2024年07月17日

メンテナンス

最近更新していなくて、へんな広告が沢山出るようになっちゃったので、広告削除のための更新。

日本のAHA史とも言えるこのブログ。消すには忍びないし、かといって独自ドメインを取って引っ越しをするのはなかなかの難儀。

今後の活用と、歴史の保存という点で、検討していきます。

posted by めっつぇんばーむ at 20:25 | Comment(0) | TrackBack(0) | AHA-BLSインストラクター
2022年06月18日

最近更新していませんが、、、

ガイドラインも変わったし、書くネタはいろいろあるのですが、別のところで書いてしまって、ついついこちらはおろそかに。

歴史が詰まっているので削除はせずにいますが、今後、もうちょっと活用法は考えていきたいですね。
posted by めっつぇんばーむ at 19:42 | Comment(1) | TrackBack(0) | AHA-BLSインストラクター
2020年12月05日

AHAの電子書籍をおすすめしない理由

AHA講習受講に必須のプロバイダーマニュアルは、G2015版から電子書籍でも日本語で入手できるようになりました。

iPadなどのタブレット端末で読むことができるeBookで、日本で初めてeBookが導入されたときには、AHAからインストラクター宛に通達があって、eBookでも受講できることを積極的に受講者にPRしてほしいなんて言われたものです。

電子書籍は配達のタイムラグがなく、注文してからすぐに読める点や、書籍版より値段が安い、PALSプロバイダーマニュアルのように分厚い本の場合は保管や持ち歩きの負担を考えるとメリットはあるものの、結論的にはあまりおすすめしません。

理由はいくつかありますが、最大の問題は、講習を受講中の参照資料としてはほとんど使い物にならない という点です。

AHAは教材設計上、講習中に参照する教材としてもプロバイダーマニュアルを位置づけています。安くはない本をわざわざ買ってもらうわけですから、インストラクターとしては、講習中は極力テキストを使うようにしています

「◯◯ページの◯◯行目をご覧ください」

講習中は何度もテキストを見てもらうようにしています。

こんなとき、電子書籍だとページめくりに時間がかかるため、書籍版と電子版が混在したときに、電子書籍の人は間違いなく遅れをとる、というか目的ページにたどり着けないことがほとんど。

というのは、電子版と書籍版ではページ数や行数が異なっている場合があるからです。

講習を運営する側としては、はっきり言って大迷惑。

講習で大事なテンポ感は完全に損なわれますし、無駄な時間…

結局、インストラクターのテキストを開いて見せてあげる形で進んでいき、最終的には電子書籍の受講者は講習中にタブレットを見るのを放棄するのが常。

もう一度言います。

講習中に参照する資料としては電子書籍は使い物になりません。

講習中はDVDを流すだけで、テキストなんか開かないよというレベルのインストラクションであればどうでもいいところなのかもしれませんが、インストラクショナル・デザインに立脚した教材設計を考えたら、インストラクターとしてはここは譲れない部分です。

紙媒体の本を買えば、それはある意味一生モノです。

しかし電子書籍の場合、プラットフォームが変わったり廃れたりすれば読めなくなります。

ガイドライン自体は5年毎に変わっていますので、永続的な価値はないから関係ないと言えるかもしれませんが、歴史という点では大いに意義があると思っています。現にいまでもG2000版のBLSプロバイダーマニュアルは、蘇生法の指導員であれば永久保存版とも言うべき第一級の資料です。

これは紙媒体であるからいまでも古本として手に入るわけで、今後、AHAが電子書籍onlyとしてしまったら、歴史が失われると言っても過言ではないと思っています。


現時点、最新のG2020版のBLSプロバイダーマニュアルは電子書籍版のみ販売されています。

このあと書籍版も発売されるようですが、その時期は明らかにされていません。

いま、無理して電子書籍を買うのではなく、書籍版の出版を待ってもいいんじゃないかなと思います。


以上、インストラクター側の視点として書かせていただきました。




posted by めっつぇんばーむ at 15:27 | Comment(0) | AHA-BLSインストラクター
2020年08月21日

間違いだらけの AHAインストラクター Youtuber 動画

2007年から始めたこのブログ。

当時は、「AHAインストラクターであると名乗ってはいけない」、という 謎のローカルルール が信じられていたので、このブログも【勘違い】からずいぶん叩かれたものでした。

ときを経て2020年、AHAインストラクターとして情報発信する個人が増えてきましたね。ブログや SNS だけじゃなく、動画での情報発信も増えてきて、驚くばかりです。



そんな中、 やや看過できない問題アリの Youtube 動画を見つけてしまいました。

看護師で日本ACLS協会AHA-ITC BLS/ACLS/PEARSインストラクター という方が、一般市民向けにシリーズで救命法を解説しているのですが、その中身は【市民向けと医療者向けがごちゃまぜ】、【米国の受け売りで日本の事情にあっていない】、など、日本の一般視聴者をかなり誤解させそうな内容なんです。


動画作成者さんにはSNS上で一度ご指摘させていただいたのですが、すぐにブロックされてしまい、その後、修正される様子もないので、こちらで公開情報として、動画中の不適切な箇所とその理由を解説することにしました。


一般視聴者の誤解を最小限にしたい、日本における正しい情報を伝えたいというのが目的です。個人攻撃の意図はまったくありません。

本コンテンツに誤認や不適切な点があれば、ご指摘をいただければと思います。修正や対応をさせていただきます。また当該動画が撤回ないしは修正された場合は、こちらのブログ記事も非表示にするなどの対応をいたします。

(その後、動画は限定公開に切り替えられたようですが、伝え聞くところによると、「アンチに攻撃された」という受け止めで、内容の間違いについては自覚いただけていないようなので、このブログ記事は削除せずにいます。)




動画1 【一般向け】急変対応基礎編





医療者ではなく一般の方向けということで紹介されているこちらの動画。アップされたのはごく最近の 2020/07/14 です。

問題は、3分15秒付近からの「呼吸・脈の確認」のところ。

一般の方向け(市民救助者という意味でしょう)としながらも、脈の確認を含めているのです。


■ 市民は脈の確認はしない

市民救助者には頸動脈の脈拍の触知は推奨されていません。市民にも脈を取ることを教えていたのは20年以上前の昔の話。

市民救助者は、「反応なし+10秒以内に普段どおりの呼吸だと確信できない」ことを持って、胸骨圧迫を開始します。

これはアメリカの蘇生ガイドラインでもほぼ同じで、医療者と違って市民は、「反応なし+呼吸なし or 死戦期呼吸」の場合としています。(ハートセイバー受講者マニュアル 等を参照ください)

日本の場合は、埼玉で起きた学校事故の教訓から ASUKAモデル が提唱され、10秒間呼吸を見てもよくわからなければナシと判断するようにとの指導がされている点、米国より一歩進んだ形になっています。


この動画の中では、呼吸と脈の確認は医療従事者でも難しいから、自信がなければしなくてもOKとしています。結果的には脈の確認はしなくてよいと言っているとも解釈できますが、であれば最初から脈拍というそもそも言及するべきではないと思いますし、ご本人もわかりやすく伝えたいと言っているのであれば、余計なことは伝えないほうがシンプルですよね。

また「5-10秒よりすごく時間がかかってしまうくらいなら【脈と呼吸】は確認しないほうがマシ」という発言もあります。ここは間違いと断定するほどのところではありませんが、一応、市民向けにも講習を受ける立場の人には【呼吸確認】は基礎として間違いなく教えている部分である点は指摘しておきたいと思います。


動画2 【AEDシリーズ2】〜パッドの貼り方について〜




■ 小児パッドは小学生未満 8歳未満じゃない

この方の他の動画でも一貫して間違っているのですが、AEDの小児パッドの適応は日本では8歳未満ではありません。

日本では2010年の蘇生ガイドライン改定で 就学年齢未満(つまり小学生未満) に変更されました。

アメリカの蘇生ガイドライン準拠の BLS/ACLS/PEARS/PALS プロバイダーマニュアルやコースDVDでは、8歳未満と言っていますが、これはあくまでもアメリカでの話。

日本国内で、ましてや一般の方向けの解説動画としては、明らかな間違い と言わざるを得ません。

AHAテキストの中でも、医療従事者以外の市民を受講対象としたハートセイバーCPR AEDコースのテキストでは、「日本では小学生未満」と正しく注釈が入っていますし、DVDのテロップでもそう表示されます。

日本のAHA講習の中でも、自分で責任が取れる医療者向けはざっくりと米国のままの部分でも、教わったことを鵜呑みにしてしまう市民向けではちゃんと留意されているんですね。

hs-text-aed-pad-age.jpg


8歳未満でも小学生未満でも大差ないじゃんと思われるかも知れませんが、本来は医者しかできない除細動という高度で侵襲的な医療処置を行うわけです。

ましてやAEDは法律に基づいた高度管理医療機器。その使用の法的要件を満たすためにも、日本の国内法規、規準、医療機器添付文書の通り正確に教えなければいけない部分です。



■ 2枚目のパッドが入っているとは限らない

動画の4分30秒あたりで、「2枚目のパッドが必ず入っています」と断じていますが、そんなことはありません。予備パッドは入っていないことの方が多いのが現状です。

AEDパッドは1枚1万円以上して、1回限りの消耗品です。もしくは2年間の使用期限が切れたら廃棄しなければいけないもの。めったに使うわけではないものに余分に1万円以上のお金を出すかどうか、設置者次第です。

一般向けに話をするならば、むしろ「予備パッドは入ってない」という前提で話をしていかないと危険です。


■ 胸毛・水濡れ・ペースメーカー・薬剤パッチ 今は教えない

これは間違い、ということではありませんが、日米の教育で少し違う部分です。日本では2015年からAED使用上の特殊なケースの説明はしないことになりました。

胸毛が濃かったら… というやつですね。

日本の救命講習は、基本的に「救急蘇生法の指針」(市民用は 厚労省 ならびに 総務省消防庁 のWEBからPDFでダウンロード可)に基づいて実施されています。

その救急蘇生法の指針2015【市民用・解説編】の63ページのFAQで解説されていますが、AEDを使うという稀なケースの中でもさらに稀なケースということで、質問があった場合のみに説明する、という方針が示されています。

大事な点を強調したい、シンプルに伝えたいということであれば、真っ先に省く部分と言えます。


動画3 成人用マネキンを用いて【胸骨圧迫】のポイントを実演!





■ 成人への胸骨圧迫の深さは「5cm以上6cmを超えない」ではない

これは動画の1分30秒あたりですが、日本でもアメリカでも、市民向けに「6cmを超えない」ということを指導することはありません。

確かにこれは日本でも米国でもガイドライン2015で新しく出てきたポイントですが、ふつうに考えて、5cm以上6cm未満というわずか1cmの誤差範囲で押すのは無理です。

論文に基づいてこのような勧告が出ましたが、実現不能だし、なにより6cmを超えると損傷のリスクが増すと言われたら、どうしても浅くなるのが人間心理。特に一般市民の場合は。

そこで、実務的な指導の中では「少なくとも5cm」としています。

特にAHA講習では、医療者向けのBLSプロバイダーコースの中でも、基本的には「少なくとも5cm」という表現で指導・練習しており、胸骨圧迫の深さを測定できるフィードバック装置を使った場合にのみ6cmを超えないという目標が追加されます。(BLSプロバイダーマニュアルG2015 の p.3 をご覧ください)

医療者ですら条件付きでないと教えない内容です。少なくとも一般市民向けに教えるべきものではありません。




posted by めっつぇんばーむ at 12:26 | Comment(0) | AHA-BLSインストラクター
2020年08月12日

AEDの小児パッドは、「8歳未満」じゃないですよ?

心肺蘇生法、救命処置をしっかり学ぼうと思ったら、アメリカ心臓協会の BLSプロバイダーコース が最高峰なのは間違いないと思います。

ただ注意しなくてはいけないのは、AHA-BLSコースは、アメリカの蘇生ガイドラインに基づいて作られているという点。

ここは日本です。そもそも蘇生ガイドライン自体が米国とは違うんだという認識が必要です。

ぶっちゃけで言えば、日本国内で異国の救命講習が大手をふるって開催されているということ自体がおかしいわけです。日本には日本蘇生協議会JRC蘇生ガイドラインという立派なものがあるのに、それに準拠した日本版BLS講習(プロ向け)が組織化されていないのは、国策としてはどうなんでしょう?

日米のガイドラインの違いなんて、受講者が知るよしもありませんから、このガイドラインの違いに注意してコース展開するのはインストラクターの役割であり、責任です。

■ 小児パッドの適応は日米で違う!


AEDの小児用パッド/システムは8歳未満じゃありません。就学年齢未満

例えば、AEDの小児用パッドの適応は?

という点で、

8歳未満

と教えているAHAインストラクターが、2020年の今になっても存在している模様。(つい最近も AHA-BLSインストラクター と称する Youtuber が、動画の中で堂々と間違ったことを教えていました)


アメリカの教材の直訳である BLSプロバイダーコース DVD をただ流すだけの講習だと、受講者はふつうにそれが刷り込まれちゃいますよね。

テキストを見ても、成人用パッドは8歳以上、小児用パッドは8歳未満とはっきりと書かれていますし。(本当は翻訳と日本語版制作の責任も問いたいところですが、それはまた別の項で)

BLSプロバイダーマニュアルの小児AEDパッドの解説は8歳未満


しかし、ここは日本! JRC蘇生ガイドラインではG2010以降、日本では8歳未満ではなく、就学年齢未満に小児パッドを使う ように変更されています。

2004年〜2009年までは、日本でも8歳未満で良かったのですが、5年間やってみたら、小学校が困っちゃったんです。

小学校2年生までは小児パッドを使って、3年生以上は成人パット。小児パットという割にはややこしいじゃん! って話。

そこでガイドライン2010の改定のときに、日本では小学校に上がったら成人パッドでいいよ、とガイドラインが改定されたのです。(米国は変わらず)


■ インストラクターの責任と倫理


ここは日本です。しかもAEDは高度管理医療機器であり、除細動はまぎれもない医行為。それを医師以外が実施する以上、法律に基づいた使い方をしないと医師法違反阻却要件から外れます。

AHA講習であっても、日本国内で教える以上、正しく伝えなければいけない部分です。これは指導員としての倫理と責任です。

日本で8歳から就学年齢に変わってから、すでに10年近く経とうとしています。

未だに8歳未満という教え方をしているインストラクターは、このことを知らないのでしょうか?

昔は、AHA講習はAHAガイドラインの範囲外のことを喋っちゃいけないみたいなルールがあったという話も聞きます。

しかし、少なくともG2015の教材改定で、地元でのローカルルールを優先するという方向性が明確に示されましたし、インストラクターはローカル・プロトコルにも習熟している必要がある点が、BLSインストラクターマニュアルにも書かれています。

このガイドラインの変化についてこれていない「昔取った杵柄」インストラクター、なのでしょうか?


法律行為を教えるにも関わらず、日本の法律をはっきり伝えないというのは、受講者に対して不誠実な背任行為ともとも言えます。

だって、その教えによって、人の生死が変わるかもしれないし、間違ったことを教わった受講者が訴追されることもあるですから。

救命法の指導員は、責任のあるプロとしての仕事だと思っています。無責任なボランティアでやるようなものじゃない!



BLSプロバイダーコースを受講した皆さん、AED使用の日米の違いについて、インストラクターはちゃんと説明してくれましたか?





関連記事:
救命法指導員は、その重い責任を自覚すべし−「AED充電中の胸骨圧迫」編
救命法指導員は、その重い責任を自覚すべし−「人工呼吸の省略」編
posted by めっつぇんばーむ at 15:29 | Comment(0) | AHA-BLSインストラクター
2019年10月14日

eCard 印刷加工のコツ その1 印刷サイズ

AHAプロバイダーコースの修了証の eCard 化、進んできましたね。

・福井県済生会病院ITC
・日本循環器学会ITC
・日本医療教授システム学会ITC

で、おおむね eCard 移行が完了した模様。

ご存知ない方のためにご説明すると、、、

AHAのプロバイダーカードが従来の紙媒体から電子媒体に変わったんです。

ecard-guide.jpg


AHA-eCardとは

BLSとかACLSプロバイダーコースに合格すると、後日コース主催者からメールが届きます。

メールの案内に従って、CPRVerify という資格確認ページにログインすると、インターネット上に資格証が表示されるという仕組みです。

ネット上の資格証明ページからは、資格証をPDFファイルとしてダウンロードすることができます。

2ページ構成になっていて、1ページ目を印刷すると上記のような賞状タイプの証明書を作れます。

2ページ目を印刷すると、切り抜いて加工することで旧来のような体裁のプロバイダーカードを自分で作ることができます。

つまり、印刷物としてのプロバイダーカードが必要な人は自分で印刷して作ってね、という形に変わったのです。


自分でプロバイダーカードを作るコツ

PDFファイルをカラー印刷する場合、カラーレーザープリンタでないと、見た目的にちょっと厳しいです。

自宅とか職場でカラーレーザープリンターが使えればいいのですが、カラーとなると難しい人が多いかもしれません。

そこでPDFファイルをUSBメモリーに入れて、コンビニの複合機で印刷するという方法がおすすめ。

ただこの場合、注意しなければいけないのが、用紙サイズ。

AHAのwebシステムから吐き出されるPDFファイルは、A4サイズではなくアメリカ規格のレターサイズになっているため、そのまま印刷しようとすると、「ちょっと小さめにする」モードが自動設定されてしまい、印刷するカードがひとまわり小さくなってしまうのです。

ecard-size.jpg


小さくても気にしなければなにも問題はありません。

ただ、PEARSやPALSのカードは、AHAのロゴ以外に米国小児科学会(AAP)のロゴも入っているのですが、ロゴ内の文字が小さいので、サイズが小さいとかすれてしまうんですよね。

これを原寸で印刷しようと思うと、けっこうやっかい。

あまり汎用性がなくて恐縮ですが、私のやり方、ということで紹介します。


概略としては、次のようなステップです。


1.PDFファイルを「PDFに書き出す」ことでプロテクトを解除する
2.PDF編集ソフトで1ページ目を削除
3.PDF編集ソフトで用紙サイズをA3サイズに変更
4.PDF編集ソフトでトリミングし、用紙サイズをA4サイズに調整する(上下は61.58mm、左右は43.52mmをカット)

これにより、コンビニの複合機に持ち込んだ場合でもA4サイズと認識されて、余計なサイズ縮小がされずに済みます。

私の場合は、手順1はMac OSのプレビューの「書き出し」機能を使って、PDFのサイズ変更はAdobeのAcrobat Proを使用。

PDF編集ソフトも今はフリーソフトがいろいろあるようです。ページ削除機能、用紙サイズの変更機能、トリミング機能がついていれば同じようにいけると思います。

PDFのプロテクト解除は、Windowsでも印刷機能からXPSファイルに書き出せば、中身はPDFファイルです。


もっと簡単な方法もあるようにも思いますが、とりあえず、私は上記の方法でどうにかやってます。


参考まで。




posted by めっつぇんばーむ at 14:40 | Comment(0) | AHA-BLSインストラクター
2019年10月02日

子どもが倒れた! 学校の先生は傍観者でいいんですか?

私は、米国文化で指導を学んだBLSインストラクターです。10数年前からずっと言い続けていました。

救命処置は、


 ・一般市民
 ・救護責務がある市民
 ・医療者


を分けて考えるべきだと。

アメリカでは、その階層分けが昔からふつうでした。

日本だと、市民と医療者の2分しかしないから、いろいろおかしな話になっているというのは10年以上前から感じ、訴えてきたところです。


当時は、AHAインストラクターは身分を明かしてはいけない、みたいな変な時代でしたし、インターネットでの情報発信もHTMLが必要だったりしたせいで、ネットの世界でも、学校の先生は一般市民じゃないよね? みたいな論調は稀有でした。

それが今ではSNSのおかげで、あたりまえのことをあたりまえに発信する人が増えてきてうれしい限りです。


しかし、昔もそうでしたし、今でもいるんです。

学校の先生は救命処置を「ちゃんとできる」ようなトレーニングが必要で、一般市民向け研修でお茶を濁すようじゃダメだよ、と言うと、血相をかかえて猛反対してくる人が。

今までも、業界では有名な「意識の高いイキリ救命士」からはさんざん叩かれましたし、訴訟をちらつかせるなんて脅迫商法だと言われたり、ただでさえ酷使されている教員をどこまで追い詰めるんだとお叱りを受けたり。

ただ不思議なことに、当の学校教職員から直接クレームを受けたことは一度もないんですよね。


1.学校教職員は管理下で事故が起これば対応する責任がある
2.注意義務の下、一定水準の行動が期待されている
3.見て見ぬ振りはできない → 逃げられない
4.実際に訴訟もいっぱい起きてるじゃん
5.だったら、本気でちゃんと練習しようよ



ということを言っているだけなんですけど、なんだか知らないけど、過剰に猛反対されるんです。

なんなんでしょうね? まったくもって意味がわかりません。なにかおかしなこと、言ってます??


学校の先生もただの一般市民ですよ。素人レベルのことができれば大丈夫ですからね〜


って喧伝することになんのメリットがあるんですか?



そんな言葉に騙された教職員がバリバリに訴えられる現実、どうしてくれるんでしょう?

それに命を落としたお子さんはどうなるの? その家族は?



道端で倒れた子ども、その場にいた大人が見て見ぬ振りして通り過ぎた人がいても誰も責任は追求しません。だって無関係なんですから。

でも学校で起きた心肺停止事案は違うでしょ?

学校の先生は忙しいんです。普段の業務に加えて時間をかけて救命処置訓練をしろなんて無理ですよ、みたいなことを言ってくる人はいますが、忙しいのは部活指導のせいですかね?

部活の指導と人命救助訓練。

比べるのもバカバカしい。



必ず救命できなきゃダメというのは無理ありすぎ! という声もよく届きますが、それこそ素人の幻想、戯言。

CPRをやれば助かるなんて思ってるのはド素人です。

現実社会では、奏功して助かるほうが圧倒的に少ないって知ってますか?



実際の裁判例をみればわかりますが、助かったかどうかじゃなくて、備えていたか、やるべきことをやったかが焦点。

だから、ちゃんと備えましょうと言っているわけです。


慌てるのは人間だから当然。想定し、準備し、最善を尽くしたか?



結果ではなく、日頃の準備と心構えを問題としているのです。



posted by めっつぇんばーむ at 18:17 | Comment(0) | AHA-BLSインストラクター
2018年12月21日

AHA講習に義務化 CPRフィードバック装置は諸刃の剣?

さて、気づけば年末ですね。

2019年がやってくるわけですが、この年末年始はAHAインストラクターにとっては、特にざわつく落ち着かないときかも知れません。

2019年1月以降は、成人CPR講習にフィードバック装置を使うことが義務付けられるからです。さらには、eCardへの切り替えを検討しているトレーニングセンターも多いことでしょう。

フィードバック装置に関して言えば、世界中のすべてのAHA講習に適応されますので、いまはフィードバック装置追加購入の駆け込み需要で、品薄状態となっているようです。先日、米国のディストリビューターに問い合わせたインストラクター仲間は3ヶ月待ちと言われたそうです。


AHAとしては、今回のフィードバック装置必須化のために2年前からアナウンスを始めて、その有用性のPRに努めてきました。

質の高いCPRを追求すべきなのは言うまでもありません。

その質を主観的評価にするのではなく、定量的に評価しましょう、といわれているのがACLS。

ACLSでは胸骨圧迫の質に関して、100〜120回/分とか少なくとも5cmというある救助者側の主観的な評価ではなく、呼気終末二酸化炭素濃度や、拡張期血圧といった生理学的な代理指標に着目した科学的な質コントロールが提唱されています。

そういった科学的な定量的評価と、徒手空拳的なBLSの主観的な質評価の間に位置するのがフィードバック装置です。

深さ、テンポ、戻り、中断時間などを表示し、修正の指示をくれる機種もあります。

非常に有用な道具ではあるのですが、トレーニングにおいて使用する場合は注意が必要、と私は考えています。

日頃から離床でフィードバック装置を使っている施設でのBLS講習はすべての練習においてフィードバック装置を使うべきでしょう。

しかし、皆さん、ご存知の通り、フィードバック装置を臨床でルーチン使用している施設はごくごく一部です。

現場で使わない道具であるフィードバック装置を練習で使う意義。

これは、練習者が自身のCPRの質を、インストラクターの主観ではなく、客観的に自己評価できるという点では意義があるでしょう。


しかし、大事な視点として、現場にはフィードバック装置はない、というのを忘れてはいけません。

講習中に終始、フィードバック装置を使用すると、受講者はフィードバック装置のメーターに依存するようになります。

これは、BLSプロバイダーコースの10分間のチーム蘇生の場面でフィードバック装置を使うと顕著です。眼の前で繰り広げられるCPRではなく、モニター画面をじっと見るようになるのです。


ACLSでは、モニターばかり見るな! とはよく言われますが、おなじ現象がBLSでも起きてしまうというのは皮肉な話です。


AHAとしてはフィードバック装置をコース中、使わなくてはいけない、とは言っているものの、具体的にコース中のどの場面で使うのかという具体的な指示はありません。

どの場面でどう使うかという点をインストラクターはよく考えたほうがいいでしょう。

フィードバック装置は自己点検的に使いつつ、最終的には機械を頼らなくても自身の勘どころとしての圧迫のテンポを身につけられるように指導をすべき、と私は考えています。

その目的のための補助装置として活用するならフィードバックは極めて有用なものでしょう。


インストラクター側の認識と使い方によっては、受講者のCPR能力を潰すことにもなりかねない。

そんな本気度をもって、インストラクターはフィードバック装置の活用法を真剣に考えないといけません。





posted by めっつぇんばーむ at 22:37 | Comment(0) | AHA-BLSインストラクター
2018年09月24日

何が変わった? G2015 PEARSプロバイダーコース

悲願だったPEARSプロバイダーコースの完全日本語化。

それが2018年9月5日、ついに叶いました。

PEARSプロバイダーコースDVDPEARSインストラクターマニュアル の公式日本語版が発売開始になったのです。

PEARSプロバイダーコース インストラクターマニュアル公式日本語版G2015


思えば、私がPEARSと関わるようになったのは、2009年頃、AHAがPEARSコースを新たに開発したAHAガイドライン2005の時代からでした。

当時には米国でPALSインストラクター資格を取ってきた一部の日本人が国内で細々と開催していただけでした。私は主にその広報担当として、日本でのPEARS定着に努めてきました。

2015年には、PEARSプロバイダーマニュアルの日本語版(旧2010ガイドライン準拠)が制作されましたが、自費出版の扱いで、一般流通には乗らず、しかもインストラクターマニュアルやコースDVDは日本語化されなかったため、日本ではPEARSは公式講習だったのかと言われれば、あやしいまま今日まで来ていました。


それが、ようやく約10年ぶりに完全日本語化。うれしい限りです。


さて、G2015版でPEARSプロバイダーコースがどう変わったのか、ざっくりレビューします。


1.シミュレーション必須化

G2010版PEARSでは、コース進行を机上ディスカッションと、マネキンの前に立ってチームを組んで進行するシミュレーションの2つの進行方法を選べました。(受講者じゃなくて主催インストラクターが決める、という話です)

もともとはG2005時代は、シミュレーションが省略できるなんて、考えられなかったのですが、この5年間、やってみてAHAもわかったんでしょうね。シミュレーションなしのPEARSはありえない!

ということで、G2015では、晴れてシミュレーションは省略不可ということで落ち着きました。

インストラクターマニュアルでは、「レッスン11 総まとめ」ということで、80分の時間が取られています。

部屋に入って最初に患者を見たところから、人を集めて、評価・介入をし、最後は医師などに引き継ぎを行うところまでを、チームシミュレーションとして行うことが規定されています。

おもしろいことに、インストラクターマニュアルには「シミュレーションの場所に椅子を置かない(誰も座っていてはいけない)」とわざわざ書いてあります。

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机上の言葉だけの脳内シミュレーション(?)ではダメですよ、と、わざわざ牽制してあるのが興味深いですね(笑)


前回のガイドラインでシミュレーションを省略していいという愚策を打ってしまった反省なのか、今回のインストラクターマニュアルでは、他のコースにないくらいシミュレーションという教育技法のロジックと有用性について詳しく書かれています。

シミュレーション教育を勉強している人は一見の価値があるかもしれません。


2.スキルステーション必須化

PEARSにおけるスキルステーションとは、エアウェイや酸素マスク、ネブライザーなどの実際の使用方法を現物を使って実習させることを言います。

これもG2015では省略不可のものとして復興しました。

今回、工夫されているなと思ったのは、3症例ある呼吸器ケースのテーブル・ディスカッションのあとに、それぞれ受講者の一人をマネキンの前に立たせて、呼吸器系の観察と評価の流れを実演させるところです。

実際のところ、マネキンは苦しそうに息しているわけでないし、マネキンを見てもなんの情報も得られないのですが、マネキンを前に前にして「胸の動きを見ます、陥没やシーソー呼吸の有無は、、、」などと、受講者が得たい情報に自らアプローチすると、インストラクターが呼吸様式を演技したり、言葉で情報を提供して、アセスメントを進めていくということを体験させます。

答え的にはわかっていることでも、あえて人間を模したマネキンの前で行動させることで、机上訓練の一歩先を盛り込んでいるんだなというのがよくわかります。

この過程で、最終的には酸素投与やネブライザー投与も、実際の器具を使ってマネキン相手に実施させることをしてください、というのがインストラクターマニュアルに規定されています。



3.その他

その他、インストラクターマニュアルを見ていて感じるのは、受講者個々の理解やバックグラウンドに合わせて、質問の難易度を変えたり、シミュレーション・シナリオをアレンジして、受講者すべてにとって有意義な講習となるように調整・変更を図るのがインストラクターの役割であることが強く打ち出されているという点です。

これはシミュレーション教育とか、成人学習理論からしたら、至極あたりまえの話なのですが、古くからAHAインストラクターをしている人たちにとっては、AHAのレッスンマップは何が何でも変えちゃいけないとか、勘違いしている人が多いことから、ここまではっきり書かなくちゃ通じないのかなと感じました。

また、サイエンスとしてはPEARS領域の内容はほとんどガイドライン改定に伴う変更はありませんが、PEARSのゴールとしては、安定化だけではなく、その先の治療(サルブタモール噴霧やアドレナリン噴霧)にも踏み込んできている印象があります。

さらには、敗血症ガイドラインが改定されたこととも関係あると思いますが、輸液のボーラス投与のリスクについても強調されるようになったものG2010版からは変わったところかなと思います。



筆記試験問題、公式日本語版の訳に注意!

さて、今回、PEARSプロバイダーコース筆記試験問題も日本語化されていますが、翻訳がかなりざっくりしたところがあって、不正確というか受講者を惑わす部分が大きいなと言う点を懸念しています。

詳細はここには書けませんが、日本語版の試験問題だけを読んだのでは正しく解けない問題がいくつかありますので、試験の際には英語版も見てもらう必要がありそうです。このあたりは主催インストラクターがそれぞれ工夫しなくちゃいけないところですね。




さて、日本国内のPEARSはいまは移行期で、古いまま開催しているところもあれば、新しいDVDで開催しているところもあるし、、、ということで安定していません。

おそらく年明けくらいには完全移行すると思うのですが、それまでは、受講を考えている人は、最新のG2015正式版なのか、古い教材を使ったG2015暫定版なのかを、よく確認してから申し込みをすることをおすすめします。




posted by めっつぇんばーむ at 20:15 | Comment(0) | AHA-BLSインストラクター
2018年09月18日

BLS Healthcare Provider カードはすでに無効です。

Twitterで少し話題になっていた件について少々。

比較的最近、BLSプロバイダーコースを受けた人が受け取ったプロバイダーカードのデザインが、どうもおかしい、ということが話の発端です。

そのカードというのが下記のもの。


古いG2010版のAHA-BLSヘルスケアプロバイダーカード



そう、G2010時代の「BLSヘルスケアプロバイダーコース」と呼ばれていた時代の旧デザインカードだったのです。



今は、AHAガイドライン2015正式コースに完全移行しているのに、古いカードを出し続けているのって、いいの?



その答えは下記のとおりです。


BLSヘルスケアプロバイダーカードは今は無効




歴代のAHAカードの遍歴が参照できる the Course Card Reference Guide という資料によれば、この旧HCPカードは2016年4月16日以降は、発行禁止になっていることがわかります。

したがって、2年後の2018年4月以降は、このカードは世の中に出回っているはずはなく、資格としては完全に無効であると書かれています。



しかし、おかしなことに2018年に入ってからも、このデザインのカードの発行を受けた人がいるらしいのです。



なぜ、古いカードが発行されてしまったか?


勝手な推察ですが、カード発行業務をしているトレーニングセンター(日本ではITCとも言います)が、古いカードをいっぱい買い込みすぎて在庫がはけていないんでしょうね。

AHAプロバイダーカードやインストラクターカードは米国AHAからではなく、AHAと提携した日本国内法人(ITC)から届きます。

ITCは、プロバイダーカードの原紙をAHA代理店から購入し、国内事務局で氏名や有効期限を追加印字して、受講者に送っています。

カード自体は24枚単位で販売されており、通常、ITCはそれを何百枚も事前購入してストックしているのです。


ガイドライン切り替わりの時期だと、デザイン変更の可能性があるものですから、購入数・ストック数は慎重に調整していくものです。そして、新コースに移行した後は60日という移行期間が設定されますので、その間に旧カードはすべて吐けるように調整していくのがトレーニングセンターの役割です。

どうしても余ってしまったカードは、代理店に返品できるといいのですが、受け付けてくれないみたいで、結局捨てることになります。

それにしても、2年以上たった今も古いデザインのカードを出し続けているとすると、ずいぶんと買い込んじゃったんだな、もしくは、コース開催数があまりないところなのかな? と推察します。



受講者への不利益は?


さて、不幸にもこの旧カードを最近受け取ってしまった受講者はどうなるのか?

まあ、日本国内での話なら、気にしなくていいと思います。

そもそも日本でこのカードを資格として提出しなければいけない場面というのは、あんまりないはずだし、資格提出を求める立場の人も、このカードが公式には無効だなんて知らないと思いますので。

ただ、問題は、米国に留学するとか、米国で働く、米国の何かの資格認定のための提出が必要という人の場合です。

米国内では、このカードはもう出回っていませんし、無効であるとはっきり宣言されているわけですから、通用しない、もしくは偽造と疑われる可能性があるかもしれません。

その点、心配な人は、発給を受けたトレーニングセンターないしは、受講したサイトの事務局に新しい現行のBLSプロバイダーカードの再発行を相談(というよりクレーム?)してもいいかもしれません。


その場合の根拠となる the Course Card Reference Guide は米国AHAのウェブサイトで、誰でも見れる形で公開されていますので、リンクをたどってみてください。









posted by めっつぇんばーむ at 11:54 | Comment(0) | AHA-BLSインストラクター
2018年08月27日

AHAプロバイダーカード、日本もeCardに変わるのかな?

ここのところあまり更新していませんでしたが、今どきのネタとしてeCardのことを書いてみようと思います。

AHAのプロバイダーカード。BLSやACLSに合格後に送られてくるあの英文のカードですが、あれがなくなるという話題です。

この方向性は数年前から打ち出されており、AHAとしては、段階的に普及を進め、今年1月には米国内ではすべてのトレーニングセンターにeCardを発行することを求めるに至りました。まだかろうじて過渡期のようですが、ちかぢか紙のプロバイダーカードの販売が停止されることが決まっています。

今は、まだ紙のカードとeCardが混在していますが、すでに米国内では、紙のカードはold fashionという空気感になってきています。


さて、このeCard、読み方としてはイーカードですが、どんなものかというと、e-mailと同じ語法ですので、電子カードとでも訳せばいいのでしょうか。

簡単にいえば、形がある紙ではなく、インターネット上の電子データとして存在確認される証明書ということになります。

○○プロバイダーコースに合格すると、AHAからメールが届き、そこにあるリンクをクリックすると、専用ページでのパソコンやスマートフォンの画面表示として資格証明を確認できるという形になります。

今までは、ACLS資格を取ったといったらプロバイダーカードを見せたり、そのコピーを提出したりしたわけですが、eCardでは、専用ページにアクセスしてスマホの画面をちらっと見せて、資格証明をする時代になったということです。

eCardは、パソコンやスマホ画面での表示以外に、賞状のような形で印刷したり、名刺サイズのカードに印刷することもできるようになっています。

従来のプロバイダーカードでは、唯一の資格証明が紙切れ一枚という形でしたが、eCardでは、いくつかのパターンで資格証明ができ、そのオリジナルはインターネット上の電子データですから、紛失のリスクがなくなったのがeCardの長所です。

eCardの詳細は、日本国内で活動しているUSインストラクターの方たちがホームページで解説してくれているので、そちらを参照してください。


AHA eCard(イーカード・電子修了証)とは - AHA岡山BLS
http://jemta.org/ecard/ecard.html

AHA資格 電子認証システム eCard (イーカード)とは【BLS横浜】
https://bls.yokohama/ecard.html


今のところ、日本国内でeCardを発行しているのは、USインストラクターと呼ばれる米国のトレーニングセンターと提携して活動しているインストラクターだけで、その数はおそらく10〜20人程度と思われます。

eCardは米国の話で、日本ではほぼ無関係の話ではあったのですが、先ごろ、日本の国際トレーニングセンターの代表者の集まりが開かれ、日本でも2019年1月で、紙のプロバイダーカードの供給を停止するという話が持ち上がりました。

つまり、来年の1月以降、日本でもeCardへの完全移行の可能性が具体化してきたのです。

日本においては、CPRverify(AHAインストラクターの皆さんは聞いたことありますよね?)からインストラクターがRosterデータを登録することでeCardが発行されるシステムにしたいみたいで、去年あたりからCPRverifyの促進キャンペーンが行われていました。(米国のTCは別で、CPRverifyではなくInstructor Networkから登録します)

CPRverifyは日本語化されましたので、それほどハードルは高くはないとは思うのですが、日本のITCとしては、否定的な意見が多く、2019年1月のeCard移行については、AHAが最終的にどのように判断するかは現時点、未知数です。

AHAとしては、わざわざ日本のためだけに紙のプロバイダーカード原紙を製造・販売を続けるということは考えにくいことですので、日本でもやがてeCardに移行するのは間違いないでしょう。

この電子資格認証という制度は、AHAに限らず、日本では、例えばサッカーの審判の資格証も電子認証になっていると聞きます。

時代の流れ、なんでしょうね。



米国で電子認証のeCardがここまで定着したのは、病院などの雇用者が従業員のBLSやACLSの資格管理に便利という点が大きいと思います。

ご存知の通り、米国の医療従事者はBLSやACLS資格の取得と維持が、事実上必須可されているため、病院雇用者側としては、何千人といる従業員の資格チェックが大きな負担でした。

その点、eCardシステムでは、従業員からeCardコードと呼ばれる12桁の個別番号の提出を受ければ、インターネット経由で、その資格の有効性をまとめてチェックできるので、管理が簡単という絶大なメリットがあります。

日本では、ACLSやBLSの資格チェックといえば、麻酔科専門医や循環器専門医の申請の他、国際病院機能評価JCI受審のため、というくらいなので、この資格チェックシステムが活きてくる場面は限局的かもしれません。

さて、この先、どうなっていくんでしょうね?







posted by めっつぇんばーむ at 20:52 | Comment(0) | AHA-BLSインストラクター
2018年03月24日

BLSプロバイダーコース指導がいちばん難易度が高い理由

久々の更新です。

BLSに関しては、最近は後輩育成が中心となっています。

G2015コースに切り替わって、もう久しいですが、改めて思うのはBLSプロバイダーコースって難しいなという点です。

BLS、ACLS、PEARS、PALSと比べてみたら、内容のシンプルさでいえばBLSが一番簡単そうですが、ところがどっこいAHA-ECCプログラムの中で、指導という点ではいちばんやっかいなのがBLS。

なにが大変って、ひとえにビデオベースってところですね。

PWW(Practice while Watching)というDVD映像を見ながら真似して練習するAHAの専売特許的な指導法。これが最大限に発揮されたのがBLSプロバイダーコースなので、インストラクターは受講者をビデオに合わせて動くように誘導しなくちゃいけない。

これが難しいんです。

同じPWWでも「対応義務のある市民救助者」向けのハートセイバーCPR AEDコースは、ビデオの作りが丁寧なので、逆にインストラクターはビデオ操作をするだけで簡単に進行できるのですが、AHAはヘンに玄人向けなので、中途半端な省略がいただけない。

例えば、人工呼吸練習では、ポケットマスクはマスク・フォールドがいちばん難しいのに、画像をみて真似しているヒマがなく、スッと流れてしまったり。

そもそも人工呼吸を、PWW(見ながら練習)でさせるって根本的に間違っていると思うんですよね。ポケマで呼気吹き込みしている最中に画面見てたらダメ。だって、胸が上がるか見なくちゃいけないし、入れ過ぎちゃいけないわけだし。

だから、人工呼吸のPWWで画像を見て真似する部分って、マスクの当て方の部分だけなんです。なのに肝心のそこが使えない作りってなんなんだろうと思います。

こういう素直にレッスンプランとDVD通りにやっても、うまくいかないのがBLSプロバイダーコースの難しいところ。


更にいうと、DVDプロバイダーコースの最初の実技練習、傷病者評価のところなんて最悪ですよね。

反応なしで、「誰か!」と叫ぶのはいいけど、「119番! AED!」と言うまでの間にタイムラグがある。これをふつうにやったら、受講者は多いに戸惑います。

なんなの? これ? って、キョトンとしちゃいます。

これって、教育工学的に受講者のやる気を落とすマイナス要因です。特に期待して受講したAHA講習との最初の練習が、こんなワケワカメだとかなりの打撃。

AHAガイドライン2015の教育の章に書いてあるように、インストラクショナル・デザインと成人学習理論に基づいて作りましたよ、と宣言されているのがG2015講習。

だとしたら、インストラクターも成人学習理論を踏まえた展開をするのは当然のこと。

米国人向けに作られたDVDの構成によって、日本人受講者の学習意欲を削ぐ要因があるのであれば、その溝を埋めるのが日本人インストラクターの仕事です。

トレーニングセンターによっては、標準化教育なんだから「インストラクターはコース中に喋っちゃいけない」とか言っているところもあるようですけど、教材設計の背景を考えてないんでしょうね。

ふつうに考えても、高い受講料を取って、顧客に戸惑いや不快な思いをさせちゃダメじゃないですか。

BLS-2015の最初のPWW、周りに助けを呼ぶのと、救急対応システム発動とAED手配のタイミングがずれているのには、これはこれでG2015の改訂の意図を考えればちゃんと意味がある部分で、この部分は補足説明してあげないといけないと思うわけです。



一言で言えば、BLSプロバイダーコースはガイドライン改訂の本質部分がぎっしりつまっています。これ自体はBLSコースの大きな魅力なのですが、それが指導員向けのレッスンプランに書かれていないのが問題と言えます。

この点は、ガイドラインそのものをちゃんと読めば、なるほどね! とわかるんですけどね。

この違和感の謎を解いて、大筋としてのAHAの意図を汲み取って、溝を埋めていく。

これがBLSプロバイダーコース指導の難しさです。
逆にDVDなんか使わずに、自分で指導したほうがよっぽど簡単。


この難しい部分を他のインストラクターにどう指導していくのかが、俗にいうインストラクター・トレーナー(AHA的にはFacultyといいます)の力量で、さらにはトレーニングセンターという組織母体の教材設計理解のポテンシャルなんでしょうね。






posted by めっつぇんばーむ at 23:55 | Comment(0) | AHA-BLSインストラクター
2017年12月31日

AHAインストラクターに「所属」という概念は、ない。

今、日本国内には10近くのAHA国際トレーニングセンター(ITC)が認可されています。

AHAインストラクターが、プロバイダーカードを発行する公認講習を開催するためにはこれらのトレーニングセンターのいずれかと提携している必要があります。

というのは、インストラクター個人には、プロバイダーカードの原紙の購入権限がないからです。

プロバイダーカードやインストラクターカードの原紙(台紙)を購入できるのはトレーニングセンターの責任者(TCコーディネーターと言います)だけなので、公認講習を開催し、資格認定を行うためにはトレーニングセンターとの提携が必要なのです。

この「提携」と訳した元の英語の単語は alignment です。

時々、このアライメントを「所属」と勘違いしている現役インストラクターがいるので注意が必要です。

所属というと、登録しているトレーニングセンター以外では活動できないようなイメージがありますが、そんなことはありません。

AHAインストラクターには、「所属」という概念はありません。あくまでも「提携」なのです。



インストラクター資格というものは、個人に帰属する資格であり、その資格をどう使うかは個人の自由です。

インストラクターコースを受けたのがAトレーニングセンターであっても、その後、インストラクターカードの発給を受けるのがBトレーニングセンターであっても構いませんし、最初はAトレーニングセンターで活動していても、条件が変わればBトレーニングセンターと提携を変更するのも自由です。

さらに言えば、Aトレーニングセンターと提携を結びつつ、Bトレーニングセンターとも提携を結んで、両方のトレーニングセンターで活動することも可能です。

所属ではなく、提携であるというのは、こういう意味です。

日本社会的には、株式会社A社の社員でありつつ、有限会社B社の社員ということはあまりないことなので、ピンと来ないかもしれませんが、AHAインストラクター資格というのは米国文化での資格ですから、組織ありきではなく、個人が主体であり、その個人がどこと契約を結ぶのも自由という考え方に立脚しているのです。

このことは、AHAのグランドルールが書かれたProgram Administration Manual(PAM)を見れば分かりますし、AHA Instructor Networkというインストラクター専用サイトを見てもらっても自明なのですが、日本の狭い世界観の中でインストラクターになった人にはなかなかわかりにくい部分のようです。

参考まで、下記がAHAインストラクターとして登録する際のAHA Instructor Network登録フォームの一部ですが、最初から提携先は複数選択できるように Primary TC の他、Secondary TC を入力する欄が設定されています。


インストラクターとしての提携は複数登録できる



現に私も2つのトレーニングセンターと提携していて、BLSやACLSコースを開催するときは、どっちのトレーニングセンターに書類を送るかによって、プロバイダーカードの発行元がその都度違います。

どっちに登録して開催しても、私個人の活動実績ということでは変わりません。

蛇足ながら、この「提携」は、インストラクターが自分の名前でプロバイダーカードを発行するために必要な条件であって、単なるアシスタント・インストラクターとして活動するだけなら、トレーニングセンターとの提携は関係ありません。AHAインストラクター資格を持っていれば、世界中のどこのトレーニングセンターの講習会にも正式にスタッフ参加できます。


これが本来のAHAインストラクターとしての在り方です。

この提携を「所属」と勘違いしていると、いろいろと理解できない点が生じてくるんでしょうね。

組織によっては、作為的に所属という言い方をして、他の選択肢を与えない、自分のところに縛り付けたいと考えるところもあるのかもしれません。

しかし、もともと米国文化にもとづいて作られた制度で、その情報はすべて開示されています。

AHAには、日本社会の悪いところでもある「上が言うとおりにしていればいい」という文化はありませんので、AHAインストラクターとしての誇りの下、自分で情報にアプローチして、自分の頭で考えられるインストラクターでありたいですね。


posted by めっつぇんばーむ at 20:28 | Comment(6) | AHA-BLSインストラクター
2017年11月29日

救命法指導員は、その重い責任を自覚すべし−「AED充電中の胸骨圧迫」編

心肺蘇生法とかBLSのインストラクター/指導員って、責任重大で、実はハイリスクな仕事なんじゃないの? という点で、前回は 人工呼吸省略を教える危険性 についてお話しましたが、今回はその続きとして、AEDの充電中に胸骨圧迫を行うように指導することについて取り上げます。


AEDを使う際に、心電図解析の後、充電中の僅かな時間でも胸骨圧迫を行うようにと教わった方、いませんか?


結論からいうと、これは現時点での日本ではNG、あり得ない間違った指導なのですが、そのように教えている指導員が少なからず存在しているようです。

AED充電中に胸骨圧迫を行ってはいけない理由は、大きく2つです。


 1.胸骨圧迫を体動と判断して充電がキャンセルされる可能性があるから
 2.AEDの指示に従わない動作であるから ← 医師以外が除細動を行う法的要件から外れる



この問題は、ガイドライン2010の頃から持ち上がるようになりました。特にACLSプロバイダーコースの中のBLSデモ映像の中では、AEDを使う場面で明らかに充電中に胸骨圧迫を行っており、これを日本ではどう指導するかという点が日本人インストラクターの間では話題となった記憶があります。

時を経て、ガイドライン2015のBLSプロバイダーコースのDVDでは、IFP(病院内)設定の解説の中で、AED充電中のわずかな時間でも胸骨圧迫を行うことはとても重要なことと明言されるようにもなり、(免許のもとに責任を取れる人しか受講しない)ACLSとは違って、非医療従事者の人に影響が及ぶ懸念が出てきました。

除細動の効果は、ショックの直前まで胸骨圧迫を行ったほうが優位に高いというエビデンスが出てきたのがG2010頃です。手動式除細動器を使う二次救命処置の世界では、もはや常識的になり、だからこそ、パドルショックよりパッドショックを推奨するという認識も広まってきています。

この点からすれば、AEDであっても、ショックの直前、つまり充電中も胸骨圧迫を行ったほうがよいと考えられますが、勘違いしてはいけないのは、AEDは「自動」体外式除細動器であるという点です。

AEDは心電図解析を自動で機械的に行います。心電図解析をするタイミングを人間がコントロールすることはできません。AEDの機種によっては、これは、ACLSやACLSでいうところの「最終波形VFです!」というチェックのため、ショック直前の充電中も心電図の解析を続けている機種があります。

もしこのタイミングで胸骨圧迫を再開してしまうと、AEDが「体動あり」と検知してしまう可能性が否定できません。そうなってしまうと、充電はキャンセルされて、除細動のショックが遅れてしまいます。ご存知の通り、除細動のショックはVF発生から速ければ速いほうがいいわけで、1分遅れると除細動成功の可能性が7〜10%下がると言われているとおりです。



また、別の観点からすると、法的な問題もあります。

電気的除細動という医行為を医師以外が行ってもよいと法解釈が示されたのが2004年7月のことです。

今でこそ、AEDは一般市民が使っても構わないという点は周知されていますが、それが解禁されたのは2004年。それ以前はダメだったのです。

医学知識のない素人が高度な治療行為である除細動を行えるように敷居が下がったのは、心電図読影機械が判断してくれて、その機械の指示通りに使う限り、素人であっても安全に使えることが実証されたからです。

この安全性は、「AEDの指示に従って操作すること」が前提条件となっています。

これから外れたことを行ってしまうと、医療知識がない人がAEDを安全に使えるという担保がなくなってしまうというのは、考えてみればわかると思います。

ここでいうAEDの指示というのは、言い換えれば医師の指示みたいなものです。

医師が離れろと指示しているのに、それに反して胸骨圧迫を行っていいのか? と考えてみればわかりやすいかもしれません。

現在、日本国内で承認を受けているAEDの中で、充電中に胸骨圧迫を再開するように指示する機種は1つもありません。

従って、日本国内のAED講習において、充電中に胸骨圧迫をするように、と指導するのは正しくありません。



また、もともとAED講習で受講者に教えるべき最も重要なポイントに立ち返ってみると、

1.電源を入れる
2.AEDの指示を聞いて、それに従って行動する

この2点に関して異論はないかと思います。

すべての心肺蘇生法指導者は上記を伝えているはずです。それなのに、AEDの「患者に触れないでください」という、AED指示を無視した行動を教えるというのは矛盾していますよね。

特にこの点は、日頃ACLSやICLSで手動式除細動器での蘇生指導に携わる医師や看護師に多い印象があります。

手動式除細動器とAEDの違いを正しく認識することが重要です。

そして、医学的な正しさと、製品・機械の特性と仕様上の正しさは、かならずしも一致しません。さらに言えば法律的な正しさも…


いまは除細動の遅れが過失であるとして訴訟が起きる時代になっています。

院内での心室細動に対する早期除細動(原総合法律事務所Web)
http://www.haralawoffice.com/archives/1623

AEDの充電中に胸骨圧迫をしたことが原因で、除細動の遅れてしまった。BLSインストラクターにそうしろと指導されたから、、、、ということになったら、、、どうでしょう?

救命法指導員はその責任を自覚して、正しい情報をブラッシュアップし続ける努力が必要です。



posted by めっつぇんばーむ at 11:37 | Comment(2) | AHA-BLSインストラクター
2017年10月29日

BLS/ACLS スキル獲得と資格取得の意味の違い

私は、AHA-BLSインストラクターとして、BLSプロバイダーコースや、ハートセイバー・ファーストエイドなど資格認定コースを開催していますが、併せて応急手当普及員として普通救命講習Iという消防庁認定資格の発行もしています。

片や、そういった特定団体の公認講習とは別に、自分自身で組み立てたオリジナルのBLS講習やファーストエイドプログラムを有償でやることもありますし、地域貢献活動として無償ボランティアとしてCPRセミナーを開催することもあります。


私からすれば、対象や目的に合わせて最適なものを提案するだけです。規定の◯◯コースがマッチするのであればそれを提供するし、なければ作ればいいだけで。別に◯◯コースに誘導しようという気はサラサラありません。

だって、◯◯コースにすると、教えなくちゃいけない内容が決まっちゃうから、柔軟性がなくなっちゃうんですよね。

◯◯コースのいいところは、幅広くいろんな対象に無難に対応できるように浅く作られているところ。逆言えば、具体的にターゲットが絞られている場合は浅すぎて力不足です。


資格が必要という人には資格認証手数料が掛かる有料講習を提案しますし、資格なんていらない、技術が身につけばいいんだという人には、より短い時間で現場のニーズに合わせた焦点化した講習を廉価で提供しています。



BLSとか救命講習を受講することの目的とか意義ってなんなんでしょうね?



受講料が高い安いという意見を聞くにつけ、いつも、このことを考えてしまいます。


スキル獲得資格取得 という2つの側面があると思うのですが、ここをごっちゃにしているから不毛な議論が多いんじゃないでしょうか?

資格が必要というのなら、高いお金を出してでも、◯◯コースを受ける必要があるでしょう。

私個人が勝手に資格を作って証明書を発行してもいいのですが、きっと名前の知れた大きな組織の公認証書じゃないと意味をなさないと思います。だったら、ブランド料というかパテント料として、料金が高くなるのは致し方ないですよね。


しかし、日本においては救命スキルに関しては意識が低く、資格を求められるケースはあまりありません。

特に医療従事者に関して言えば、例えば医師免許とか看護師免許を持っていれば、BLSなんて当然できるものとして認知されていますので、ことさらBLS資格とかACLS資格とか求められていないのが現状です。

であれば、日本の医療従事者にとっては救命スキルに関しては、資格という側面での意義はあまりなく、技術獲得さえできればOKといえます。

そう考えると、いちばん良いのは病院とかの職場単位で自院に合わせた形で研修プログラムを作って習得させるのが最善と言えるでしょう。


◯◯コースだと、資格を発行する関係上、その病院には必要のないスキル(例えば小児蘇生とか、オピオイド過量とか)までも時間をかけて教えなくちゃいけないので、そんなのは無駄です。


今では、多くの病院施設で、自前でBLSトレーニングを実施するところが多くなってきていますよね。

同じようにACLSもやっていけばいいんです。公認講習にするから受講料が何万円だとかそういう話になるので、自施設で自前の機材で自院スタッフが業務時間内で教えれば、支出はゼロです。


それができなくて外部に委託するのであれば、講師料を含めてお金が発生するのは当然のこと。

現実問題、蘇生法の指導員を育成するのはなかなか難儀で時間もかかります。

自前のトレーニング・プログラム開発と指導員養成までの経費を考えたときに、外部のプロに委託したほうが結果的には安くつくと判断する病院もあります。

またオリジナル研修では、資格認証という点では弱いという点に着目する病院組織もあります。例えば国際病院機能評価JCI認証を狙う病院では、その点が顕著です。

資格の持つ意味として、病院の患者安全意識のPRや、訴訟対策という視点もあります。いくら自分たちできちんとトレーニングしていると言っても、それを証明するものがないと主張が弱いと考えれば、社会的に認知されている資格にすがるのも手です。


医療従事者はすべからくBLSができるべきで、部署によってはALSも必須。

そこに異論はありませんが、自前でトレーニングできているのであれば、あえてお金をかけての「受講」はいらないと思いますし、病院や個人として資格のメリットを感じないのであれば、資格なんて不要です。

提供する側は、持っているスキルや資格に応じて、いろいろなプログラムを提供します。

ユーザーや依頼する側は、目的に合わせて選べばいい。それだけだと思います。



posted by めっつぇんばーむ at 23:02 | Comment(0) | AHA-BLSインストラクター
2017年10月18日

AHA講習中は禁煙です。休憩時間にタバコを吸っているインストラクターがいたら通報しましょう

アメリカ心臓協会 AHA 講習は禁煙です。

講習中、会場内はもちろん、会場施設敷地内での喫煙も禁じられています。

AHA講習(BLS/ACLS/PALS/PEARS)は禁煙です

AHAプログラム運営マニュアル(PAM)日本語版より


喫煙癖のある受講者の方は、その日、1日朝からずっとタバコを吸わないつもりでいて下さい。

当然ですが、AHA講習では喫煙所のアナウンスはありません。

だからと言って、昼休みに近くのコンビニまで行ってタバコを吸おうなんてことが考えないで下さい。

最大3人で交代しながら、呼気吹き込みを行うBLSマネキン。煙草臭くなったら、他の受講者に迷惑です。



アメリカ心臓協会(AHA)は、心臓病と戦う学術団体です。

AHA Fighting Heart Disease and Stroke


心臓病や脳卒中のリスクを有意に高めることが証明されているタバコを許容することはできません。

そんなスローガンに賛同して、自らAHA-ECCプログラムの推進に身を捧げることを志したAHAインストラクターたちは、もちろんタバコを忌避しています。

そんなインストラクターたちが、タバコ臭かったり、ましてや、休憩時間にタバコを吸いに行っているということはAHAポリシーからしてあり得ないことです。


受講者の皆様、万が一、タバコの匂いを漂わせているAHAインストラクターがいたとしたら、それは大問題です。

講習の最後に、コースの評価表と呼ばれるアンケート用紙が配られます。

2016_Japanese_BLS_Course_Evaluation.png


アンケート用紙に喫煙するインストラクターがいて、不快であったことをはっきり書くようにしましょう。

またコース中に、喫煙所に関するアナウンスがあったとしたら、コース全体に関わるAHAポリシーに反する「重大な問題」です。

アンケート用紙の末尾に書かれている通り、AHAの国際部門(ECCinternational@heart.org)に直接通報していただくようにお願いいたします。

以上、スモークフリーな学習環境維持のために、皆様ご協力いただけますよう、切にお願い申し上げます。




posted by めっつぇんばーむ at 21:49 | Comment(0) | AHA-BLSインストラクター
2017年06月23日

自分の価値の決め方 〜1日の講師料をいくらに設定するか?

久々の更新です。

インストラクターとしての報酬の決め方の話です。

BLSとかACLSみたいに、ひとりあたりの受講料をいくらと決めるのは、簡単です。
なんとなくの相場があるし、必要経費を計上して加減をすればいいから。

難しいのは病院とか保育園などからの依頼講習です。

「コース」ではなく、講演だったり、オリジナルのプログラムの依頼だったり。

こういう場合、講師としてのギャラを決めて、そこに必要経費を乗せていくという計算をしていきます。

ここでいう講師としてのギャラが、まさに自分の価値になります。

皆さんならいくらに設定しますか?


ここでは便宜上最低価格という視点で考えてみたいと思いますが、例えば1日の講師料を2万円とした場合、それは高いか低いか?

考え方として、それを今の自分の本職での給与と照らしてみると、目安が付きやすいかもしれません。

だいたい1ヶ月の労働日数は20日くらいでしょうか?

となると、2万円×20日=40万円。

月の手取りで40万円と考えたら、たいていの看護師インストラクターにとっては、やや高給という印象かもしれません。

しかし、です。

給料明細を診てもらうと分かる通り、サラリーマンの実際の給与はもっと高くて、社会保険料や年金、税金などが引かれての手取りです。

さらにいうと、病院勤務であれば、この他にボーナスの支給がありますし、年金と健康保険料は半分は病院が負担してくれているという現状もあります。

それを考えると、40万円の手取りであっても、そこから年金や保険や税金を全額自分で支払うと実質的には20万円台になってしまいます。年収で言ったらボーナス分もマイナスです。


プロのインストラクターとして対価はいくらが妥当か? そう考えると、2万円では少なそうですね。


専業、兼業で考え方が違うとは思いますが、対価をどう決めたらいいか悩むという相談をよく受けるので書いてみました。

参考になりましたら。



posted by めっつぇんばーむ at 20:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | AHA-BLSインストラクター
2016年06月12日

「これは米国の講習プログラムですから」という言い訳はもう通用しない




リアリティと、現場に合わせた柔軟な実行性


これがAHAガイドライン2015講習の最大の特徴です。

これまでのAHA講習では、指導内容のアレンジに関しては寛容性が低く、日本の医療現場ではそぐわない内容であっても、「これは米国の講習プログラムですから」といって、強引にアメリカのやり方を押し付けたり、日本事情に関する説明はご法度とされるような態度が横行していました。

しかし、G2015正式版講習からは、それが変わります。

指導内容の中に"Local Protocols Discussion"というセクションが正式に導入されました。

AHAガイドラインではこういっているけど、日本ではどう? あなたの職場では、この通りにできる? なにか別のルールがあるんじゃない? 実際どうしたら良い?

ということをディスカッションするような時間がコース中に設けられたのです。

ローカル・プロトコル・ディスカッション


ここでAHAインストラクターに求められている基本的態度は、「ローカルルールに従うべき」ということです。

AHA ECCプログラム講習はAHAガイドライン準拠です。そこをコース中に変えることは許されていませんが、学んだことを、自分の国や地域、またメディカルコントロールや病院の業務指針に反しない範囲でどのように活かすか?  その実行性へのアレンジメントの手助けがAHAインストラクターに求められているのです。

そのため、AHAインストラクターはAHAガイドラインを熟知していればいいという時代は終わりました。

このセクション自体はオプション扱いですが、日本国内でAHA講習をやる限りは絶対に外しちゃいけない部分です。
ということで、日本で活動している私たちは、少なくとも日本版のJRC蘇生ガイドラインについても熟知していなければなりません。

そして、日米のガイドラインの違いを把握しておく必要があります。


今までも実行性を意識したインストラクションをしてきたインストラクターにとっては当たり前の話かもしれませんが、今後はすべてのインストラクターに日米両方のガイドラインの勉強が求められるようになったわけです。

幸い、日本のJRC蘇生ガイドライン2015は出版もされていますが、ネット上で無料で読むこともできます。

日本蘇生協議会ウェブ JRC2015オンライン版ダウンロードページ

PDF形式で章ごとに配信されていますので、スマートフォンやタブレット端末に入れておくと便利です。

また、市民向け講習(ハートセイバーシリーズやファミリー&フレンズ)を手掛ける人は、JRCガイドライン2015を元に作られた講習指導要項である「救急蘇生法の指針〈2015〉市民用・解説編」の精読は欠かせません。

解説編を含まない、ただの「救急蘇生法の指針<2015> 市民用」(39MB:PDF直リンク)だけなら、厚生労働省からPDFで無料配信されています。


今回のLocal Protocols Discussionのお陰で、借り物に過ぎなかったAHAガイドライン講習が日本社会で活かせるようになったといえます。

ぜひ、日本のインストラクターは勉強を重ね、より日本社会で意味がある講習展開をしていって欲しいと思います。






posted by めっつぇんばーむ at 16:56 | Comment(0) | TrackBack(0) | AHA-BLSインストラクター
2015年09月13日

日本に新しいAHAトレーニングセンターが設立された模様

AHA Instructor Network周辺を徘徊していて見つけてしまいました。

いつのまにか日本に新しいAHAトレーニングセンターが認可されていた模様。

日本に新しく設立されたAHAトレーニングセンター


ただ、よくよく見てみると、トレーニングセンターのIDがMTN0700。

そしてトレーニングセンターコーディネーター名は外国人名で、メールアドレスも末尾が@us.af.mil。

住所は嘉手納。

そう、米軍のAHA Military Training Networkのトレーニングセンターでした。

MTNの登録も日本という枠内に表示されるんですね。知りませんでした。

それでも少なくとも以前はありませんでしたから、日本国内の米軍基地内に新しくトレーニングセンターができたってことなんでしょうね。

私の知る限り、海軍MTNも空軍MTNもトレーニングセンター自体は本国にあって、日本で展開しているのはあくまでもサイトだと関係者から聞いていました。

詳しい事情はよくわかりませんが、ITCの私たちにはあまり関係ない話だったようです。





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2015年06月03日

「AED処置遅れ植物状態」男性が病院提訴 …河北新報報道について

病院内でのAED使用が遅れたということで訴訟が起きたというニュースがありました。

「AED処置遅れ植物状態」男性が病院提訴



細かいことはわかりませんし、視座の置き方によって色々な問題点が見えてきそうですが、少なくとも言えるのは、これまでブラックボックス化されていた病院内での救命処置に対して、家族から嫌疑を投げかけられる時代になってきた、ということです。

これまでは「最善を尽くしました」というパターナリズム的な説明で納得が得られた部分でしたが、それに甘えていてはいけません。

生活者ガバナンスの変化に、私たちは敏感であり、倫理観高く仕事をしていきたいですね。
そのためにも、日々の研鑽・訓練、予測的な関わりが重要です。


「AED処置遅れ植物状態」男性が病院提訴
 仙台オープン病院(仙台市宮城野区)に入院した宮城県大和町の男性(57)が心肺停止後に遷延性意識障害(植物状態)になったのは、自動体外式除細動器(AED)の使用が遅れたためだとして、男性と妻が1日、病院を運営する公益財団法人仙台市医療センター(同)に1000万円の損害賠償を求める訴えを仙台地裁に起こした。
 訴えによると、男性は2013年4月、十二指腸がんで入院。手術後、腹部の激しい痛みを訴え、コンピューター断層撮影(CT)を実施したところ、撮影中に心肺停止状態となった。男性はAEDの使用で約15分後に蘇生したが、現在も意識が戻っていない。
 男性側は「病院は男性の心肺停止後、別の蘇生法を試すなどしていた。AEDを直ちに使用していれば、植物状態になるのを避けられた可能性が高い」と主張している。
 賠償請求額は男性の事故前の収入などから約8040万円と算定したが、今回は一部の請求にとどめた。審理の状況に応じて増額するという。
 仙台オープン病院総務課は「訴状が届いていないのでコメントできない」と話している。






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