2008年03月01日

トレーニングセンター・コーディネーター

アメリカ心臓協会の普及拠点となるトレーニングセンター。
日本ではITOなんて呼ばれることもありますが、日本ACLS協会、日本蘇生協議会、日本循環器学会、日本小児集中治療研究会など、AHAコース開催団体はAHAからみればみんな同じ国際トレーニングセンターです。

そのAHAトレーニングセンターの組織についてここしばらく書いていますが、今日はトレーニングセンター・コーディネーター(Training Center Coordinator)に焦点を当ててみたいと思います。

PAM 2008ではこのように定義されています。

Training Center Coordinator
[Position]
The TC Coordinator is a representative of the TC and is the primary contact for the AHA.
The TC is responsible for selecting the TC Coordinator. The AHA expects the TC Coordinator to have the appropriate skills to either perform or manage all TC responsibilities as described in this manual. It is recommended but not mandatory that the TC Coordinator be a current Instructor in at least one discipline. The Training Center must notify the American Heart Association ECC Customer Support Center within 30 days of any change of the TC Coordinator.


(訳)トレーニングセンター(TC)・コーディネーターはトレーニングセンターの代表であり、AHA ECC本部との連絡窓口となる。トレーニングセンターはTCコーディネーターを選出しなければならない。TCコーディネーターはPAMに記述されているすべてを執り行い、管理していく能力を持っていることが期待されている。TCコーディネーターはBLSもしくはACLS/PALSのインストラクターであることが望ましいが、それは必須条件ではない。トレーニングセンターはコーディネーターに関するなんらかの変更があった場合、30日以内に AHA ECC Customer Support Center に報告しなければならない。 ( translation by めっつぇんばーむ )

定義だけをみてみると、サラッとしか書かれていませんが、PAMの随所にTCコーディネーターの役割がいろいろ出てきます。

1.修了カード発行の責任者
2.筆記試験の問題用紙の管理
3.トレーニングセンター(TC)移籍の承認責任者

1.修了カード発行の責任者

AHAの公式修了カードを発行する責任者はTCコーディネーターです。あのAHA修了カードはアメリカ・ダラスの本部から発行されるわけではなく、各トレーニングセンターが発行しています。

そのために必要なまっさらな未記入のカード(blank AHA course cards)を購入するには、専用の暗証番号が必要で、その番号を管理しているのがTCコーディネーターです。

アメリカのAHA関連の通販サイトをみると、普通にコース修了カードがカートに並んでいたりしますが、誰もが買えるというわけではなく、TCコーディネーターだけが秘密の暗証番号を使って購入することができるようになっています。

大規模なセンターの場合は、カード発行業務をTCコーディネーターが一手に引き受けるわけには行かないので、TCコーディネーターから指名された人は、ブランクカードを取り扱うことができるようになっています。

トレーニングセンターの下に、トレーニングセンターを設置している場合は、サイト単位でカード発行業務を行うこともできますが、TCコーディネーターはそのすべてを管理し、責任を負う必要があります。(PAM 2008 P.9〜)

2.筆記試験の問題用紙の管理

BLSヘルスケアプロバイダーコースや、ACLS/PALSコースでは、修了後に筆記試験があります。その筆記試験の問題を管理するのもTCコーディネーターの役目です。

原則的に、これらの筆記試験問題を所持・管理できるのはTCコーディネーターだけです。

日本のようなインターナショナル・トレーニングセンター(ITC)の場合は、National Center ECC Global Training Department から、TCコーディネーター宛に試験問題の原本(PDF形式?)が送られます。これが、トレーニングセンター傘下で開催されるコースのすべての原本になります。

筆記試験の問題というのは厳重に管理されることになっています。
聞くところによると、かつてアメリカ国内で、AHAの筆記試験問題がネットオークションに流出して大問題になったことがあったとか。

ファーストエイド、BLS、ACLS等の資格が更新できないと仕事を続けることができない職種が多いアメリカならではの事件かも知れません。

日本でも循環器認定医にはAHAのヘルスケアプロバイダーとACLSプロバイダー資格が必須になりましたが、ここまでにはならないでしょうね。

AHA公式コースの筆記試験の問題は、施錠された場所で管理し、コース開催するインストラクターに対して、その都度貸し出しを行い、コース終了後はコーディネータのもとに返却するというのが原則。

私も、単独でコース開催を許可されたBLSインストラクターとして活動していますが、コース開催するときは事前に事務局(TCコーディネータ)に申請をして、テスト用紙を送ってもらいます。そしてコースが終ったら速やかに送り返す。その場合も郵便事故等を防ぐために、直接手渡しが行なわれる郵便書留か宅配便を利用することになっています。

そのような明確に試験問題を管理するシステムを構築し、テスト問題の流出を防ぐのがTCコーディネーターの役目です。

3.トレーニングセンター移籍の承認責任者

トレーニングセンター移籍に関する規定は、ずっと以前からPAMに載っていました。日本では、これまで誰も気にも留めていない一条項でしたが、そんな時代はおしまい。日本ではこれほどにまでトレーニングセンター移籍がクローズアップされる時代はないかも知れません。

トレーニングセンター移籍の手続きについては以前の記事で詳説しましたが、その際に必要なのは移籍先トレーニングセンターのTCコーディネータのサインです。

これさえ取れれば移籍手続きは終わったようなもの。

AHAの運営基準(PAM)によれば、移籍に必要なのは受け容れ先トレーニングセンターの承認の証としてTCコーディネータのサインだけ。現在所属しているトレーニングセンターの許可や承認は一切必要ありません。

出るのは自由。入るには承認が必要。それがAHAのシステムです。



トレーニングセンターの代表者であり、AHAダラス本部との窓口となるトレーニングセンター・コーディネーターですが、必ずしもインストラクター資格はなくてもよいというのがおもしろいなぁと思います。

ふつうに考えれば、トレーニングセンターの代表というのであれば、トレーニングセンター・ファカルティー(TCF)の一員であるというのが条件になっていても良さそうものですが、AHAインストラクター資格さえ不要っていうんですから、、、

PAMに規定されているトレーニングセンターの組織階層でも、インストラクターとファカルティは縦に並んでいますが、TCコーディネーターは別枠になっています。普及教育の実践部門と管理部門の棲み分けということなんでしょうね。

末端のインストラクターとして活動する分には、直接の関係性はあまりないかも知れませんが、AHAインストラクターなら是非知っておいた方がいいトレーニングセンター・コーディネーターの役割について書いてみました。


posted by めっつぇんばーむ at 23:33 | Comment(2) | TrackBack(0) | AHA-BLSインストラクター
この記事へのコメント
いつも勉強になります。
某ACLS協会所属のACLSインストラクターをしています。近く別の組織に移籍予定です。
些細なことなのですが、ちょっと気になる記載があるのであえて指摘します。
AHA-ACLSプロバイダー資格が必要なのは循環器「専門医」であって「認定医」ではありません。そもそも循環器認定医資格というものはありません。
他の学会にも通ずることですが、専門医資格と認定医資格は意味合いがかなり違います。あれだけPAMを読み込んでいるような方なので(このブログの受け売りをファカルティに言うと、そこまで知っているのですかと驚かれます)、この間違いは残念なので指摘をさせていただきます。
Posted by slime at 2008年03月05日 23:02
slimeさん、ご指摘ありがとうございました。

スイマセン、どこかでうっかりミスしてしまったみたいですね。あちこちでこのことを書いているので、あとで探し出して修正しておきます。

AHA-ACLSが必須なのは、循環器専門医、
AHA-ACLSもしくはICLSが必要なのは日本内科学会認定医

ですよね?

ご指摘ありがとうございました。

> 他の学会にも通ずることですが、専門医資格と認定医資格は意味合いがかなり違います。

そうなんですね。このあたりは正直、畑違いというか感覚的にはぜんぜんわかっておりませんでした。以後、気をつけます!
Posted by めっつぇんばーむ at 2008年03月05日 23:22
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