AHA講習といえば、医療標準化コースの先駆け。世界中どこで受講しても同じ、というのが売りだったわけですが、最新のAHA ECCプログラムであるPEARSプロバイダーコースは別。
ガイドライン2010版のPEARSになってから、オプション扱い項目が増えて、驚くほどに多様性ができてしまいました。
もともとはAmerican Medical Response JAPANでしか開催していなかったPEARSですが、今は、日本国内3つのITCが手がけるようになっています。
・日本医療教授システム学会 JSISH-ITC
・日本BLS協会 JBA-ITC
・日本ACLS協会 JAA-ITC
どの団体もAHA公式のPEARSプロバイダーコースを開催していますが、その中身は、もしかしたら別物? と思うくらいに違う可能性が出てきています。
これから受講する人は、そんなことを知っておいてください。
ちなみに、このブログで以前から書いているPEARSは、初代はAMR-TCのPEARSと、現JSISH-ITCのPEARSを前提でお話しています。(いわゆる日本PALS協会関連のところです)
さて、同じPEARSの中で、どんな違いが生じうるかというと、最大のポイントはシミュレーションをやるかやらないか、です。
そう、PEARSプロバイダーコースは、シミュレーションをやらずに、机上のディスカッションだけで終わらせることもできるのです。
一見手抜きのようですが、これも公式にAHAが認めたやり方。(英文インストラクター・マニュアルに書かれてます)
そもそもPEARSプロバイダーコースがどんなふうに進行するか知らないとイメージつかないかもしれませんね。
PEARSプロバイダーコースは、生命危機状態のアセスメント能力というノン・テクニカルスキルを鍛えるプログラムです。
生命危機状態にあるリアルな患者の映像を見て、体系的アプローチでの観察・評価の仕方を繰り返すというトレーニングになります。
ですから、Basicな部分は座ったままでいいのですが、評価→判定のあとの介入というプロセスでは、チームメンバーに指示を出して、マネキン相手に処置をしてみるというシミュレーション手順も入ってきます。
G2005までのPEARSでは、ビデオでのアセスメントのあとは、マネキン相手のシミュレーションという二本立ての進行が標準だったのですが、2010年の教材改訂で、シミュレーションはやらなくても良いことになりました。
つまり机上のディスカッションで終わるのか、あくまで模擬体験だとしてもシミュレーションが入るのとでは、学習体験として相当な違いが出てきます。
もともとコンテンツとして盛りだくさんなPEARSですから、極力シンプルにということで、ディスカッション・オンリーのメリットもありますし、せっかくチームメンバーの頭数が揃うのであれば、実際に指示出し/指示受けの体験をすることのメリットもあります。
こんなふうに座学で終わるPEARSもあれば、シミュレーション教育としてのPEARSもある。
どちらを取るかは主催するインストラクター(ディレクター)の考え方次第です。
参考まで、私の場合は、最初のケースシナリオ6つは、皆さん、病態を含めた理解がなかなか追いついてこないので、映像でのディスカッションのみとして、後半のPut it all togetherと呼ばれる総合練習のところは、マネキンの前でシミュレーションベースにしています。
その他、除細動器にAEDを使ってもいいし、手動式除細動器を使ってもいいし、オプションとして経口/経鼻エアウェイ挿入や骨髄路確保を体験させてもいいし、薬剤投与も入れてもいいし入れなくてもいいし、とにかく自由度が高い!
人におすすめする上で、受講する場所によってかなり違う可能性があるので、皆さん、ご注意ください。
逆に、インストラクターにとっては、この許可された多様性をどう活かすのか、課題が大きいとも言えます。
AHA講習はレッスンマップと呼ばれる指導要録にそって機械的に進めればいいのですが、PEARSに関しては、インストラクターの理念が大きく反映されるコースと言えるでしょう。