2008年01月18日

インストラクターITO移籍手続き(最新版)

ここ数日、2008年3月1日から施行される、アメリカ心臓協会(AHA)の新しい心肺蘇生コース(BLS/ACLS/PALS)運営マニュアルであるPAM 2008(Program Administration Manual 4th Editon)を読み込んでいます。

速報でもお伝えしましたが、読めば読むほど気になるのは、やっぱりインストラクター移籍に関するルールです。

AHAインストラクターは、トレーニングセンター(ITC/ITO)に所属する義務がありますが、なんらかの理由で別のITO/ITCに引越したいと思ったらどんな手続きをしたらいいのか、という話です。

新しいPAMを読んでいると、トレーニングセンター/ITOの義務として、インストラクター移籍の求めがあれば、30日以内に移籍手続きを遂行しなければならない(must)という文字が至るところに踊っています。

ということで、ちょっとまえに書いた「とっても簡単なAHAインストラクターのITO移籍手続き」の続編として、新しいPAM パムをベースに、AHAインストラクターが所属変更をしたい場合の手続きの実際を詳説したいと思います。

まずはPAM 2004とPAM 2008で、AHAインストラクターのトレーニングセンター間の移籍手続きに関する記述の変化を見てもらいたいと思います。英語原文の語調を感じてもらいたいのですが、いちおう私の下手な訳を付けておきます。

言うまでもありませんが、ここでいう"トレーニングセンター"というのは、日本でいうなら、ITC/ITOのことになります。つまり、日本ACLS協会、日本蘇生協議会、日本循環器学会、日本小児集中治療研究会、各国際トレーニングセンターのことです。


(PAM 2004年バージョンの記載)

Instructor Records Transfer
Training Center Faculty (TCF) status is an individual Training Center appointment and does not transfer automatically. When a TCF transfers to a new Training Center, it is as an instructor, not a TCF. Records need to be transferred as requested, but the original training center may retain copies to document TCF activities.


トレーニングセンター・ファカルティ(TCF)の資格(ステイタス)はトレーニングセンターごとの取り決めによるもので、トレーニングセンター(TC)移動に際し、自動的に引き継がれるものではない。TCFが他のトレーニングセンターに移動する場合は、TCFではなく、インストラクターとしての移籍となる。リクエストに応じて、インストラクター記録は移動させられる必要があるが、オリジナルのトレーニングセンターはTCFとしての活動に関する書類の写しを保存しておくこと。

To transfer Instructor/TCF records from one TC to another, the Instructor/TCF member must complete an Instructor/TCF Records Transfer Request (see Appendix C).
The new primary TC signs and returns the request to the Instructor/TCF member, who sends the form to his/her original primary TC.


インストラクターもしくはトレーニングセンターファカルティが他のTCへ移籍するためには、インストラクター/TCFは、別紙Cに定める"Instructor/TCF Records Transfer Request"の書類を整えなければならない。移動先となる新しいトレーニングセンターは書類に署名をし、請求のあったインストラクター/TCFに返送し、そのインストラクター/TCFは現所属しているプライマリー・トレーニングセンターに送付する。

It is the responsibility of the original primary TC to send complete, up-to-date, original records to the new primary TC within 30 days of receiving the Instructor/TCF Records Transfer Request. The original primary TC must keep back-up copies of the Instructor/TCF member’s records for 30 days.

Instructor/TCF Records Transfer Requestを受け取ったプライマリーのトレーニングセンターは、最新のインストラクター記録をあたらしいトレーニングセンター宛に30日以内に送付する義務がある。オリジナルのプライマリー・トレーニングセンターは、記録の控えを30日間は保存しておかなければならない。



もともとAHAインストラクターのTC/ITO移籍というのは、非常にシンプルでドライな制度です。新しい受け入れ先さえOKであれば、元居たTCの意向は一切関係なく、自由に脱退・移籍できる仕組みになっています。

「出るものは拒まず」の基本姿勢、おもしろいですよね。

それ自体は新しい運営基準(PAM 2008)でも変わっていないのですが、記載上の表現が大きく変わっています。どうぞ味わいながらお読み下さい(笑)




(PAM 2008年バージョンの記載)
Instructor Records Transfer
Records must to be transferred as requested, but the original TC must also retain copies for the required 3-year period to document training activities through the TC.


要求があれば、インストラクター記録は移動・移籍されなけれならない。しかしオリジナル・トレーニングセンターは3年間はインストラクター活動記録を保存しなければならない。

Instructor status may be freely transferred from one TC to another for employment changes, moves, or any other reason. TCF status is a TC appointment and does not transfer. When a TCF member transfers to another TC, it is as an Instructor, not as a TCF member.

インストラクター資格は、転職や引越し、またその他の理由のために自由に移転・移籍することができる。
トレーニングセンター・ファカルティ(TCF)資格はトレーニングセンターの取り決めであるので、移籍はできない。TCFメンバーが他のTCに移動した場合は、TCFメンバーとしてではなく、一インストラクターとしての移籍となる。


The steps to transfer Instructor records from one TC to another are as follows:

1. Instructor completes an Instructor Records Transfer Request (see Appendix).
2. The TC Coordinator of the TC where the Instructor is transferring signs the request and sends it to the Instructor’s original TC, or the Instructor may send the request to the original TC.
3. The original TC must send complete, up-to-date, instructor records to the other TC within 30 days of receiving the Instructor Records Transfer Request (copies or originals are acceptable).


インストラクター移籍の手続きは下記の通りである。
1.インストラクターはPAM別紙付録に収められている"Instructor/TCF Records Transfer Request"用紙に必要事項を記載する。
2.インストラクターが移転する予定のトレーニングセンターのTCコーディネーターが書類にサインをして、オリジナルTCへ送付するか、もしくはインストラクターは自身でそれをオリジナルTCへ送付することができる。
3.オリジナルTCはそのリクエスト書式を受け取ったら、30日以内に最新のインストラクター記録の送付を完了しなければならない。(コピーでも原本でも可)



インストラクター移籍方法に関する記載のハイライトは、この部分なのですが、新しいPAMの中では「トレーニングセンターの責務・義務」ということで、いたるところで、「移籍願いが出されたら30日以内に手続きを完了させること」、というのが口酸っぱいくらいに出てきます。

なぜにそこまで強調しなければならないのか??
まあ、その必要があったんでしょうね。

トレーニングセンターやITOによるインストラクターの囲い込みを阻止するというAHA本部の意図が明確に現れていると思います。

そもそもアメリカという一国の任意団体に過ぎないAHAがECCプログラムをここまで世界中で普及させることができた要因のひとつが、自由競争システムの導入にあるという意見もあります。

複数あるトレーニングセンターが競合して切磋琢磨。そうしたせめぎ合いの中でコースの質が担保されて、優秀なサイトは顧客を増やして、どんどんレベルアップ。逆に質の低いセンターは淘汰されていく。

それがアメリカ社会ではじまったAHAの基本スタンスなのかもしれません。

それを考えれば、インストラクターが自由に移動できることは不可欠で、それがなければAHAが意図しているコースの質の担保もなければ、発展性もありません。


インストラクターの移籍だなんて、現実味のない話だなぁと感じる方は、どうぞAHAテキストの日本語版の監訳者の欄を見てみてください。ガイドライン2000版と比べると、いろいろな発見があると思いますよ。


posted by めっつぇんばーむ at 00:49 | Comment(0) | TrackBack(0) | PAMを読み解く
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