へ?
医療者の基本概念を覆すこの勧告。
もしこれがそのまま正式なガイドラインとして活字になってしまったら、私はBLS講習で受講者に説明できる自信はありません。
理由として書かれているのは、「感染防護具を使用して人工呼吸中に傷病者との接触を防ぐことが、安全で有効で実行可能であることを示した臨床研究はない」という点と、CPRによる微生物の感染報告はあるが発症報告はないというもの。(p.18)
でもそれを言ったら、「未滅菌のガーゼを手術に使って感染症を発症したという研究報告はないから、手術に使うガーゼは未滅菌で構わない」と言ってるのと同じじゃない?
似たような論調は別の章にもあります。
CPRや電気ショックを行う際に救助者が手袋を付けるのは妥当であるが、手袋がないという理由で救助を遅らせたり差し控えたりしてはならない。しかし講習で救助者の安全性を強調することは理にかなっている。
(第七章 普及と教育のための方策 p.13)
これもどうも腑に落ちないんだよなぁ。
以上、日本版ガイドライン2010からでした。
CoSTRそのものや他のガイドラインでどう書かれているかはまだ確認していません。
少なくともAHA版にはこんな記載はないものと信じたい。
だって、私、AHA-BLSインストラクターとしてOSHA基準のHeartsaver Bloodborne Pathogens(血液媒介病原体)コースでユニバーサル・プリコーションの大切さを教えているんですから。
でも蘇生ガイドラインはこれまでも医学界にいくつもの画期的な知見を残してきました。
とかく曖昧で経験則で動いている医学の世界にエビデンスベースドの力を見せつけたのが蘇生ガイドライン。
そんな過去の実績を考えると、もしかして、これはスダンダード・プリコーションが虚構であることを暴き、感染業界を揺るがす大事件に発展したり!?
オープンと同時にダウンロードしてむさぼるように目を通したのですが、そこには目を疑うような記載があって、先を進む目がどうしても留まってしまいました。
感染防護具
院外における感染の危険性はきわめて低いので、感染防護具なしでも人工呼吸を実施してよい。可能であれば、救助者は感染防護具の使用を考慮する。ただし院内などで医療従事者が業務としてCPRを行う場合、および患者が危険な感染症(ヒト免疫不全ウィルス:HIV、結核菌、B型肝炎、重症急性呼吸器症候群:SARS)であることがわかっている場合は、安全予防策を講じるべきである。
(1章 一次救命処置(BLS) p.6より)
普通に読んだら、まっとうな医療従事者が書いた文章には見えません。
わざわざ書いている位だからそれなりにエビデンスはあるはずです。そう信じています。でも感覚的に受け入れられない。(今公開されているのはドラフト版で出典等は省略されています)
院外で倒れる傷病者は病気を持っていないだろうから、直接口を付けて人工呼吸をしてよい?
感染症を持っている人だけ感染防護をすればいい?
ユニバーサル・プリコーションは何処へ?
医療者の基本概念を覆すこの勧告。
もしこれがそのまま正式なガイドラインとして活字になってしまったら、私はBLS講習で受講者に説明できる自信はありません。
理由として書かれているのは、「感染防護具を使用して人工呼吸中に傷病者との接触を防ぐことが、安全で有効で実行可能であることを示した臨床研究はない」という点と、CPRによる微生物の感染報告はあるが発症報告はないというもの。(p.18)
でもそれを言ったら、「未滅菌のガーゼを手術に使って感染症を発症したという研究報告はないから、手術に使うガーゼは未滅菌で構わない」と言ってるのと同じじゃない?
似たような論調は別の章にもあります。
CPRや電気ショックを行う際に救助者が手袋を付けるのは妥当であるが、手袋がないという理由で救助を遅らせたり差し控えたりしてはならない。しかし講習で救助者の安全性を強調することは理にかなっている。
(第七章 普及と教育のための方策 p.13)
これもどうも腑に落ちないんだよなぁ。
以上、日本版ガイドライン2010からでした。
CoSTRそのものや他のガイドラインでどう書かれているかはまだ確認していません。
少なくともAHA版にはこんな記載はないものと信じたい。
だって、私、AHA-BLSインストラクターとしてOSHA基準のHeartsaver Bloodborne Pathogens(血液媒介病原体)コースでユニバーサル・プリコーションの大切さを教えているんですから。
でも蘇生ガイドラインはこれまでも医学界にいくつもの画期的な知見を残してきました。
とかく曖昧で経験則で動いている医学の世界にエビデンスベースドの力を見せつけたのが蘇生ガイドライン。
そんな過去の実績を考えると、もしかして、これはスダンダード・プリコーションが虚構であることを暴き、感染業界を揺るがす大事件に発展したり!?
2010年10月19日
ガイドライン2010が出ましたね
ついに待望の蘇生ガイドライン2010が出ましたね。
予告通り日本蘇生協議会JRC版ガイドライン2010もほぼ同時発表で快挙です。
2005年は英語だけだったので、地味にひっそりという感じでしたが、今回はAHAも日本語でのサマリーを即日公開したりと大いに盛り上がりました。
私も眼科のオペを担当しながらも、公開時間には別の人に変ってもらって病院の図書室に直行。
ホヤホヤのデータを手に入れ、世界のお祭り騒ぎに密かに同調していました。
2005と2010でずいぶん違うなと思ったのはTwitterの存在。
リアルタイムに盛り上がってましたねぇ。
さて、今更ながら、情報のありかの再確認です。
まだガイドライン2010に触れていない方は、まずはこちらをダウンロードしましょう。
「AHAガイドライン2010のハイライト」
http://eccjapanheart.org/pdf/ECC_Guidelines_Highlights_2010JP.pdf
なんと日本語でAHAガイドライン変更の要点がまとまった立派なリーフレットが
PDFで公開されています。
それと日本版ガイドライン2010の草稿。
http://jrc.umin.ac.jp/
ABCからCABに変ったとか、「見て聞いて感じて」がなくなったとか、まあ、盛り上がるに足りるだけのインパクトはありました。
今はまだこなれていませんが、この先、どんどんガイドラインの解説ページができたり、雑誌で取り上げられたりするでしょう。
そのあたりのことは放っておいても自然に情報が入ってくると思うので、ガイドライン2010に関して私なりの視点でちょっと書いてみます。
まずは、この先の問題提起として、日本版ガイドラインとAHA版ガイドラインの共存関係のややこしさ。
前回の日本版ガイドラインは、日本はILCOR会議に参加していなかったので、情報が遅れてAHAガイドライン2005とERCガイドライン2005からいいとこ取りして作られました。
しかし今回は日本蘇生協議会もアジア蘇生協議会のメンバーとしてILCORに正式参加していましたので、ガイドラインの原本とも言うべき国際コンセンサス CoSTR 2010 から直接ガイドライン策定に入ることができました。
つまりAHAやERCと平行して完全独立でガイドラインを作りました。
ですから、コンセンサスがない部分ではAHAとの整合性などは配慮されていません。
翻って日本の蘇生教育の原本はなにかと考えてみると、消防や日赤、あと一応日本救急医学会は日本版ガイドライン準拠。
それに対して日本麻酔科学会や日本循環器学会、日本口腔外科学会などをはじめ、多くの医療従事者ならびに病院はAHAガイドライン準拠で臨床で動いています。
たいした問題ではないのかも知れませんが、市民や救急隊は日本版蘇生ガイドラインで動いていて、病院内に入るとそこはAHAガイドラインの世界。
なんだかおかしいなぁと思うのです。
救命の連鎖とか言いながらも、わっかは途中で別の種類に変ってしまう。
アメリカなんかは、ひとつのガイドラインのもと、市民から医療従事者まで一貫して連鎖をつなげていて、実に明快です。
特にAHAの家族向けのファミリー&フレンズCPRから対応義務のある市民向けハートセイバーAED、そしてヘルスケアプロバイダーコース、さらには枝分かれしてACLSとPALSと多様性があるように見えて、1本芯が通っている。
本来はそうあるべきなんでしょうけど、日本は本格的なダブルスタンダードの世界に突入してしまいます。
日本がここまで成長したのだから、もう日本にAHAは要らないというのが本来の形なのかもしれません。しかし残念ながらガイドラインの仕上がりを比べてしまうと、まだちょっとダメだなぁという感じ。
ガイドラインはともかく、それを普及させる教育システムがまったくダメです。強いて言えばICLS。でも教材設計やゴール設定がない。また小児領域や市民コースとの連携もない。
やっぱりしばらくは医療者向け教育はAHAに頼らざるを得ない状況が続きそうです。
もう一点、感染防護具の扱いについて、びっくりな記載が日本版ガイドラインに載っていたんですが、それは改めて別項で書きます。
予告通り日本蘇生協議会JRC版ガイドライン2010もほぼ同時発表で快挙です。
2005年は英語だけだったので、地味にひっそりという感じでしたが、今回はAHAも日本語でのサマリーを即日公開したりと大いに盛り上がりました。
私も眼科のオペを担当しながらも、公開時間には別の人に変ってもらって病院の図書室に直行。
ホヤホヤのデータを手に入れ、世界のお祭り騒ぎに密かに同調していました。
2005と2010でずいぶん違うなと思ったのはTwitterの存在。
リアルタイムに盛り上がってましたねぇ。
さて、今更ながら、情報のありかの再確認です。
まだガイドライン2010に触れていない方は、まずはこちらをダウンロードしましょう。
「AHAガイドライン2010のハイライト」
http://eccjapanheart.org/pdf/ECC_Guidelines_Highlights_2010JP.pdf
なんと日本語でAHAガイドライン変更の要点がまとまった立派なリーフレットが
PDFで公開されています。
それと日本版ガイドライン2010の草稿。
http://jrc.umin.ac.jp/
ABCからCABに変ったとか、「見て聞いて感じて」がなくなったとか、まあ、盛り上がるに足りるだけのインパクトはありました。
今はまだこなれていませんが、この先、どんどんガイドラインの解説ページができたり、雑誌で取り上げられたりするでしょう。
そのあたりのことは放っておいても自然に情報が入ってくると思うので、ガイドライン2010に関して私なりの視点でちょっと書いてみます。
まずは、この先の問題提起として、日本版ガイドラインとAHA版ガイドラインの共存関係のややこしさ。
前回の日本版ガイドラインは、日本はILCOR会議に参加していなかったので、情報が遅れてAHAガイドライン2005とERCガイドライン2005からいいとこ取りして作られました。
しかし今回は日本蘇生協議会もアジア蘇生協議会のメンバーとしてILCORに正式参加していましたので、ガイドラインの原本とも言うべき国際コンセンサス CoSTR 2010 から直接ガイドライン策定に入ることができました。
つまりAHAやERCと平行して完全独立でガイドラインを作りました。
ですから、コンセンサスがない部分ではAHAとの整合性などは配慮されていません。
翻って日本の蘇生教育の原本はなにかと考えてみると、消防や日赤、あと一応日本救急医学会は日本版ガイドライン準拠。
それに対して日本麻酔科学会や日本循環器学会、日本口腔外科学会などをはじめ、多くの医療従事者ならびに病院はAHAガイドライン準拠で臨床で動いています。
たいした問題ではないのかも知れませんが、市民や救急隊は日本版蘇生ガイドラインで動いていて、病院内に入るとそこはAHAガイドラインの世界。
なんだかおかしいなぁと思うのです。
救命の連鎖とか言いながらも、わっかは途中で別の種類に変ってしまう。
アメリカなんかは、ひとつのガイドラインのもと、市民から医療従事者まで一貫して連鎖をつなげていて、実に明快です。
特にAHAの家族向けのファミリー&フレンズCPRから対応義務のある市民向けハートセイバーAED、そしてヘルスケアプロバイダーコース、さらには枝分かれしてACLSとPALSと多様性があるように見えて、1本芯が通っている。
本来はそうあるべきなんでしょうけど、日本は本格的なダブルスタンダードの世界に突入してしまいます。
日本がここまで成長したのだから、もう日本にAHAは要らないというのが本来の形なのかもしれません。しかし残念ながらガイドラインの仕上がりを比べてしまうと、まだちょっとダメだなぁという感じ。
ガイドラインはともかく、それを普及させる教育システムがまったくダメです。強いて言えばICLS。でも教材設計やゴール設定がない。また小児領域や市民コースとの連携もない。
やっぱりしばらくは医療者向け教育はAHAに頼らざるを得ない状況が続きそうです。
もう一点、感染防護具の扱いについて、びっくりな記載が日本版ガイドラインに載っていたんですが、それは改めて別項で書きます。
2010年09月08日
BLSヘルスケアプロバイダーコースの限界
先日発行された週間医学界新聞の特集記事、おもしろかったです。
医療シミュレーションが変える!! 日本の医学教育
シミュレーション教育最前線
AHAのBLSとACLSの輸入で黎明期に突入した日本の本格的な医学シミュレーション。
ICLSができたり、ISLSができたりと、日本の中でも進化しています。
そんないまや医学教育では欠かせなくなってきたシミュレーション教育の今についてあれこれと。
最近の潮流のキーワードは、「ノンテクニカルスキル」。
何それ? という方はぜひ次の記事を読んでみてください。
医学教育に人材育成のサイエンスを導入し
“よい医師”を養成する 池上敬一氏(獨協医科大学越谷病院教授・救急医療科)に聞く
「現在,多くの施設では“テクニカル・スキル”,つまり手技の習得を中心にシミュレーションが行われていると思います。しかし,実は欧米ではこれはパーシャル・タスク・トレーニングと呼ばれ,シミュレーションとは区別されています。シミュレーションはテクニカル・スキルだけでなく“ノンテクニカル・スキル”,すなわちチームワークなどの「暗黙知」を学習する手段なので,テクニカル・スキルを学ぶだけでは,野球に例えればキャッチボールはしても練習試合をしていない状況と同じです。」(上記サイトより引用)
例えば、AHA-BLSヘルスケアプロバイダーコースなんかは、ほとんどテクニカルスキル教育ですよね。
体育会系のノリで、考えるより体で覚えろ、というスタンス。
おそらくCPRの技術はかなり身につくでしょう。
でも、それが実践で使えるかどうかは別問題。
講習会場で、理想的な状態で仰向けに横たわったマネキン相手の蘇生ならできるでしょう。
でも、病院なら褥瘡予防のふわふわベッドに寝ていたら胸骨圧迫はうまくできないでしょうし、二人法CPRを使用にもベッドの頭側は壁についていますし、ベッド柵も邪魔。
病院の廊下で倒れるような人は、たいていはうつぶせで倒れますよね。
理想的なCPRの状態に持っていく以前の大事なことがすっぽ抜けています。
テクニカルスキルを身につけた後、それを実践で使えるかどうかを決めるのは、シミュレーション・トレーニングであり、ノンテクニカルスキル・トレーニング。
日頃、実戦経験が豊富な人であれば、自然と応用力が身についていると思いますが、いざというときに備えるため、という人にとっては意図的なノンテクニカル・スキルトレーニングがないと、AHA-BLSで身につけた技術を活用することは難しいんじゃないかなという気がします。
特に、院外でのバイスタンダーとしての応用はかなり絶望的じゃないでしょうか?
そもそもヘルスケアプロバイダーコースは、院内急変対応コースですから、バイスタンダーCPRはほとんど想定されていません。
プレホスピタルでは絶対に欠かせない「周囲の安全確認」については一切触れられていないのが大問題ですし、それに、路上だったり、公園だったり、その場に応じてどのように緊急通報をするか、など時々の状況に合わせて考えるという思考パターンの訓練も、基本的にはありません。
そこがしっかりしているのは、同じAHA-BLS講習の中でもハートセイバーAEDや、ファミリー&フレンズCPR。
ご存じない方もいるかも知れませんが、これらAHAの市民向けコースでは、DVDの中で急変現場の様子が動画で提示され、「この場面であなたはどう対応しますか?」ということが問われます。
そんな想定練習が、HS−AEDだと、全部でいくつでしょう? 12コくらいは出てきます。そうやって緊急対応の基礎を身につける同時に、場面に合せてどう行動するか、という思考パターンをのトレーニングをするわけです。
医療者向けBLSコースも、もしかしたらホントはアドバンスドBLSコースとして、シミュレーションを中心とした追加オプションが必要なのでは? と感じています。
次回、2010ガイドラインの教材では、このあたりのノンテクニカルスキル・トレーニングがどこまで取り入れられるか、興味津々です。
医療シミュレーションが変える!! 日本の医学教育
シミュレーション教育最前線
AHAのBLSとACLSの輸入で黎明期に突入した日本の本格的な医学シミュレーション。
ICLSができたり、ISLSができたりと、日本の中でも進化しています。
そんないまや医学教育では欠かせなくなってきたシミュレーション教育の今についてあれこれと。
最近の潮流のキーワードは、「ノンテクニカルスキル」。
何それ? という方はぜひ次の記事を読んでみてください。
医学教育に人材育成のサイエンスを導入し
“よい医師”を養成する 池上敬一氏(獨協医科大学越谷病院教授・救急医療科)に聞く
「現在,多くの施設では“テクニカル・スキル”,つまり手技の習得を中心にシミュレーションが行われていると思います。しかし,実は欧米ではこれはパーシャル・タスク・トレーニングと呼ばれ,シミュレーションとは区別されています。シミュレーションはテクニカル・スキルだけでなく“ノンテクニカル・スキル”,すなわちチームワークなどの「暗黙知」を学習する手段なので,テクニカル・スキルを学ぶだけでは,野球に例えればキャッチボールはしても練習試合をしていない状況と同じです。」(上記サイトより引用)
例えば、AHA-BLSヘルスケアプロバイダーコースなんかは、ほとんどテクニカルスキル教育ですよね。
体育会系のノリで、考えるより体で覚えろ、というスタンス。
おそらくCPRの技術はかなり身につくでしょう。
でも、それが実践で使えるかどうかは別問題。
講習会場で、理想的な状態で仰向けに横たわったマネキン相手の蘇生ならできるでしょう。
でも、病院なら褥瘡予防のふわふわベッドに寝ていたら胸骨圧迫はうまくできないでしょうし、二人法CPRを使用にもベッドの頭側は壁についていますし、ベッド柵も邪魔。
病院の廊下で倒れるような人は、たいていはうつぶせで倒れますよね。
理想的なCPRの状態に持っていく以前の大事なことがすっぽ抜けています。
テクニカルスキルを身につけた後、それを実践で使えるかどうかを決めるのは、シミュレーション・トレーニングであり、ノンテクニカルスキル・トレーニング。
日頃、実戦経験が豊富な人であれば、自然と応用力が身についていると思いますが、いざというときに備えるため、という人にとっては意図的なノンテクニカル・スキルトレーニングがないと、AHA-BLSで身につけた技術を活用することは難しいんじゃないかなという気がします。
特に、院外でのバイスタンダーとしての応用はかなり絶望的じゃないでしょうか?
そもそもヘルスケアプロバイダーコースは、院内急変対応コースですから、バイスタンダーCPRはほとんど想定されていません。
プレホスピタルでは絶対に欠かせない「周囲の安全確認」については一切触れられていないのが大問題ですし、それに、路上だったり、公園だったり、その場に応じてどのように緊急通報をするか、など時々の状況に合わせて考えるという思考パターンの訓練も、基本的にはありません。
そこがしっかりしているのは、同じAHA-BLS講習の中でもハートセイバーAEDや、ファミリー&フレンズCPR。
ご存じない方もいるかも知れませんが、これらAHAの市民向けコースでは、DVDの中で急変現場の様子が動画で提示され、「この場面であなたはどう対応しますか?」ということが問われます。
そんな想定練習が、HS−AEDだと、全部でいくつでしょう? 12コくらいは出てきます。そうやって緊急対応の基礎を身につける同時に、場面に合せてどう行動するか、という思考パターンをのトレーニングをするわけです。
医療者向けBLSコースも、もしかしたらホントはアドバンスドBLSコースとして、シミュレーションを中心とした追加オプションが必要なのでは? と感じています。
次回、2010ガイドラインの教材では、このあたりのノンテクニカルスキル・トレーニングがどこまで取り入れられるか、興味津々です。
2009年10月12日
心肺蘇生ガイドライン2010を待つにはまだ早い!
思えば2009年も残すところ2ヶ月弱。
巷でもそろそろAHAガイドライン2010の動向についてささやかれるようになってきました。
最近目立つのは、「来年ガイドラインが変わるからAHAコースを受けるのはもうちょっと後にしよう」という先送り派の意見。
もし、皆さんがそんな相談をされたらどう答えますか?
ガイドライン2010対応教材のリリース時期に関するAHAからのアナウンスはまだ出ていませんが、少なくともはっきりしているのは、ガイドライン2010の発表は、2010年10月予定であるという点。
前回は確か2005年11月28日だったと記憶しています。
で、ヘルスケアプロバイダーコースの新教材がリリースされたのが、2006年6月。
今回もこんな流れだとすると、少なくともガイドライン2010のHCPが開催されるのは、2011年半ば。
AMR-JAPANでは、英語版発表直後から、それほど時間をおかず日本でも新ガイドラインコースを開催すると思いますが、日本のITCが対応するのは、英語の教材のままであっても諸準備で時間がかかって、安定供給は2011年暮れ以降になることでしょう。
ACLSはもっと遅れますから、完全に2012年に入るのでは、というのが私の予想。また最初は関係者の受講で枠はいっぱいになっちゃいますし、初めての方が英語で勉強するのはかなり困難。ですから、一般受講生の方が普通に受けられるのは日本語版がでてからということで、下手したら2013年近くになるのかも。
そんなことから、冒頭の問いに対しては「ガイドライン2010を待ってたら、あと2−3年後だよ」というのが私の答え方です。(つまり、興味があったら今受けたほうがいいよの意)
少なくとも今現在、受講を踏みとどまる決定的な理由はなさそうです。
ただ今年になってからAHA ECCの公式日本語ウェブサイトができたり、 AHAとしても日本のマーケットを無視できない状況になってきてますから、 前回に比べてきっと幾分かは早くなるような気もします。
下手すると、英語版/日本語版同時リリース?
というのは極端かもしれませんが、2011年内にはどうにかなるような気もします。
このあたりはひそかに期待しながら楽しみにしたいところです。
以上、過去のケースからの類推でした。
アメリカ本国からの内部情報によると、2011年春にはアメリカ国内TCでの、HCPテストコースを開催するよ、という通達が来ているという話も聞いています。
前回にくらべてちょっとは早まるのかも知れませんが、大枠では前回通りなのかなぁ。
巷でもそろそろAHAガイドライン2010の動向についてささやかれるようになってきました。
最近目立つのは、「来年ガイドラインが変わるからAHAコースを受けるのはもうちょっと後にしよう」という先送り派の意見。
もし、皆さんがそんな相談をされたらどう答えますか?
ガイドライン2010対応教材のリリース時期に関するAHAからのアナウンスはまだ出ていませんが、少なくともはっきりしているのは、ガイドライン2010の発表は、2010年10月予定であるという点。
前回は確か2005年11月28日だったと記憶しています。
で、ヘルスケアプロバイダーコースの新教材がリリースされたのが、2006年6月。
今回もこんな流れだとすると、少なくともガイドライン2010のHCPが開催されるのは、2011年半ば。
AMR-JAPANでは、英語版発表直後から、それほど時間をおかず日本でも新ガイドラインコースを開催すると思いますが、日本のITCが対応するのは、英語の教材のままであっても諸準備で時間がかかって、安定供給は2011年暮れ以降になることでしょう。
ACLSはもっと遅れますから、完全に2012年に入るのでは、というのが私の予想。また最初は関係者の受講で枠はいっぱいになっちゃいますし、初めての方が英語で勉強するのはかなり困難。ですから、一般受講生の方が普通に受けられるのは日本語版がでてからということで、下手したら2013年近くになるのかも。
そんなことから、冒頭の問いに対しては「ガイドライン2010を待ってたら、あと2−3年後だよ」というのが私の答え方です。(つまり、興味があったら今受けたほうがいいよの意)
少なくとも今現在、受講を踏みとどまる決定的な理由はなさそうです。
ただ今年になってからAHA ECCの公式日本語ウェブサイトができたり、 AHAとしても日本のマーケットを無視できない状況になってきてますから、 前回に比べてきっと幾分かは早くなるような気もします。
下手すると、英語版/日本語版同時リリース?
というのは極端かもしれませんが、2011年内にはどうにかなるような気もします。
このあたりはひそかに期待しながら楽しみにしたいところです。
以上、過去のケースからの類推でした。
アメリカ本国からの内部情報によると、2011年春にはアメリカ国内TCでの、HCPテストコースを開催するよ、という通達が来ているという話も聞いています。
前回にくらべてちょっとは早まるのかも知れませんが、大枠では前回通りなのかなぁ。