2008年03月22日

BLSヘルスケアプロバイダーコース指導のポイント(2)

ビデオ教材に合わせて原則通りにやっているだけだと、受講生さんたちがきょとんとしてしまう場面ってありませんか?

例えば、

・成人のバックマスク

このあたりで、しばしばそういう場面に遭遇します。

一言でいうとビデオの中の説明だけでは、練習の意図が受講生さんに伝わりにくいのだと思います。

ここでの想定は、「自発呼吸が不十分なものの、循環は保たれている傷病者」です。つまり、呼吸の確認でいつも通りの呼吸がない、でも脈の確認ではしっかりと触れている、という場合です。

ビデオの中でもいちおう説明はしているのですが、サラッと流れるため、この基本想定を把握しないまま、練習に突入。混乱する方が多いような気がします。「あれ? 30:2じゃないの? 6秒に一回でいいの??」とか。

インストラクターとすれば、PWW(practice while watching)のせわしない中、6秒に1回の適切なタイミングでバッグを押すように声かけ&実技のフィードバック。

PWWの練習セッションが終わった後で、「いまのは一体なんのための練習??」と、受講生がいぶかしい気持ちを抱えていても、間髪を入れず、ビデオは次のセクションに流れていってしまいます。


ですので、この場面では、事前に「自発呼吸が不十分なものの、循環は保たれている傷病者」というのを強調するようにしています。

さらに私はこの場面での練習の目的を、ふたつ提示しています。

ひとつは、適切なバックマスク手技の練習、そしてもうひとつは5-6秒に一回の吹き込みでいいのだという"ゆっくりさ"を体感すること。特に後者が重要。

過換気を避けるというのは、ガイドライン2005の重要な知見のひとつです。

「感覚的にはどうしても速く多くの空気を送り込んでしまいがち。でもそれは無意味なだけでなくむしろ"害"なんです。こんなゆっくりでいいいのだ、という点を体感してください」ということを伝えています。

これを言う、言わないでは、練習後の受講生の表情がずいぶんと違う気がします。

成人教育では、受講生のモチベーション維持には、目的と方法、そして到達点が明示されている必要があると言われています。AHA教材というある意味英知の集大成に対しては僭越ながら、私なりの"コツ"のひとつとして、こんな工夫をさせてもらっています。

似たようなことは、

・高度な気道確保時のバックマスク換気
・乳児のバックマスク換気

のあたりでも見られます。

高度な気道確保の部分では、レールダル社の練習用マネキン"リトルアン"を使うかぎりでは、実際に胸が上がらないし、バックの吹き込み抵抗もありませんから、ふつうにやったら空虚な雰囲気になりがち。

ここで私は、やっぱり時間のタイミング6-8秒という、バックマスクよりゆっくりでいいのだという時間感覚の体験を強調しています。

さらには、非同期の連続胸骨圧迫を体験してもらうことで、交代の重要性と、交代のタイミングの練習、またチームダイナミクス。このあたりを「目的」として明示することで、受講生さんへのモチベーション維持に努めています。
posted by めっつぇんばーむ at 14:21 | Comment(6) | TrackBack(0) | AHA-BLSインストラクター
この記事へのコメント
そうなんですね。勉強になります。今度から脈がある人なんですよ、、、と強調したいと思います。
Posted by Kim at 2008年03月23日 20:37
原則を言うと、AHAの教材コンセプトとしては、

・指定されたところ以外ではビデオは止めるな!
・インストラクターは喋るな!

ということになっています。

でもまあ、アメリカとは文化背景が違うし、日本語版DVDも英語の直訳でやや不親切な部分があるのも事実。

喋りすぎないようにとは意識しつつ、より効果的な講習になるように試行錯誤しているところです。

Kimさんの工夫もぜひ聞かせてくださいね。
Posted by めっつぇんばーむ at 2008年03月23日 21:38
特に乳児の脈の確認、乳児の窒息の指の置き方のビデオは間違っているので直して欲しいですよね。あれを見てみんな実技をするんですから、、、

ちなみに、高度な気道管理器具のCPRではレサシアンではなくリトルアンをお使いなんですね。何か理由があるのでしょうか?
Posted by Kim at 2008年03月25日 09:27
kimさん、ビデオで細かいことをいうとけっこう粗が目立ちますよね。

ご指摘の点以外にも、例えば過換気を避けると言いつつもかなり大胆にバックマスクを押していたり。。。

このあたりは、私は「折り紙が苦手なアメリカ人」と同じような感覚で理解しています。紙を折るとき、日本人なら角と角を合わせてピッタリとおるものですけど、あっちの方って目分量で無造作にエイヤって感じで折りません?

おおざっぱというかおおらかというか。

反対に言うと日本人が繊細すぎるのかも知れませんが、AHAビデオはよくもわるくもアメリカンなんだなぁ、という理解。

私の身の回りにはアメリカのTCでインストラクター実戦経験を持っている人がたくさんいるのですが、「日本人は優秀。とことんできない人ってまずいないからね」なんて言ってます。

ということでAHAコースというアメリカのコンセプトに則ったものだから、こんなもんでいいんじゃない? というのが本当のところなのかも知れません。

最後にレサシアンの話ですが、Kimさんのところでは挿管時のバックマスク練習だけのためにレサシアンを用意しているんですか? それとも最初からレサシアンでやっているのかな?

私はBLSコースで使う器材を2セット、自前で揃えていますが、さすがに1体10万円もするレサシアンをいくつも買うわけにはいかず、安いリトルアンでお茶を濁しています。これなら2セットでもひとりでなんとか持ち運べますから。
Posted by めっつぇんばーむ at 2008年03月27日 23:45
リトルアンのことをリトルジュニアと勘違いしているとか?
Posted by BlueMoon at 2008年03月28日 00:57
BlueMoonさん、ご指摘ありがとうございました。
なんだか私もそんな気がしてきた。。。(^^;

Kimさん、いかがでしょう?

これがレサシアン
http://www.laerdal.co.jp/document.asp?subnodeid=27813237

こっちがリトルアン
http://www.laerdal.co.jp/document.asp?subnodeid=14217434

どちらも成人の練習用モデルです。
(全身か上半身だけかの違い!?)

レサシアンは私はマジマジといじった経験はないのですが、挿管もできるような設計になっているんですか? だとしたら、交換用の肺もリトルアンに比べて割高な気が、、、
Posted by めっつぇんばーむ at 2008年03月28日 01:34
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