2015年05月16日

意識を失った人への窒息解除:CPRが正解だけど、、、要注意!

話をシンプルにするために成人傷病者を前提に話します。

喉にモノが詰まったら、ハイムリック法(腹部突き上げ法)か背部叩打法で窒息解除を試みるのはご存知の通り。

このあたりは市民向けの救命講習でも必ず教わることなので、知っている人が多いと思います。

これでうまく取れれば御の字ですが、着手が遅れたり、うまくいかない場合に、どうなるかというと、意識が朦朧としてきて、意識を失って倒れてしまうことでしょう。

そこに至るまでの時間はほんの数分です。自分は何秒間息を止められるかな、と考えるとイメージができるかと思います。

119番で救急車を呼ぶのでは間に合わない、だからこそ、その場にいた人が迅速に処置する必要があるわけです。

で、だいたい、映画みたいにすばやく対応できる人なんてそうそういませんから、喉にモノが詰まった場合、処置が間に合わずに意識を失ってしまうケースは少なくはないんじゃないかと思います。

だからこそ、意識を失った後の対処も知っておくべきなのですが、残念ながら、ここはあまり知られていません。

救命講習でもさらっと話す程度で終わりますし、受講者の記憶にも残っていない場合が多いです。

でも、けっこう大事だぞ、という点は、ここまで読んでくれた方ならわかりますよね?


さて、腹部突き上げ法や背部叩打法が間に合わず、意識を失ってしまったら(正確には反応がなくなったら)、ハイムリック法や背部叩打法を続けるのではなく、「胸骨圧迫からCPRを開始する」というのが教科書的な正解です。

一般の救命講習でも「意識を失ったら心肺蘇生法を行ってください」という感じでさらっと説明されますが、ここにけっこう大きな落とし穴があるんだよ、というのが今日皆さんにお伝えしたいポイントです。

大事なことは、

胸骨圧迫からCPRを始める(脈拍触知はしない!)


ということです。

ハイムリック法をしているうちにぐったりしてきたら、「大丈夫ですか?」「呼吸確認!」とかそういう評価は必ずしも必要ではありません。

特に、絶対にやっちゃいけないのが脈拍触知です。

市民向けのプロトコルだと脈拍触知は行わないことになっているのでいいのですが、ヘルスケアプロバイダー(医療従事者)向けで教わっている人は要注意。

想像してみてください。

喉にモノが詰まって息ができなくなって意識を失った人がいて、倒れた直後に脈拍を取ってみたら、、、、

きっとまだ脈はありますよね。

体の中が酸素不足になってますので、代償機能が働いて頻脈気味かもしれません。

で、普通のBLSの手順に従うと、「反応なし+呼吸なし+脈あり」、ですから、やるべきことは5〜6秒に1回の補助呼吸ということなってしまいます。


このシチュエーションで、必要な処置は胸骨圧迫の名を借りた 胸部突き上げ です。

つまり、臥位の状態で胸を強く早く断続的に押すことで、肺の空気を間欠的に押し出し、その力で喉につまった異物を取り除こうというのが目的。

心臓に力をかけたいのではなく、肺に力を掛けたいのです。(ですから、心臓マッサージではありません。胸部突き上げなのです)

もし、ここで脈を取ってしまうと、恐らく脈はまだあるでしょうから、この胸骨圧迫(=胸部突き上げ)につながらないのが問題だという点はわかるでしょうか。

だから話をシンプルにする意味では、近似的にCPRをしてください、といいますが、「胸骨圧迫から始める」ということ強調するのがとてもとても大切なのです。


ヘルスケアプロバイダーレベルのBLSを教える以上、ここをしっかりと伝えることはインストラクターの責務ではないかと思います。

AHAのヘルスケアプロバイダーマニュアルにもこのことはきちんと書かれていますので、ぜひ見てみてください。

53ページになります。

「傷病者を地面に寝かせ、胸骨圧迫からCPRを開始する(脈拍のチェックはしない)。」

と書かれています。



もうひとつ、この場面でわかりにづらいのが通報のタイミングです。

ここは呼吸原性心停止と同じ扱いで考えて、優先されるのは胸部突き上げの開始です。

誰か人がいれば119番通報をお願いするべきですが、自分一人しかいなければ、「誰か!」と叫びつつも自分で携帯を取り出すのではなく、行動としてやるべきは胸部突き上げです。

意識を失って脱力すれば、筋肉もゆるみますので異物が取れる可能性が高くなっていると考えられます。

だからこそ、臥位にして胸部突き上げを中心としたCPRを。

それでも取れなければ、埒が明きませんので、CPRを中断して、公衆電話に走るか携帯で119番しますが、その時間の目安はCPRを5サイクルもしくは2分間行った後、とされています。

米国ガイドライン(AHAガイドライン2010)では上記のように教えていますが、日本版ガイドライン(JRCガイドライン)では、通報が優先とされていますので、その点もインストラクターは把握しておいたほうがいいでしょう。





posted by めっつぇんばーむ at 10:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | ファーストエイド(FA)
2013年05月28日

幻の資格「ハートセイバー・ファーストエイド・インストラクター」

今日、Twitterで少し話題にしたので掘り起こしてみました。

昔はこんな資格もあったんです。

Heartsaver First Aid Instructor.

ハートセイバー・ファーストエイド・インストラクターカード

昔はファーストエイドを教えるには、ファーストエイド・インストラクターコースを修了し、このライセンスを取得する必要がありました。

その後、ファーストエイド・インストラクター資格は、BLSインストラクターとハートセイバー・インストラクター資格に内包されることとなりました。

ということで、現在は、BLSインストラクター資格を取る場合でも、ファーストエイド・プロバイダー資格が必須となっているわけです。


日本でもUS-BLSインストラクターとして活動していた人は、当然のごとくこの資格も取得していました。

ただ、私がハワイのインストラクターになったときはすでに、この資格は廃盤になっていて、私はカードを手にすることはできませんでした、、、残念。

ちなみに引用した資料は、ECC Course Card Reference Guideというインストラクター向け資料。

AHAインストラクターなら誰もが登録しているはずのAHA Instructor Networkからダウンロードできます。これもいつの間にかバージョンアップされてました。





posted by めっつぇんばーむ at 22:22 | Comment(0) | TrackBack(0) | ファーストエイド(FA)
2013年04月23日

ハートセイバー・ファーストエイドコース、指導上の注意点

もともとは、日本ではハワイのAmerican Medical Responseトレーニングセンターと、日本医療教授システム学会国際トレーニングセンター(元日本蘇生協議会ITO)しか開催していなかった、AHAハートセイバー・ファーストエイドコース。

ハートセイバー・ファーストエイド CPR AED コースDVD AHAガイドライン2010準拠 [DVD-ROM]

G2010教材から完全日本語化されて、最大手の日本ACLS協会さんでも4月29日を皮切りに全国展開していくとのこと。

ずっと、ファーストエイドの存在をアピールし、日本に足りない教育としてのFAを主張してきた私としては嬉しい限りです。

それと関係しているかはわかりませんが、医療系学生さんたちのサークル活動の中でもファーストエイドが一大ブームとなって、まさに2013年は日本のファーストエイド元年といっていいかのような賑わいを見せています。

全国のAHA-BLSインストラクターさんは、これからファーストエイドコースを教えるという人も出てくると思いますが、現実問題、かなり癖があるAHAのファーストエイドについて解説、コース運営上の注意点を書きだしてみようと思います。

ハートセイバー・ファーストエイドコースの受講対象・位置づけを明確に理解する

まず、AHAのハートセイバー・ファーストエイドコースの位置づけを理解しておく必要があります。そこを知らずに教えると危険がいっぱい。

DVDを見てもらえば分かる通り、AHAハートセイバー・ファーストエイドコースは労働者のための研修プログラムです。工場勤務や屋外労働などを含め、職場でなにか不測の事態が生じた時の対応が前提となっており、ファーストエイド・プロバイダーと呼ばれる日本でいうところの安全衛生管理者のための法定講習プログラムです。

米国では職場には、ファーストエイドの訓練を受けた人を一定数配置しておくことが労働法規で定められているのです。

ここが、日本の消防や赤十字の応急手当講習とは根本的に違う点です。善意の救護活動ではないのです。博愛の心からではなく、法的な義務としての救助を前提としています。

だから、「就業中は教わったとおりに適切に対応することが求められているけど、プライベートな場面で、助ける、助けないかは自由よ」みたいな台詞があるわけです。


ファーストエイド国際コンセンサスの国内位置づけ

また、教える内容はファーストエイド国際コンセンサス2010に準拠しています。

G2005まではアメリカ赤十字(ARC)とアメリカ心臓協会(AHA)だけで作ったローカルなアメリカ国内ガイドラインに過ぎませんでしたが、2010年版からは、各国赤十字などにも呼びかけて国際会議を組織、そこで審議をした上で作られていますので、国際コンセンサスに格上げされています。そのコンセンサスはAHA発表のCoSTR2010と一緒にウェブにアップされています。

このファーストエイド国際コンセンサス2010の策定作業は、日本蘇生協議会(アジア蘇生協議会の代表として)からも公式に参加していますので、日本も批准していて当然なのですが、なぜかAHAとは違って日本版蘇生ガイドラインには収録されませんでした。

救急蘇生法の指針2005の中のファーストエイドの項目は、AHA&ARCファーストエイドガイドライン2005の模倣だったにも関わらず、G2010は採用しなかったという不思議な経緯があります。(事情はよくわかりません)

故に、ハートセイバー・ファーストエイドで教える内容は、日本標準の応急手当とは違っているという点は理解しておいて下さい。

特に注意が必要なのは、下記の点です。

1.アドレナリン自己注射器の取り扱い
2.胸部不快感へのアスピリン投与
3.止血帯(ターニケット)の使用


重症アレルギー反応とエピペン

アドレナリン自己注射器は、いわゆるエピペン(商品名)のことです。

アドレナリン自己注射器エピペン


アナフィラキシーショックであらかじめエピペンを携帯している子どもがいて、本人が自己注射出来ない場合、日本では学校教職員と保育所職員と救急救命士に限っては、本人に代わって注射をすることが「医師法違反ではない」とされていますが、看護師を含めてその他の人がエピペンを使うと、法的責任を問われる可能性があります。

米国では州によって法律が違うのですが、社会的立場とエピペン正規講習を受けていれば代わりに打つことは問題とされない州もあります。

日本の救急法講習では、エピペンの取り扱いを教えるなんてとんでもないとされている点は、インストラクターは知っておくべきです。ハートセイバー・ファーストエイドコースは米国労働安全衛生局OSHA準拠の米国法定講習ですから、AHAライセンスを発行する以上、この項目を勝手に削除することはできません。(日本国内ITCで発行したカードであっても米国内で有効な公的ライセンスですから)

他人に注射をする手順を実習させてテストをする必要があるのですが、ハートセイバー・ファーストエイドのライセンスを取得したから、他人に対して注射をできるようになる、とかそういうものではない点は強調すべきです。また勘違い者を生じさせてはいけません。そこがインストラクターの責務です。

また必ず質問されますが、「どういう症状が出たら打つべきですか?」といった質問には答えないほうが無難です。医師以外の人が診断をしてはいけないからです。打つタイミングは処方を受けた本人や親御さんが知っているはずなので、それに従うべき、という以上のことは言わないほうがいいでしょう。

現時点、保育士か学校教職員以外は使わないわけですから、あらかじめ具体的な使用が想定されている場合がすべてですので、一般的な判断基準というのは不要で、教えるべきではない内容です。

ここでは細かくは説明はしませんが、法律の解釈と現状について、知識がない人がこのコースを教えてはいけないと思います。


アスピリン投与

胸部不快感へのアスピリン投与はG2010で新しく出てきた内容です。

アスピリン


薬剤投与は日本では救急救命士にも看護師にも許されていない医行為です。よって、市民救助者の立場で行うべき内容ではありません。自分自身が飲む分にはなにも言いませんが、他人に対して薬を飲ませることは「投薬」となり、医師法違反を問われる可能性や、その後の責任を問われることがあります。

市販薬であってもアレルギーを起こすことはありますし、なにより日本ではアスピリンという単身成分の薬は一般的ではありません。

これは米国の法律と、国土が広く救急搬送に時間がかかる米国ならではのこと、という説明は必要でしょう。


止血帯の復興

最後に止血帯です。

軍用止血帯タニケット


これはG2005のARC&AHAファーストエイド・ガイドラインで、市民には推奨できないと否定されて、それに準拠した日本でも「救急蘇生法の指針2005」で完全に否定されて、それまでお家芸として教えていた日本赤十字社や消防の講習でも廃止され、駆逐された手技です。

しかしG2010国際ガイドライン準拠講習であるAHAファーストエイドでは復古してしまいました。

コースDVD中では、三角布とドライバーをつかったデモ映像がありますが、説明としては「市販品が推奨されている」という部分に注目すべきです。

背景を説明しますと、中東・アフガニスタン戦線などでの米軍兵士が活躍した結果、タニケットの有用性を示す論文が増えてしまったというのがG2010の背景にはあります。米軍兵士は個人装備としてタニケットと止血剤をセットで必ず持っています。

戦争で被害者がたくさん出て、使用例が増えて、それで助かったという事例が増えてしまった、そんな経緯からG2010での勧告が推奨方向に傾きました。

しかし、ここで注意したいのは、有用性を示したのは、あくまでも「訓練を受けた兵士が既成品の止血帯を使用した場合」ということです。

救急法で教わるようなお手製の止血帯が有効であるという論文的な根拠はどこにもありません。現実、本当に緊迫した状況下で適切な布切れがあって、適切なウィンドラス(捻るための棒)があって、適切に市民が使用できるかというと相当疑問です。

故に、現実は難しいであろう点は強調すべきでしょう。

また止血帯を使う必要があるような出血は少ないと言われています。仮に切断の場合であっても、完全止血はできなくても、直接圧迫止血でコントロールはできます。

日本で救急車がすぐ来る状況であれば、止血帯を使わなくてはいけない状況はほとんどない、圧迫止血をまず試みるべきであるという点は強調する必要があります。

少なくとも日本の救急法としては止血帯は推奨されていないという事実は伝えて下さい。


以上、場合によっては日本社会で叩かれそうな、AHAハートセイバー・ファーストエイドコースに潜む危険について解説しました。

日米の法律や立場の違いというのはACLSでも同じことが言えます。しかしACLSと違うのは、受講者が知識がない一般市民であるという点です。

ACLSを受講したからといって、そく独断で手動式除細動器を使っていいというわけではない点は、医療法規を勉強しているナースなら知っていて当然です。それでも勘違いしたのなら、免許を持った人間として責任を取る必要があります。

しかし、ファーストエイドの受講者は、医療法規など知らない一般人。だからこそ、インストラクターの責任が重いのです。


他にも、あのDVD、けっこう粗が目立ちます。

次回はそんな話を書こうと思います。



posted by めっつぇんばーむ at 13:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | ファーストエイド(FA)
2012年08月06日

病院の急変対応教育はBLSからでいいの?

私のインストラクター・デビューはAHAのBLSインストラクターになったのは始まりでした。確か2007年くらい。ライセンスを取ってから半年くらいでいわゆるコースディレクター、つまり独立開催が認可されて、以後、主に一人で活動しています。

最初は勤務先の病院内で、同僚から希望があれば受講者一人とか二人のミニコースで、ひっそりとライセンス発行コースを開催していました。それがやがて口コミで広まり、他部署の知らない人からも頼まれるようになり、2008年暮れは麻酔科医師も巻き込んでチームを作り、組織的な院内BLS教育が始まりました。

その後、BLSインストラクターは延べ人数13人、ACLSインストラクターは4人、それぞれファカルティもいるため、インストラクターを自前で養成して、今では病院自体がトレーニングサイト的な感じで活動しています。

このように、BLS/ACLSに関してはとても理想的な環境で職員にトレーニングができている全国的にも恵まれた環境だと思うのですが、病院の患者安全対策としては、それで十分なのかというと、必ずしもそうはいえません。

このスライドは、今年の新人看護師の研修で使ったものです。

急変の気づき〜BLS〜ACLS

心停止になったら、胸を押す、それは一般市民レベルでもやっていること。

病院での緊急対応がそこからスタートでいいのでしょうか?

心停止のうち、致死性不整脈である心室細動は前触れもなく突発的に起きることもあります。

しかし、心筋梗塞が原因の心室細動や、その他の命を落とす事態、呼吸不全やショックは、必ず予兆があります。

患者さんからの危険信号を察知して、心停止になってしまう前に食い止める、それが医療機関での救急対応の始まりじゃないでしょうか?

医師にとっての急変対応は心停止からでいいかも知れません。コードブルーなどで呼ばれてきたときにはすでにBLSが始まっているというパターンが多いでしょうから。

しかし、ナースは違います。

患者さんのそばにいて、その変化に気付けるのは看護師をおいて他にいないからです。

ナースが気付かなければ、急変は心停止から、となってしまいます。そして皆さんよくご存知のように、一度心停止になってしまうと、予後は決していいものではありません。

つまり、心停止にさせてしまったらおしまいで、それを防げるのはナースをおいて他にいない、ということなのです。


そこでこの4月から、私の病院の院内患者安全研修に新しいラインナップが加わりました。

それが日本医療教授システム学会の「患者急変対応コース for Nurses」。

これは心停止以前のいわゆる急変の兆候に気付いて対処しようというコンセプト。通称、KIDUKIコースとも呼ばれていて、何かおかしい! と思った直感を深めて、明文化、分類して、応援を呼ぶ、医師に指示を求めるなど、実臨床で明日から使えるプログラムです。

BLS/ACLSは防災訓練と一緒で、いざというとき用で、使う機会がない方がいいものといえるかもしれませんが、「患者急変対応コース for Nurses」は急変に限らず、患者さんの日々の状態観察ですぐに使える内容という点で、他と一線を画する内容かも知れません。


これでようやく、院内の急変対応教育のパズルがすべて埋まりました。

気づき → BLS → ACLS

これらは集合教育として行われている基礎講習です。AHAのACLSも含めて。

次の課題は、これらで身につけた基礎スキルを実際に使えるパフォーマンスに昇華するための、シミュレーション・トレーニングです。

これは集合教育として講習会場で行うものではありません。

各部署ごとに実際の現場で実際の道具を使って行う模擬訓練。私がいる手術室では行なえているのですが、他の部署ではどうするか?

このあたりが院内患者安全体制を確立する上で大きな問題です。

この点、日本有数のシミュレーションラボセンターを抱える虎ノ門病院では、救急リンクナースという制度 を作って取り組みを始めているようです。

つまり、蘇生や急変対応のインストラクターは病院の中に数人いるだけというのでは不十分で、各部署に一人は必要だということです。

インストラクターは集合基礎教育だけではなく、部署内でシミュレーション訓練を企画し、部署ごとの問題点を抽出して改善する、また実際の急変事案が起きたときは事後の振り返り、つまりデブリーフィングの機会を作り、次回への向けての学びや共通認識を作り上げる。

そうしてこそ、初めて病院としての緊急対応教育/体制が確立するのではないでしょうか?

私の病院でもまだまだ途上。

各部署に一人インストラクターの視点を持ったスタッフを配置するためには、今のような有志の自主的な参加ではなく、委員会としてきちんと病院からの任命が必要です。

病院上層部にどのように理解を求めて働きかけるか? またその必要性をPRするか。

このあたりはインストラクターとしての情熱だけではやっていけない部分かもしれません。高度に政治的、策略的なネゴシエーションが必要です。これはまたインストラクター・コンピテンシーとは別の部分。

インストラクターがインストラクターとして、その能力を病院という組織の中で発揮するのは意外と難しいのが現状。

残念ですが、蘇生インストラクターが存分に活動するためには、BLS/ACLSのインストラクションだけではなく、非心停止対応や、オリジナルシミュレーションを組み立てるための教授システム学、さらには組織へ働きかけを行うネゴシエーションなど、幅広い勉強が必要そうです。


posted by めっつぇんばーむ at 11:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | ファーストエイド(FA)
2011年11月15日

心停止の対応しか知らないとバイスタンダーCPRの着手をためらう

蘇生ガイドライン2010でいちばん重要なポイントといえば、なんと言ってもimplementation(インプリメンテーション:実行性)でしょう。

(誰ですか? C-A-Bだなんて言ってるのは、、、)

蘇生行為への着手率を下げている原因はなにか?

そんな議論が世界蘇生連絡協議会ILCOR国際会議で真剣に話し合われました。

その結果は、つい先日、発売になった JRC蘇生ガイドライン2010 の"教育と普及のための方策 (Education, Implementation & Team) "の章で垣間見れます。

G2010の発表以来、私の中でもインプリメンテーション/実行性アップは一大テーマで、ずっと頭の中をぐるぐる巡っています。

講習会で教えるBLSが、講習会場でのスキル・トレーニングにとどまらず、現場で実行可能なパフォーマンスにつながらない理由はなんだろう? 指導をどう改善したら実行性が担保できるだろうか?

これは今後5年間かけて、誰もがぶち当たっていくG2010の本質的テーマだと思います。

そんなことを四六時中考えている私なりのひとつの方向性、というか仮説があります。それは次のようなもの。

「心停止の対応しか知らないと、バイスタンダーCPRの着手をためらう」

道端で倒れている人を見つけました。周囲の安全を確認してから、肩を叩き声をかけました。「大丈夫ですか?」

そうしたらうめき声を上げていて反応があった!

もしくは呼吸確認をしたら、息はちゃんとしていた。

こんなとき、BLSしか知らないと何も出来ることがない! という事態に陥りがち。

呼吸さえしていなければ、、、心臓さえ停まっていれば出来ることがあるのに、、、

心停止なんて長い人生の中でもそうそう出くわすものではありません。


心臓が停まっていない場合の対応を知らない。だから怖くて手が出せない。

そんな傾向ってないでしょうか?




特にG2000以来、BLSが爆発的に広まりました。それ自体はこの上なく善いこと。そこに疑問の余地はありません。

でも逆に心停止以外の緊急事態への意識が希薄となり、緊急時対応=心停止対応という図式になってしまい、それ以外がすっぽり抜けてしまったのが今の現状な気がします。

はっきり言ってしまえば、反応があったり呼吸があれば、超緊急事態ではありませんから、落ち着いて救急車を待てばいいというただそれだけなのですが、そんなことすらBLS講習では教えられないので、不安要素として講習受講者の潜在意識に残ってしまっているということはないでしょうか?(非心停止の場合は、ABCDEを評価し、生命危機がないことを確認しつつ応援を待つ)

そこで私がG2010のインプリメンテーション(実行性)向上を目指して進めているのが、非心停止の対応をランダムなシュミレーションとして受講者に提示する、ということです。

リトルアンなどのBLSマネキンを使った練習では、反応も呼吸もないのは当たり前。

「大丈夫ですか?」なんて呼びかける練習をしても、返事があることなんてこれっぽっちも期待していないのです。

これが予定調和で儀式的な「お作法」となる原因のひとつ。

だから、ここをあえて生体を使って(受講者同士で傷病者役と救助者役にわかれて)反応確認部分を練習することで、観念的な練習にリアルを感じてもらうことができます。

なにより、呼吸があったらどうするか? 返事があったらどうするか、をシミュレーションの中で対応し、困ってもらい、その後のディスカッションで、どう振る舞ったらいいのかを納得してもらう。

実は非心停止の対応はCPRではなく、ファーストエイドの範疇なのですが、いざというときにホントにCPRを実行してもらうためにも、半歩くらい足を踏み出してもらって知ってもらうことは意味があること。

特にBLSなんて常識、と思っている医療従事者が「反応あり」「呼吸あり」の対応を知っていれば、結果的にはバイスタンダーCPRの着手率が伸びるはず、と私は考えているのですが、皆さんはどう思われるでしょうか?





posted by めっつぇんばーむ at 00:54 | Comment(3) | TrackBack(0) | ファーストエイド(FA)
2011年11月06日

介護業界の窒息解除法から考えた【掃除機】

ちょっと前に Twitter で取り上げた話題ですが、本屋で何気なく手に取った雑誌をみて驚きました。

喉にモノが詰まったときの解除法:

1.ガーゼを巻いた指で口の中を掻き出す
2.それでダメなら掃除機のノズルを口に入れる
3.それでもダメなら背中を叩く
4.それでもダメなら腹部突き上げ法(ハイムリック法)を行う

立ち読みだけだったので一語一句はあってませんが、こんな感じ。

日ごろ、最新のエビデンスに基づいたBLSやファーストエイドを教えている者として、昔の雑誌ならいざ知らず最新情報としてこんなことを載せてしまうなんて!と驚きました。

出元は介護専門職の総合情報誌「おはよう21」10月号増刊 「急変時の対応ガイドブック」という本、というか雑誌(Mookというんでしょうか)

「急変時の対応ガイドブック」


介護界の総合情報誌ということですから、それなりに影響力のある雑誌なんでしょうね。


同誌の別のページを見ると、心肺蘇生法に関しては、日本国内では普及してないにもかかわらずきちんとG2010で紹介されています。

なんだろう? このギャップ。

これが考えるきっかけになりました。まあ、心肺蘇生と窒息解除を書いているのは別の人なので、単に私の考えすぎかもしれませんが、思うところをいくつか。



窒息解除法については、日本では昔からあれこれ言われています。

エビデンスド・ベースの国際コンセンサスで推奨されているのは、腹部突き上げ法(ハイムリック法)/胸部突き上げ法と背部叩打のふたつ。AHAでは腹部突き上げしか教えてませんが、どちらも優劣はないということになっています。

私もAHA講習で、腹部突き上げを教えていますが、受講者からの質問で、「餅も取れるんですか?」と聞かれると、「はい」とは即答できません。

つまり、肉塊など固形物を意識した欧米の窒息解除法がそのまま日本の食文化にマッチするかというと、ここに大きな問題があります。

ですから、エビデンスがないからといって、日本で俗説的に言われている窒息解除法を排除することはできないと私は考えています。

そう考えると、初めて目にしたこの介護業界標準(?)の4段階窒息解除法もそれなりに考えられたものなのではないかと思ったのです。

介護業界での食べ物による窒息といえば必ずしも固形物ではありません。むしろ刻み食など軟食や流動形のものが多いのではないでしょうか?

ご存知のとおり、ハイムリック法(腹部突き上げ法)は、腹部を圧迫することで気道内圧を上げて豆鉄砲みたいに喉に詰まった食塊を飛ばして出す手技です。流動食に対して、これがどこまで有効か? と、効果を考えると第一選択にはなりにくいことは想像に難くありません。

また腹腔内損傷のリスクを抱えたハイムリック法を第一選択にするのは、老人には厳しいかなぁ、だから背部叩打というのもまあ、妥当。

でも、効果を考えれば、やっぱり吸引?

でも、そもそも流動物で完全閉塞というのも考えにくいので、まずはかきだして量を減らせば、自発呼吸や咳で、ある程度閉塞が解除されるんじゃないか、と考えるのも分かる。

ということで、考えてみたら、4段階法は、それなりに現実を考えた方法という気がしてきました。


ただやっぱり引っかかるのは掃除機の使用。

本文中では、掃除機につける専用の吸引ノズルがあることも示唆されているのですが、その詳細が示されていないという点で、不適切なのは間違いありません。

手近な吸引機ということで、掃除機を使うことは意味がないとは言いませんが、それなりに手技は難しいです。そもそもノズルが口に入る径なのか、舌をよける工夫、陰圧を保つために鼻をつまむなど、注意すべきポイントはあり、闇雲に口に入れてうまくいく可能性がそれほど高いとは思えません。

市販の掃除機につける窒息解除用吸引ノズル


きちんと使用法を指導し、練習してこそ意味があるかもしれない掃除機を使った窒息解除。

いちばん怖いのは、窒息=掃除機、というセンセーショナルな図式が一人歩きして、ハイムリック法や背部叩打を第一選択で試みるべきときであっても、掃除機を探しに走って、救命の機を逸するという事態。

実際にこれは、報道されただけでも保育園等で発生しています。

コンセンサスを外れることを指導するのであれば、簡略化しないでもうすこしきっちりと教える責任があると思います。


日本での窒息解除法は、国際コンセンサスで推奨される方法だけでは不十分な可能性大。

本当は日本独自にエビデンスを打ち出して、きちんと体系化してくれるといいのですが。心肺蘇生法のエビデンスを出すことにやっきになっている印象がありますが、窒息解除法こそ、日本ががんばるべきところじゃないかなという気がします。




posted by めっつぇんばーむ at 09:36 | Comment(1) | TrackBack(0) | ファーストエイド(FA)
2011年01月02日

ハイ・アラート食品「餅」の放置について

案の定、今年も餅による窒息事故が頻発しています。


餅を詰まらせ、お年寄り4人死亡…東京
(2011年1月2日19時54分 読売新聞)

 東京消防庁は2日、東京都内で1日から2日午後3時までに、18人が餅を喉に詰まらせて病院に運ばれ、このうち4人が死亡したと発表した。

 同庁によると、死亡したのは葛飾区内の72歳と82歳の男性、渋谷区内の男性(70)、足立区内の男性(82)。いずれも自宅で雑煮を食べていた。同庁は「餅は小さく切ってよくかみ、高齢者や子どもの場合は、家族がそばに付き添ってほしい」と呼びかけている。



去年は行政までもが顔を寄せ合って特殊食品である「こんにゃくゼリー」対策を議論していたようですが、一般食品で、しかもちょんまげ時代よりもっと前から知られているハイアラート(High Alert)食品の代表である「餅」についてはどうなっているんでしょう?

パッケージに警告文ってありましたっけ?

「あなたの健康を損なうおそれがあります」的な注意喚起文。

タバコ以上に過激な文面で警告を出すくらいしてもいいのに。


肉塊などの固形物とは違って形が変幻自在で粘度のある餅による窒息は、普通に窒息解除を試みても転機は悪そうです。(エビデンスは、、、知りません)

「詰まったら死ぬよ、それでも食べる?」

くらいが本来なんじゃないかなと思います。

それでも食べるんならいいんですよ。

日本人は古来からいくつもの犠牲を出しつつ試行錯誤して猛毒フグを食べる方法を見つけ出してきた民族ですから。


ただ、異常なまでのこんにゃくゼリー排斥運動には違和感を感じる、ただそれだけです。


公平さを欠くのは、方や文化を背負っていて、方や新参者食品だから?

それだけでしょうかね?


要はマスコミの煽りだよね。エビぞー事件もそうだし。



・・・スイマセン、Twitter風に毒舌投げやりな感じになっちゃいました。


追記:似たようなことを書いているページを見つけました。
    →「窒息死亡事故が多発する餅はなぜ規制されないのか?






posted by めっつぇんばーむ at 23:44 | Comment(3) | TrackBack(0) | ファーストエイド(FA)
2010年12月03日

エピペン、保育士と看護師にも容認へ (追記に注意!)

看護師、保育士にもエピペンの使用が容認されることになりそうです。

厚生労働省の検討会が、保育士や看護師がエピペンを処方された本人に代わって注射をすることを容認する方向で合意して、年内には正式なガイドラインを作成し、全国の保育所に通知するとのこと。

これまでエピペンは処方された本人が自分で注射をするのが原則でした。

ショック症状がすすんでしまった場合、自己注射が困難な場合もありますが、その場合、家族ならともかく第三者が代りに注射をしてあげることは医師法違反とされていました。

それが平成21年3月には、救急救命士は本人持参のエピペンを代りに注射することが容認されて、さらに平成21年7月には学校教職員も使って構わないという見解が出されていました。


○平成21年3月2日 「救命救急処置の範囲等について」の一部改正について (医政局指導課長通知) アナフィラキシーショックで生命が危険な状況にある傷病者があらかじめエピペンを処方されている場合、救命救急士はエピペン使用が可能

○平成21年7月6日 医政局医事課長宛に文部科学省スポーツ・青少年学校健康教育課長より「医師法第17条の解釈について」の照会 その場に居合わせた教職員が、本人が注射できない場合、本人に代わって注射することは、反復継続する意図がないと認められるため医師法違反にならない


それに続く第三弾として、今回は保育士と看護師の名前が挙がっています。


今回の検討会では、主に保育所でのエピペンの扱いが焦点だったようです。

いくら本人が自己注射をするものと言っても、保育園児(〇歳〜六歳)には無理な話。近くにいる大人(保育士)が代りに打たなければどうしようもない状況だったわけですから、早い時期にこのように決まって良かったです。


まとめると、緊急時にエピペンを本人に代わって使用できるとされているのは、医師免許を持つ人と保護者・家族を除くと下記の人たちです。

  1.救急救命士
  2.学校教職員
  3.保育士
  4.看護師

これら以外の人はどうなのかというと、グレーとしか言えません。

学校教職員がエピペンを使っていい理由としてあげられている根拠は下記の通りです。

文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課長が厚生労働省医政局医事課長に対して下記の質問状を送った。

「医師法第17条の解釈について(照会)|アナフィラキシーショックで生命が危険な状態にある児童生徒に対し、救命の現場に居合わせた教職員が、アドレナリン自己注射薬を自ら注射できない本人に代わって注射することは、反復継続する意図がないものと認められるため、医師法第17条によって禁止されている医師の免許を有しない者による医業に当たらず、医師法違反にならないと解してよろしいか。」

その回答は下記のとおり。

「医師法第17条の解釈について(回答)| 平成21年7月6日付21ス学健第9号にて照会のありました標記の件については、貴見のとおりと思料します。」


これだけなんです。

要点だけを抜き出しますと「教職員は注射を反復継続する意図がないから医師法違反とならない」ということです。

ややこしい話ですが、医師法は医師以外の「医業」を禁じる法律です。で、その医業の定義は「医行為を反復継続する意図を持って行うこと」と理解されていますから、反復継続の意図がなければ、素人が注射をしようが傷口を縫い合わせようが医師法違反にはならない、というのが法律上の解釈。

もともと医師法は商売としての偽医者を規制するための法律ですから、上記のように単発の医療行為は関知しないちょっと妙なロジックになっています。

話は戻しますが、学校教職員が反復継続する意図がないから医師法違反ではないという理屈からすれば、その主語は例えば「通りがかりの市民」でも「旅行添乗員」でも筋は通ります。

ですから、学校教職員が使っていいのであれば、基本的に市民の立場の人であれば誰でもエピペンを使える、と私は理解しています。

ただ、誰もそういわないのは、違法にならないという後ろ盾がないからです。

少なくとも先ほど列記した4職種は、エピペンを使って構わないという政府機関の承認が得られている。(現時点、保育士と看護師はまだ公示されてませんが)

でもそれ以外に関しては、確かめた人はいないし、裁判で有罪となった例も無罪となった例もない。だから何とも言えない、というのが現状。

おそらく学校教職員ではない第三者がエピペンを注射したところで、違法生は問われず、起訴もされないでしょう。

でもそう保証できる人がいないから、当たらず障らずで確実な4職種だけのことが言われるわけです。


救急法講習の指導員や、日々鍛錬を重ねている志の高い市民救助者の中には、応急処置として自分がエピペンを使っていいのか、と疑問に思っている人は少なくないと思います。

そんな方達へは、

「エピペンと法規制の勉強をして、そのロジックをしっかりと理解した上で、使うか使わないかは自己責任で判断してください」

というのが最終メッセージ。

もちろん、エピペンの正しい使い方と、その後の管理(時間の記録や救急要請、様態の観察の仕方)、エピペンの危険性と副作用といった知識と技術があることは前提のうえで、です。

学校教職員や保育士など、行政の後ろ盾がある人たちは、そのガイドラインに従って迷わず行動すればOKです。



以下、参考情報:

『急性アレルギー 注射可 保育所の保育士ら』
 〜東京新聞 2010年12月1日 夕刊 社会面
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2010120102000189.html


 厚生労働省の検討会は三十日、保育所がアレルギー疾患の児童に対応するための初のガイドラインに大枠で合意した。

 食物などが原因で、息苦しくなって意識が低下するなどの症状が出る急性アレルギー反応アナフィラキシーショックについて、児童が前もって預けておく自己注射を保育士や看護師らが打つことができるとする初めての見解を示した。

 ガイドラインは年内に正式にまとめ、全国の保育所に通知する。

 検討会によると、二〇〇八年度の一年間に全国の三割の保育所で、アレルギーが出る食物を誤って食べる事例があった。

 文部科学省の調査では、〇四年の小学生の食物アレルギー有病率が2・8%なのに対し、保育所では4・9%と高く、命にかかわる場合もあるアナフィラキシーショックの危険性が指摘されていた。

 ガイドラインでは、食物アレルギーや気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎などについて、症状や特徴を記載。避けるべき行動と、発作が起きた時の対応などを示す。



【厚生労働省会議資料】
○2010年7月12日 アレルギー対応ガイドライン作成検討会(第1回) 議事要旨
 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000lzvu.html

○「アレルギー対応ガイドライン作成検討会(第2回)」の開催について
 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000wsga.html

○「救急救命処置の範囲等について」の一部改正について(依頼)
 http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/1291673.htm
 (厚労省への問い合わせと回答の内容が含まれています)

○保育所におけるエピペンの使用について(PDF)
 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000m0zv-att/2r9852000000mcs4.pdf



【追記】2013年12月8日

その後、厚生労働省から平成23年(2011年)3月に「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」(PDF)が発表されました。この中で、保育所職員のエピペン代理注射が医師法違反にならないことは示されていますが、そこに保育園職員として採用された看護師が該当するのか、また保育所職員以外の看護師の扱いについては明示されていません。

2010年12月の新聞報道によれば、保育士と看護師のエピペン注射が容認されるような印象を与える記事でしたが、正式なガイドラインでは看護師という立場については言及されていない点に注意が必要です。

今回も焦点となっているのは、医師法違反に当たるかどうか? です。

すでに説明したとおり医師法は「医行為を反復継続の意思を持って」行ったかどうかが問題となります。学校教職員が反復継続の意思がないという見解は平成21年7月に文部科学省から厚生労働省への照会で明らかになっています。この点からも学校教職員と立場的に大きく変わらない保育所職員も「反復継続の意思がない」といえます。

しかし業務範囲に注射が含まれている看護師に関しては単純に同列に考えることはできません。

看護師が医師の直接指示がない状態でエピペン注射を行うことが、反復継続の意思がないと認定されるか?

看護師の場合は保健師助産師看護師法第三十八条の「臨時応急の処置」として判断されるのか?

ツアーナースや保育所看護師の場合などは、親権者が処方医師から出された注射指示書をもって、医師からの指示を受けたと解釈できるのか?

など、注射をすることは違法にあたらないとする根拠になりそうなことはいくつかありますが、公式見解や判例もありません

この点、今回、きちんと通達が出させるのかと期待したのですが、そうではなかったため、引き続き看護師のエピペン注射に関してはグレーなままというのが現状です。




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2010年11月06日

日本ACLS協会、ハートセイバー・ファーストエイドに参入

日本ACLS協会さんが、ついにハートセイバー・ファーストエイド Heartsaver First Aid コースに参入してきたようです。

JAA-ITC関連会社のシェパードで、ちょっと前からハートセイバー・ファーストエイドのインストラクターマニュアルやDVD、テキストの取り扱いを開始していたので、おやっとは思っていましたが。

10月に福岡で開催されたハートセイバー・ファーストエイドコースでは、ファーストエイド・インストラクターコースを兼ねると説明されていたようです。

詳しいことは知りませんが、ガイドライン2010から公式に日本語化されるのに向けて、BLSインストラクターへのトレーニングが始まった、ということなんでしょうね。

おそらく2005バージョンは公募はせず、2010から本格稼働するのかな。



ハートセイバー・ファーストエイドコース、日本国内展開の系譜


数年前までは、その存在自体が日本では知られておらず、本当にAHA公式の修了カードが出るのかと疑問符が投げかけられることもあったAHAのファーストエイドコース。

2006年頃、ハワイのAmerican Medical Responseトレーニングセンターが日本に初めて持ち込んで、その後、日本蘇生協議会ITC(現日本医療教授システム学会ITC)が、ITCとして初めてコース展開を始めたのが、確か2008年だったと思います。

そんな日本ではマイナーなAHAハートセイバー・ファーストエイドコースですが、実はAHA-BLSインストラクターになるためには受講が必須と位置づけられているものでした。

以前から、Healthcare Professional以外がBLSインストラクターになる場合は、ファーストエイド・ステイタス(OSHA基準)が必要と"BLSファカルティガイド"(AHA Instructor Networkで、ファカルティ以外でもダウンロードできます)に書かれていましたが、2008年版のファカルティガイドからは、ただのファーストエイド・ステイタスではなく、AHAの現に有効なHeartsaver First Aid修了カードが必要と改められました。

また2008年版のBLS Instructor course DVDには、ファーストエイドの指導方法を解説したモジュールも標準で含まれていて、インストラクターアップデートですべてのBLSインストラクターはその内容を見ているはずです。

Healthcare Professionalの意味をどうとらえるかが問題ですが、少なくとも医療資格を持たない一般市民の方にはハートセイバー・ファーストエイド受講が必要というのは疑問の余地がありません。

おそらくHealthcare Professionalが、ファーストエイド受講を免除されているのは、アメリカの医師・看護師・救命士免許を持っている人間なら当然OSHA基準のファーストエイドの内容は承知しているから、と考えられます。

しかし、日本の医療従事者は米国のOSHA基準なんて知りません。それにそもそも日本の医師教育にも看護師教育にも院外で行う応急処置(ファーストエイド)は含まれていません。であるならば、日本国内では実はすべてのBLSインストラクターにハートセイバー・ファーストエイド受講が必須と考えるのが妥当といえます。

少なくとも2008年以降は、AHAのルールでそうなっているのですが、日本語化されていないことにかまけてか、日本のITCではほとんど顧みられていなかった現状がありました。


BLSインストラクターは、9つのコースを指導できる資格です


日本では、当のBLSインストラクターの間でもまだあまり知られていないのかも知れませんが、AHA BLS Instructorという資格は、BLS for Healthcare Providerを指導できるだけの資格ではありません。

AHA公認のBLSインストラクターになるということは、下記のすべてのコースを教えられるポテンシャルを持っているのです。

1.Family & Friends CPR
1.Family & Friends First Aid for Children
3.Heartsaver CPR
4.Heartsaver AED
5.Heartsaver First Aid
6.Heartsaver Pediatric First Aid
7.Heartsaver CPR in School
8.Heartsaver Bloodborne Pathogens
9.BLS for Healthcare Provider

家庭向けファーストエイドとCPR、対応義務のある人向けのCPRとファーストエイド、そして小児ファーストエイドと血液媒介病原体、最後は医療と救命のプロのための蘇生法まで。

この機会に、日本のすべてのBLSインストラクターに、ぜひ医療者向けBLS以外の指導にも目を向けてほしいなと思っています。


先日開催された日本救急看護学会では、看護師向けに開発したファーストエイドコースがリリースされました。

これまでは市民向けと思われていたファーストエイド、今後は医療従事者もうかうかしてられませんね。

きっと、BLSやCPRより、市民生活を送る上では役立ちますよ。



参考まで、過去に書いたハートセイバー・ファーストエイド関連記事へのリンクを挙げておきます。ある程度選んで載せたつもりですが、相当な量、書いてるなぁ(^^;

注:古い順です。

「ハートセイバー・ファーストエイド」を受講してきました
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/81123877.html

教職員のエピペン注射解禁−AHAファーストエイドコースの日本展開
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/94759048.html

AHA Heartsaver Firstaid with CPR and AED
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/106924652.html

AHA-BLS 2008マイナーチェンジ
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/108850828.html

New BLS Instructor Course DVD
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/110746110.html

ハートセイバー・ファーストエイド
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/112397503.html

BLS/HSインストラクターに求められるファーストエイド資格
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/113378755.html

ハートセイバー・インストラクターになるには…
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/113539484.html

AHAに血液感染予防コースがラインナップ!
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/114302525.html

意外と人気のハートセイバー・ファーストエイドコース
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/123852189.html

日本のITCでのPEARS、HS-FAの開催
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/134898159.html

ハートセイバー小児ファーストエイド Heartsaver Pediatric First Aid
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/136902540.html

AHAハートセイバー血液感染性病原体コース
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/139931989.html

ハートセイバーカードのモジュール塗りつぶし
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/132341862.html

市民へのAHAコース普及を願って
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/129988536.html

ファーストエイドはおもしろい!
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/145722331.html

日本の法定救急箱の中身、ひどいです
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/147520666.html

AHAハートセイバー・ファーストエイドを巡る国内の動き
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/152564299.html

AHA CPR&ファーストエイド for IPhone
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/154784143.html

OSHA(オーシャ)という組織について
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/155821127.html

ガイドライン2010のファーストエイド
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/168090121.html






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2010年11月03日

ガイドライン2010のファーストエイド

蘇生ガイドライン2010の話題はそこそこ出ているにに、誰も触れようとしないガイドライン2010のファーストエイド。今日はガイドライン2010のファーストエイドの話を書きます。

AHAのインストラクターだったら、ガイドライン2005の時から、AHA ECCガイドラインにファーストエイドの項目があったのはご存じと思います。

これを策定したのは、主にAmerican Red Cross、アメリカ赤十字です。略してARCとも言います。

AHAはアメリカ赤十字にコラボして、連名でファーストエイド・ガイドライン2005を発表しました。

これも当初はILCORの国際コンセンサス(CoSTR)に上げようとしたらしいですが、国際的な同意が得られず、結局アメリカ国内基準という位置づけでAHA ECCガイドラインにのみ掲載されました。


ということで、AHAガイドライン2005のファーストエイドは、国際コンセンサスではなく、アメリカ国内基準です。

しかしなぜか日本版ガイドライン2005(救急蘇生の指針)には、AHA/ARCのファーストエイドガイドラインほぼそのままが採用されています。

そのお陰で、消防の上級救命講習のテキストなどにも、「永久歯が抜けたら牛乳に漬けて歯医者さんへ」というような話が盛り込まれたり、止血帯を教えないようになったりと、それなりの影響力をもって受け入れられました。



ここで話は現代に戻って、ガイドライン2010のファーストエイド。

今回もCoSTRの国際コンセンサスにはファーストエイドの項目はなく、CoSTRと同時発表された3つのガイドラインの中でも、ファーストエイドを含めているのはアメリカ合衆国、つまりAHAだけ、という結果でした。


しかし、今回のファーストエイド・ガイドラインは違います。


きちんと国際コンセンサスに則っているんです。


ただし国際コンセンサスといってもILCORではありません。



"International First Aid Science Advisory Board"というファーストエイドを考える国際会議で決められました。

前回のガイドライン2005では、アメリカ赤十字とアメリカ心臓協会だけで作っていたアメリカ国内基準でしたが、それじゃマズイと思ったのか、各国に呼びかけて国際会議を結成。今回のような形になりました。

おそらく今後はこれをILCORに入れ込みたいんだと思いますが、それはこれからの課題なのかな。

もともとILCORもAHAとERCが立ち上げたものでしたし、始まりはこんな物なのかも知れません。


とかく謎に思われがちなファーストエイド・ガイドラインの成り立ちを、私の知る限りの内容でまとめてみました。


さて、以上が前置きで、本当に言いたいのはここから。

ファーストエイドの国際コンセンサス2005を策定する"International First Aid Science Advisory Board"の構成メンバーは、アメリカ国内の熱傷学会や小児科学会、各国赤十字、Medic First Aid、National Safety Council、St. John Ambulanceなど、ファーストエイドでは名だたる各国団体が並んでいます。

実は日本も、Resuscitation Council of Asia(実態は日本蘇生協議会JRC。アジアの名前を冠している裏事情には触れません)として、"International First Aid Science Advisory Board"に正式加盟しており、国際会議にはメンバーである日本人医師も参加しています。

ですからファーストエイドのガイドライン2010は当然日本も批准しています。

なのに2010年10月19日に公開になった日本版ガイドライン2010には、ファーストエイドの項目は含まれていませんでした。同じ立場のAHAはしっかりと載せていたのに。

公開されたのはドラフト、つまり下書き版で正式なものではありません。

なので、正式に出版された折にはファーストエイドも含まれているはず、と信じていますが、でもちょっと気がかり。

日本でガイドライン改定に一番関心を持っているのは、おそらく日本循環器学会など、医療系の人たちでしょう。

こういう病院の内部の人間は、実はあまりファーストエイドには興味がないようです。

おそらくそういう人たちが中心になって日本版ガイドラインを作っている関係上、ファーストエイドが後回しになっているのかなとも思っていますが、中でも消防や赤十字などは決して見逃せないはず。

このあと、日本版ガイドラインとしては、国際コンセンサスとしてのファーストエイドをどうアレンジして発表し、それを消防や赤十字がどう取り入れていくか、とても興味があるところです。

今回のファーストエイドガイドライン2010では、胸部不快感を訴える人へのアスピリン投与という刺激的なトピックも含まれています。

エピペン(アドレナリン自己注射器)に関してはG2005FAでの刺激があったせいか、救命士に解禁になって、さらには素人である学校教職員の使用が認められるようになった経緯があります。



さて、今回のガイドライン2010のファーストエイドの行方はいかに!?
posted by めっつぇんばーむ at 01:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | ファーストエイド(FA)
2010年09月15日

エピペンとAEDと医師法違反

昨日の夜中、Twitterでつぶやいたことのまとめ。


エピペン(アドレナリン自己注射器)を学校教職員は使うことができる、ということはだいぶ知られてきた。でもその根拠を調べてみると、意外と希薄。「学校教職員が臨時応急的に使うのは反復継続の意志がないものと解されるので医師法違反には該当しないと思われる」みたいな感じ。それだったら一般市民なら誰だって使ってOKってことじゃん。

医師免許を持っていない人が医療行為を行うと医師法違反になると思われがちだけど、実は医師法が禁じているのは医行為ではなく「医業」。医業とは医行為を反復継続の意志を持って行うこと。だから市民が行うその場限りの医行為は医師法違反にならない。

だから、アナフィラキシーで意識がもうろうとした人に一般市民がエピペンを代わりに注射してあげても、少なくとも医師法違反にはならない。学校教職員宛に出した文部科学省の通達はそれを再確認しただけ。。。なんだよなぁ。

ある意味お役所の後ろ盾文書のあるかないかくらいの違いだけで、たぶん、学校教職員以外の一般市民がエピペンを使っても違法性は棄却されるはず。ただ後ろ盾文書がないから、送検される可能性はある。裁判で無罪になって、その後日本の市民救急法に新たな1ページが開かれる!? でも社会人としては間違いなくリスキーだよね。

さっきから医師法違反に限定して書いているけど、それ以外に傷害罪を問われる可能性もあるので注意!




医師法解釈の「反復継続の意志」というのは非常にやっかい。AEDだって一般市民がたまたま使うのは無条件にOKなのに、看護師は業務で行う以上、反復継続の意志があると見なされるから医師の指示なしに使うと医師法違反。あまり知られていないけど。

だから、病院でAEDを配備するなら、包括指示や院内規則で「急変時はナースはAEDを使用して救命にあたる」と明記しておくのが、正しい手続き。

素人が使う分には制限がなくて、免許を持っていると使えないというのは、おかしな話。「私はナースなのでAEDは使えません! 素人のあなたがボタンを押してください!!」みたいな。バカバカしいけど、それが日本の法律。

聖路加の日野原重明氏が、「看護師よ、保助看法を破れ!」といっていたけど、エピペンを含めた応急処置も誰かが既成事実を作らないと変わらないんだろうな。

posted by めっつぇんばーむ at 10:19 | Comment(1) | TrackBack(0) | ファーストエイド(FA)
2010年07月08日

OSHA(オーシャ)という組織について

American Heaat Association の BLSインストラクターとして知っていなければマズイという用語のひとつにOSHA(オーシャ)というものがあります。

なにそれ? という方がいたらとりあえずは、BLSヘルスケアプロバイダーマニュアルの2ページ、8ページ、67ページをご覧ください。

米国労働安全衛生局 OSHA:
Occupational Safety and Health Administration


このアメリカ連邦機関への理解なしには、AHA-BLSコースの全体像は把握できません。

アメリカ合衆国は医療従事者はもちろん、学校教員などにCPRやAED、ファーストエイド資格取得維持を義務づけている国です。

その基準を作っているのが、Occupational Safety and Health Administration、OSHAなのです。

特に10種類以上あるハートセイバー Heartsaver コースは、for workplaceと銘打たれており、職場の安全衛生管理のために作られた、完全にOSHA基準に準じたコースです。

アメリカ心臓協会、つまりアメリカ循環器学会とも言うべきかの団体が、分野違いともいえる心臓以外の応急手当(First Aid)や、血液感染病原体(Bloodborne Pathogens)などを手がけているのは、これらがOSHA規格の法定講習だからです。

CPR/AED講習(ハートセイバーCPR/AED)はもちろんOSHA規格。OSHA規格を満たした講習を受講するとCPR/AED statusと呼ばれるアメリカ合衆国の公的なライセンス認定を受けられます。

同じライセンスを発行できる競合組織はは沢山あって、例えば Amrican Red Cross(アメリカ赤十字) や National Safety Council、Mediic First Aid (MFA)など。

これらのAHAから見たライバル団体は心肺蘇生法に限らず、ファーストエイドや血液感染病原体など幅広く教えています。

それら強敵(?)に負けないように、ということで2000年前後にAHAもファーストエイド分野に参入し、つい数年前には血液感染病原体分野にも手を出すようになりました。

実は各種AHA-ハートセイバーコースというのは、American Heart Association のOSHA基準ライセンス発行コースの総称なのです。

そう理解すると話は早いです。


OSHA規格はアメリカ国内の労働安全衛生基準ですから、そのままでは日本では馴染まない部分があるのも事実。

その間を埋める存在であるAHA-BLSインストラクターは、当然OSHA基準ならびにアメリカ国内事情を知らなければなりません。



話は変わりますが、医師・看護師など医療従事者の方ならCDC(シーディーシー)という名前を聞いたことがあると思います。CDCガイドラインと呼ばれる感染対策の標準化を規定している団体です。

CDC は Centers for Disease Control and Prevention の略で、日本語ではアメリカ疾病予防管理センターと訳されることが多いようです。アメリカ労働省所轄下の連邦機関です。

このCDCのガイドラインが日本の医療界に与えている影響は絶大で、たかだかアメリカ国内基準にも関わらず、このCDCガイドラインの改訂毎に日本の感染管理対策も大きく揺れ動いています。

この医療人なら誰でも知っているCDCと、実や横並びの組織がOSHA。どちらもアメリカ労働省(Department of Labor)の下位組織です。

ということは、今後、日本がこの労働安全基準に関してアメリカのOSAHを模倣していくことは想像に難くありません。

いまの日本では、医療従事者にさえ、心肺蘇生法訓練の受講義務さえ規定していない恐ろしい国ですが、近い将来は、学校教員や保育士、介護士、警備員などにCPR取得義務化が規定されるはずです。

そのときお手本とするのがアメリカ合衆国のOSHAなのです。

そうなったときには、いま以上にAHAのハートセイバーコースの株が上がるのは間違いありません。

善意のCPRを教えるコースしかない日本で、数少ない応召義務のある市民向け教育プログラムだからです。

AHA-BLSインストラクターであれば、そんな近未来を意識しつつ、OSHA基準について勉強することをお勧めします。

インターネット上の検索でも、OSHAについて解説した日本語ウェブサイトはいくつか見つかります。

いちばんいいのはOSHAのウェブサイトから、OSHA基準の原本を読むことですが、、、


日本国内のITCでライセンスを取得したとしても、その資格は紛れもなくAmerican Heart Associatonの公式ライセンスです。

日本でしか教えないから、アメリカのことは知らない、とは言い逃れできません。

ぜひ、各種ハートセイバーコースの勉強をしてください。

それがAHAインストラクターの責務です。
posted by めっつぇんばーむ at 23:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | ファーストエイド(FA)
2010年06月28日

AHA CPR&ファーストエイド for IPhone

心肺蘇生法の世界的権威、アメリカ心臓協会が日本のゲーム会社の任天堂とタイアップしたというニュースは耳に新しいですが、あのAHAがIPhoneアプリにまで手を出しているとは知りませんでした。

たまたま見つけたのが、こんなIPhoneアプリ。

IPhone用CPR+AED、ファーストエイド・マニュアル

Pocket First Aid & CPR

アメリカ国内でもっとも需要の高い、AHAハートセイバー・ファーストエイド&CPR with AEDコースのIPhone版マルチメディアテキスト、とでもいったらいいのでしょうか?

心肺蘇生法とAEDの使い方、また蜂に刺された場合や、骨折、脳卒中、アナフィラキシーショックへのアドレナリン自己注射などを、IPhoneの上で参照できる、いつでも携帯できるファーストエイドマニュアルです。

pocket_fa_cpr_2.png  pocket_fa_cpr_3.png

部分的にハートセイバー・ファーストエイドコースのDVD動画が見られますので、AHAのファーストエイドコースに興味があったけど、どんなことを勉強するんだろう? という人は、ぜひご覧ください。

有料アプリで、450円。

まあ、牛丼1杯とサラダを食べたと思えば、英語の勉強を兼ねてダウンロードしてみては?

英文読解とヒヤリングの勉強になります(笑)


それで興味が出たら、ぜひクラスルームスタイルのハートセイバー・ファーストエイドコースも受講してみてくださいね。

First Aidと書かれた、かっこいいAHA-FAプロバイダーカードがもれなくもらえますので。
posted by めっつぇんばーむ at 23:59 | Comment(7) | TrackBack(0) | ファーストエイド(FA)
2010年06月08日

AHAハートセイバー・ファーストエイドを巡る国内の動き

日本ACLS協会の関連会社のシェパードが、ハートセイバー・ファーストエイドコース教材の販売を始めるようです。

新しく取り扱うのは、Heartsaver First Aid のスチューデントマニュアルとコースDVD、そしてHeartsaver and Family & Friends Instructor Manuals。

つまり、ハートセイバーファーストエイドコースを開催するための必要教材一式をまとめて取り扱い開始。

ってことは日本ACLS協会でもファーストエイドコースを展開!? ということなんでしょうか?


ガイドラインが切り替わるこの時期に、、、というのも実はポイントかもしれません。

数あるITCの中でもAHAとの特に強いコネクションを持つ日本ACLS協会がガイドライン改定を目前にして不自然にファーストエイドコースを始めるとしたら、きっと次期ガイドライン2010では、ファーストエイドコースの日本語化の話が裏で進んでいるのでは? と、私は勝手に踏んでいます。




日本で公募コースとしてAHAのファーストエイドコースを始めたのはおそらく、福井BLS(現FISH)。アメリカ国内の American Medical Response TC直轄コースとしての開催でした。

その後、慈恵医大を皮切りに日本蘇生協議会JRC-ITC(現日本医療教授システム学会JSISH-ITC)としても、ファーストエイドコースを開催するようになって今日に至りますが、それでも今現在、日本でAHAファーストエイドを開催しているBLSインストラクターはおそらく数えるほどしかいないと思います。

もともと日本にAHA ECCコースが導入されたのは、ACLSやPALSといった医療者向けの専門蘇生教育のためでしたから、市民向けのファーストエイドコースが顧みられなかったのはそれほど不自然なことではありません。

ファーストエイドは、おまけみたいなもの。

まあ、否定はしません。

でもその後、情勢が変わってきてAHAがOSHA(米国労働安全衛生局)との提携を強めるようになったりというのも関係あるのでしょうか。

2008年からはBLSインストラクター資格を取るためには、有効期限内のAHA Heartsaver First Aid資格が必要という新たな基準が打ち出されました。(実は以前からFirst Aid資格は求められていたのですが、2008年以前はAHAに限らず、OSHA基準のFAであれば何でもOKでした)

例外として"Healthcare Professional"は、ファーストエイド資格がなくてもBLSインストラクター資格が取得できることになっています。(このあたりの規約はPAMではなく、2008年改訂のBLS & FA Faculty Guideに載ってます。正式に登録されたAHAインストラクターなら inst net から誰でもダウンロードできます)

"Healthcare Professional"はアメリカの現役医療職者ないしは米国医療有資格者と理解するのが自然です。このあたりの解釈は日本のITCによっても違うかもしれません。

ただ少なくとも、完全にヘルスケアに関するプロフェッショナルでない人、おおざっぱに言うと医療者免許を持っていない人がBLSインストラクターになる場合は、ファーストエイドを修了していないとマズイでしょう。

AHA規約違反です。

最近では日本ACLS協会さんでも、医療従事者以外の人がBLSインストラクターになるのを認めているようで、市民BLSインストラクターの活躍をよく目にします。

でもファーストエイドコースを開催していないのに、どうやって市民にBLSインストラクターカードを発行しているんだろう? とは疑問でした。(もしかしたら公募はしていないけどインストラクターコースに抱き合わせの形でやっていたのかも、、、)

そんなこともあったので、今後、日本でAHA Heartsaver First Aidを受講できる機会が増えるとしたら、とても健全なことだと思います。

ましてや、それが日本語のDVDで学べるとしたら、市民レベルでの救急意識の底上げに大きく貢献するに違いありません。


ガイドライン2010では、ファーストエイドも国際コンセンサスとして取り扱われる元年となると聞いています。

これを機に、日本でも国際水準のファーストエイドが普及することを願っています。




余談

実は、ファーストエイドのテキストや教材はシェパードが扱う前から、AHA正規代理店のレールダルメディカルで取り扱いがありました。

以前は送料無料だったのですが、一昨年あたりから、購入数に限らず1回あたりの送料が840円になってしまったため、ファーストエイドのテキスト1冊(2300円)買うのに、別途840円+送金手数料と個人では買いにくくなっていました。

シェパードでは送料はどうなのか、非常に気になるところです。

ちなみにうまくすれば日本国内でもファーストエイドのテキストが1600円程度で買える方法があります。隠すほどのものでもないけど、個人が1冊単位で買うにはあまり実用的ではないので、ここには書きません。今後ファーストエイドコースを開催予定のinstさんがいましたら、個人的に聞いてくればお教えします。
posted by めっつぇんばーむ at 02:49 | Comment(6) | TrackBack(0) | ファーストエイド(FA)
2010年05月27日

RICE(打撲、捻挫のファーストエイド)

アメリカで発達したファーストエイドでは、覚えておきたい大事な点はアルファベットの頭文字の組み合わせで語呂合わせみたいにすることがよくあります。


さて、捻挫や打撲の応急処置といえば?



そう、答えは、R.I.C.E.(ライス)ですね。



どこかで聞いたことがあると思います。


・Rest(安静)
・Ice(アイシング)
・Compression(圧迫)
・Elevation(挙上)


日本でもよく聞くこの覚え方ですが、昔からCompression(圧迫)がちょっと意味不明とはよく言われていました。

今日のファーストエイド講習の中でも、このあたりがちょっとした議論に。

その疑問は世界中、同じだったようで、実は2010年から、このRICEの定義が少し変わったようです。

新生RICEは次の通りです。

・Rest(安静)
・Immobilization(固定)
・Cool(冷却)
・Elevation(挙上)

結果的には、圧迫がなくなって固定となった、というのが結論です。

coolというのは他と語調がちょっと違って違和感を感じなくもないのですが、まあ、わかりやすくはなっています。


これは先日のアメリカ赤十字ARCのウィルダネス&リモート・ファーストエイドで学んだ最新情報。

ちなみに担当インストラクターはファーストエイド・ガイドラインの策定委員会のARC代表者です。


数年後には日本にも広まるかな。
posted by めっつぇんばーむ at 20:11 | Comment(4) | TrackBack(0) | ファーストエイド(FA)
2010年04月24日

日本の法定救急箱の中身、ひどいです

数あるAHA BLSコースの中でも、私の十八番はハートセイバー・ファーストエイドです。(まあ、その指導がうまいか下手かは別として、まあ好きなコースがファーストエイドってことなんですが。)

さて、AHAのハートセイバー・ファーストエイドコースはアメリカのOSHAという労働安全衛生局の基準に則った法定講習で、その講習を修了したファーストエイド・プロバイダーは、ざっくりいうならば日本で言うところの職場の衛生管理者(労働安全衛生法)のようなものです。

アメリカの労働法規や労働安全基準は驚くほど発達していて、ホント良くできています。たとえばAHAハートセイバー血液媒介病原体コースなんかも同じOSHA規格コースなのですが、これが医療従事者以外の一般市民の立場の労働者のためのコースというから驚き。

日本では血液が怖いと認識しながら働いている人がどれだけいることか。

日本の労働安全基準とアメリカの労働安全基準を比べると、まるで天と地くらいに違っていてびっくりします。

今日、ちょっと調べてみて驚いたのが、日本の法律が規定している事業所に置くべきファーストエイドキット(救急箱)に関する基準。

以下、労働安全衛生規則(最終改正:平成19年3月30日厚生労働省令第47号)からの抜粋です。


第9章 救急用具

(救急用具)
第633条  事業者は、負傷者の手当に必要な救急用具及び材料を備え、その備付け場所及び使用方法を労働者に周知させなければならない。
2  事業者は、前項の救急用具及び材料を常時清潔に保たなければならない。

(救急用具の内容)
第634条  事業者は、前条第1項の救急用具及び材料として、少なくとも、次の品目を備えなければならない。
(1)  ほう帯材料、ピンセツト及び消毒薬
(2)  高熱物体を取り扱う作業場その他火傷のおそれのある作業場については、火傷薬
(3)  重傷者を生ずるおそれのある作業場については、止血帯、副木、担架等


職場に救急箱を置きなさいという決まりなのですが、その内容が古くさいったらありゃしない。

決定的にダメダメなのが、消毒薬。

いまどきこんなものを他人に勝手に使おうものなら傷害罪です。
消毒すると痛いですよね。これは正常な細胞が消毒薬の毒性で死んでいる証拠。
微生物を殺す以前に健康な人間の細胞を殺しまくって、しかも余計に傷を治しにくくするという百害あって一利なしの迷信の産物です。

止血帯。これも今は否定されています。

火傷薬? なにそれ? そんなものを勝手に塗っちゃまずいでしょ。

ということで、アメリカの労働基準に則ったファーストエイドを前にしたとき、日本の応急処置は歴史の遺物以下と言わざるを得ません。

いまだに幼稚園や保育園で子どもがけがしたら勝手に消毒されたという「傷害事件」を耳にすることがありますが、法律で消毒薬を準備しなさいと規定されているんじゃ、責められませんよね。

ひどいもんです。


別にアメリカ礼賛するつもりはありませんが、ファーストエイドの一端を見てみるだけで、こりゃ絶対にかなわないなって気になります。






posted by めっつぇんばーむ at 02:04 | Comment(2) | TrackBack(0) | ファーストエイド(FA)
2010年04月21日

AHA-HS血液媒介病原体コースは誰でも開催できる!

先日、公募でアメリカ心臓協会のハートセイバー血液感染病原体(Heartsaver Bloodborne Pathogens)コースを開催しました。

テーマ的にも内容的にも微妙なこのコースにどんな方たちが集まるのかと興味私信新だったのですが、ふたを開けてみたらびっくりするほど多彩なメンバー。

某ITCのBLSインストラクターのベテランナースさん、感染対策担当のドクター、スポーツインストラクター、AHA-B-instを目指す市民の方、救急法・ファーストエイドにめっぽう詳しい学生さん(中学生)、医学部の学生さん、などなど。

市民の立場の方たちにとっては、はじめて聞く目新しい内容が多いと思うけど、ナースやドクターにとってはある意味、常識的な話ばかり。それにDVD教材が英語な上に、できばえ的にやや難ありなので、全員に「受講して損した、金返せ!」と言われないためにもインストラクターは必死です(笑)

なるべくそれぞれの立場に合わせて持ってかえってもらう「お土産」ができるように、あの手この手で受講意義のヒントになるようなエッセンスをちりばめてみたのですが、どうだったでしょうか。

その反応と受け止めていいのか、受講してくれた医学生の方から、このBBPを学生仲間の間で開催していいかといううれしい問い合わせをいただきました。

実はそのメールにはまだ個別にはお返事していないのですが、答えは「OK」です。


実は、American Heart Association の Heartsaver Bloodborne Pathogens コース、AHA BLS Instructor以外でも開催できるんですよ。

なんだか自分の存在価値を下げるような気がして本当は言いたくないのですが、AHA規定上、このコースは、AHAトレーニングセンターと提携していない人(=インストラクター以外)でも開催できることになっています。

以下、HS-BBPコースに関するAHA公式のFAQ集よりの抜粋です。


Q: Who can teach the Heartsaver BBP Course?

A: Per the Standard for BBP training, “the person conducting the training shall be knowledgeable in the subject matter covered by the elements contained in the training program as it relates to the workplace that the training will address.”

Usually, instructors who already teach BBP are qualified. Instructors (AHA or non-AHA) wishing to teach Heartsaver BBP must be content experts knowledgeable of Standard 1910.1030. Instructors also should have reviewed the Heartsaver BBP student and instructor materials and/or taken the online course. BBP instructors do not have to be AHA instructors, and therefore do not have to take the AHA Core Instructor Course and do not receive a Heartsaver BBP instructor card from the AHA.

要はOSHA規格のBBPへの理解があり、HS-BBPを受講済みの人はこのコースを指導していいよということです。

日本人の場合は、OSHA規格のBBPへの理解という点が若干問題にはなるかもしれませんが、反対に言えば日本ではOSHA規格の縛りがありませんから、まあ、鷹揚にとらえていいのかもしれません。

それほど複雑な内容ではありませんし、英語で開催すれば1時間で終わる内容です。

感染対策に造詣の深い医療者以外にとっては、それなりに意味がある内容だと思うので、気概がある方はどんどんやっていったらいいと思います。

全国に万単位でいるAHA-BLSインストラクターの皆さん、所属団体が公式にBBPコースを取り入れなくても、一個人として開催可能です。自分自身のスキルアップとして、またAHAインストラクターとしてのレパートリーを増やすためにも挑戦してみませんか?

インストラクターマニュアル+DVDはアメリカの通販でしか買えませんが、確か$25だったかな。高い物ではありませんので。
posted by めっつぇんばーむ at 02:20 | Comment(2) | TrackBack(0) | ファーストエイド(FA)
2010年04月05日

ファーストエイドコースはおもしろい!

久々のAHAハートセイバー・ファーストエイドコース。

準備が面倒であまりやりたくないのですが、重い腰を上げて、エイヤッとやってみると、やっぱりいいよなぁと思います。

ファーストエイドコースのおもしろいところは、受講者さんとの質疑応答というかディスカッションにあるのかなと思います。

ご存じBLSコースは、「練習あるのみ!」ですから、ある意味、機械的に進んでいきます。市民向けのハートセイバーAEDコースではそれなりに手応えのある質問も多いですが、答えはある意味明確です。エビデンスがしっかりあるのがBLSですから。

その点、ファーストエイドはタイヘン。

扱っている分野が広いと言うこともありますし、みんなそれぞれ日常的に急病やケガや応急救護を経験しています。質問のすごく具体的で現実的だし、民間療法や迷信がまかり取っている世界だし、AHA & ARC FAガイドラインも根拠性に乏しいものが多いし。

だからこそこっちも気が抜けません。

答えがない問題も多いので、みんなで体験を共有し一緒に考えて、といったコミュニケーションの中から私たちインストラクターも多くのことに気づかされ、理解を深めていくことができます。

一緒に学んでいる、そんな感じがいいんですよね。






posted by めっつぇんばーむ at 22:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | ファーストエイド(FA)
2010年02月01日

AHAハートセイバー血液感染性病原体コース

この週末は、院内開催のACLSプロバイダー1日コースと ハートセイバー血液感染性病原体コース のテストコースと充実した土日でした。

ACLS one dayコースには遠くから、ベテランインストラクターの方が見学の方が来られて、お手伝い&いろいろお話を聞けて新鮮でした。

血液感染性病原体コースは、今後の展開に向けてのお試しコース。

DVD自体は30分程度ですが、日本語での解説をしたり、ちょっとした実技やディスカッションを加えて2時間少々。

受講者は医療従事者2名、他は市民インストラクターの方だったので、いちおうファーストエイド・プロバイダーとしての血液感染の注意点というのを主軸に考えてみました。

でもなぜか盛り上がった話題は歯医者さんでの衛生管理に、、、、

(以前、福井で開催された際にも不思議と歯科クリニックの話題になりました。私が振ったわけではないのですが)


受講の意義を感じてもらうためには、受講者の背景とニーズを把握して具体例を引き出していくというディスカッションの誘導が大事かなと思いました。

このコース、いくらなら受講しますか? という点を最後にアンケートに書いてもらったのですが、テキスト輸入代の実費に加えて会場費が入ったら結構厳しいかなという結果に。

公募ではなく、企業とかからの依頼講習向けってことになりそうな予感。

まあ、実際、そういう想定で作られているんでしょうね。

Heartsaver Bloodborne Pathogens コースの Roster2枚目(受講者名簿)は、普段は住所を記入する欄が、Job title / Department となっています。

活用法次第ではおもしろいコースです。

少なくともファーストエイドのインストラクターは知っておいた方がいい内容ですね。
posted by めっつぇんばーむ at 09:41 | Comment(3) | TrackBack(0) | ファーストエイド(FA)
2010年01月29日

日常のファーストエイドキット

前回は感染防護手袋の話を書かせてもらいましたが、ブログ上のコメント以外にもメールでもいろいろメッセージをいただき、皆さんの関心の高さが伺えました。

写真に一緒に写っていたキーホルダーナイフについても、ご質問がありましたので、こちらでお答えさせていただきます。

nitrile_gloves_2.jpg

スイスアーミーナイフで有名な、ビクトリノックス社のシグネチャーライト というツールナイフです。

victrinox_1.jpg

以前は、ビクトリノックス・クラシックというミニナイフと、小さなLEDライトをフェイスシールドと一緒にキーホルダーにつけていたのですが、いまはこのシグネチャーライトだけです。

このナイフのすごいところは、ナイフやはさみ以外にLEDライトとボールペン機能が付いているところ。

便利です。

電池を内蔵しているため若干厚みはありますが、日頃ちょっとしたときに「ほしい」と思う機能がまとまっていて、ファーストエイドキットに入れておくのではもったいないので、より身近な鍵といっしょにいつも持ち歩いています。

LEDライトも性能が良くなってきて、まあ、そこそこの明るさ。

victrinox_3.jpg

シグネチャーライトのLEDライトとボールペン機能を使うと真っ暗闇でもメモが取れて、仕事でもちょこちょこと役だったりしています。


最近は、ファーストエイドキットというしっかりした形でのものを携行することは少なくなりましたが、いつも通勤用バックに入れているのは、

・ニトリル製手袋
・バンダナ2枚
・ビニール袋(血のついた手袋などを捨てる用)
・フェイスマスク
・バンドエイド
・ウェットティッシュ
・シグネチャーライト
・エマージェンシー・ブランケット
・メモを兼ねた名刺

といった感じ。


ファーストエイドキットも凝り出すと、いろいろありますが、町中で生活している上で必要なものって以外と少ないんだなというが最近の実感です。

やっぱり何よりは重要なのは手袋ですね。

日頃仕事で血だらけのものを扱っていれば、血で汚れた手のままでいると、どんなに不便か、そして周りにどんな風に汚染が広がっていくか、身に染みてわかりますので。

あと以外と重要かなと思っているのは、「メモを兼ねた名刺」。

これは以前に酔っぱらって転んだ人の手当をしたときの経験から、あえてファーストエイドキットの一部と考えるようになりました。頭を打っていたので意識レベルが下がるかもと思って早めに名前や連絡先を聞いておいたのですが、そのときにメモを取ったのがたまたま持っていた名刺の裏。(ライターとしての名刺です。ナースは普通名刺って普通ありませんもんね)

それをそのまま救急隊員に渡して引き継ぎました。

そのときは全然意図していなかったのですが、後日、倒れた方の家族から電話があり、大事はなく元気になりましたと報告の電話をいただいて、うれしかったです。

まあ、そんな効果も若干期待して。

この前ちょっとしたプレゼンをさせてもらいましたが、ファーストエイド教育の中でも「記録」って実は結構重要なんじゃないかと思います。特に業務の一環として対応することのあるファーストエイド・プロバイダーにとっては。

救急隊員の記録もそうですが、大事な見るべき点、聴取するべき点がチェックシート式になっていたりして、観察のポイントを逃さないようになっています。

そうした書式を作って、記録をつける訓練をすることは、そのまま傷病者観察・アセスメントのトレーニングにもなっていきます。

ということで、市民救助者のための救急対応記録のひな形作成とそれを使ったシミュレーショントレーニング。

これが今後私が展望している新しいファーストエイド・トレーニングの基本スタイルだったりします。





posted by めっつぇんばーむ at 23:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | ファーストエイド(FA)