なにそれ? という方はこれ以上、読まなくて結構です。
反対に JAPAN ITO という言葉に違和感、疑問を感じていた方、どうぞこの先を読み進んでください。
私はこれまで勘違いしていました。
以前に書いた記事で「Japan ITOというのは、日本ACLS協会がアメリカのAHA本部に届け出ている登録名ですが、」なんて書いてしまっていたのですが、私の間違いでした。
さらには「JAPAN ITOと書くとなんだかAHA日本支部! みたいな感じがしますが、特別な意味はないただの固有名詞です」なんてことも書いてしまっていたのですが、、、
固有名詞でもなんでもありませんでした。
ITOというのはAHAの業界用語で、International Training Organizationの略です。直訳するなら「国際トレーニング組織」。アメリカ本国からみて海外のECCプログラムの活動拠点を指す言葉です。(ITOの定義については、Program Administration Manualのp.11,
13およびGlossary p.3をご覧下さい)
アメリカ本国での活動拠点はトレーニングセンター(TC:Training Center)といいますが、これが国外に出ると言い方が変わるというだけのことです。
AHAとしては最近ではITOという表現を廃止してITCという言い方に替えているようです。ITCはInternational Training Centerの略。まあ、わかりやすいですね。
いまはITOという古い言い方が残っているのでITOとITCという言葉が混在していますが、意味はまったく同じです。やがてはITCという表現に統一されるはずです。
さて、そんな予備知識を踏まえた上で、JAPAN ITOという言葉を考えてみたいのですが、結論からいいますと、公式情報を探るかぎり、そんな固有名詞は存在しない、ということがわかりました。
要はJAPAN ITOと名乗る団体がAHAにどのような名前で登録されているかを見ればいいわけですね。それはAHAインストラクターであれば誰でもログインできるAHA Instructors NetworkというAHA公式の会員サイトを見れば一目瞭然です。
日本のITC(ITO)としてAHAに登録されているのは次の4つです。
Japanese Society of Pediatric Intensive Care
The Japanese Circulation Society
Japan ACLS Association
Japan Resuscitation Council
頭にJAPANという文字がついている組織はふたつありますが、さすがにJAPANというだけの大それた名前の組織は存在しませんでした。
まあ、このあたりの話は、去年6月に刊行されたBLSヘルスケアプロバイダーマニュアル日本語版(G2005版)の監訳者のページを見てもらっても一目瞭然です。
日本ACLS協会は JAA-ITC として記載されていますよね。
じゃあ、JAPAN ITOという日本を代表するかのような名前はどこから出てきたのでしょう?
、、、、正直、わかりません。
JAA-ITCの公式サイトを見ても、突然湧いたかのようにこの表現が出てきて謎です。
一説によると、ITOというのは昔はひとつの国にひとつの団体しかAHAが認めていなかったから、その名残でJAPAN-ITO=日本ACLS協会なんだ、という話を聞いたことがあります。
まあ、なんだか納得できるような気もします。でも日本のAHA教育の変遷を知っている人には、また不思議な話に聞こえるはずです。
このあたりの話はいちおうJAAの公式ウェブにも書かれていることなので、知っている人は知っていると思いますが、JAAが発行してきたAHAカードの裏面を引き合いに出すとわかりやすいかも知れませんね。
最近、日本ACLS協会でハートセイバーAED、BLS for HCP、ACLSのいずれかを修了した人の修了カードには裏面にこんな感じで書かれているはずです。
ところがですね、2005年11月以前に日本ACLS協会で発行されたカードはこんなふうに書かれていました。
これを見てすんなりと理解できた人は、なかなかのAHA事情通です。
さらに、この記載の間違いに気づいた人がいたら相当なもの(笑)
Regionと、Training Center、それに Training Site の区別が混同されているんですね。
二重、三重にいろんな意味で間違っています。
細かい話は割愛しますが、もともと日本で最初のITOとしてAHAから認可されたのは PALS ITO で Japanese Society of Pediatric Intensive Care の業績でした。これは小規模な活動に留まっていましたら、歴史的にもあまり認知されていません。
日本のAHA史上、大きな出来事はBLS ITO/ACLS ITOの設立で、これは書面上、Japan Resuscitation Council との契約でした。つまりITO(トレーニングセンター)は Japan Resuscitation Council です。
JAAが日本で活動をはじめた当初から2005年11月までは、JAAはITOでもAHAトレーニングセンターでもありませんでした。ただのNPO法人。活動実績は事実上 Japan ACLS Association でしたが、これは AHA の書面上には現れない日本国内事情に過ぎません。ですので、本来は Japan ACLS Association の名前は、AHAカードには現れないはずなのですが、、、、なぜなんでしょう? なんだか無理くりな気がします。
これはいまでも相当に勘違いされていますが、トレーニングセンターといったら、現在の JAA でいうなら Japan ACLS Association そのものであって、その下に別の名前のトレーニングセンターが存在することはあり得ません。だって、日本ACLS協会国際トレーニングセンター(JAA-ITC)なんですから。
上画像の修了カード裏面には、 Training Site の記載欄に ○○Training Center と書かれていて、まったくもって意味不明。
私の知り合いにもJAA関係者はたくさんいるのですが、その人たちと話をしていて、まったくかみ合わないと思ったら、このトレーニングセンターの配下にトレーニングサイトがあるという基本図式が理解できていないのが原因のようです。
PAMを読んでいないのは、まあ、いいとしても、少なくとも2006年11月1日以降にAHAインストラクターになった人は、義務として Core Instrucutctor コースは受講しているはずなので、このあたりAHA-ECCプログラム構造は理解していなければおかしいのですが、、、
まあこんな話は、一般受講生である Provider の方たちにはなんの関係もない話なのですが、いま自分の所属する病院のなかにAHA教育システムを組み入れようとしている立場としては、この日本固有の間違った理解が非常に障害になっています。プロバイダーレベルの勘違いならまだしも、インストラクターの無知は罪だと思う。
「だって、AHA日本支部のサイトにはそんなこと書かれてないよ」
「JAPAN ITOはそうは言っていない」
とか。
だから、JAPAN ITOってなんですか? アメリカ心臓協会日本支部なんて実在するんですか? って言いたい。
ただそれだけです。
追記:最近JAA系の○○ECCトレーニングサイトという名称のホームページが、軒並み繋がらなくなっています。なにかあったんでしょうか??
はったり書いても罰則は無いんですよね、、、多分。
>HPに繋がりにくい
1/16にJAAのHPがマイナーチェンジするようです。
(毎回NTTの回線工事という名目ですが、このときはJAAのマイナーチェンジがあります)
その後に一気に結果が見えてくるのではないでしょうか。
日本ACLS協会のホームページにしっかりと『日本支部』と書かれてますよね。一方、JRC−ITCのホームページにも『Japan International Training Organizationアメリカ心臓協会 日本部会』という表現がありますよね。
(〜部会という言葉はよく聞きますが、広○苑には載っていません)
そういうことを表記したいならPALS−ITCのように『AHA認定』っていうのがいいような気がします。
JAAのTSについては現在も増え続けていますが、JAA最初のTSは『日本ACLS協会トレーニングセンター』とあります。TSの名称自体に『トレーニングセンター』が付いているんですよね・・・。
ご紹介のカード、塗りつぶし部分が気になりますが(教えて欲しい訳じゃなくて)そのJAA最初のTS発行ではないんですよね?もしそうだとしても、TSの名称自体に『トレーニングセンター』が付いてるのって、なんと言ったらいいのか・・・どうなんでしょう?頭の中にモヤモヤ〜とした考えはあるのですが・・・。
すみません。話がそれた上に、見て知っていることを書き並べただけで、何も分かりませんでしたね。
回線工事というアナウンスは前々から気になっていましたが、サイトの大規模なメンテナンスのことだったんですね。
いま改めてJAAからリンクされている「トレーニングサイト」をパラパラと眺めてみたのですが、リンク切れになっているところが目立ちました。最初は"ECCトレーニングサイト"だけの共通項と思いましたが、そうでもない様子。
私の勝手な予想ですが、JCS-ITCへの大がかりな鞍替え開始なのかなぁ、なんて。
かつてのJAA-ITCファカルティーたちの所属もだいぶ様変わりしてきているようですし。
1/16以降のJAA公式ウェブが楽しみです。
IDFUさん、冷静な考察、ありがとうございました。
考えもしませんでした、「トレーニングセンター」までも含めて固有名詞だったとは! 確かにJAAでは、公式なAHAコースを開催するまえからトレーニング拠点を持っていましたから、それが○○トレーニングセンターという名前でもおかしくはないですよね。つまり正式にいうなら、"○○トレーニングセンター"トレーニングサイトってこと?? まあ、変ではありますが、、、
JAAはAHAを専門にやっていく団体なんですから、このあたりはきちんと整理してほしいですよね。 Training Siteや Training Centerという言葉はAHAがきちんと定義している用語なのですから。
「アメリカ心臓協会日本部会」という表現、これは確かJAAも今のサイトにリニューアルされるまえまではこう名乗っていたはずです。でももともとはJRCが言い出した言葉だったんですね。
JRC-ITCの公式ウェブ、あれもちょっとどうにかした方がいいですよね。あの文章はJRC本家本元ウェブに昔から掲げられていたものをコピーしてきただけのようですが、ぜんぜん時代に合ってない内容。
子サイトを見ると、いろいろ最近の日本国内AHA事情が綴られていますが、本家本元がきちんとアナウンスしないと、いわゆる公式見解にはならないわけで信用されません。やっぱりお金と人的資源が問題なんでしょうね。
TS一覧という中の『トレーニングセンター』という位置付けが、勉強不足のためよく分かりません。特に何かを意図している訳ではなく、一覧として見やすいようにこのような紹介をしているのかも・・・。『日本ACLS協会トレーニングセンター』も実際にTCなのかもしれません。
ご紹介のカードのTS欄に『〜TrainingCenter』とあったことから『日本ACLS協会トレーニングセンター』の名称を思い出し、TS概要のTSbニして『bP』がそこに付けられていたことから、それ以上よく調べもせずにコメントしてしまいました。
不正確であった場合には、関係者の方々に不快な想いをさせてしまったことと思いますので、お詫び申し上げます。
めっつぇんばーむさん、その後も正確なところは分かりませんでした。申し訳ありません。
1992年1月に今のJAAの理事長である青木先生がアメリカに滞在中にAHA ACLSProvider,AHA ACLSInstructorコースを受講したことが最初のとっかかりで(そのころは二日半のコースでBLSとACLSプロバイダーコースが受けられたらしいです。)帰国した青木先生がAHAに日本でもACLSコースを開催したいと要望書を出されたらしいです。その時のAHAの返答では既存の学会を通じて申し込むか、もし学会を通じての申し込みができないならば、自分たちで独自にACLSコースを行いそれに賛同する人たちで組織を作り、改めてAHAに申し込みをするようにということだったらしいです。
そこで2000年10月ごろからACLSを広めることを目的としたACLS研究会が設立され、2001年4月に名古屋で行われた第4回日本臨床救急医学会でACLSコースを開催し、その評価を仰ぐことになりました。その後2002年8月にACLS研究会はNPO法人日本ACLS協会になりました。
第4回日本臨床救急医学会で行われたACLSコースが評価され、ACLSコースの必要性が多くの施設で認識され、このころから様々なnon-AHA ACLSコースが開催されるようになっていきました。ここでようやくACLSコースの教育内容の標準化、インストラクターの質の向上が叫ばれるようになり、やはり本家本元のAHAの協力を仰ぎ、正式な国際標準であるAHAのACLSコースを行うことがベストの解決策であると考えられ、日本でACLS教育のAHAのパートナーとなるITO:International Training Organizationの設立が切望されました。
日本ACLS協会はそれまで任意に設立されたNPO法人でしたが、2003年8月にJRCの正式メンバーになりました。
Japan ITOの業務のうち契約、翻訳業務はJRCが担当し、実務的なコースの企画運営は日本ACLS協会が担当するとしてJRCから日本ACLS協会に業務委託されました。このことは2004年1月の第2回JRC委員会で承認されています。ですから元々1つの国に1つのITOという考え方で業務をJRCとJAAが分担して行っていたわけです。
ITOになるためには申請時点での日本におけるACLSコースのトレーニングネットワークを記載する必要があったため、それまで独自に行っていた日本ACLS協会のトレーニングネットワークをそっくりそのまま記載して申請したそうです。最初に青木理事長がAHAに言われたように、先に組織を作る必要があったのですよ。
2002年9月にITO申請書類を提出し、2003年2月にJRCがAHAと契約を締結し、AHA Japan
ITOが誕生しました。
2003年7月から8月にかけて、JRCの岡田委員長より任命された10名の医師が渡米してコースを受けました。その方たちはそれぞれ日本循環器学会、日本麻酔科学界、日本救急医学会、日本ACLS協会からの推薦を受けておられます。
わたしはその後のいきさつはよく知りませんが、わたしがインストラクターになった2005年には日本ACLS協会がJapan ITOとなり、AHAと直接契約を結んでいると聞きました。
そしてその後、今のように日本国内の4団体がAHAとITO契約を結ぶようになったらしいです。最初に渡米してコースを受けられた先生方はそれぞれ自分の所属する団体に戻られコースを開催されていますよね。
このような短い歴史の中での組織作りにはマニュアル通りに行かないこともあっただろうと推察されます。
G2000のインストラクターコースでは最初にトレーニングネットワークの講義があります。
その中のピラミッドで頂点はAHANationalからAHA REGIONAL→ Training Center→ Training Sites→ Providersというお話がありましたが、その時に今の時点ではレジオナルとトレーニングセンターは日本にはなくて、今から整備していくものだと言われました。
ですからJAA最初のトレーニングセンターは“トレーニングセンター”ではなかったんですよ。名称がトレーニングセンターだっただけで・・・。これはわたしの想像ですがnon-AHA時代の名称が残っていたのかもしれません。でもまあそういう勉強はしているはずですから、めっつぇんさんのお知り合いのJAA関係者の方が、トレーニングセンターの配下にトレーニングセンターがあるという基本図式がわかっていないということには正直言って驚きました・・・。
AHA活動をはじめるずっと以前から組織作りがはじまっていたことを考えれば、いろいろ納得できる部分もあるんだなぁと感じました。私も現行のPAM(2004年7月1日付)以前の組織のことはほとんど知りません。もしかすると、これ以前のモデルに従って組織を作ったのかも知れませんしね。
私自身、プロバイダーレベルでの関わりは2004年からありますが、インストラクターになったのは2007年のこと。公式コースでのインストラクション経験はまだ20回程度のぺーぺーです(笑) 業界裏事情などは知る由もなく、ここに書いていることは、インターネット上で公開されている情報の範囲内のことばかりという点をまずはっきり書いておきますね。
その中で考えても、やっぱりおかしいなと思うことをいろいろ取り上げさせてもらっているのですが、やっぱりnori_coさんの説明でも理解できない点がいくつかあります。
まず、JAPAN ITOという言葉の意味です。これは一国一ITOだから、JAPAN ITOなのだというように読みとれましたが、nori_coさんもお気づきのとおり、日本にはすでに日本小児集中治療研究会がAHA-ITOとして存在していました。これが2002年4月の契約と聞いています(http://www.jspicc.jp/pals/pals01_03.html)。つまり日本初のITOというわけです。これがあった以上、JRCにしてもJAAにしてもJAPAN ITOという一国一ITOとしての名称を名乗る理屈が私には理解できません。(JRC契約は2003年2月ということですから)
> 2005年には日本ACLS協会がJapan ITOとなり、AHAと直接契約を結んでいると聞きました。
JAAが独自にAHAとの契約を結んだのは事実と思いますが、Japan ITOという名称なのはやっぱりわかりません。PALS-ITOを抜きに考えても、この時点で日本にはJRCとJAAというふたつのITOができたわけですから、すでに一国一ITOではなくなっています。なのにJapan ITOなのはなぜ? と思うのです。
私はITOというのは、アメリカで言うところのトレーニングセンター(TC)、今の日本でいうITCと同義で言い方だけが変わったと理解しているのですが、もしかするとこのあたりが混乱の原因かもしれませんね。昔はITOという組織があって、その下にトレーニングセンターを配置するものだったと考えれば、少しはつじつまが合うような気がします。
ただ、現状はどう考えても、JAAもJRCもJCSもJSPICCも国際トレーニングセンターに過ぎず、完全な並列関係です。この時代にJAPAN ITOという表現は不適切でしょう。すべてをひっくるめて日本のITOという意味でJAPAN ITOというならわかるんですけどね。
JAAが主張しているJAPAN ITOという表現は、おそらくウェブ上で堂々と名乗っているアメリカ心臓協会日本支部という表現との関連なのかなという気がしています。アメリカ心臓協会日本支部という表記が消えたとき、きっとJAPAN ITOという表現もなくなるんでしょうね。
今後もいろいろな方のご意見・お考えを参考に、自分でもより良い方向へ勉強していきたいと思います。
めっつぇんばーむさん、nori coさん、
ありがとうございました。
一つ疑問なんですが、PALS-ITOではACLSコースは開催できないというふうに受け取っていいのでしょうか?
PALS-ITOという組織があるのであればそれをとっかかりにしてACLSコースも開催できるように組織の周辺(?)を整備していけばことはもっと簡単なように思えるのですが。いろいろ考えていくうちに本当にJapan-ITOと表現しているものが何なのかわからなくなってきましたね。どうもすっきりしません。
nori_coさん、ご質問のPALS-ITOですが、どうやら最初からPALSの契約しかしていないような感じです。ACLSはもちろん契約外なので開催できません。今後もそういう方向性はないようですよ。ただBLSくらいは、とも思うのですが、JRCに委託する形でいくみたいです。
私自身はPALS ITOの存在はまえから知っていました。ACLS協会の沿革も目の当たりにしてきたつもりですが、ACLS協会が日本初の、なんて言い方をする点、非常に疑問でした。当時は私も一国一ITOと信じていましたので、理解不能の一言以外ありませんでした。
いま思うと、こじんまりと身内で固まっていたPALS ITOは、最初から眼中になかったのかなという気がします。たぶんJAA創始者としても自分の手でどうにかしたかったという思いもあったでしょうし。
このあたりは医療とか使命とかは別に、非常に泥臭いというか経営戦略、ビジネスとしての側面なんでしょうね。