2018年09月24日

何が変わった? G2015 PEARSプロバイダーコース

悲願だったPEARSプロバイダーコースの完全日本語化。

それが2018年9月5日、ついに叶いました。

PEARSプロバイダーコースDVDPEARSインストラクターマニュアル の公式日本語版が発売開始になったのです。

PEARSプロバイダーコース インストラクターマニュアル公式日本語版G2015


思えば、私がPEARSと関わるようになったのは、2009年頃、AHAがPEARSコースを新たに開発したAHAガイドライン2005の時代からでした。

当時には米国でPALSインストラクター資格を取ってきた一部の日本人が国内で細々と開催していただけでした。私は主にその広報担当として、日本でのPEARS定着に努めてきました。

2015年には、PEARSプロバイダーマニュアルの日本語版(旧2010ガイドライン準拠)が制作されましたが、自費出版の扱いで、一般流通には乗らず、しかもインストラクターマニュアルやコースDVDは日本語化されなかったため、日本ではPEARSは公式講習だったのかと言われれば、あやしいまま今日まで来ていました。


それが、ようやく約10年ぶりに完全日本語化。うれしい限りです。


さて、G2015版でPEARSプロバイダーコースがどう変わったのか、ざっくりレビューします。


1.シミュレーション必須化

G2010版PEARSでは、コース進行を机上ディスカッションと、マネキンの前に立ってチームを組んで進行するシミュレーションの2つの進行方法を選べました。(受講者じゃなくて主催インストラクターが決める、という話です)

もともとはG2005時代は、シミュレーションが省略できるなんて、考えられなかったのですが、この5年間、やってみてAHAもわかったんでしょうね。シミュレーションなしのPEARSはありえない!

ということで、G2015では、晴れてシミュレーションは省略不可ということで落ち着きました。

インストラクターマニュアルでは、「レッスン11 総まとめ」ということで、80分の時間が取られています。

部屋に入って最初に患者を見たところから、人を集めて、評価・介入をし、最後は医師などに引き継ぎを行うところまでを、チームシミュレーションとして行うことが規定されています。

おもしろいことに、インストラクターマニュアルには「シミュレーションの場所に椅子を置かない(誰も座っていてはいけない)」とわざわざ書いてあります。

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机上の言葉だけの脳内シミュレーション(?)ではダメですよ、と、わざわざ牽制してあるのが興味深いですね(笑)


前回のガイドラインでシミュレーションを省略していいという愚策を打ってしまった反省なのか、今回のインストラクターマニュアルでは、他のコースにないくらいシミュレーションという教育技法のロジックと有用性について詳しく書かれています。

シミュレーション教育を勉強している人は一見の価値があるかもしれません。


2.スキルステーション必須化

PEARSにおけるスキルステーションとは、エアウェイや酸素マスク、ネブライザーなどの実際の使用方法を現物を使って実習させることを言います。

これもG2015では省略不可のものとして復興しました。

今回、工夫されているなと思ったのは、3症例ある呼吸器ケースのテーブル・ディスカッションのあとに、それぞれ受講者の一人をマネキンの前に立たせて、呼吸器系の観察と評価の流れを実演させるところです。

実際のところ、マネキンは苦しそうに息しているわけでないし、マネキンを見てもなんの情報も得られないのですが、マネキンを前に前にして「胸の動きを見ます、陥没やシーソー呼吸の有無は、、、」などと、受講者が得たい情報に自らアプローチすると、インストラクターが呼吸様式を演技したり、言葉で情報を提供して、アセスメントを進めていくということを体験させます。

答え的にはわかっていることでも、あえて人間を模したマネキンの前で行動させることで、机上訓練の一歩先を盛り込んでいるんだなというのがよくわかります。

この過程で、最終的には酸素投与やネブライザー投与も、実際の器具を使ってマネキン相手に実施させることをしてください、というのがインストラクターマニュアルに規定されています。



3.その他

その他、インストラクターマニュアルを見ていて感じるのは、受講者個々の理解やバックグラウンドに合わせて、質問の難易度を変えたり、シミュレーション・シナリオをアレンジして、受講者すべてにとって有意義な講習となるように調整・変更を図るのがインストラクターの役割であることが強く打ち出されているという点です。

これはシミュレーション教育とか、成人学習理論からしたら、至極あたりまえの話なのですが、古くからAHAインストラクターをしている人たちにとっては、AHAのレッスンマップは何が何でも変えちゃいけないとか、勘違いしている人が多いことから、ここまではっきり書かなくちゃ通じないのかなと感じました。

また、サイエンスとしてはPEARS領域の内容はほとんどガイドライン改定に伴う変更はありませんが、PEARSのゴールとしては、安定化だけではなく、その先の治療(サルブタモール噴霧やアドレナリン噴霧)にも踏み込んできている印象があります。

さらには、敗血症ガイドラインが改定されたこととも関係あると思いますが、輸液のボーラス投与のリスクについても強調されるようになったものG2010版からは変わったところかなと思います。



筆記試験問題、公式日本語版の訳に注意!

さて、今回、PEARSプロバイダーコース筆記試験問題も日本語化されていますが、翻訳がかなりざっくりしたところがあって、不正確というか受講者を惑わす部分が大きいなと言う点を懸念しています。

詳細はここには書けませんが、日本語版の試験問題だけを読んだのでは正しく解けない問題がいくつかありますので、試験の際には英語版も見てもらう必要がありそうです。このあたりは主催インストラクターがそれぞれ工夫しなくちゃいけないところですね。




さて、日本国内のPEARSはいまは移行期で、古いまま開催しているところもあれば、新しいDVDで開催しているところもあるし、ということで安定しません。

おそらく年明けくらいには完全移行すると思うのですが、それまでは、受講を考えている人は、最新のG2015正式版なのか、古い教材を使ったG2015暫定版なのかを、よく確認してから申し込みをすることをおすすめします。




posted by めっつぇんばーむ at 20:15 | Comment(0) | AHA-BLSインストラクター
2018年09月18日

BLS Healthcare Provider カードはすでに無効です。

Twitterで少し話題になっていた件について少々。

比較的最近、BLSプロバイダーコースを受けた人が受け取ったプロバイダーカードのデザインが、どうもおかしい、ということが話の発端です。

そのカードというのが下記のもの。


古いG2010版のAHA-BLSヘルスケアプロバイダーカード



そう、G2010時代の「BLSヘルスケアプロバイダーコース」と呼ばれていた時代の旧デザインカードだったのです。



今は、AHAガイドライン2015正式コースに完全移行しているのに、古いカードを出し続けているのって、いいの?



その答えは下記のとおりです。


BLSヘルスケアプロバイダーカードは今は無効




歴代のAHAカードの遍歴が参照できる the Course Card Reference Guide という資料によれば、この旧HCPカードは2016年4月16日以降は、発行禁止になっていることがわかります。

したがって、2年後の2018年4月以降は、このカードは世の中に出回っているはずはなく、資格としては完全に無効であると書かれています。



しかし、おかしなことに2018年に入ってからも、このデザインのカードの発行を受けた人がいるらしいのです。



なぜ、古いカードが発行されてしまったか?


勝手な推察ですが、カード発行業務をしているトレーニングセンター(日本ではITCとも言います)が、古いカードをいっぱい買い込みすぎて在庫がはけていないんでしょうね。

AHAプロバイダーカードやインストラクターカードは米国AHAからではなく、AHAと提携した日本国内法人(ITC)から届きます。

ITCは、プロバイダーカードの原紙をAHA代理店から購入し、国内事務局で氏名や有効期限を追加印字して、受講者に送っています。

カード自体は24枚単位で販売されており、通常、ITCはそれを何百枚も事前購入してストックしているのです。


ガイドライン切り替わりの時期だと、デザイン変更の可能性があるものですから、購入数・ストック数は慎重に調整していくものです。そして、新コースに移行した後は60日という移行期間が設定されますので、その間に旧カードはすべて吐けるように調整していくのがトレーニングセンターの役割です。

どうしても余ってしまったカードは、代理店に返品できるといいのですが、受け付けてくれないみたいで、結局捨てることになります。

それにしても、2年以上たった今も古いデザインのカードを出し続けているとすると、ずいぶんと買い込んじゃったんだな、もしくは、コース開催数があまりないところなのかな? と推察します。



受講者への不利益は?


さて、不幸にもこの旧カードを最近受け取ってしまった受講者はどうなるのか?

まあ、日本国内での話なら、気にしなくていいと思います。

そもそも日本でこのカードを資格として提出しなければいけない場面というのは、あんまりないはずだし、資格提出を求める立場の人も、このカードが公式には無効だなんて知らないと思いますので。

ただ、問題は、米国に留学するとか、米国で働く、米国の何かの資格認定のための提出が必要という人の場合です。

米国内では、このカードはもう出回っていませんし、無効であるとはっきり宣言されているわけですから、通用しない、もしくは偽造と疑われる可能性があるかもしれません。

その点、心配な人は、発給を受けたトレーニングセンターないしは、受講したサイトの事務局に新しい現行のBLSプロバイダーカードの再発行を相談(というよりクレーム?)してもいいかもしれません。


その場合の根拠となる the Course Card Reference Guide は米国AHAのウェブサイトで、誰でも見れる形で公開されていますので、リンクをたどってみてください。









posted by めっつぇんばーむ at 11:54 | Comment(0) | AHA-BLSインストラクター
2018年08月27日

AHAプロバイダーカード、日本もeCardに変わるのかな?

ここのところあまり更新していませんでしたが、今どきのネタとしてeCardのことを書いてみようと思います。

AHAのプロバイダーカード。BLSやACLSに合格後に送られてくるあの英文のカードですが、あれがなくなるという話題です。

この方向性は数年前から打ち出されており、AHAとしては、段階的に普及を進め、今年1月には米国内ではすべてのトレーニングセンターにeCardを発行することを求めるに至りました。まだかろうじて過渡期のようですが、ちかぢか紙のプロバイダーカードの販売が停止されることが決まっています。

今は、まだ紙のカードとeCardが混在していますが、すでに米国内では、紙のカードはold fashionという空気感になってきています。


さて、このeCard、読み方としてはイーカードですが、どんなものかというと、e-mailと同じ語法ですので、電子カードとでも訳せばいいのでしょうか。

簡単にいえば、形がある紙ではなく、インターネット上の電子データとして存在確認される証明書ということになります。

○○プロバイダーコースに合格すると、AHAからメールが届き、そこにあるリンクをクリックすると、専用ページでのパソコンやスマートフォンの画面表示として資格証明を確認できるという形になります。

今までは、ACLS資格を取ったといったらプロバイダーカードを見せたり、そのコピーを提出したりしたわけですが、eCardでは、専用ページにアクセスしてスマホの画面をちらっと見せて、資格証明をする時代になったということです。

eCardは、パソコンやスマホ画面での表示以外に、賞状のような形で印刷したり、名刺サイズのカードに印刷することもできるようになっています。

従来のプロバイダーカードでは、唯一の資格証明が紙切れ一枚という形でしたが、eCardでは、いくつかのパターンで資格証明ができ、そのオリジナルはインターネット上の電子データですから、紛失のリスクがなくなったのがeCardの長所です。

eCardの詳細は、日本国内で活動しているUSインストラクターの方たちがホームページで解説してくれているので、そちらを参照してください。


AHA eCard(イーカード・電子修了証)とは - AHA岡山BLS
http://jemta.org/ecard/ecard.html

AHA資格 電子認証システム eCard (イーカード)とは【BLS横浜】
http://bls.yokohama/ecard.html


今のところ、日本国内でeCardを発行しているのは、USインストラクターと呼ばれる米国のトレーニングセンターと提携して活動しているインストラクターだけで、その数はおそらく10〜20人程度と思われます。

eCardは米国の話で、日本ではほぼ無関係の話ではあったのですが、先ごろ、日本の国際トレーニングセンターの代表者の集まりが開かれ、日本でも2019年1月で、紙のプロバイダーカードの供給を停止するという話が持ち上がりました。

つまり、来年の1月以降、日本でもeCardへの完全移行の可能性が具体化してきたのです。

日本においては、CPRverify(AHAインストラクターの皆さんは聞いたことありますよね?)からインストラクターがRosterデータを登録することでeCardが発行されるシステムにしたいみたいで、去年あたりからCPRverifyの促進キャンペーンが行われていました。(米国のTCは別で、CPRverifyではなくInstructor Networkから登録します)

CPRverifyは日本語化されましたので、それほどハードルは高くはないとは思うのですが、日本のITCとしては、否定的な意見が多く、2019年1月のeCard移行については、AHAが最終的にどのように判断するかは現時点、未知数です。

AHAとしては、わざわざ日本のためだけに紙のプロバイダーカード原紙を製造・販売を続けるということは考えにくいことですので、日本でもやがてeCardに移行するのは間違いないでしょう。

この電子資格認証という制度は、AHAに限らず、日本では、例えばサッカーの審判の資格証も電子認証になっていると聞きます。

時代の流れ、なんでしょうね。



米国で電子認証のeCardがここまで定着したのは、病院などの雇用者が従業員のBLSやACLSの資格管理に便利という点が大きいと思います。

ご存知の通り、米国の医療従事者はBLSやACLS資格の取得と維持が、事実上必須可されているため、病院雇用者側としては、何千人といる従業員の資格チェックが大きな負担でした。

その点、eCardシステムでは、従業員からeCardコードと呼ばれる12桁の個別番号の提出を受ければ、インターネット経由で、その資格の有効性をまとめてチェックできるので、管理が簡単という絶大なメリットがあります。

日本では、ACLSやBLSの資格チェックといえば、麻酔科専門医や循環器専門医の申請の他、国際病院機能評価JCI受審のため、というくらいなので、この資格チェックシステムが活きてくる場面は限局的かもしれません。

さて、この先、どうなっていくんでしょうね?







posted by めっつぇんばーむ at 20:52 | Comment(0) | AHA-BLSインストラクター
2018年03月24日

BLSプロバイダーコース指導がいちばん難易度が高い理由

久々の更新です。

BLSに関しては、最近は後輩育成が中心となっています。

G2015コースに切り替わって、もう久しいですが、改めて思うのはBLSプロバイダーコースって難しいなという点です。

BLS、ACLS、PEARS、PALSと比べてみたら、内容のシンプルさでいえばBLSが一番簡単そうですが、ところがどっこいAHA-ECCプログラムの中で、指導という点ではいちばんやっかいなのがBLS。

なにが大変って、ひとえにビデオベースってところですね。

PWW(Practice while Watching)というDVD映像を見ながら真似して練習するAHAの専売特許的な指導法。これが最大限に発揮されたのがBLSプロバイダーコースなので、インストラクターは受講者をビデオに合わせて動くように誘導しなくちゃいけない。

これが難しいんです。

同じPWWでも「対応義務のある市民救助者」向けのハートセイバーCPR AEDコースは、ビデオの作りが丁寧なので、逆にインストラクターはビデオ操作をするだけで簡単に進行できるのですが、AHAはヘンに玄人向けなので、中途半端な省略がいただけない。

例えば、人工呼吸練習では、ポケットマスクはマスク・フォールドがいちばん難しいのに、画像をみて真似しているヒマがなく、スッと流れてしまったり。

そもそも人工呼吸を、PWW(見ながら練習)でさせるって根本的に間違っていると思うんですよね。ポケマで呼気吹き込みしている最中に画面見てたらダメ。だって、胸が上がるか見なくちゃいけないし、入れ過ぎちゃいけないわけだし。

だから、人工呼吸のPWWで画像を見て真似する部分って、マスクの当て方の部分だけなんです。なのに肝心のそこが使えない作りってなんなんだろうと思います。

こういう素直にレッスンプランとDVD通りにやっても、うまくいかないのがBLSプロバイダーコースの難しいところ。


更にいうと、DVDプロバイダーコースの最初の実技練習、傷病者評価のところなんて最悪ですよね。

反応なしで、「誰か!」と叫ぶのはいいけど、「119番! AED!」と言うまでの間にタイムラグがある。これをふつうにやったら、受講者は多いに戸惑います。

なんなの? これ? って、キョトンとしちゃいます。

これって、教育工学的に受講者のやる気を落とすマイナス要因です。特に期待して受講したAHA講習との最初の練習が、こんなワケワカメだとかなりの打撃。

AHAガイドライン2015の教育の章に書いてあるように、インストラクショナル・デザインと成人学習理論に基づいて作りましたよ、と宣言されているのがG2015講習。

だとしたら、インストラクターも成人学習理論を踏まえた展開をするのは当然のこと。

米国人向けに作られたDVDの構成によって、日本人受講者の学習意欲を削ぐ要因があるのであれば、その溝を埋めるのが日本人インストラクターの仕事です。

トレーニングセンターによっては、標準化教育なんだから「インストラクターはコース中に喋っちゃいけない」とか言っているところもあるようですけど、教材設計の背景を考えてないんでしょうね。

ふつうに考えても、高い受講料を取って、顧客に戸惑いや不快な思いをさせちゃダメじゃないですか。

BLS-2015の最初のPWW、周りに助けを呼ぶのと、救急対応システム発動とAED手配のタイミングがずれているのには、これはこれでG2015の改訂の意図を考えればちゃんと意味がある部分で、この部分は補足説明してあげないといけないと思うわけです。



一言で言えば、BLSプロバイダーコースはガイドライン改訂の本質部分がぎっしりつまっています。これ自体はBLSコースの大きな魅力なのですが、それが指導員向けのレッスンプランに書かれていないのが問題と言えます。

この点は、ガイドラインそのものをちゃんと読めば、なるほどね! とわかるんですけどね。

この違和感の謎を解いて、大筋としてのAHAの意図を汲み取って、溝を埋めていく。

これがBLSプロバイダーコース指導の難しさです。
逆にDVDなんか使わずに、自分で指導したほうがよっぽど簡単。


この難しい部分を他のインストラクターにどう指導していくのかが、俗にいうインストラクター・トレーナー(AHA的にはFacultyといいます)の力量で、さらにはトレーニングセンターという組織母体の教材設計理解のポテンシャルなんでしょうね。






posted by めっつぇんばーむ at 23:55 | Comment(0) | AHA-BLSインストラクター
2017年12月31日

AHAインストラクターに「所属」という概念は、ない。

今、日本国内には10近くのAHA国際トレーニングセンター(ITC)が認可されています。

AHAインストラクターが、プロバイダーカードを発行する公認講習を開催するためにはこれらのトレーニングセンターのいずれかと提携している必要があります。

というのは、インストラクター個人には、プロバイダーカードの原紙の購入権限がないからです。

プロバイダーカードやインストラクターカードの原紙(台紙)を購入できるのはトレーニングセンターの責任者(TCコーディネーターと言います)だけなので、公認講習を開催し、資格認定を行うためにはトレーニングセンターとの提携が必要なのです。

この「提携」と訳した元の英語の単語は alignment です。

時々、このアライメントを「所属」と勘違いしている現役インストラクターがいるので注意が必要です。

所属というと、登録しているトレーニングセンター以外では活動できないようなイメージがありますが、そんなことはありません。

AHAインストラクターには、「所属」という概念はありません。あくまでも「提携」なのです。



インストラクター資格というものは、個人に帰属する資格であり、その資格をどう使うかは個人の自由です。

インストラクターコースを受けたのがAトレーニングセンターであっても、その後、インストラクターカードの発給を受けるのがBトレーニングセンターであっても構いませんし、最初はAトレーニングセンターで活動していても、条件が変わればBトレーニングセンターと提携を変更するのも自由です。

さらに言えば、Aトレーニングセンターと提携を結びつつ、Bトレーニングセンターとも提携を結んで、両方のトレーニングセンターで活動することも可能です。

所属ではなく、提携であるというのは、こういう意味です。

日本社会的には、株式会社A社の社員でありつつ、有限会社B社の社員ということはあまりないことなので、ピンと来ないかもしれませんが、AHAインストラクター資格というのは米国文化での資格ですから、組織ありきではなく、個人が主体であり、その個人がどこと契約を結ぶのも自由という考え方に立脚しているのです。

このことは、AHAのグランドルールが書かれたProgram Administration Manual(PAM)を見れば分かりますし、AHA Instructor Networkというインストラクター専用サイトを見てもらっても自明なのですが、日本の狭い世界観の中でインストラクターになった人にはなかなかわかりにくい部分のようです。

参考まで、下記がAHAインストラクターとして登録する際のAHA Instructor Network登録フォームの一部ですが、最初から提携先は複数選択できるように Primary TC の他、Secondary TC を入力する欄が設定されています。


インストラクターとしての提携は複数登録できる



現に私も2つのトレーニングセンターと提携していて、BLSやACLSコースを開催するときは、どっちのトレーニングセンターに書類を送るかによって、プロバイダーカードの発行元がその都度違います。

どっちに登録して開催しても、私個人の活動実績ということでは変わりません。

蛇足ながら、この「提携」は、インストラクターが自分の名前でプロバイダーカードを発行するために必要な条件であって、単なるアシスタント・インストラクターとして活動するだけなら、トレーニングセンターとの提携は関係ありません。AHAインストラクター資格を持っていれば、世界中のどこのトレーニングセンターの講習会にも正式にスタッフ参加できます。


これが本来のAHAインストラクターとしての在り方です。

この提携を「所属」と勘違いしていると、いろいろと理解できない点が生じてくるんでしょうね。

組織によっては、作為的に所属という言い方をして、他の選択肢を与えない、自分のところに縛り付けたいと考えるところもあるのかもしれません。

しかし、もともと米国文化にもとづいて作られた制度で、その情報はすべて開示されています。

AHAには、日本社会の悪いところでもある「上が言うとおりにしていればいい」という文化はありませんので、AHAインストラクターとしての誇りの下、自分で情報にアプローチして、自分の頭で考えられるインストラクターでありたいですね。


posted by めっつぇんばーむ at 20:28 | Comment(6) | AHA-BLSインストラクター
2017年11月29日

救命法指導員は、その重い責任を自覚すべし−「AED充電中の胸骨圧迫」編

心肺蘇生法とかBLSのインストラクター/指導員って、責任重大で、実はハイリスクな仕事なんじゃないの? という点で、前回は 人工呼吸省略を教える危険性 についてお話しましたが、今回はその続きとして、AEDの充電中に胸骨圧迫を行うように指導することについて取り上げます。


AEDを使う際に、心電図解析の後、充電中の僅かな時間でも胸骨圧迫を行うようにと教わった方、いませんか?


結論からいうと、これは日本ではNG、やってはいけない間違った指導なのですが、そのように教えている指導員が少なからず存在しているようです。

AED充電中に胸骨圧迫を行ってはいけない理由は、大きく2つです。


 1.胸骨圧迫を体動と判断して充電がキャンセルされる可能性があるから
 2.AEDの指示に従わない動作であるから ← 医師以外が除細動を行う法的要件から外れる



この問題は、ガイドライン2010の頃から持ち上がるようになりました。特にACLSプロバイダーコースの中のBLSデモ映像の中では、AEDを使う場面で明らかに充電中に胸骨圧迫を行っており、これを日本ではどう指導するかという点が日本人インストラクターの間では話題となった記憶があります。

時を経て、ガイドライン2015のBLSプロバイダーコースのDVDでは、IFP(病院内)設定の解説の中で、AED充電中のわずかな時間でも胸骨圧迫を行うことはとても重要なことと明言されるようにもなり、(免許のもとに責任を取れる人しか受講しない)ACLSとは違って、非医療従事者の人に影響が及ぶ懸念が出てきました。

除細動の効果は、ショックの直前まで胸骨圧迫を行ったほうが優位に高いというエビデンスが出てきたのがG2010頃です。手動式除細動器を使う二次救命処置の世界では、もはや常識的になり、だからこそ、パドルショックよりパッドショックを推奨するという認識も広まってきています。

この点からすれば、AEDであっても、ショックの直前、つまり充電中も胸骨圧迫を行ったほうがよいと考えられますが、勘違いしてはいけないのは、AEDは「自動」体外式除細動器であるという点です。

AEDは心電図解析を自動で機械的に行います。心電図解析をするタイミングを人間がコントロールすることはできません。AEDの機種によっては、これは、ACLSやACLSでいうところの「最終波形VFです!」というチェックのため、ショック直前の充電中も心電図の解析を続けている機種があります。

もしこのタイミングで胸骨圧迫を再開してしまうと、AEDが「体動あり」と検知してしまう可能性が否定できません。そうなってしまうと、充電はキャンセルされて、除細動のショックが遅れてしまいます。ご存知の通り、除細動のショックはVF発生から速ければ速いほうがいいわけで、1分遅れると除細動成功の可能性が7〜10%下がると言われているとおりです。



また、別の観点からすると、法的な問題もあります。

電気的除細動という医行為を医師以外が行ってもよいと法解釈が示されたのが2004年7月のことです。

今でこそ、AEDは一般市民が使っても構わないという点は周知されていますが、それが解禁されたのは2004年。それ以前はダメだったのです。

医学知識のない素人が高度な治療行為である除細動を行えるように敷居が下がったのは、心電図読影機械が判断してくれて、その機械の指示通りに使う限り、素人であっても安全に使えることが実証されたからです。

この安全性は、「AEDの指示に従って操作すること」が前提条件となっています。これから外れたことを行ってしまうと、医療知識がない人がAEDを安全に使えるという担保がなくなってしまうというのは、考えてみればわかると思います。

ここでいうAEDの指示というのは、言い換えれば医師の指示みたいなものです。

医師が離れろと指示しているのに、それに反して胸骨圧迫を行っていいのか? と考えてみればわかりやすいかもしれません。

現在、日本国内で承認を受けているAEDの中で、充電中に胸骨圧迫を再開するように指示する機種は1つもありません。

従って、日本国内のAED講習において、充電中に胸骨圧迫をするように、と指導するのは正しくありません。



また、もともとAED講習で受講者に教えるべき最も重要なポイントに立ち返ってみると、

1.電源を入れる
2.AEDの指示を聞いて、それに従って行動する

この2点に関して異論はないかと思います。

すべての心肺蘇生法指導者は上記を伝えているはずです。それなのに、AEDの「患者に触れないでください」という、AED指示を無視した行動を教えるというのは矛盾していますよね。

特にこの点は、日頃ACLSやICLSで手動式除細動器での蘇生指導に携わる医師や看護師に多い印象があります。

手動式除細動器とAEDの違いを正しく認識することが重要です。

そして、医学的な正しさと、製品・機械の特性と仕様上の正しさは、かならずしも一致しません。さらに言えば法律的な正しさも…


いまは除細動の遅れが過失であるとして訴訟が起きる時代になっています。

院内での心室細動に対する早期除細動(原総合法律事務所Web)
http://www.haralawoffice.com/archives/1623

AEDの充電中に胸骨圧迫をしたことが原因で、除細動の遅れてしまった。BLSインストラクターにそうしろと指導されたから、、、、ということになったら、、、どうでしょう?

救命法指導員はその責任を自覚して、正しい情報をブラッシュアップし続ける努力が必要です。



posted by めっつぇんばーむ at 11:37 | Comment(0) | AHA-BLSインストラクター
2017年10月29日

BLS/ACLS スキル獲得と資格取得の意味の違い

私は、AHA-BLSインストラクターとして、BLSプロバイダーコースや、ハートセイバー・ファーストエイドなど資格認定コースを開催していますが、併せて応急手当普及員として普通救命講習Iという消防庁認定資格の発行もしています。

片や、そういった特定団体の公認講習とは別に、自分自身で組み立てたオリジナルのBLS講習やファーストエイドプログラムを有償でやることもありますし、地域貢献活動として無償ボランティアとしてCPRセミナーを開催することもあります。


私からすれば、対象や目的に合わせて最適なものを提案するだけです。規定の◯◯コースがマッチするのであればそれを提供するし、なければ作ればいいだけで。別に◯◯コースに誘導しようという気はサラサラありません。

だって、◯◯コースにすると、教えなくちゃいけない内容が決まっちゃうから、柔軟性がなくなっちゃうんですよね。

◯◯コースのいいところは、幅広くいろんな対象に無難に対応できるように浅く作られているところ。逆言えば、具体的にターゲットが絞られている場合は浅すぎて力不足です。


資格が必要という人には資格認証手数料が掛かる有料講習を提案しますし、資格なんていらない、技術が身につけばいいんだという人には、より短い時間で現場のニーズに合わせた焦点化した講習を廉価で提供しています。



BLSとか救命講習を受講することの目的とか意義ってなんなんでしょうね?



受講料が高い安いという意見を聞くにつけ、いつも、このことを考えてしまいます。


スキル獲得資格取得 という2つの側面があると思うのですが、ここをごっちゃにしているから不毛な議論が多いんじゃないでしょうか?

資格が必要というのなら、高いお金を出してでも、◯◯コースを受ける必要があるでしょう。

私個人が勝手に資格を作って証明書を発行してもいいのですが、きっと名前の知れた大きな組織の公認証書じゃないと意味をなさないと思います。だったら、ブランド料というかパテント料として、料金が高くなるのは致し方ないですよね。


しかし、日本においては救命スキルに関しては意識が低く、資格を求められるケースはあまりありません。

特に医療従事者に関して言えば、例えば医師免許とか看護師免許を持っていれば、BLSなんて当然できるものとして認知されていますので、ことさらBLS資格とかACLS資格とか求められていないのが現状です。

であれば、日本の医療従事者にとっては救命スキルに関しては、資格という側面での意義はあまりなく、技術獲得さえできればOKといえます。

そう考えると、いちばん良いのは病院とかの職場単位で自院に合わせた形で研修プログラムを作って習得させるのが最善と言えるでしょう。


◯◯コースだと、資格を発行する関係上、その病院には必要のないスキル(例えば小児蘇生とか、オピオイド過量とか)までも時間をかけて教えなくちゃいけないので、そんなのは無駄です。


今では、多くの病院施設で、自前でBLSトレーニングを実施するところが多くなってきていますよね。

同じようにACLSもやっていけばいいんです。公認講習にするから受講料が何万円だとかそういう話になるので、自施設で自前の機材で自院スタッフが業務時間内で教えれば、支出はゼロです。


それができなくて外部に委託するのであれば、講師料を含めてお金が発生するのは当然のこと。

現実問題、蘇生法の指導員を育成するのはなかなか難儀で時間もかかります。

自前のトレーニング・プログラム開発と指導員養成までの経費を考えたときに、外部のプロに委託したほうが結果的には安くつくと判断する病院もあります。

またオリジナル研修では、資格認証という点では弱いという点に着目する病院組織もあります。例えば国際病院機能評価JCI認証を狙う病院では、その点が顕著です。

資格の持つ意味として、病院の患者安全意識のPRや、訴訟対策という視点もあります。いくら自分たちできちんとトレーニングしていると言っても、それを証明するものがないと主張が弱いと考えれば、社会的に認知されている資格にすがるのも手です。


医療従事者はすべからくBLSができるべきで、部署によってはALSも必須。

そこに異論はありませんが、自前でトレーニングできているのであれば、あえてお金をかけての「受講」はいらないと思いますし、病院や個人として資格のメリットを感じないのであれば、資格なんて不要です。

提供する側は、持っているスキルや資格に応じて、いろいろなプログラムを提供します。

ユーザーや依頼する側は、目的に合わせて選べばいい。それだけだと思います。



posted by めっつぇんばーむ at 23:02 | Comment(0) | AHA-BLSインストラクター
2017年10月18日

AHA講習中は禁煙です。休憩時間にタバコを吸っているインストラクターがいたら通報しましょう

アメリカ心臓協会 AHA 講習は禁煙です。

講習中、会場内はもちろん、会場施設敷地内での喫煙も禁じられています。

AHA講習(BLS/ACLS/PALS/PEARS)は禁煙です

AHAプログラム運営マニュアル(PAM)日本語版より


喫煙癖のある受講者の方は、その日、1日朝からずっとタバコを吸わないつもりでいて下さい。

当然ですが、AHA講習では喫煙所のアナウンスはありません。

だからと言って、昼休みに近くのコンビニまで行ってタバコを吸おうなんてことが考えないで下さい。

最大3人で交代しながら、呼気吹き込みを行うBLSマネキン。煙草臭くなったら、他の受講者に迷惑です。



アメリカ心臓協会(AHA)は、心臓病と戦う学術団体です。

AHA Fighting Heart Disease and Stroke


心臓病や脳卒中のリスクを有意に高めることが証明されているタバコを許容することはできません。

そんなスローガンに賛同して、自らAHA-ECCプログラムの推進に身を捧げることを志したAHAインストラクターたちは、もちろんタバコを忌避しています。

そんなインストラクターたちが、タバコ臭かったり、ましてや、休憩時間にタバコを吸いに行っているということはAHAポリシーからしてあり得ないことです。


受講者の皆様、万が一、タバコの匂いを漂わせているAHAインストラクターがいたとしたら、それは大問題です。

講習の最後に、コースの評価表と呼ばれるアンケート用紙が配られます。

2016_Japanese_BLS_Course_Evaluation.png


アンケート用紙に喫煙するインストラクターがいて、不快であったことをはっきり書くようにしましょう。

またコース中に、喫煙所に関するアナウンスがあったとしたら、コース全体に関わるAHAポリシーに反する「重大な問題」です。

アンケート用紙の末尾に書かれている通り、AHAの国際部門(ECCinternational@heart.org)に直接通報していただくようにお願いいたします。

以上、スモークフリーな学習環境維持のために、皆様ご協力いただけますよう、切にお願い申し上げます。




posted by めっつぇんばーむ at 21:49 | Comment(0) | AHA-BLSインストラクター
2017年06月23日

自分の価値の決め方 〜1日の講師料をいくらに設定するか?

久々の更新です。

インストラクターとしての報酬の決め方の話です。

BLSとかACLSみたいに、ひとりあたりの受講料をいくらと決めるのは、簡単です。
なんとなくの相場があるし、必要経費を計上して加減をすればいいから。

難しいのは病院とか保育園などからの依頼講習です。

「コース」ではなく、講演だったり、オリジナルのプログラムの依頼だったり。

こういう場合、講師としてのギャラを決めて、そこに必要経費を乗せていくという計算をしていきます。

ここでいう講師としてのギャラが、まさに自分の価値になります。

皆さんならいくらに設定しますか?


ここでは便宜上最低価格という視点で考えてみたいと思いますが、例えば1日の講師料を2万円とした場合、それは高いか低いか?

考え方として、それを今の自分の本職での給与と照らしてみると、目安が付きやすいかもしれません。

だいたい1ヶ月の労働日数は20日くらいでしょうか?

となると、2万円×20日=40万円。

月の手取りで40万円と考えたら、たいていの看護師インストラクターにとっては、やや高給という印象かもしれません。

しかし、です。

給料明細を診てもらうと分かる通り、サラリーマンの実際の給与はもっと高くて、社会保険料や年金、税金などが引かれての手取りです。

さらにいうと、病院勤務であれば、この他にボーナスの支給がありますし、年金と健康保険料は半分は病院が負担してくれているという現状もあります。

それを考えると、40万円の手取りであっても、そこから年金や保険や税金を全額自分で支払うと実質的には20万円台になってしまいます。年収で言ったらボーナス分もマイナスです。


プロのインストラクターとして対価はいくらが妥当か? そう考えると、2万円では少なそうですね。


専業、兼業で考え方が違うとは思いますが、対価をどう決めたらいいか悩むという相談をよく受けるので書いてみました。

参考になりましたら。



posted by めっつぇんばーむ at 20:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | AHA-BLSインストラクター
2016年06月12日

「これは米国の講習プログラムですから」という言い訳はもう通用しない




リアリティと、現場に合わせた柔軟な実行性


これがAHAガイドライン2015講習の最大の特徴です。

これまでのAHA講習では、指導内容のアレンジに関しては寛容性が低く、日本の医療現場ではそぐわない内容であっても、「これは米国の講習プログラムですから」といって、強引にアメリカのやり方を押し付けたり、日本事情に関する説明はご法度とされるような態度が横行していました。

しかし、G2015正式版講習からは、それが変わります。

指導内容の中に"Local Protocols Discussion"というセクションが正式に導入されました。

AHAガイドラインではこういっているけど、日本ではどう? あなたの職場では、この通りにできる? なにか別のルールがあるんじゃない? 実際どうしたら良い?

ということをディスカッションするような時間がコース中に設けられたのです。

ローカル・プロトコル・ディスカッション


ここでAHAインストラクターに求められている基本的態度は、「ローカルルールに従うべき」ということです。

AHA ECCプログラム講習はAHAガイドライン準拠です。そこをコース中に変えることは許されていませんが、学んだことを、自分の国や地域、またメディカルコントロールや病院の業務指針に反しない範囲でどのように活かすか?  その実行性へのアレンジメントの手助けがAHAインストラクターに求められているのです。

そのため、AHAインストラクターはAHAガイドラインを熟知していればいいという時代は終わりました。

このセクション自体はオプション扱いですが、日本国内でAHA講習をやる限りは絶対に外しちゃいけない部分です。
ということで、日本で活動している私たちは、少なくとも日本版のJRC蘇生ガイドラインについても熟知していなければなりません。

そして、日米のガイドラインの違いを把握しておく必要があります。


今までも実行性を意識したインストラクションをしてきたインストラクターにとっては当たり前の話かもしれませんが、今後はすべてのインストラクターに日米両方のガイドラインの勉強が求められるようになったわけです。

幸い、日本のJRC蘇生ガイドライン2015は出版もされていますが、ネット上で無料で読むこともできます。

日本蘇生協議会ウェブ JRC2015オンライン版ダウンロードページ

PDF形式で章ごとに配信されていますので、スマートフォンやタブレット端末に入れておくと便利です。

また、市民向け講習(ハートセイバーシリーズやファミリー&フレンズ)を手掛ける人は、JRCガイドライン2015を元に作られた講習指導要項である「救急蘇生法の指針〈2015〉市民用・解説編」の精読は欠かせません。

解説編を含まない、ただの「救急蘇生法の指針<2015> 市民用」(39MB:PDF直リンク)だけなら、厚生労働省からPDFで無料配信されています。


今回のLocal Protocols Discussionのお陰で、借り物に過ぎなかったAHAガイドライン講習が日本社会で活かせるようになったといえます。

ぜひ、日本のインストラクターは勉強を重ね、より日本社会で意味がある講習展開をしていって欲しいと思います。






posted by めっつぇんばーむ at 16:56 | Comment(0) | TrackBack(0) | AHA-BLSインストラクター
2015年09月13日

日本に新しいAHAトレーニングセンターが設立された模様

AHA Instructor Network周辺を徘徊していて見つけてしまいました。

いつのまにか日本に新しいAHAトレーニングセンターが認可されていた模様。

日本に新しく設立されたAHAトレーニングセンター


ただ、よくよく見てみると、トレーニングセンターのIDがMTN0700。

そしてトレーニングセンターコーディネーター名は外国人名で、メールアドレスも末尾が@us.af.mil。

住所は嘉手納。

そう、米軍のAHA Military Training Networkのトレーニングセンターでした。

MTNの登録も日本という枠内に表示されるんですね。知りませんでした。

それでも少なくとも以前はありませんでしたから、日本国内の米軍基地内に新しくトレーニングセンターができたってことなんでしょうね。

私の知る限り、海軍MTNも空軍MTNもトレーニングセンター自体は本国にあって、日本で展開しているのはあくまでもサイトだと関係者から聞いていました。

詳しい事情はよくわかりませんが、ITCの私たちにはあまり関係ない話だったようです。





posted by めっつぇんばーむ at 00:46 | Comment(0) | TrackBack(0) | AHA-BLSインストラクター
2015年06月03日

「AED処置遅れ植物状態」男性が病院提訴 …河北新報報道について

病院内でのAED使用が遅れたということで訴訟が起きたというニュースがありました。

「AED処置遅れ植物状態」男性が病院提訴



細かいことはわかりませんし、視座の置き方によって色々な問題点が見えてきそうですが、少なくとも言えるのは、これまでブラックボックス化されていた病院内での救命処置に対して、家族から嫌疑を投げかけられる時代になってきた、ということです。

これまでは「最善を尽くしました」というパターナリズム的な説明で納得が得られた部分でしたが、それに甘えていてはいけません。

生活者ガバナンスの変化に、私たちは敏感であり、倫理観高く仕事をしていきたいですね。
そのためにも、日々の研鑽・訓練、予測的な関わりが重要です。


「AED処置遅れ植物状態」男性が病院提訴
 仙台オープン病院(仙台市宮城野区)に入院した宮城県大和町の男性(57)が心肺停止後に遷延性意識障害(植物状態)になったのは、自動体外式除細動器(AED)の使用が遅れたためだとして、男性と妻が1日、病院を運営する公益財団法人仙台市医療センター(同)に1000万円の損害賠償を求める訴えを仙台地裁に起こした。
 訴えによると、男性は2013年4月、十二指腸がんで入院。手術後、腹部の激しい痛みを訴え、コンピューター断層撮影(CT)を実施したところ、撮影中に心肺停止状態となった。男性はAEDの使用で約15分後に蘇生したが、現在も意識が戻っていない。
 男性側は「病院は男性の心肺停止後、別の蘇生法を試すなどしていた。AEDを直ちに使用していれば、植物状態になるのを避けられた可能性が高い」と主張している。
 賠償請求額は男性の事故前の収入などから約8040万円と算定したが、今回は一部の請求にとどめた。審理の状況に応じて増額するという。
 仙台オープン病院総務課は「訴状が届いていないのでコメントできない」と話している。






posted by めっつぇんばーむ at 17:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | AHA-BLSインストラクター
2015年01月03日

院内トレーニングサイトをつくろう【個人の思いをムーブメントに変える】

昨日は、病院内でAHA講習を開催していくためには病院内でのネゴシエーションが重要という話をしました。

AHA講習といえば、病院と親和性が高いと思いがちですが、実際はなかなか難しいんですよね。

私が関わったケースで、うまく病院内トレーニングサイト立ち上げにこぎつけて軌道に乗っているケースは次の2つです。

・病院が患者安全教育としてAHA ECCプログラムを組織的に採択した
・救急センター師長が発起人となり救急部長を巻き込んで院内サイトを立ち上げた

比較的トップダウンに近い感じで、完全なボトムアップ型というのはあまり聞かないのが現状です。

米国と違って、HCPカードやACLSプロバイダーカードがなくても就労できる現状があり、救命スキルの習得義務も技術証明も求められていない日本にAHA講習はそぐわない、と言われればまさにその通り。

医療者が確かな救命スキルを維持するべきというのは道義的に正しいのですが、それは法律や日本の医療制度が必ずしも求めていないという現実を理解する必要があります。


それでは、ボトムアップ式にAHA ECCプログラム開催にこぎつけるにはどうしたらいいでしょうか。

病院の安全対策部門の責任者や、発言力が大きい診療部の部長クラスの医師を巻き込んで、病院としての取り組みにAHA講習を組み入れるのがもっとも理想的かもしれません。

そうした大きな動きを起こすためには、どのようなアプローチをしたらいいか?

仲間は多いほうがいいでしょうね。

安全対策関係の委員会委員に根回しをしておくことも重要です。

また自分が所属する部署の師長は絶対に仲間にしておかないとダメです。

救急認定看護師も外せませんし、救急科があるなら、その部長も。麻酔科、ICU、循環器なんかも。

大病院ならたいていあるクラブ・同好会活動制度を利用するというのも手です。救急サークルみたいのを立ち上げて、個人からの発信ではなく、団体からの発信という図式にするとか。

そうやって有志が集まったら、まずはその活動や考えをPRする機会を作ります。

手堅いのが、AHAのファミリー&フレンズCPRコースDVDを使ったミニCPR講習がお勧め。
1時間程度で無料でできて、AHAコースの特色のPRにも使えます。

もともと職員向けBLS講習をやっているような病院だったら、きっとそこでも抵抗勢力が出てきますので、職員とその家族向け、親子で学ぼうとか、そういう切り口なんかもお勧めです。さらには外来に張り紙でもして、地域住民に参加を呼びかけるというのもいいでしょうね。

これって、病院が使命として掲げている地域貢献の絶好のPRになりますから、病院事務部なんかは歓迎してくれるんじゃないでしょうか?

このように個人の発想を、まずはチーム力に変えて、それを病院を動かすムーブメントに持っていく。

トップダウンの決定がない以上、このような地道な活動で下積みをすることが肝要と思います。

結局、一気に高みを目指すから、構想だけで立ち消えに終わってしまうのです。

熱意があるなら、まずは動きましょう。ここまで言っても何も行動しない人は、きっと最初からやる気がないのです。




posted by めっつぇんばーむ at 09:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | AHA-BLSインストラクター
2014年09月11日

AHA米国本部からのアンケート依頼、中身は日本語!

AHAインストラクターの皆さん、おとといあたりにECC Surveysという差出人からメールが届きませんでしたか?

AHA ECC: Your Opinion Is Important To Us

という件名の英文メールです。

これ、AHAからのアンケート依頼です。メール本文は英語ですが、アンケートページに飛ぶと、自動認識されるのか日本語に切り替わります。

なので、皆さん、英語にひるまず、ぜひトライしてみてください。

15分くらいかかると書かれてましたが、まあ、確かにそんな感じ。10分くらいだったかな。

内容は、AHAらしい、というか、e-learningに関する意識調査みたいなものが多いです。AHAって最近、受講者マニュアルのe-book販売なんかも始めているんですよね。

日本ではインストラクター・エッセンシャルくらいしか使われていませんが、オンラインで学ぶコースもすごい力を入れている団体ですし。

設問の途中でPEARSプロバイダーコースの可能性に関する設問がありました。

そして最後には、AHA ECCプログラムへの要望を書く自由記載欄も。

ぜひこのあたりに皆さんの要望などを寄せていただき、日本でのAHAコース展開がよりよくなればと期待したいところです。


ちなみに私は自由意見には次のようなことを書きました。

・PEARSプロバイダーコースの日本語化
・Heartsaver Pediatric First Aidコースの日本語化
・G2010版のFamily & Friends First Aid for Childrenコースの早期リリース

あと、書けばよかったかなとあとで思ったのは、

・PEARSのような評価・アセスメントコースの成人版
・Instructor Essentilsの日本語化
・BLS for Prehospital Providerコースの日本語化

あたりですかね。

米国のAHA本部に日本語で直接意見を言える、またとないチャンス。
ぜひみなさんも要望を出してくださいね。



posted by めっつぇんばーむ at 18:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | AHA-BLSインストラクター
2014年08月16日

【速報】AHA-BLSに病院外心停止コースが新設! BLS for PHP

地味に新展開を見せるアメリカ心臓協会ですが、PEARSプロバイダーコースに続いて約6年ぶりに新コースが誕生しました。

その名も、BLS for Prehospital Provider Course (BLS-PHP)。

プレホスピタル、つまり病院前ということで、救急隊員など現場で救命を行う人に特化したプロフェッショナルのためのBLS講習です。

日本での展開を目論みつつ、さっそく米国から教材を取り寄せてみました。

BLS for プレホスピタル・プロバイダーコース


結論からすると、この救急隊員向けBLSコース、日本での展開は難しそう。

中身は悪くないんですよ。地域のプロトコルを説明するセクションもあるので、日本向けにアレンジできるんですけど、問題は英語。

DVDとかテキストなら字幕をつけたり、読解用の日本語補助資料を作ったりしますが、今回のBLS-PHPコースは、インターネット上でのe-Learningと、クラスルームでの実技練習&ディスカッションの組み合わせからなる混合編成なんです。

必ず英語のe-Learningを受けなくちゃいけないしくみ。筆記試験もオンライン上で行われます。

さすがにインタラクティブに進行するe-Learningを個人レベルでは日本語化はできませんから。


コース内容としては、実技試験に関するゴールはBLS for Healthcare Providerとまったく同じものです。

そこに追加して、クラスルームDVDでは、車の中での心停止事案、溺水、個人宅の風呂場での心停止のケースがリアルな動画として提示されます。

それを元にディスカッションを行うのが、このBLS-PHPの特徴。

プレホスピタルというくらいだから、頚椎損傷への対応などが中心になるのかなと思っていたのですが、レッスンマップを見るかぎり、焦点になっているのはチームワーク。

BLS-HCPでは、二人法までしか扱いませんが、それ以上のスタッフがいる場合に現場でどう動くかという点にフォーカスされているようです。


私が見たのは、レッスンマップとクラスルーム用のDVDだけで、肝心のオンラインコースの部分は、いまアクセスコードの申請中でまだ見れていません。

そちらの方で、現場の安全とか頚椎保護などがどの程度言及されているのか大いに気になるところです。

このあたりは、アクセスコードが発行されてから、またあらためてレポートしたいと思います。

いずれにしましても、現場を抜きにした「お作法教育」だったAHA-BLS講習が、現場のリアルとつなげるための架け橋を出してきたのはうれしいことです。

今のところ、救急隊員向けですが、これが、医師だったり、病棟ナースだったり、スクールナースなど、現場に合わせた「架け橋」のレパートリーが増えていくことに期待したいです。








posted by めっつぇんばーむ at 16:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | AHA-BLSインストラクター
2014年05月18日

AHA講習で使うスピーカーを新調しました

前から気になっていた小型のスピーカー、ついに買っちゃいました。

PEARS講習に最適BOSE SoundLink Mini bluetoothスピーカー


BOSE社の SoundLink Mini bluetooth Speaker

前から、いいよ♪ とは聞いていたんですが、先日たまたま入ったおしゃれな雑貨屋で店内BGM用にさり気なくおいてあって、そのびっくりするほどの広がりのある音質にやられてしまいました。

昨日、買ってきて、まだ家の中でテストをしているだけなんですが、その音の違いは確かにうなるほど。

今までも、コンパクトさとそこそこの音質ということでこだわりを持って選んだスピーカーを使っていたのですが(後ろに写っているCreative社のTravel Sound 250)、これがおもちゃに思えるほどでした。

もともと音楽とか音とかにこだわりがある方ではない素人なんですが、それでも違いは明白。

ふつう、どこから音が聞こえてくるってわかるじゃないですか。あっちにおいてあるスピーカーから流れてくるっていうか。

それがBOSEのだと、音源の位置が分からないんです。部屋全体が音に包まれるというか、空間内に自然に音が広がる感じ。まあ、8畳の狭い部屋で鳴らしているせいかもしれません。念のため、Creative社のと聴き比べてみましたが、やっぱり違いますね。

高音でシャカシャカする感じとか、音量を上げた時の割れなんかでも、完全に格が違います。


こうしてみると、今までのスピーカーだと耳が疲れる感じがあったんだなと思いました。

あと、今回初めて経験したんですがBluetooth接続というのも、ひどく便利ですね。
無線でワイヤレスだと、スピーカーの設置場所も選ばないので、スクリーンの真正面に置くこともできますし、演台から聴衆までが離れている場合にも良さげ。

こんど講習会デビューするのが楽しみです。音量も以前のものより出るはずなので、大人数のセミナーでどこまで使えるかが一番気になるところ。


このBoseの SoundLink Mini、モノはオーディオマニアも認めるほどの一流品。

悪いものではないのですが、高いです。2万円強。
音にこだわる人にとっては安いらしいですが、AHA講習でそこまで必要か? と言われれば正直疑問。

小型さにこだわるから、音量がでなかったりとか、音質が悪かったりするわけなので、デスクトップパソコン用のスピーカーとか、サイズにこだわらなければ及第点のものがもっと安く手に入ります。

ということでこの辺になってくると、完全にインストラクターとしての自己満足ですね(笑)

私の場合は、PEARSコースで判定のための聴診音を聞かせることがあるとか、出張講習が多いということで、強引に自分を納得させての今回の購入。

まあ、いま使っている機材は、インストラクターとして個人活動を始めた6年前に揃えたもので、だいぶ使い込んでいます。そろそろ見直しをしてもいいのかなということで。


ただ、いずれにしましても「音」にはとかく無頓着で、聞こえればいいやと思いがちですが、音量だけではなく音質にも意外と人間、ストレスがかかっていること今回比べてみて感じました。

プロジェクターによっては、スピーカーを内蔵しているものもありますが、あれは最悪です。

どんなものであれ、スピーカーは別途用意した方がいいですよ、ということで今回の結論。




posted by めっつぇんばーむ at 08:53 | Comment(0) | TrackBack(0) | AHA-BLSインストラクター
2014年04月26日

急変対応完全マスター

この前、Twitterでちらっと紹介した本、やっぱり買っちゃいました。



年度初めのせいか、看護雑誌で急変対応特集記事が多いです。

ご存知のように心肺蘇生法は5年に1回改訂されるし、ファーストエイドに至ってはエビデンスが定まらない物が多いから、時代によってコロコロ変わります。

そういった意味では、成書よりは、こういう雑誌の特集記事とかMookの方が最新知識がまとまっていて、良いようです。

いままで急変対応というと、BLSが基本でそこにACLSチックなことをプラスするみたいな編成が多かったのですが、ここ最近は、BLS以前の問題をしっかりと取り上げるのが珍しくなくなってきました。

いわゆる気づく能力、ってやつですね。

アセスメントとか、生命危機の病態生理にかなりページが割かれてて、BLS/ACLSに限らない、病院での急変対応の全体像を知るにはコンパクトでいいかなという気がします。

それと、日本のナースは米国と違って裁量権がないから、自分の判断で薬を使ったり処置を行ったりというのが基本的にできません。となると、米国の〇〇コースをそのまま持ってきてもダメなわけで、大切なことは医師を動かす力。

きちんと状況を伝えて、適切な指示受けをする。

そういった意味で、着目されているのが報告の仕方。

流行りは、やっぱりSBAR(エスバー)ですかね。

この本の中では、医療教授システム学会の「患者急変対応コース for Nurses」に則って、I-SBAR-Cの形でまとまってます。

この辺りの記事、いいこと書いてるなと思ってよく見たら、著者がハワイのACLSインストラクターコースでご一緒だったナースさんでした。へぇ、師長さんだったんだ、若く見えたけど、、、とか余計なことを考えたり、まあ、なにかと楽しい本でした。




posted by めっつぇんばーむ at 01:40 | Comment(2) | TrackBack(0) | AHA-BLSインストラクター
2013年08月05日

AHA ECCコース カード・リファレンスガイドが改定されました

AHA ECC Course Card Reference Guideの改訂版が先月リリースされました。

AHA ECC Reference Guide 2013


ガイドライン2010でAHAカードのデザインが一新されました。
それも含めて、今まで発行されたすべてのAHAカードが一覧できます。

今回の改訂で特に興味深かったのが、アメリカ軍のMilitary Training Networkの独自デザインカードまで収録されている点。

AHAのロゴマークは入ってませんが、AHAカードと完全な互換性が保障されているカードです。

AHA Training Networkにログインすれば、PDFでダウンロードできますので、インストラクターの皆さん、ぜひCourse Card Reference GuideをGetしてください。

おもしろいですよ。

あ、ちなみにAHAカードの偽造対策についての解説も、このリファレンスガイドに載ってますよ。

AHAインストラクターでこれをしらないとモグリでしょ!



posted by めっつぇんばーむ at 23:56 | Comment(1) | TrackBack(0) | AHA-BLSインストラクター
2013年06月27日

9月からAHA各種インストラクターコースが刷新されます!

不思議と昨日あたりからネット上で話題に上っていた、AHA Instructor Essentials。

AHA BLS Instructor Essential(インストラクター・エッセンシャル)の画面キャプチャー
コアインストラクターコースに取って代わるInstructor Essentials
↑講習中に携帯をいじっちゃいけないよ、という場面


2013年8月30日から公式施行される新しいAHAのインストラクターコースの一部です。

今現在、AHAのインストラクター資格を取得するためには、プロバイダー資格に加えて次の3つのステップが必要です。

1.Core Instructor Course修了
2.BLS/PALS/ACLS/HS 各インストラクターコース修了
3.モニター評価合格(教育実習+実地指導試験)

このうち、1−2の部分が完全に刷新され、特に成人学習理論を学ぶ一般教養(?)でもあったコア・インストラクターコースが廃止され、件のAHA Instructor Essentialsというインターネット上で学ぶe-learningにとって変わります。

つまり、Core Instructor資格は2013年8月29日までが有効期限で、その後、BLSやACLSなどのインストラクターコースを受講する場合は、改めてInstructor Essentialsの修了が求められることになります。

さて、このInstructor Essentialsですが、単元毎に分かれています。

・BLS Instructor Essential
・Heartsaver Instructor Essential
・ACLS Instructor Essential
・PALS Instructor Essential
・PEARS Instructor Essential
・ACLS-EP Instructor Essential

中身は二部構成になっていて、まずはAHAインストラクターとしての態度や基本を学ぶいわゆるCore Instructorコースに相当する共通部分と、ついで各コース内容に特有なものに分かれています。

インターネットで onlineaha.org にアクセスすれば、誰でもどこからでも受講できます。自宅のパソコンで学習を進めて、修了すると、家のプリンタから修了証が印刷できる仕組みになっています。

英語のサイトに登録をしてクレジットカード決済、2013年11月までは1コースあたり$25。11月以降は$30です。登録手続き自体はAHAのオンラインサイトへの登録と、クレジットカード決済のための情報入力の2箇所のみでそんな難しいことはありません。

オンライン・ショッピングをしたことがある人なら直感的操作で十分できます。

内容自体は、英語ですが、しゃべっている内容を字幕で表示させることもできるので、辞書を使うなりすれば、時間はかかるものの独習は難しくありません。ぶっちゃけ、設問のところも手当たり次第クリックしていけば必ず修了できます。(それを言っちゃお終めぇよ的発言、スイマセン)

このインストラクター・エッセンシャルのオンライン受講は、誰でも勝手にできるものですが、いちおう公式テキスト(Instructor Candidate Workbook各種)が存在して、それを所属予定のトレーニングセンター責任者から受け取ってから受講するもの、ということになっています。

つまり、まずは所属するトレーニングセンター(日本に9つあります)を決めて、インストラクターコース申し込みをし、Instructor Candidate Workbookを受け取ってInstructor Essentialsを各自オンライン受講。

その修了証を持って、クラスルームスタイルで開催されるBLS/ACLS/PALSインストラクターコースに出席し、履修&筆記試験合格。その後、実際に開催されるプロバイダーコースにインストラクター候補者として参加し、指導経験を積み、モニター評価に合格すると晴れてインストラクターカード交付、そんな流れになります。

やはり皆さん気になるのが、英語でのオンラインコース。

これをハードルと考えるか、インストラクターになるのが簡単になったと考えるか?

現実、インストラクターコース全体に掛ける時間は短縮されそうです。

内容も従来のコアインストラクターコースに比べて相当簡略化されていて、もともとは8時間程度は掛かったのが、2−3時間で終わらせることができます。

難しい単語は出てこないし、英語字幕もでるので英語もそんな苦労はしないはず。

American Heart Associationという米国組織に所属するわけですから、この程度の英語で足踏みするくらいの人は、最初からインストラクターにならない方がいいという意見もあります。

今でこそ、インストラクター向け教材まで、ほぼすべて日本語化されましたが、それってある意味、異常なことかなという気もしています。

もともとAHA講習は米国国内向けのもので、それを無理矢理日本で開催しているわけですから、AHA講習自体が日本の法律や現状にそぐわないのは当たり前の話。

そんなものを完全に日本語で受講できてしまうこと自体が不自然なのです。ゆえに誤解を生んでいるのも事実です。特にG2010になって市民救助者の小児のCPRなんかは日本と米国で大きく違ってしまいましたし、そうした本来日本の常識であるはずの日本版ガイドラインを知らずに教えているBLSインストラクターはたくさんいます。

そんな日米文化や法律の違いを、受講者に勘違いさせずに伝えるためには、インストラクター自身が、AHA講習は借り物にすぎないという点を認識しておく必要があります。そのためにもある程度、英語の情報ソースに触れる意識は必要ですし、英語で学ぶという体験から、やっぱり日本のものじゃない、という自覚を持った人に育ってほしいとも思います。

さて8月29日が有効期限の現行のインストラクターコース。

日本の各トレーニングセンターがどう扱っていくのかはわかりません。

今のところ、日本語化されてないゆえの特例措置のようなものは、公式通知としてはAHAからは届いていません。

今後、インストラクターを目指している方は、情報にご注意下さい。




posted by めっつぇんばーむ at 11:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | AHA-BLSインストラクター
2013年03月07日

AHA-BLSは、現場ではすでに求められていない

今日から3日間開催されている日本医療教授システム学会総会に参加しての感想をいくつか。

この学会に参加すると、BLSとかACLSとか、そんな医療シミュレーション教育の最新トレンドに触れることができるわけですが、BLSとかACLSなどの心停止後の対応と教育をどうするか、については、いまさら議論されることはない「常識」になりました。

去年もそれは感じたのですが、去年は、最先端の人たちの考えと現場での若干の温度差は感じたのですが、今年の印象は、BLSはもう問題ではなくなったような印象を受けました。

ことにAHAのBLS教育が果たす役割は終わったのかなという印象。

とあるAHAコースを中心に展開する団体から、AHA−BLSコースの受講者へのアンケート調査を元にした発表があったのですが、フロアからの質問は、AHA-BLSではなく、病院の現任教育として1時間でできるBLSプログラムについてアドバイスをほしいという内容。

かつてはAHA-BLSコースが、医療者向けBLS教育のロールモデルだったわけですが、今ではそれを追いかけるという風潮はほぼ消えて、より今の日本の現場教育に合わせたAHAとは別の教育手法を追求しているという図式がはっきりと見えました。

ヘタすると1日がかりのAHA-BLS講習。あれを病院の研修プログラムに取り入れるのは非現実的。私たちはマネキン対受講者比を1:1にしてますから、4時間弱で終わりますが、それでも勤務時間内に行う研修としては長すぎ!

考えてみれば、あそこまでの対応は現場では求められていません。

特に小児や乳児の部分が必要な病院職員はそれほど多くないはずです。一般的な医療者に必要なのは成人のCPRとバッグマスク換気程度なもの。

一般的な医療者の急変対応教育を考えたら、サクッと教えられる成人のBLSだけで十分、というのも分かる話。

かつてはBLSの教育メソッドも確立していなくて、どの医療機関でもAHA-BLSを参考に試行錯誤していたからこそ、学会の演題でもよく取り上げられていましたが、今や問題意識のある施設はとっくにBLS教育は確立していて、いまさら学会でそんな問題を取り上げる人はいなくなりました。

そんな時代だからこそ、ロールモデルとしてのAHA−BLSの存在意義も変わってきているというか、今求められているのは、ブランドより、実際に自分の施設でできること、なんですよね。

私も自分でトレーニングサイトを運営しているから分かります。

HA-BLSコースの参加者は減少の一途。いまでもかろうじて受けに来てくれるのは、苦手意識の多い若いナースか、上級嗜好の市民救助者の方。再受講で来るという方はそれほど多くありません。

BLSは確かに大切だけど、AHA-BLSでその必要は満たされるわけではないこととか、わかるんでしょうね。特にG2010になってから、教材が簡素化されて、魅力的な部分はなくなっちゃいました。

こんな時代、AHA-BLSの再受講を望むのは意味があることなのかな?

受講者もそれなりに涵養されて、本当に必要な教育とそうでないものを弁別する力がついてきているという解釈。私ならそう考えます。

別の発表で、受講者は受講料の値段で判断しているわけではないという話もありました。

そもそもAHA-BLSで本当にいいのか? そんな本質的なところに疑問を感じての受講者数減少、な気がします。

かつて、医療者のBLSといえばAHA-BLSしかなかったけど、今は医療機関ごとの院内BLSも充実してきて、質が上がってきている。もしかするとAHA-BLSより実践的で短時間のプログラムも増えてきているはず。

そんなところをBLSインストラクターは自覚していく必要があるでしょう。

いずれにしても早かれ遅かれ、日本でAHAの教育は廃れます。

日本には日本版ガイドラインがあるのですから。問題は日本版ガイドライン準拠の教育を行う人がいないというだけ。これが院内教育の充実によって解消される日が来るはず。

AHAインストラクターは、日本におけるその不的確さを自覚して、日本に必要な物は何なのか、プライドを捨てて見つめなおす必要がでてくるでしょう。

そんな時代の流れを感じた日本医療教授システム学会総会初日でした。





posted by めっつぇんばーむ at 22:51 | Comment(6) | TrackBack(0) | AHA-BLSインストラクター