AHAのACLSプロバイダーコースの受講資格(条件)を皆さんご存じですか?
このブログでも何度も取り上げていますが、医師免許や看護師免許など医療資格を持っているかどうかというのは関係ありません。
唯一の条件が、「有効期限内のBLSヘルスケアプロバイダー修了カードを持っていること」、と私も長いこと信じてきました。
しかし、実はこの条項は2004年4月の段階で撤廃されていたという事実をご存じだったでしょうか?
2004年4月付のAHAコース運営マニュアルであるPAM (Program Administration Manual) の92ページにはこう書かれています。
Students in ACLS and PALS courses are not required to have a current BLS Healthcare Provider(HCP)card, but they are expected to be proficient in BLS HCP skills.
(訳)ACLSとPALSの受講生にはBLSヘルスケアプロバイダーカードは求められていない。しかし彼らには熟練したヘルスケアプロバイダーとしてのBLS技術が期待されている。
not required(必要とされていない)とはっきり書かれているんですね。
このことはAHA本部の公式ウェブの中のFAQでも明言されていますし、なによりACLSインストラクターマニュアル付属の受講前チェックリスト"Precourse Preparation Checklist"の中でもはっきり謳われています。(受講生がコース受講前にしておかなければいけない準備がチェックリストです)
You must do these to prepare for the course:
Complete a BLS for Healthcare Providers course or be able to perform high-quolity CPR and use an AED according to 2005 guidelines.
(訳)BLSヘルスケアプロバイダーコースを満足に修了するか、もしくはガイドライン2005に則った質の高いCPRとAED操作を実演できること
ですので、現行のAHA規則に則るなら、ヘルスケアプロバイダーカードの提示は必須ではありません。カードがない人は具体的にどうしたらいいのかという点はAHA本部のウェブサイト内FAQに書かれていました。
ACLS and PALS Course Directors may ask the student (中略) to demonstrate BLS skills before taking an ACLS or PALS Course.
そう、コース開始前に十分にBLSスキルがあることをコースディレクターの前で実演すればいいというわけです。
現実問題としては、ガイドライン2005のACLSではBLSスキルが非常に重要になっていて、コースの中でも質の高いCPRを継続することに重きが置かれてトレーニングが進んでいきます。
今現在、日本ではガイドライン2005に基づいた医療従事者向けのCPRコースは、事実上AHA-BLS for Healthcare Providerコース以外はありませんので、やはりヘルスケアプロバイダーコースを満足に修了しているというのが現実的な受講資格と言えるかも知れません。
ただし肝心なのはそれが必須ではないという事実です。
例えばICLSのインストラクターとして常日頃BLSも含めて指導にあたっている人が、わざわざACLS受講のためにHCPコースを受けなければいけないかといえば、必ずしもその必要はないかもしません。
こうした選択肢があるということが非常に重要だと思うのですが、このあたりはあまりオープンにされていないように感じます。
中でも疑問に感じるのは、老舗AHA提携NPO法人の公式ウェブの記載です。
(ACLSコースの受講条件は)
「ACLS Precource Preparation Checklist(ACLS Provider Manualに付録しています)に従います。」
と明言しているのに、続いて書かれていることが事実とは異なっているからです。
Complete a BLS for Healthcare Providers course or be able to perform high-quolity CPR and use an AED according to 2005 guidelines.
この文章をこんなふうに訳出しています。
1)BLS for HCPコースを履修しているか、
またはガイドライン2005に準拠した
質の高いAEDを用いたCRPが行えること。
1-1)G2005ACLS Provider Cource受講日に以下のいずれかのBLSカードの提示ができること。
A:有効期限内のBLS for HCPカード
B:有効期限内のBLSインストラクターカード
C:有効期限失効後2年以内のBLS for HCPカード
D:有効期限失効後2年以内のBLSインストラクターカード
1-2)上記のカードを有していることに加えて
ガイドライン2005に準拠した質の高いCPRが行えること。
1)だけなら良いんですけど、1-1)、1-2)というのはいったいどこから湧いて出てきたのでしょう? 謎です。原文はandではなくorで接続されていて、それを1)ではきちんと訳出しているのに、、、なぜ??
これをNPO法人の独自ルールとして定めるのならまだ罪はありませんが、ACLS Precource Preparation Checklistに従うと言いつつ、AHA基準にはない勝手なルールを混ぜ込むのはいかがなものかと思います。仮にも「アメリカ心臓協会日本支部」を名乗る団体が公式に不正確なことを書いちゃマズイでしょう(^^; もっとも本家AHAとしては日本支部なんぞ作ってないぞと申しているようですが。
念のため、もう一度確認しておきますが、AHAの定める要件は、HCPカードを持っているか、もしくは(or)「ガイドライン2005に準拠した質の高いCPRが行えること」のどちらかです。両方が必要とはどこにも書かれていません。
この文章、もしかしたらまた大きな波紋を投げかけることになるかも知れませんので、いちおう最後に言っておきます。
ガイドライン2005のACLSプロバイダーコースは、ヘルスケアプロバイダーコースの修了証はなくても構いませんが、AHAガイドライン2005に則ったハイクオリティーなBLSスキルは絶対に必要です。
BLSが満足にできなければ、コース中の実技試験に本気で落ちます。
現時点、日本国内で、ガイドライン2005に則った医療従事者レベルのCPRトレーニング受けるチャンスは、AHA-BLSヘルスケアプロバイダーコース以外に選択肢はありません。ですのでICLSインストラクターなどCPRに絶対的に自信があるというような特殊な方以外には事実上、BLSヘルスケアプロバイダーコース受講が必須というのは間違いじゃありません。
アメリカの場合は、AHA-HCP以外にも、American Red CrossやMedic Firstaidなど、医療従事者向けのきちんとしたBLSプログラムがありますので、そういったコースでも構わないよという意味での"not required"です。
くれぐれも、あ、そう、要らないんだ! と単純な早合点しないでくださいね。
自信があれば、どうぞヘルスケアプロバイダーコース受講なしにACLSに挑戦してみてください。ただし実技試験に落ちても知りませんよ、ってこと。
老舗AHA提携NPO法人も、きっとそういう親切心で、HCPが必須といっているんでしょうけど、それにしても、あの英文の超訳にはびっくりでした。
確かにBLSが必須なのはJAAのローカルルールであり、協会の書き方は改善の余地がありそうです。
ただずっとこれ(BLSコースが必須)を続けようと言う考えはないようですよ。日本ではまだBLSが普及しているとは言えないので、、、というだけです。ACLSコースを受けに来て、あなたはBLSが出来ていませんから、お帰り下さいと言うのは、日本人には受け入れがたいのではないでしょうか?
それから、ICLSインストだからと言ってBLSがしっかり出来るか?と言えば怪しくないですか??
出版ってことは、本として売り出されるという意味でしょうか???
有り得ない、、、というのが率直な感想です。
実在するのかどうかは分かりませんが、ITO連絡協議会のようなところが内部文章として翻訳するなら分かるのですが、どう考えても売りモノにはならないでしょう。
私としてはBLSインストラクターマニュアルが翻訳されただけでそうとうびっくりでした。日本のBLSインストラクターって、いまは3000人くらい? これならもとは取れるでしょうけど、今作られているといううわさのACLSインストラクターマニュアルに至っては発行部数1000でも余っちゃうんじゃないでしょうか? ましてはPAMを必要としている日本人AHAインストがどれだけいるのか??
私としてはもちろん大歓迎なのですが、組織によっては下々のインストラクターにまでPAMを真面目に読まれたら困ってしまうというところもあるかもしれませんし、、、
おぢさんさま、もし詳しい情報や、情報ソースが公開できるようでしたら教えていただけると嬉しいです。今日もAHAコースがあって親しいファカルティーさんと一対一で深い話をしてきたのですが、そんなネタはなかったなぁ。
Kimさん、おっしゃるように、BLSスキルが不十分だから帰ってくださいとはいえないメンタリティーという、お話、私もその通りだと思っています。まあ、日本のプロ向けBLS教育の事情を考えれば当然だと思います。ICLSを引き合いに出したのは、いちおう日本に存在する成人のプロ向けBLSを含んでいるからというだけで、質についてはなんとも申しません(笑) まあ、自信があると豪語するとしたらこの世界の人かなと思ったものですから。
ところでACLSプロバイダーマニュアルとハートセイバーAEDのテキスト、前宣伝していた中山出版からの発売じゃないみたいですね。
http://www.biomedis.co.jp/index.html
という会社が出しています。私は今日手に入れ(クリプレ?)ハートセーバーは読みました。ACLSの方は現在読んでいます(^.^)。
どちらもさっそく買われたんですね。
バイオメディスインターナショナルというのは
出版社ではなく、恐らく翻訳会社もしくは編集プロダクションだと思います。(BLSテキストなんかは同社制作で出版は中山書店になっています)出版自体はそれとは別の出版社名になっているはずなのですが、、、
問題はきちんとした出版社が出しているのかが知りたいんです。ISBNコードってついてました?
今のところ、某NPO法人の子会社(?)でしか取り扱っていないようで、ちゃんとした本屋やamazonなどで市販されるのかなとちょっと心配だったもので。
ISBNコードって、、、、これでしょうか?ハートセイバーは80-2108、ACLSは80-2114です。
確かに、印刷、出版とかの会社名が書いてある所がないですね。
翻訳者にもたぶんJAAの人しか出てきません。
本屋で売り出されないと言う事はないと思います。JAAはきちんと知識が広がる事を考えて行動しています。
しかし、今年中は一般書店に出る事はないと聞いています。何故でしょうね。
http://mbc.meteo-intergate.com/bookcenter/public/item/mbc/item935.html
横浜市立大学の生協でも1月8日となっていました。何と!ACLSとハートセイバーのインストマニュアルも日本語版が出ると言う事が書いてあります。
http://www.ycucoop.or.jp/pdf/AHA0801.pdf.pdf
テキストばかり増えて置く場所がないですね(+_+)。お金ももちろんですが、、、、
http://www.syg.co.jp/newrelease.html
ISBNコードも載っています。
要するに、Pretestを追加する代わりに発売日が延期されたそうです。
PAMも信頼できる筋から聞いたのですが、追加情報があったら何らかの形でご連絡します。
ISBNコードは存在するので一般書店でも入手可能なようですね。
よかった(^^)
でも、日本語版ができてしまうと、ACLS受講希望者が一気に増えそう。
いまでも3ヶ月待ちなんて話も聞きますのでどうなることやら。
おぢさんさま、プレテストはCDではなく、印刷の形で提供されるんですか?? これが発売が遅れた原因だったんですね。
PAM情報、わかりましたら是非お願いいたします!