2008年04月27日

学生のうちにAHA-BLSインストラクターになるということ

先日リニューアルされた、日本蘇生協議会国際トレーニングセンター(JRC-ITC)の公式ウェブに興味深い声明が載っていました。

医療系学生対象のBLSインストラクター養成事業
〜医学生・看護学生・救急救命学生を次世代医療者養成リーダーに


医学生や看護学生を対象としたBLSインストラクターコースを開催するという話です。

おそらく、、ですけど、受講生は公募、なんでしょうね。

これまでAHAインストラクターになるには、長い下積み期間を経てようやくインストラクターコースへの推薦がもらえるというのが日本での常識でした。

最近でこそ看護師のBLSインストラクターも増えてきましたが、ちょっと前までは医師以外がインストラクターコースに進むのは難しいという現状もあったように思います。

インストラクターコースの公募というだけでもビックリするようなことなのに、それもまだ医療従事者ではない学生だけを集めてインストラクターを育てようというのは、かなりの英断といえるかもしれません。

でも、考えてみれば、学生の時分にインストラクターになるというのは、今後の医療界にとっては大きな意味があることかも知れません。

つい先日、このブログでも書きました。

看護師のキャリアアップとしてのBLSインストラクター資格

AHA-BLSインストラクターになるということは、単に心肺蘇生法の専門家になるというだけではなく、インストラクション教育の専門家になるということでもあります。

AHAインストラクターとして培われる指導技術は、これまでの日本の医療界にはなかった画期的なもので、あらゆる臨床指導の場面で発揮されるテクニックです。

それを臨床に出る前から、あたりまえのものとして身につけるとしたらどうでしょう?

鉄は熱いうちに打てと言いますが、世代交代が進むと、なんだかすごいことが起きそうな気がしません?


私の知り合いでも、何人か、学生でありながらAHA-BLSインストラクターとして活躍している人がいます。

いちばんモチベーションと志が高い時期にインストラクターになると、その後の活躍の度合いがやっぱり違います。

AHAの正規講習以外にも学生運動(アヤシイ政治活動じゃないですよ)を組織して、地域の普及活動に力を入れたり、積極的に勉強会を主催したり。

日本各地には、医学生が主体となった学生ICLSや学生ACLS勉強会といったサークル活動も盛んに行なわれていますので、それら意識の高い学生にとって、AHA-BLSインストラクターへの道は、大きなモチベーション向上にも繋がるはずです。

学生がインストラクターとして、現職者に指導をすることに関しては異論もあるかもしれません。

でも、日本にITOができたごく初期の段階で、ITO代表の方がこんなことを言っているのを聞いて、とても感銘を受けた記憶があります。

「AHAコースのすごいところは、医師も看護師も救命士も同じ土俵でまったくおなじことを学ぶところにある。いくら救急救命の教授といえどもプロバイダーコースを受けずにいきなりインストラクターになることはできない。こうした分け隔てのないシステムは今までの日本医療界ではありえなかった画期的なことである」

そう、この世界では権威とか身分といった世俗的なバッググラウンドは一切関係なく、AHAのカリキュラム・基準に則って認められた人に価値があるんです。

だからこそ看護師や救命士が医師に対して堂々とBLS指導をしているわけです。

当時は、そのITO代表の方も、医療従事者以外の学生や一般市民がAHAインストラクターになるなんて想定していなかったかもしれませんが、その言葉は今の時代にも当てはまります。

学生であろと市民であろうと、AHAの基準に則って教育を受け、十分な訓練を積めば、堂々とBLSを教えられます。

実際に私の知り合いには、学生のうちに、いわゆるリード・インストラクターとして認定され、学内でAHA正規コースを主催していた人もいました。

BLSでなにより必要なのは、その裾野を広げること。
学生ならではのフットワークとネットワークは大きな意味があるでしょう。それに加えて、日本の医療教育の大きな転換点として。

学生BLSインストラクター養成、将来を感じる興味深いプロジェクトだと思います。
posted by めっつぇんばーむ at 18:22 | Comment(3) | TrackBack(0) | AHA-BLSインストラクター
この記事へのコメント
[いちばんモチベーションと志が高い時期にインストラクターになると、その後の活躍の度合いがやっぱり違います。]

その通りだと思います。

Posted by John Carter at 2008年08月21日 22:26
はい、間違いないと思います。

でも問題は、モチベーションが高いとはいえ、まだ医療者になり切れていない看護学生にインストラクターコース受講を認める組織がどれだけあるかという点です。

あともう一点は、モチベーションが落ちてしまう前に本当にインストラクターになれるかという点。

カーターさんもコアインストラクターコースで学んだと思いますが、成人教育ではモチベーションの維持が何より重要です。

そのためにはゴールとそこまでの道筋、時間を明確に示すことが必要。その点を明かさないとするならそれはAHA理念に基づいた教育ではないと私は断言します。
Posted by めっつぇんばーむ at 2008年08月22日 10:52
こんにちは。
ブログやTwitter拝見しています!!

私は現在看護大学2年に在学中です。
1年次にBLS-HCPを取得し、現在インストラクターを目指して数回ほどコースにタスク参加しております。
それ以外にも学校の部活でBLSを教えたり、学外ワークショップでBLSをやったりしています。

先日、コース参加した際に、コースディレクターの方から
「実習とかも忙しいし、インストになれるのは就職してからかな〜」と言われました。
遠まわしに、臨床に出ている人に看護学生がBLSを教えるなんて…とも言われました。

CDの方の言うとおり…でもあるのですが、疑問を感じてWEB検索していたらこのページにたどり着きました。

成人教育に関しても、フィードバックにしても自信があったし、できなくはない、と思っていたので若干ショックを受けてコースから帰ってきました(笑

このページを読んで元気が出ました!!
諦めずにいろいろ勉強して行きたいと思います。
Posted by レッド at 2011年09月02日 16:01
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