2011年09月07日

消防救命講習にHands only CPR正式採用

消防がついに公式に胸骨圧迫だけのハンズ・オンリーCPRの講習を始めるようです。

先日、総務省から「応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱」(PDF)という公文書の改定版が発表されました。

これは各自治体の消防本部が開催している救命講習の根拠となる文書。

そこに従来の普通救命講習/上級救命講習以外に「救命入門コース」というのが新たに作られました。

その中身がいわゆるHands only CPR。

人工呼吸は、デモンストレーションを見せたり、体験をさせることはあるみたいですが、基本、胸骨圧迫のみ。

AED操作練習を含んで90分間。

それでも時間が長いかなという気はしますが、マネキン対受講者比が1:5以上なので、まあ、こんなもんかな。

胸骨圧迫のみのCPR法は、日本発の研究論文が根拠となった非常に栄誉あるもの。
それをアメリカが取り入れて Hands only CPR という商標登録(?)して大々的に宣伝。その後、国際コンセンサス2010でも取り上げられて、今回ようやく日本の公式講習にも採用。

なんか順番がヘンな気もしますが、まあ、よかったです。

救命入門コース参加証サンプル
↑「救命入門コース」参加証サンプル:消防長の押印はナシ。
普通救命講習受講を勧めるメッセージが入る


消防はいちおう日本でいちばんCPRプロバイダーを輩出している最大組織。

そこが気軽に受けられる講習を手がけてくれるのはうれしいことです。普通救命講習Iの3時間
でも長いと不評でしたから。

日赤さんの方針は、まだ耳に入ってきませんが、基礎講習あたりが Hands Only になるのかなとちょっと期待。


ちなみAHAでいうなら、Family & Friends CPRが、日赤/消防講習に相当する内容ですが、G2010版のDVDでは、成人はHands only CPR、小児は人工呼吸も含めた旧来型、となっています。


※今回の消防カリキュラム改訂では、小児蘇生法の新コース(普通救命講習III)誕生など、他にも話題が盛りだくさん。「BLS-AED.net横浜」救急蘇生法講習会ブログ の解説が詳しいです。





posted by めっつぇんばーむ at 01:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | AHAガイドライン2010
2011年08月08日

日本ではまだG2010正式版BLS/ACLS講習は開催できない

最近はAHA講習もあまりやる気しないので、ほったらかしな感じでしたが、メモ程度に残しておきます。

公私共によく聞かれるのが、ガイドライン2010正式版のコースにいつから切り替わるのか、という質問。

結論から書きます。

2011年8月8日現在、日本ではガイドライン2010正式版のBLS/ACLS講習は普及講習として開催されていないはずです。

英語のマニュアルとDVDは3月にリリースされていますから、英語コースとしては開催されることもありますが、今回は筆記試験の日本語訳が禁止されているため、現実問題、一般公募できるような状況ではありません。(ちなみに問題数は増えました。BLS 25問、ACLS 50問。けっこう難しいです。DVDでは言っておらず、テキストをきちんと読まないと解けない問題もあります)

コース自体は、BLSに関して言えば運動スキルトレーニングですから、英語テキストを読まなくても、英語DVDが何を言っているのか分からなくても、実技試験には合格します。

でも、英語で25問の筆記試験に回答するというのは医師ならまだしも、ナースにはちょっと厳しい、というのが現実と思います。


そこで新しい日本語版の正式なテキスト/DVDがリリースされるまでは、G2010 Interim Course(暫定コース)として、古いG2005の日本語版教材に変更を加えてコース開催するというのが正式なやり方です。


G2010の日本語教材のリリース時期が問題となるわけですが、これは遅れに遅れています。当初は英語版に遅れること30-60日ということでしたので、BLSヘルスケアプロバイダーコースは5月中までには出るはずだったのですが、その後、色々情報が錯綜して、今のところ9月以降と言われています。

その情報の後に、日本語版の訳語の統一ができていないという問題が発覚して、うまく調整がついたのかどうか、、、私は知りません。

ということで、個人的にはBLSは年内に出ればいいかな、程度に鷹揚に考えてます。




今回初めての特殊なケース、筆記試験の翻訳禁止令。

これは各国際トレーニングセンター(ITC)宛にAHA Internationalからメール通達されている点ですが、今回に限って筆記試験問題を自分たちで翻訳してはいけないという御触れがでました。正式な母国語版を公式リリースするからそれまで待て、ということのようです。

今まではどのITCも英語の試験問題を独自に翻訳して使っていました。

考えてみればG2005でもACLSとPALSは公式な日本語筆記試験問題は存在しませんから、各ITCが独自に翻訳して使っていたわけです。

今回、それがNGということで、例外的に英語で筆記試験に回答できる人にしか、G2010正式版は開催されていないはずです。

もし日本語でG2010正式版の筆記試験を受けたという人がいたとしたら、これはけっこう大きな問題です。その講習を開催した団体はAHA規約違反ということでライセンス契約打ち切りの可能性(いわゆるおとりつぶし)も、、、


ただ、例外がないわけではありません。

例えば、アメリカ本国のトレーニングセンターには翻訳禁止令なるものは行っていませんから、アメリカで資格を取ってきたインストラクターが日本で開催する講習に関してはG2005までと同じ扱いで特に制限はありません。あとは米軍基地内の日本人向け講習なども。

あともう一点。試験問題の日本語版を作ることは禁止されていますが、言語に不自由がある人への問題読み上げなどのサポートは許容されています。この部分をどように運用するか、そこはトレーニングセンターが誇りと名誉にかけて考えていく部分です。


いちおう、これが最新事情。

よく質問されるので、書かせてもらいました。





posted by めっつぇんばーむ at 01:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | AHAガイドライン2010
2011年07月29日

ACLSを受講しただけじゃダメな理由

昨日、オペ室の急変対応シミュレーションを行いました。

ありがちな突然のVF。今回はまだ2回目ということで、オペ開始前で、ふつうにCPRも除細動もできる状態にしました。

今後、回を重ねるごとに、よりリアルに、例えば開腹手術の真っ最中でお腹がぱっくり開いているとか、側臥位とか腹臥位とかもやってみて、現実問題、何ができるか、麻酔科医と執刀医の協働、そこを取り持つナース、といったこともやっていきたいと思っています。



急変対応といって、まっさきに頭に浮かぶのはBLS/ACLSですが、勘違いしがちなのは修了カードを手にすれば万事OKと思うこと。カードの有効期限の向こう2年間は安泰と安心している人はさすがにいないと思いますが、AHAのBLS/ACLSは所詮タスク・トレーニングと割り切って考えたほうがいいかもしれません。

理想化された条件の中でのテクニカルスキル・トレーニング。シミュレーションには程遠いのがAHA-ACLS。そのまま臨床で応用できたらラッキー、です。

教室のタスク・トレーニングで身につけたテクニカル・スキルを前提として、応用力・実践力といったノンテクニカル・スキルをかぶせて使えるように鍛えるシミュレーションは、できれば実際の現場でやった方がいいに決まってます。



たぶんG2005まではAHAも勘違いしていたのだと思います。

例えば、ガイドライン2005のBLSヘルスケアプロバイダーコースDVDでは、「あなただけが頼りです。あらゆる年齢の人の命を助けられますね。十分訓練したのですから」と最後に言っていますが、この手の過信ともいうべき「よいしょ」はG2010教材からは消えました。

いくらビデオベースのAHAコースでコースメニュー化されたスキルトレーニングをしても、現場で使えるものにはならないという反省があったのでしょう。

implementation(実行性)がメインテーマのガイドライン2010。

いくらAHAコースを終了しても、それは単に機械的に技術を習得したというだけ。それを現場で応用して使うための訓練はまた別。

AHAガイドライン2010の「教育・実行性&チーム(EIT)」のページにも、「AHA ECCプログラムは最初のステップにすぎず、個人やシステムとして力を発揮するための大きなトレーニング概念の中の一部でしかない」みたいなことが書かれています。

Instructors and participants should be aware that successful completion of any AHA ECC course is only the first step toward attaining and maintaining competence.

AHA ECC courses should be part of a larger continuing education and continuous quality improvement process that reflects the needs and practices of individuals or systems.



現実、オペ室でのシミュレーションにしても、麻酔器の使い方を知らなければ人工呼吸はできませんし、通報の仕方も、院内一斉のコードブルーを掛けても、オペ室の中まで入ってきてくれる人がどれだけいるのかという問題とか、救急カーとの中に入っている薬。うちはエピクイックがないから、ボスミンをアンプルから吸わなくちゃいけないし、、、、

現実問題、講習会場のACLSでは対応できない点がたくさん。

なにより、スタッフがACLS講習のメンバーのように共通認識をもった人たちばかりではない、これは実際の急変に当たって痛感するところではないでしょうか?

完璧にACLSをできる人がひとりいても、思うほどの効果は上げられません。

ですから、本来は、急変対応トレーニングは、職場内のリアルな環境・条件でいつものスタッフで行うべきものなのです。

現状の考え方としては、各人がAHA-ACLSなどでスキル・トレーニングをして、共通の土台を作ってから、次の段階として職場でシミュレーション・トレーニング。これでようやくひとつの形として完成形になるのではないでしょうか。

病院で年に2回義務付けられている避難訓練。それを関係ない他の病院施設でやるなんてナンセンスですよね。それと同じです。


ということで、ACLSまで取ったのに、どうも思うようにならないと感じている人は職場で防災訓練〜急変版〜をやってみることをお勧めします。

ICLS/ACLSインストラクターが職場で本領発揮し、貢献するチャンスです。



追記:ここまで書いて思ったけど、結局ACLSは個人で受講して身につけるようなスキルではなく、患者安全として職場単位でやるべきものなんですよね。病院の避難訓練の例を出しましたが、個人単位で避難訓練を外部施設に受けに行くなんて、ありえない話だし。日本のACLS教育導入時の方向性がそもそも間違っていた!?





posted by めっつぇんばーむ at 14:21 | Comment(1) | TrackBack(0) | AHAガイドライン2010
2011年07月14日

医療従事者の善意のCPR、下手すると業務上過失致傷罪、過失致傷罪、重過失致死傷罪

インプリメンテーション implementation 実行性

ガイドライン2010の最大のテーマ。

バイスタンダーCPRを増やす、実行性を高めるにはどんな工夫が必要か?

ということでガイドライン2010には、CPR実施を阻む色々な問題を分析し、市民が安心してCPRを行えるようなバックアップとして情報提供を行っています。

例えば、CPRで病気に感染する確立はきわめて稀だとか、間違って胸骨圧迫しても骨が折れたりする事故はこんなに少ないんですよとか、間違ったことをしても訴えられることはありませんよ、とか。

そうやって市民が勇気付けられるような前向きな論調なのが、ガイドライン2010なのですが、、、、

日本版ガイドラインでは、医療従事者が善意で行うバイスタンダーCPRに関しては厳しいことを書いているんです。

ふつうに読んだら、医師をはじめ医療従事者は、見て見ぬ振りして通り過ぎるのが正解!? と感じてしまうような。

どういうことかというと、ふつう、資格も義務もない市民の場合、民法第698条の緊急事務管理ならびに刑法第37条の緊急避難の条項で守られていて、救急蘇生をしてもその結果いかんを問わず悪意がなければ責任は問われません。

しかし医師をはじめとする医療従事者には、その限りではないと明記されているのです。

以下、日本版ガイドライン2010 第七章「普及・教育のための方策」(PDF)35ページからの引用です。

「刑法第37条の緊急避難の項には、『業務上特別の義務がある者には適応しない』とあり、たとえ道端や航空機内であっても傷病者の手当てを始めた場合には、傷病者と医師との間に契約が成立し、債務不履行の責任を問うことが可能となるとの解釈も存在する」

「緊急事務管理による免責成立のためには「重大な過失」がないことが前提であるが、これは救助者が証明しなければならず、救助者となった医師には重い立証責任が課せられることになる」

「現時点では医師の民法上の責任および刑法上の責任を棄却できるとは限らず、今後争いが生じる可能性は否定できない。」

「万一、棄却が認められない場合は、業務上過失致傷罪、過失致傷罪、重過失致死傷罪などが成立しうる」


このあたりのことは、以前から私も指摘していた点ですが、日本の面子をかけて作成した日本版ガイドラインに、逃げ道も明るい兆しもなくこうもはっきり書かれてしまうと、、、、

国家資格を持った立場、公私問わず高い意識を持って公益義務を果たせ、ということなのかもしれませんが、実際の医療者のレベルを知っている立場からすると厳しいなぁ、と思います。

頭のいい人なら、触らぬ神にたたりなしがベストと考えるだろうな。

もう一歩この問題に踏み込んで明るい方向性でも示してくれればよかったのに。


もう一点、「過失がないことを証明する責任」という点では、なまじ「考える蘇生」ではなく余計な判断はせずにガイドラインどおりに機械的に動くのが正解、とも思えてしまいます。

福島の産科事件でもそうでしたが、検察から依頼されて証人として立つ人は、ガイドラインだとか一般論に照らして是非を証言するのが常ですから。

ガイドラインの本質を考えれば、多様性があるのは当然だし、理想として一般化された手順からはそぐわないケースは、ケースバイケースで考えるのも当然ですが、司法はそう判断してくれない可能性大。

いや〜、難しいですね。





posted by めっつぇんばーむ at 23:27 | Comment(2) | TrackBack(0) | AHAガイドライン2010
2011年06月23日

日本版心肺蘇生法ガイドライン2010確定版リリース!

すでに皆さん、チェック済みかとは思いますが、昨日6月22日、日本版JRC蘇生ガイドライン2010が発表になりました。

本の形での出版かと思いきや、BLSの章とEIT(教育、実行、チーム)の章だけはPDFで無料配信。

日本蘇生協議会のウェブからダウンロードできます。

http://jrc.umin.ac.jp/

まだざっとしか見てませんが、ドラフト版で「これは大問題!」と指摘していた感染防護具の取り扱いについてはだいぶ是正がされていて一安心。(細かい突っ込みどころはありますが)

大きな混乱にならないといいなと思っていた市民向けCPRの手順は、いちおうAHAのハートセイバーAEDコースと同じになった模様。

ただ、気になるのは6月16日付朝日新聞で報道されたG2010リリースの記事で示されたイラストでは、ちょっと違う感じに書かれているんですよね。

朝日新聞6月16日報道より引用
(朝日新聞2011年6月16日記事より引用)

通報のタイミングなんですが、反応(意識)なしですぐ通報するか、それとも呼吸なしまで判断してから通報するか―。

これはAHAのハートセイバーコースの手順でも最後まで混乱していた部分でした。

そこだけがちょっと気になります。


それにしてもPDF無料配布がBLSだけじゃなくてEIT(教育と実行性、チーム:蘇生技術普及の方略)が含まれているのはナイスです。

この部分を読まないと、BLS手順が変更された理由が理解できませんので。

このEITの理解なしに新しいG2010の心肺蘇生法は適切に教えられません。

BLSのファイルをダウンロードした人は、かならずもう一個のファイルも落として熟読してくださいね。深いですよ〜

posted by めっつぇんばーむ at 16:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | AHAガイドライン2010
2011年06月20日

ヘルスケアプロバイダーに甘やかし教育は不要

前回、私は今後、BLSヘルスケアプロバイダーコースは開催しないだろうと書きました。

その理由は、DVD教材のスタイルがあまりに変わり果ててしまって、AHAの意図がまったく理解できなかったからです。普通に見れば相当な改悪といっても良いくらいの出来栄え。

眠くなるし、ワクワク感はまったくないし、情に働きかけるような場面もありません。受講者の満足度はかなり低くなるでしょう。

それを従来どおりの受講料をいただいて開催するにはあまりに失礼と思ったし、この改悪ぶりを指摘されたとき、インストラクターとして返す言葉が思い浮かばなかったのも事実です。


そんな風に考えて、いろいろ悩んだ末、G2010正式版のHCPコースは、公募では行わないと決めたのですが、昨日、ACLSコース終了後に先輩インストラクターとの対話の中で、別のひとつの光が見えてきました。

なぜ、AHAはBLSヘルスケアプロバイダーコースのDVDをこんなにしてしまったのか??

恐らく、G2005では、ヘルスケアプロバイダーを甘やかしすぎたという反省があったのでは、というのが今の私の理解です。

「蘇生のプロの技術を学んだあなただけが頼りです」

そんな言葉で締めくくられるG2005のBLSヘルスケアプロバイダーコース。正直なところあんな練習だけでCPRができるようになるとは思いません。理想化された環境での運動スキルの練習だけで implementation への配慮がほとんどないのですから。

受講のモチベーションをあげるために数々の努力。躍動的な映像編集と、感情に訴える蘇生成功体験のインタビュー。

そうやって受講者の心をつかむことに力を注いだG2005版DVDですが、きっとその効果はあまり得られなかった、もしくは逆効果だったんでしょうね。

だって、アメリカではヘルスケアプロバイダーコース受講は2年毎義務です。みんな「またかよ」といやいや参加しているわけです。(病院内のつまらない勉強会や安全講習の類と思えば理解しやすいかも)

居眠り必発だから、目を引く映像でがんばったけどダメ。

考えてみれば、義務で受けるヘルスケアプロバイダーコース受講者には動機付け云々は必要なの? やる気のあるなしに関わりなく、できなきゃいけないわけだし、下手すると訴訟社会アメリカ、自分の首が飛ぶわけです。

受講者に対して下手にへりくだって、お金をかけて凝った教材を作ったけど、その必要性があったのかな、という反省の裏返りが今回のそっけないDVDだと考えました。

学ぶモチベーションは各自が持っています。プロなんですから。だから淡々と練習をさせるだけで十分。

内容自体、厳しくなっています。練習の段階からずっと5サイクル。圧迫回数が5割り増しとかいう説もあります。

また、いやらしいのが筆記試験。20問から25問に増えて、意外な細かいところまで問われています。あのDVDを見ただけで答えられるのかなぁ。そうとう事前学習してこないと気づかないかも。

そこで思うのは、これは実技も筆記試験も、落第することが前提なのでは? という点です。G2005では受からせることに主眼が置かれていて、普通にやれば落ちることはありません。

しかし、ゆとり教育から方向転換して、今回は試験に不合格にさせて、「やばい!」という焦りを与えるような教材設計なのでは? とすらかんぐってしまいます。

いちど落として、それをremediationで持ち上げる、という図式?

勝手な推測ですが、そう考えればある程度納得はいきます。

市民救助者向けのハートセイバーコースはそんなことないんですよ。G2005のHCPなみに映像に凝っているし、受講者を鼓舞するような場面が多々あります。

つまり、今回の教材設計では、市民救助者と医療従事者(ヘルスケアプロバイダー)の差別化がつよく出ているのではないでしょうか?

プロとして役割が期待されている人たちにはシビアな環境で教え、甘やかさない!

今回のガイドライン改訂の大事なポイントは、実行性(implementation)。それを考えれば筋は通ります。



このあたりは、G2010のBLSインストラクターコース用DVDがリリースされたら明らかになるでしょう。

真相はわかりませんが、こんなスタンスであれば、私も気を取り直して引き続きヘルスケアプロバイダーコースを開催できそうです。

ゆとり教育は間違っていた! 「楽しく学びましょう」は市民救助者だけ。

そんなつもりでG2010正式版HCP開催に向けて準備を始めようかなと思っています。
posted by めっつぇんばーむ at 02:23 | Comment(3) | TrackBack(0) | AHAガイドライン2010
2011年05月09日

BLSヘルスケアプロバイダーコースから手を引きます

4月末にリリースされた新しいハートセイバーCPR&AEDコースのDVDを見る機会がありました。

ハートセイバーは、対応義務のある市民のための講習プログラム。

予想通り、良い出来でした。

ガイドライン2005の教材設計の流れがしっかり組まれ、さらに良くなっています。

お金もそれなりにかかっていて、セットはしっかり組まれているし、映像エフェクトもそこそこ使われている。なによりカメラワークが違います。固定カメラではなく2〜3カメラ? で動きもあります。

ナレーターも覇気があってよろしい!

実はG2005のヘルスケアプロバイダーのナレーターさんなんですが、身振り手振り、動きはちゃんとあるし、なにより語りかけようとする姿勢が非常にGood。

なんだ、そんなの当たり前じゃん、と思っちゃいけません。

というのはその約1ヶ月前にリリースされた医療者向けのBLSヘルスケアプロバイダーコースのDVDは、その真逆を行くかなり残念な出来具合でしたから。

こうして両方を並べてみると、違いは歴然です。

明らかにAHAは医療者向けのヘルスケアプロバイダーコースで手を抜いています。
(正確にいうとお金をかけていない)

G2005の流れをくまず、まったく別物になってしまった印象。



もともと今回のガイドライン改訂自体が、バイスタンダーCPRの実施率を向上させるところにありましたから、建前上プロとしてCPRができてあたりまえのヘルスケアプロバイダーにはさほどインパクトはありません。

だから今回のガイドライン改訂で、どの教育コースが重要かといえば、市民向けのプログラム。

そのうち今回「対応義務のある市民向け」であるHeartsaver CPR & AEDを見たわけですが、私の理解は間違ってなかったなと思いました。さらにいえば今後リリースされる Family & Friends CPR はもっともっと力が入っているはず、と予想しています。

前回のG2005では、BLSヘルスケアプロバイダーコースに並々ならぬ力が入っていたのは事実だと思います。あれに比べればハートセイバーは見劣りしましたから。でも、今回、完全に逆転。

ヘルスケアプロバイダーは、CPRをしなくちゃいけない立場で、主に資格職ですからモチベーション云々というところは今回重視されていないような気がします。もともと2年に1回嫌々ながらでも受けなくちゃいけないもので、5年毎にガイドラインが変わりますから、同じDVDを2回は見ることになります。

いくらそこで派手な注意を引く映像を盛り込んでも、嫌々受ける気持ちにあまり効果がなかった、というのがG2005の反省なのかな。

余計なことはしないで、淡々と手技を身に着けさせることに集中する、そんなスタンスに感じます。



ここまで歴然と差が見えてしまうと、こっちの気持ちも変わってきます。

もともと、医療者向けにBLSを教えたところで社会的な意義はたかが知れていると思いつつ、やっていたものですから。

G2010正式版のBLSヘルスケアプロバイダーコース、今後、私は恐らく開催しません。

病院の仕事だったりもしますから、完全にやらないというわけにはいかないと思いますが、少なくとも積極的には取り組まないでしょう。

BLSインストラクターコースも、もうやりません。

ヘルスケアプロバイダーコースにインストラクターが必要かどうかもわからなくなってきましたし。


今回、新しいハートセイバーのDVDを見たら、HCPはもういいかなって思いました。

AHAだったら、HCP以外、またその他オリジナルで自分が出来ることに力を注いでいくつもりです。
posted by めっつぇんばーむ at 02:24 | Comment(5) | TrackBack(0) | AHAガイドライン2010
2011年04月22日

G2010-AHA-BLS新教材雑感

新しいBLSヘルスケアプロバイダーコースの教材一式がリリースされて1ヶ月になります。

本来ならこのブログでも大騒ぎをして、その内容をお伝えしているところですが、今回、どうも気分が乗りません。

というのはアメリカから輸入した教材が届くか届かないかというときに、急遽、震災の医療支援に駆り出されることになってそれどころじゃなかったというのと、なによりDVD教材の雰囲気ががらりと変わってしまったところが大きいです。

当初は英語のままでも、日本での初開催を目指すぞ! と意気込んでいたのですが、新しいDVDを見たら、正直、その気が萎えました。

今回、Twitterでもブログでもあまり話題にならないのは、みんな同じ気持ちなんじゃないかな。

箇条書きで説明するようなガイドライン変更の説明や講義だったらは私自身で日本語でやったほうがきっと効果的。

DVDに求めたいのは、受講者の興味を引くためのモチベーションアップのための視覚に訴える躍動感なのですが、今回は教材設計というかテイストががらりと変わってしまいました。

G2005からの更新で受けに来る人がいたらがっかりかも。


さて、Interim(暫定)じゃない正式なG2010のHCPコース、やっぱり暫定版からの変更もありました。

変わったのは呼吸確認に要する時間です。

G2010 Interimのスキルチェックシートでは、呼吸確認が単独の手順ボックスに書かれていて、そこに5秒以上10秒以内とありました。

つまりG2005同様に呼吸確認だけの時間として5秒以上10秒以内というのを求めていました。

それがG2010正式版では、反応確認から呼吸確認までの全部をひっくるめて5秒以上10秒以内としています。


まあ、納得です。

Interimのビデオでも視認による呼吸確認は3秒くらいしかしてませんでしたし、ガイドラインでは手短に確認するとかいいつつ、変わらないじゃんとも思っていましたので。

それにしてはシカゴでHazinskyが言っていて、onlineアップデートでも言われている「脈拍を取りながら改めて呼吸確認」という点はコースに反映されていない模様。

DVDはなぜかクローズドキャプションが表示されないので聞き落としがあるかもしれませんが、少なくともテキストでは触れられていません。


その他は、スキルチェックでは5サイクルきっちりとCPRをやらせるあたりはimplementationを意識しているんでしょうね。

新しい手順とかバッグマスクに酸素をつなげる場面や服をはさみで切り裂く場面など、implementationという点では非常に好ましいDVDのつくりなんですが、あのチープ感とナレーター女性の陰気なイメージがどうも、、、、

まあ、向こう5年間付き合っていく教材なので、好きになるように努力します。
posted by めっつぇんばーむ at 00:19 | Comment(2) | TrackBack(0) | AHAガイドライン2010
2011年04月20日

AHA暫定BLSコースの有効期限は5月15日じゃない

多少誤解があるようなので補足を。

AHAが各ITC宛の通達で示している5月15日という期限。

これはInterim(暫定)コースの許容期限ではありません。

5月15日以降は新しいサイエンスに基づいたコースを開催しなければならない、というG2005コースの開催可能タイムリミットです。

ですから、暫定コースも引き続き開催できます。

暫定コースの開催有効期限は、新しい正式教材ができるまでとなっていますが、日本においてはリリース予定が正式にアナウンスされている日本語版ができるまで、と考えるのが妥当です。

またこれはプレスリリースでは出されていませんが、日本語版が出てからの移行期間は6ヶ月と言われています。

情報ソースは、2010年11月11日にシカゴで開催された National Faculty Roll-out のBLSセッションでの質疑応答からです。

この点、新たな通達が出ない以上、現在も有効と考えられます。
posted by めっつぇんばーむ at 10:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | AHAガイドライン2010
2011年03月10日

AHAガイドライン2005コースの開催許容期間が5月15日に延長

昨日、AHAから通達があって、ガイドライン2005コースの開催容認期間が5月15日に延長されました。

もともとは2月末日だったのが、ひっそりと3月末日に書き換えられ、そして今回正式通達として5月15日と、、、、

5年ごとに毎回そうなのかもしれませんが、当初の希望的憶測(?)を信用しちゃダメですね。

BLSヘルスケアプロバイダーコース教材のリリースは3月23日で、今のところずれ込みの話はないと米国代理店は言っていたようですが、その他のハートセイバーコース教材などは相当遅れそう。

ACLSのリリース日程も当てにならないし、ましてや日本語教材はどうなるのか。

AHAのアジア・パシフィック・エリアディレクターは、英語版リリース後1−2ヶ月と言ってましたが。

ハートセイバー・ファーストエイドとファミリー&フレンズCPRの初の日本語化には相当期待していますので、どうか話が反故になりませんように。
posted by めっつぇんばーむ at 00:37 | Comment(2) | TrackBack(0) | AHAガイドライン2010
2011年02月23日

G2010-BLSヘルスケアプロバイダー教材3月23日リリース

速報です。

AHA BLS for Healthcare Providerコースの教材一式が3月23日リリースされることが決定しました。

AHA教材正規代理店の World Point で、予約開始になっています。

3月23日に出荷が始まるとして、日本に届くのは早くて2−3日後。

でもガイドライン2010やECCハンドブックも予定を大幅に遅れての出荷だったので、今回も届くのは4月半ばくらいかなと踏んでいます。

日本に届いても、まずはインストラクターがしっかり読み込んで勉強しなくちゃ、ですから、実際のコースが開催できるようになるのは5月かな。(その場合、もちろん英語です。)

さて、今後の講習日程を考えなくちゃ。




まったく予想外でしたが、併せてプロバイダーカードとインストラクターカードのデザインもリニューアルされる模様。

各トレーニングセンター、旧カードの在庫処分に困るだろうなぁ。
posted by めっつぇんばーむ at 22:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | AHAガイドライン2010
2011年02月20日

AHA ECC Japan Conference in 横浜に行ってきました

昨日、今日と横浜で開催された本邦初のAHA公式インストラクターアップデート(AHA ECC Japan Conference)が終了しました。

インターネットでのonlineアップデートも始まっていることだし、これでガイドライン2010アップデートのお祭りもひと段落かなと思っています。

この辺で、そろそろAHA 2010ガイドラインECCコース展開について、まとめてみようと思います。



その前に今日参加してきた AHA ECC Japan Conference の様子について少々。

私はすでにBLSとACLSの公式アップデートは完了済みなのですが、いずれもシカゴでのいちばん最初の、混沌とした時期に受けたので、あれから3ヶ月たって具体的な新たな情報が追加されているのではないかと期待しての参加でした。

ただ残念ながら、思惑ははずれ、新たな収穫はナシ。


今回の日本のアップデートは、AHAのアジア太平洋州管轄ディレクター Laurence King 氏臨席の下で行われた正真正銘AHA公式のものなのですが、シカゴやサンディエゴで開催されたものとは、違う位置づけに感じられました。

何が違うかというと、ガイドライン2010に基づく新しいコース展開についての話の一切が省かれていた点です。

シカゴでは、新しい正式教材が出るまでの間、暫定コース(Interim Course)として、旧教材にアレンジを加えてG2010の流れで指導を行っていく点が示され、レッスンマップの変更一覧表などが配布されましたが、そのような話は一切なし。

またスライドからも、新しいスキルチェックシートに関する部分が削除されて、C-A-B sequence video と呼ばれるG2010のBLS手順を示す動画も流されませんでした。

新しい呼吸確認、具体的にどうするんですか? という質問に対しても「胸の動きを見るだけです」という言葉の説明だけで、ビデオ教材があるというアナウンスすらなし。まるでその存在を隠しているかのように感じられました。

時期的にはすでにG2010暫定コースが普通に行われていてしかるべき時期です。

というのは、当初のAHAアナウンスでは3月1日以降は、G2010暫定コースか、(リリースされていれば)新教材を用いたG2010正式コースを開催しなければならないと決められていましたから、2月20日というこの時期のAHA公式アップデートイベントであれば、当然G2010暫定コースの話題が中心になると期待しますよね?

でも、それが完全に削除されていた、、、、

また、質問が指導方法やコース展開の具体的な内容に及ぶと、「今回の趣旨とは外れるのでお答えできません」と。

おいおい、そのためのアップデートではないのかい?? と拍子抜けに感じたのは私だけではなかったと思います。

聞くところによると、初日のアップデートではもうちょっと柔軟に質疑応答がされていたようですが、そこで、きっといろいろ問題があったんでしょうね。

また American Heart Association のアジア地区担当者が臨席はしているものの、教材開発やサイエンス部門ではないので、細かい質問に答えられるわけでもない、ということなんでしょう。(私の勝手な推察です。関係者の方、誤認がありましたら、ご指摘ください)

シカゴで話をしてくれた演者は、ガイドライン取りまとめの責任者であり、執筆者本人たちです。そして会場にはAHAの関係者すべてが集まっていた。

だからこそ、掘り下げて質問に答えることが出来たし、場合によってはその場でAHAとしての意思決定ができた。

ということで、日本のAHA史上、画期的な出来事ではありますが、シカゴ、サンディエゴの公式アップデートは別次元で考えたほうがよさそうです。


まあ、ただ現実問題として困ってしまうのは、G2010 Interimコースの取り扱いについて。

BLSとハートセイバーCPR/AED、ファーストエイドはそれなりに経験を重ねてきてもう動き出していますからいいのですが、問題はACLSやPALSです。

こちらもまもなくG2005でのコース展開が禁止されます。

なのに、出るはずの新しいスキルチェックシートや筆記試験問題が出ない!

そうしたらいいんだ? というのが今一番の切実な問題で、その答えが今日わかる! と思っていただけに残念です。



今回のアップデートは、基本、所属は関係なくインストラクター個人単位での参加でした。

それとは別系列で各ITCでは、誰かしらがシカゴに招待されてInternational Facultyとしてのアップデートを受けています。

暫定コースに関して、どのように開催していくか、AHAが示さない細かい部分をどう扱っていくかというのは、各ITCの裁量に任されていて、後はトレーニングセンター単位でコンセンサスを作って動いていきなさい、ということなんだなと私は理解しました。

だからこそ、今回のアップデートで余計なことはインストラクター個人に伝えなかった、というのが不自然さに対する私の解釈。

答えはきっと誰もわかりません。

恐らく、今回のアップデートを主催した方たちも。

でも、そうやって物事は進んでいくんです。きっと今現在もAHAの教材開発担当者たちは、予定している3〜4月の教材リリースに向けて、調整を図っている最中なのでしょう。


以上、一介のインストラクターのつぶやきでした。

何の裏づけのない勝手な理解ですので、あまりマジメな突っ込みはご遠慮くださいね。


現時点までに公開されているG2010コース展開に関するまとめは、別項で書きます。(また後日。。。)


余談ですが、AHAのアジア太平洋州責任者のLaurence King氏、想像以上に若い方で驚いた人が多いようです。イケメン系? 一見すると日本人にも見えなくもないのですが、英語しかしゃべりません。箸は上手に使えます。サンディエゴ出身の救命士さん。

余談、もう一個。今回のアップデートの中では、at least を「少なくとも」と訳していました。「以上」ではなく。話し言葉としては最低5センチ、という言い方もありかなと思いました。「少なくとも」は言いにくいので。
posted by めっつぇんばーむ at 23:23 | Comment(2) | TrackBack(0) | AHAガイドライン2010
2011年02月18日

「ガイドライン2010」は市民救助者のためのもの

蘇生ガイドライン2010、日本でもだいぶ広まってきましたね。

日本循環器学会も日本ACLS協会も、2月末日のタイムリミットに向けて稼動を始めたようです。(余談ですが、G2005コース開催期限が3月末日までにひっそり変更されてましたね)

ただ、残念ながら日本で開催されているのは、BLSヘルスケアプロバイダーだけ。

ハートセイバーAEDもガイドライン2010 Interim(暫定)コースがAHAから公式に提供されていますが、これらの市民向けコースをやっている団体・サイトはほとんどありません。


とても残念です。


なぜなら、ガイドライン2010のBLSの本質は、ヘルスケアプロバイダーではなく、市民救助者(Lay Rescuer)のためのものだからです。

日本国内でもすでにガイドライン2010暫定コースとしてのヘルスケアプロバイダーコースを受講ないしは指導されたインストラクターはそこそこいると思いますが、受けてみて/教えてみて、違和感を感じませんでしたか?


・ホントに気道確保もしない視認だけの呼吸確認でいいの?
・呼吸原性心停止の小児の場合もC-A-Bの流れ?
・反応確認と呼吸確認した後で通報して、その後、脈拍触知? わかりにくい!


こうした不自然さは、本来市民向けにチューンナップされたアルゴリズムを無理やり医療従事者向けにアレンジをした結果である、といったらどうでしょう?

ガイドライン2010そのものや、CoSTR 2010を読めばわかるとおり、あらゆるベクトルはバイスタンダーCPR向上に向かっています。

新しく新設されたEIT(Education, Implementation, and Teams)という章などはその最たるものです。


私が最近、よく言うのは、ガイドライン2010がメインフォーカスしているのは、

・成人
・目の前の卒倒(心原性心停止)
・病院外
・市民救助者(バイスタンダーCPR)

ということをしっかり認識しておきなさい、という点です。


ガイドライン2010は、なんにでも対応できる万能の急変対応プロトコルではありません。

AHAなんかは特にその点が顕著で、BLSやACLSをECCプログラム、と言っています。

ECCはEmargency Cardiovascular Careの略で、日本語では救急心血管治療。

だから、小児や溺水などの呼吸原性の心停止はメインストリーム外なのです。


ガイドライン2010に、医療従事者のための蘇生の質を向上させる変更点はほとんどありません。

そのほとんどは、いかに市民にCPRを実施してもらうか、のためのもの。


であれば、本当にガイドライン2010が生きてくるのは、BLSヘルスケアプロバイダーコースではなく、むしろハートセイバーAEDコースや、ファミリー&フレンズCPRと言った市民向け講習プログラムです。

つまりガイドライン2010の本質を理解するには、BLSヘルスケアプロバイダーコースだけでは不十分。

この点を認識しているBLSインストラクターはどれだけいるでしょうか?

ガイドライン2010の本質を理解して、AHAインストラクターとしての責務をまっとうしようと思ったら、ハートセイバーAEDやファミリー&フレンズCPRをやらないわけには行かないと思うのですが、、、、


私の持論ですが、BLSのファカルティや、インストラクター・トレーナー、コースディレクターなど、AHA-BLSコース普及に責任を持つ立場をトレーニングセンターから与えれている人間は、AHA-BLSコースの内容はすべて熟知しているべきだと思っています。

すべてのAHAコースを教えられるポテンシャルがあってしかるべきです。10種類以上ありますから、すべてが難しいとしても、せめて日本語化されているすべてのコースの受講経験がないとまずいでしょう。

ガイドライン2010正式教材からは日本語ラインナップが増えます。

・BLSヘルスケアプロバイダー
・ハートセイバーAED
・ハートセイバー・ファーストエイド
・ファミリー&フレンズCPR

せっかく市民を対象とした日本語プログラムが増えるのに、もし、ぜんぜんその開催数が伸びないようなら問題です。

つまるところ、指導者側がガイドライン2010の本質を理解していないということの現れとも捉えられますから。

前にも書きましたが、ハートセイバーAEDやファミリー&フレンズCPRは、ヘルスケアプロバイダーコースの簡略版では決してありません。

むしろ、その難易度と奥深さ、実行性への寄与は、ヘルスケアプロバイダーコース以上です。

資格授与や営利とは無縁なコミュニティープログラムであるファミリー&フレンズCPRもそうです。

その洗練された内容は、AHAインストラクターとしての宝である、といったら大げさでしょうか?

誰にでも手軽で安価に指導できるマテリアル。これを知っているのと知らないのとではインストラクターとしての才能を発揮できる場に雲泥の差がでます。

AHAコースを自由に開催できる立場の人間が、この選択肢を持っていないのは罪だと思います。

ということで、AHA-BLSインストラクターなら、ガイドライン2010への認識を新たにするとともに、市民向けコースにもっと目を向けてください。


最後に、まだ公式には日本語化されていないファミリー&フレンズCPRですが、3月に横浜で公募開催があります。



都合の合うインストラクターは、ぜひ、参加をお勧めします。

市民から医療のプロまでを対象としたダイナミックなG2010 AHA ECCプログラムの本質を実感できるはずです。
posted by めっつぇんばーむ at 02:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | AHAガイドライン2010
2011年02月14日

BLSノンテクニカルスキル・トレーニング

先日、横浜で開催された「Advanced CPR」という講習にお手伝いで行ってきました。

もちろんAHAのプログラムじゃありません。

既存の各種心肺蘇生法講習(BLSヘルスケアプロバイダーコースを含めて)の上位講習として、ハートセイバーコースを専門に教えているインストラクターさんが独自に開発したオリジナル講習。

前から話には聞いていましたが、今回、初めて目の当たりにして衝撃でした。

これはガイドライン2010時代にふさわしい、新しいスタイルだなって。


簡単にいうと、BLS実施のためのノンテクニカルスキル・トレーニングです。

昔はBLSでも凝ったシナリオで練習していましたが、ガイドライン2000以降、シンプルに、ストレスなく教えるという方向にシフトし、それから10年。いまでは心肺蘇生法講習はBLS講習は運動スキルとしての技術習得がメインとなっていました。

しかし、それだけでは、蘇生率は上がらない、そもそもCPRの着手率が上がらないという点にフォーカスがあたったのが、今回のガイドライン2010(コンセンサス2010)。

CoSTRやガイドラインにEIT(Education, Implementation, and Teams)というチャプターが新設されて、BLSやACLSなどのサイエンスと同列で、教育手法や実施率を上げる方法、チーム蘇生が議論されるようになっているのは皆さんご存知のとおり。


現場で救命処置できなかった理由として、ガイドラインに載っているのは、たとえば、

「パニックになった」(37.5%)

これ、大きいですよね。

いくら手技を身につけていたとしても、パニックへの対処がトレーニングされていなければ、実施は難しいという現実。

まだまだ始まったばかりの視点なので、この問題をどうしていくかという具体的な方策はまだ出されていませんが、この先の5年間のCPR教育では、Implementation、実施率を上げるためには、どのように蘇生手技以外の問題点に対処する力を養うかという点が問題となっていきます。

つまりノンテクニカルスキル・トレーニングをどうBLSに盛り込むかというのがポイント。

そんな時代を先取りしたのが、今回見せてもらったAdvanced CPRでした。



大まかな構成をご紹介しますと、


1.ガイドライン2010のポイント解説:特にEITという新しい概念について
2.新しい蘇生法のポイントである呼吸確認について練習
3.G2010の流れでCPR練習
4.群集心理とリーダーシップの理論
5.シナリオトレーニング:リーダーを決めて、その他の受講者は現場にいる群集として与えられた役割を演じる。
6.デブリーフィング/ディスカッション

面白いなぁと思ったのは、受講者同士で呼吸数を数えあってもらって、5秒以上10秒以内という呼吸確認時間について考えてもらったり、暗闇で呼吸確認をするにはどうしたらいいか? うつ伏せで呼吸確認をするにはどうするか? という命題でのディスカッション&実験。

答えは提示せずに受講者同士が気づき学べるような構成。

まさにファシリテーションでした。



シナリオトレーニングのデブリーフィングなどは、ACLSプロバイダーコースさながら。

3-4人グループのうち、1名がリーダー。その他の人はシナリオにしたがって救急現場にいるバイスタンダーの役を演じます。

協力的であったり、非協力的であったり、邪魔をしたり、不適切なCPRをしていたり、野次馬根性で傷病者の写真を撮っていたり、、、、

想像してみてください。10人近くの人が輪になって取り囲む中、ひとりでCPRをする場面を。その人たちが、ひそひそ声で否定的なことをつぶやいている場面と、自分は手を出さないまでも応援のつもりで一緒に胸骨圧迫の数を数えてくれている場面。

雰囲気がぜんぜん違います。

そして雰囲気しだいで、CPRをしている気持ちがぜんぜん違います。

手技的にはパーフェクトと自信があっても、周りのみんなが否定的なことを言っていると、気持ちがどんどん沈んできて、やがては手が止まってしまう、、、かも。

インストラクターはシナリオとディスカッションのポイントは設定していますが、そこから話がどう派生して、どう解決していくかは受講者次第。

そこをインストラクターはうまくファシリテートしていました。

私はアシスタントとしてヒョコヒョコとお邪魔させてもらったのですが、正直、高度すぎてついていけず、返ってヘンな介入をして混乱させちゃいました(ごめんなさい)。



ガイドライン2005までは、心停止というシビアな状況をあえて観念化してオブラートに包み、受講者にとってストレスフリーな学習環境を提供していたように思います。

しかし、実際の蘇生現場は市民にとって心的外傷が必発というくらいシリアスな場面で、しかも周りを取り巻く人間模様が、対傷病者以上に問題だったりします。

そうしたあえて目をそらせてきた現実に迫るのが今回の講習ですが、それが行き過ぎると返って着手率が下がります。

そのさじ加減が難しいところです。かつてガイドライン2000以前の権威主義に似た厳しいだけの講習とは一線を画するためのポイントが、やはりファシリテーションという手法なんだなと強く感じました。

「こうすべき!」という押し付けは脅迫観念を植え付ける可能性があります。

しかし、問題を提示し、その答えを自ら見つけ出すという方法をとることで、主体的に問題に立ち向かう姿勢ができあがっていくのではないでしょうか?


以上、コースを見学させてもらった立場としての私の考えです。コース開発者の意図したものと違っていたらたいへん恐縮なのですが。

将来性を感じる画期的な講習プログラムでした。

今後、こうしたアドバンスドなプログラムが増えればいいなと思いますが、下手にやるとG2000以前の悪しき暗黒講習の世界に舞い戻ってしまうので要注意。

インストラクターのスキルとしては、BLSインストラクターのレベルでは難しいと思います。ACLS/PALSのファシリテーション能力が必要。

そういった意味では今後も広がりを期待するのは難しいかも。

でも、絶対に必要です、こういう講習って。

まじめにBLS普及を考える人にはぜひ体験してもらいたいプログラムです。


次回開催は4月3日(日)だそうです。

詳細は下記ページをご覧ください。

http://yokohama.bls-aed.net/ff/advanced_cpr.html


posted by めっつぇんばーむ at 00:07 | Comment(1) | TrackBack(0) | AHAガイドライン2010
2011年01月22日

AHA ECC Japan Conference(AHA公式インストラクターアップデート)

日本初のAHAによる日本国内公式イベントが開催されます。

AHA ECC Japan Conference
2011年2月19日(土)〜20日(日)
横浜労災看護専門学校(新横浜)

ガイドライン2010インストラクターアップデートカンファレンスです。


福井県済生会病院国際トレーニングセンターの横浜サイトが主幹となっているようです。

AHA ECC日本公式ページからアナウンスされていますが、リンク先は上記TSサイトとなっていました。


さっそく申し込みフォームに入力しようと思ったら、問題点が判明。

所属ITCが入力必須になっているのですが、それがプルダウンの選択式になっていて、そこにはつい先日認可された日本救急医療教育機構ITCの名前が入っていない!

AHA公式イベントなのに特定TCが参加できないようになっているのは、マズイですよね。。。。

恐らく、当該TC関係者よりクレームが行っていることと思いますが、いちおうここでも問題提起しておきます。

きっと関係者の方もこのブログ、見ていると思いますので気づいたら即刻の修正をお願いします。


それに日本で活動するUSインストラクターも所属TCを選択しようがないので申し込みができません。


この点も併せて、「その他」を作っていただくなり、改善をお願いしたいです。
posted by めっつぇんばーむ at 00:21 | Comment(4) | TrackBack(0) | AHAガイドライン2010
2011年01月20日

AHA Guideline 2010 online Update 提供開始!

かねてから予告されていたAHAガイドライン2010のインストラクター向け公式アップデートプログラムの提供が始まりました。

AHAガイドライン2010オンラインアップデート

AHA Instructor Networkにログインすれば、インターネット上のe-learningで受講可。

BLS
Heartsaver
ACLS
PALS

に分れています。

日本国内の国際トレーニングセンター(ITC)はどこもトレーニングセンター単位の伝達講習形式のアップデートをはじめていますが、いちおうAHA的にプライオリティの高い公式アップデートは今回のonline版となります。

英語ではありますが、聞き取りやすいですし、英語字幕も表示されます。繰り返し視聴も可能なので、AHAインストラクターならぜひチャレンジしてみてください。


https://myportal.americanheart.org/eccportal/ecc/ecc

posted by めっつぇんばーむ at 02:21 | Comment(1) | TrackBack(0) | AHAガイドライン2010
2011年01月17日

胸骨圧迫:「100回/分以上、5cm以上」は誤訳

前から気になっていたんですが、インストラクター仲間と話をしていて確信を持てました。

AHAガイドライン2010ハイライト日本語版 に載っている、


・胸骨圧迫のテンポ:100回/分 以上

・胸骨圧迫の深さ:5cm 以上 (成人)

・胸骨圧迫の深さ:1/3 以上 (小児・乳児)



は、日本語訳として不適切!


「100回/分以上」「5cm以上」というときの「以上」という訳が間違ってます。

オリジナルの英語表現は at least

ですから、「少なくとも100回/分」「少なくとも5cm」と訳すのが自然です。

原語 more than だったら「以上」と訳してもいいと思いますが、ガイドラインの勧告はあくまで at least なのです。

大ざっぱに考えると、どっちもさほど変らないような気もしますが、インストラクターとして指導するとき、やっぱり伝わり方は違いますよね。

「5cm以上押してくださいね」

5cm以上という表現には上限に際限がありません。目線は5cmはるか上方を見上げている感じで、境界線である5cmはあまり意識されていない表現です。強ければ強いほどいいというようなニュアンスに伝わる可能性があります。(弱いよりは強い方が罪はないのは事実ですが、伝わり方が乱暴で at least のニュアンスは伝わりません)

「少なくとも5cm押してくださいね」

これは最低限のラインを示している言葉です。こういった場合、そうがむしゃらに強く押す人はいないはずです。英語に強い仲間のインストラクターによれば、at leastは "at" だからポイントに着目した言葉であるとのこと。あくまで5センチにフォーカスされているのです。決して5cmから遠く離れた遥か上を見ているわけではないと言われて、なるほど、納得。


ということで、結論は、AHA公式訳の「100回/分以上」「5cm以上」は間違い!

このあたり、日本版(JRC)ガイドライン2010では、きちんと正確に表現しています。


どうしても英語で綴られる国際コンセンサスとガイドラインの内容をきちんと把握するためには、やっぱり英語できちんと読む必要があるんだなと改めて実感しました。

日本版ガイドラインではきちんと書かれているので消防・日本赤十字社の講習は問題ないと思いますが、もしAHAがこのまま「以上」という表現で教材を提供することになった場合、AHAインストラクターは十分に注意する必要があるでしょうね。


なお、本件に関しては、AHAインストラクターの責務と言うことで、所属TC経由で、また個人としてダイレクトにAHAに報告済みです。

各種教材の翻訳作業はすでに進んでいると思うけど、修正されるかなぁ。
posted by めっつぇんばーむ at 01:45 | Comment(13) | TrackBack(0) | AHAガイドライン2010
2010年12月26日

ハートセイバーコースCPRの手順の謎

先輩インストラクターの先生に教えてもらって気づいたのですが、現在 AHA Instructor Network で配信中のガイドライン2010の Interim Heartsaver Testing Checklist が、いつの間にかひっそりと差し替えになっていました。

差し替えが行われたのは、おそらく12月23日。

それ以前にダウンロードされた方は、内容が変っていますのでご注意ください。




旧版と新版で何が違うのかというと、CPR開始までの手順が違っています。

旧版は先に出版されたAHAガイドライン2010の記述に則って、

 反応確認 → 呼吸確認 → 通報 → 胸骨圧迫

でしたが、新版は先日公開されたC-A-Bシークエンスビデオの流れに合わせて、

 反応確認 → 通報 → 呼吸確認 → 胸骨圧迫

となっています。


hs-skill-check-sheet-old.jpg
↑2010年12月16日付(差し替え前のもの)

hs-skill-check-sheet-new.jpg
↑2010年12月23日付(現行のもの)


もともと市民向けハートセイバーコースのCPRの手順が、ガイドライン2010の記載とは一致していなくて不思議でしたが、こうなるとやっぱりビデオの流れがAHAの方針、なんでしょうかね?

まあ、この方が市民向けとしては手順がシンプルでわかりやすいと思います。

なんだかんだ言って反応確認と呼吸確認を合せてやれというのは、教える方も教わる方もややこしいですし、なにより反応がない時点で一大事、ということで、やや煩雑な判断(呼吸確認)を求めるまえにアクションを起こさせるのは正しいと思います。

でも、日本版ガイドラインだとそうじゃないんですよねぇ。


今度市民向けにボランティア講習としてG2010でCPRを教えるんですが、そのときは日本版ガイドラインで教えるか、AHAのハートセイバーAEDコースに準じて教えるのか、ちょっと迷っています。

わかりやすさではAHAですが、今回受講した人が今後消防や日赤など別のところでブラッシュアップ講習を受けた場合、ガイドライン2010の最新版で身につけたと思ったやり方が否定されてしまうのが目に見えて、やっぱりここは日本。無難に日本式で教えた方がいいのかなとも思ったり。

うーん。
posted by めっつぇんばーむ at 00:25 | Comment(1) | TrackBack(0) | AHAガイドライン2010
2010年12月18日

G2010、BLSスキルチェックシート各種が公開になりました

待望のAHAガイドライン2010対応コースのための、新しいスキルチェックシート各種(BLS実技試験評価表)がリリースされました!

Interim Skills Testing Checklists
・ACLS CPR/AED Testing Checklist
・CPR BLS for Healthcare Providers Testing Checklist
・Heartsaver Testing Checklist Adult/Child CPR and Infant CPR
・Heartsaver Testing Checklist Adult 1-Rescuer CPR and AED Test
・PALS CPR/AED Testing Checklist Child 1-Rescuer CPR and AED Test
・PALS CPR/AED Testing Checklist Infant 1- and 2-Rescuer CPR Test


例によって、AHAインストラクターのための会員サイト、AHA Instructor Network からダウンロードできます。


AHA Instructor Network



AHAインストラクターネットワークって、なに?


なんてインストラクターがいたら、モグリです。やばいと思ってください。BLS/ACLSインストラクターコースやコアインストラクターコースで散々言われてますよね?

AHAインストラクターの責務として、きちんとAHA US本部に登録しましょう!

近いうちに公開されるAHA公式のG2010インストラクターアップデートも、原則はインストラクターネットワーク内で展開されるe-learningで提供されることになってます。

アップデートしないとインストラクターは活動停止!

2011年2月末日までに登録して、アップデートしておかなきゃホントにマズイですよ〜

posted by めっつぇんばーむ at 00:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | AHAガイドライン2010
2010年12月11日

AHAガイドライン2010対応動画公開-HS,BLS,ACLS,PALS

待望のAHAガイドライン2010対応コースを開催するための動画補助教材がリリースされました。

トレーニングセンターとAHA本部に正規登録されたAHAインストラクターは、AHA Instructor Networkから自由にダウンロードできます。

https://myportal.americanheart.org/eccportal/ecc/ecc

※登録がまだの方は上記ページの右上の"New User? Register Now"というところから新規登録できます。TCの承認が下りた後、インストラクター専用エリアに入れるようになります。


今回、公開された動画はWMA形式で、全三点です。

1. ACLS Update Overview (For ACLS and PALS Instructors ONLY)・・・176MB
2. CAB Sequence HCP Option 2 (For BLS, ACLS, and PALS Instructors)・・・19MB
3. HS Sequence Option 1 (For BLS and Heartsaver Instructors)・・・13MB


インストラクターの皆さんは既にご存じと思いますが、来年春以降にリリースされるガイドライン2010の正式な教材(DVD、プロバイダーマニュアル、インストラクターマニュアル)を待たずして、AHA ECCコースはガイドライン2010準拠に切り替わります。

つまり、現行のG2005のDVDとプロバイダーマニュアルに追加修正する形で、ガイドライン2010対応コースとして開催していくことになっています。

具体的には、インストラクター向けレッスンマップの変更と、受講者に配る変更点一覧表、そして新しい C-A-B の流れですすむBLSの手順を示した動画教材(C-A-B sequence video)、新しいスキルチェックシートと筆記試験問題。

これらの Interim Training Materials を使うことで新しいDVDやテキストを待たずにガイドライン2010の流れで教えていくことになっています。

そのための動画が、ようやく配信開始になったというわけです。


"ACLS Update Overview"という実に173MBもある大きな動画ファイルは、ACLSプロバイダーコースのときに受講者に見せるもので、ガイドライン2010で変更になったことが22分間にまとめられています。

これについてはとりあえず置いておいて、今日話題にしたいのはBLSに関する動画2本。

"CAB Sequence HCP Option 2"というのが、医療者向けの新しいBLSの手順をまとめたものです。BLSヘルスケアプロバイダーコースとACLSプロバイダーコース、PALSプロバイダーコース、PEARSプロバイダーコースで使います。

これはシカゴで開催されたナショナル・ファカルティ・オリエンテーションと、インストラクターアップデートの際に公開されたのと同じ動画。

シカゴで見たときは、あまりにおおざっぱな出来で、試作品かと思っていましたが、そのままの形で出ちゃってびっくり。

AHAガイドライン2010 インストラクター・カンファレンス,シカゴ速報

で書いたとおりです。

ACLSやPALSならいいですけど、ヘルスケアプロバイダーコースまでこの動画を使うことになるとは意外でした。

だって、場面は完全にACLSのシーンなんですもん。

使うのは手動式除細動器だし、BLS的には過剰な説明やシーンが盛りだくさんで必要以上に長いし、ヘルスケアプロバイダーコースを中心にやっている人間にはかなり不本意な感じ。

まあ、ヘルスケアプロバイダーコースの教材は比較的早い時期(3月〜4月)に出される予定で、2月末日まではガイドライン2005のまま開催していいことになっているから、この Interim Training Materials は使わないという選択もできるからなのかなといいように解釈しました。



さて、今回新しいのは市民向け(ハートセイバー)の動画教材がお目見えした点。

"HS Sequence Option 1"

というヤツです。

構成は既存のハートセイバーCPRコースの映像の切り貼り+新規に撮影した部分の合成でできています。(16:9と4:3で画面比が変るのですぐわかります)

この動画は医療者向けに比べるとわかりやすいです。

前から気になっていた点がいくつか解消しました。

 1.呼吸確認の時は服ははだけなくて良い
 2.呼吸確認は胸と腹の動きを見て5秒以上10秒以内で判断する
 3.呼吸確認時は気道確保はしない(傷病者に触れていなくて良い)

ただ、新たな疑問点も。

映像を見る限り、市民救助者(ハートセイバーレベル)の場合は、こういう流れになるようです。

  反応確認 → 通報 → 呼吸確認(5秒以上10秒以内) → 胸骨圧迫開始

つまり、市民救助者は反応確認と呼吸確認が別々のアクションになる模様。
また5秒以上10秒以内で確認する旨がはっきりアナウンスされています。

これはガイドライン2010のS687ページに文章としてもきちんと書かれているのですが、アルゴリズム表(フローチャート)からは読み取れない事実です。

simplefied_adult_bls.jpg


ちなみにヘルスケアプロバイダー向けの手順では、

  反応・呼吸確認(手短に) → 通報 → 胸骨圧迫開始

となります。

"CAB Sequence HCP Option 2"の動画を見る限り、この場合は本当にサラッと見るだけで、呼吸確認に5秒以上はかけていません。ガイドラインのハイライトでも「反応確認時に手短に確認する」と表記されており、5秒以上10秒以内ではない模様。

これが間違いではなく、正しいとすれば、市民向けと医療者向けでアルゴリズムがずいぶん違うことになりそうです。

市民には5秒以上10秒以内という時間をかけてきちんと(?)呼吸確認するように教えて、医療者はチラ見でいいよ、ということ??


結局、新しいきちんとしたガイドライン2010のDVDが出ないと、このあたりは不明瞭なままになりそうな予感。



さて、今回、動画教材が配信開始になりましたが、これだけではガイドライン2010コースは開催できません。

CPRの手順が変るからには、それに対応した新しいスキルチェックシートが必要。

またヘルスケアプロバイダーコースでは筆記試験の内容も変ります。

同時配信してくればいいのに、これらはまだの模様。

年内には出そろうと思うのですが。

posted by めっつぇんばーむ at 23:59 | Comment(2) | TrackBack(0) | AHAガイドライン2010