1.応急手当普及員講習の内容
応急手当普及員の制度自体は総務省消防庁が定めたもので、いちおう全国で通用する資格となっています。認定は各自治体消防本部の消防長になりますが、日本全国どこでも通用するというのが建前。心肺蘇生とか救急法に関しては、おそらく唯一の国家資格/認定ということになるんじゃないかと思います。(まあ、消防上級救命講習まで教えられる応急手当指導員という資格もありますけど)
普及員の認定を受けるためには総務省消防庁が通達として出したカリキュラムに則って24時間の講習を受ける必要があります。これが応急手当普及員講習。普通は1日8時間計算で3日間かけて行なわれます。
その内容はというと、、、、
もしかしたら救命講習と同様、自治体(消防本部)によってバラバラな可能性がありますので、あくまで私が受講した某消防本部では、という但し書きを入れておきたいと思いますが、こんな感じでした。
1日目…普通救命講習の復習+模擬講習会企画のグループワーク
2日目…自分たちで企画した模擬講習会の発表&講評
3日目…上級救命講習のおさらい+マネキンのメンテナンス方法等
応急手当普及員講習の受講には、いちおう普通救命講習か上級救命講習のどちらかは受講していることが推奨されていますが、内容的には、まったく未受講でも問題ないくらいにCPR手技の実技練習も含まれています。
比率的には、指導方法について学ぶのは全体の1/3程度かなというのが私の印象。
応急手当普及員講習=上級救命講習+αという感じ。
2.応急手当普及員資格をとると何ができるか?
応急手当普及員資格を取ると、総務省消防庁が定める「普通救命講習の指導に従事」できるようになります。で、応急手当普及員個人が開催した普通救命講習であっても消防の正式な講習ですので、登録手続きをすれば正式な消防の修了証が発行されることになっています。でも実際のところ消防本部によって対応はマチマチで、修了カードは出せないところも多いようです。
普及員個人のカード発行を伴う正式コース開催を認めていない代表格は東京消防庁。東京消防庁管内では、消防職員の立ち会いがないと救命講習の開催ができないそうです。
講習を開くのに消防職員を呼ぶのだった最初から消防に講習を依頼すればいいわけで、普及員はいてもいなくても関係ないと思うんですけど、どうなんでしょう?
東京消防庁は全国の消防組織の中で唯一消防総監が鎮座している日本の消防の顔ともいうべき組織ですが、普及員養成には力を入れているわりには、普及員の個人活動を認めていないという摩訶不思議な現状があります。
私の住む自治体は普及員の単独活動がOK。応急手当普及員が消防本部に申請をしたうえで普通救命講習を開催すれば、担当普及員の個人名が入った消防長の正式な修了証が交付されます。
ただしカードを出すための講習を開くには、公式テキストを受講生に買ってもらう必要があって、これが¥1,000也。
普及員になってみるまで知らなかった事実でした。
お金がかかるだなんて!
私はAHAとしてではなく、個人でボランティアでCPRを教える場合に、応急手当普及員資格を使うつもりでいたのですが、結局金銭授受が生じてしまうという事実がなんだか残念でした。
こちらとしては普及員としての活動は完全にボランティアとしてやるつもりで、あまり興味がない人に「気楽に受けてみてよ」みたいな感じで積極的に広めていきたいと思っていたのですが、1,000円とはいえ有料となると、一気に敷居ができてしまいます。
有料だけどプロ相手にきっちりと教えて国際認定が下りるアメリカ心臓協会のヘルスケアプロバイダー・コースと、そこまではお金をかける気はないけど、ちょっと興味があるという市民向けの気軽な消防の普通救命講習、このふたつを必要に応じて提供できるようになれればいいなと思っていたんですけどね。
HCPコースというBLSの最高峰コースという選択肢が私の中にある以上、やっぱり普通救命講習に求めるのは「気軽さ」、ということになってきます。
自治体(消防本部)によっては、普及員の個人開催を認めていて、しかも無料で修了証発行をしてくれるところもあるだけに、なんとなく悔しいです。まあ、東京と違ってとりあえずは自己開催できるだけマシだと思うようにしているのですが。
まあ、修了カード発行にさえこだわらなければ、いくらでも普及活動はできるのですが、さほど興味がない人に半ば強引(?)に勧めるときには、「消防の正式な修了証がもらえるよ」と一言いうだけでずいぶん相手のモチベーションが違ってくるんじゃないのかなというのが、最近の私の持論。
だからこそ、むりくり仕事を休んで応急手当普及員資格を取りに行ったのですが、ちょっと見込み違いでした。
でも、せっかく取った「消防業務の一部を代行」できる資格ですので、なんとか活かしていきたいと思い、いまその方向性をあれこれ考え直しているところです。
3.今後、応急手当普及員を目指す人へ
ということで、今後、消防の応急手当普及員資格を取ろうと思っている方へのアドバイスです。応急手当普及員資格で「できること」というのは自治体によってマチマチの可能性が大です。必ず、受講される自治体(消防本部)の普及員活動についてリサーチをしてください。
- 普及員ひとりで普通救命講習が開催できるか?
- 普及員の個人名で修了証が出るのか?
- カード発行に際して受講生の金銭的負担はあるのか?
- 資器材(マネキン等)の貸し出し制度はあるか?
インターネット上ではこのあたりの情報は非常に見つけづらいです。所轄の消防もしくは普及員協会のような外郭法人に電話をかけて聞く方が確実かと思います。ただし私の経験上、担当者によって言うことが微妙に違うこともありますので、対応してくれた担当者の名前を控えておくこともおすすめします。
法であまりきっちりとは管理されていない制度なので、結局は担当者の自由裁量で、みたいなところが多分に残っているような感じでした。
一般的にカードに対する法的規制はないので,それなりに講習を受けた人であれば講習会を開催して,自分で勝手にカードを作って発行する事が出来ます.MFAなどでもボランティアで講習を行った時は各指導員が自分なりの証明書を作って発行しているそうです.
兵庫県医師会認定のAEDインストラクターもしていますが,カード1枚が100円くらいの実費であり,それを発行しても,各自が証書を作って発行してもOKです.
そもそも,カードをほしがる理由は何でしょう?
1,自己満足,達成感.
2,履歴書に書く.
3,なんとなく
いろいろあると思いますが,履歴書に書かれる場合,個人的にはお金のかかる国際カードを発行する講習団体でなければ認めたくありません.普通救命講習は消防が行う立派な講習ですが,基準が確立されていなくて地域によって対応がバラバラであるところが嫌です.MFAなどは教科書のレイアウトまできっちりと英語版にあわせたり,規格を重視して講習の質が変わらないようにしています.
近所の保育園も“毎年,消防による講習を受けています”という事でしたが,何も知らない人と同じ状況でした.それだけ毎年の消防による講習が無意味だったわけです.
応急手当普及員資格も,自治体によって個人活動を認めたり認めなかったりって変ですよね.そのような制限があるのなら“国家資格”とは言い切れないと思います.救命処置法を普及しようとは本気で思っていないのでしょうね.
兵庫県医師会は良いですよ.救命処置法は,一般の人が個人活動でも公の活動でもどんどん行って広めましょう!って.
何を書いているのか訳分からなくなってきましたが,行政は救命処置法の普及にもっと力を入れるべきでしょうね.アメリカみたいに有料の講習,ボランティアの講習の目的,位置づけをはっきりとさせるべきだと思います.
兵庫県はさすがにあの震災で、CPR普及の本当の意味をわかっているだけにすばらしいですね。消防ももう少し突っ込んで中央省庁が指揮をとって動けば日本最強(?)のCPR教育システムになるはずなのに残念です。
カード発行に関しては、ちょっと長くなりそうなので、近いうちに本記事の方で改めて書かせてもらいたいと思います。
◯さんからすでにコメントを頂いていますが、
普通救命講習Tは一般市民の善意に基づいた心肺蘇生法講習を終了したという証明書で、医師免許とはなんら関係はないものです。
医師免許を取るには、通常、大学医学部に入学して6年間の教育を受けた後に医師国家試験に合格する必要があります。
◯さん、コメントありがとうございました。
ただし、普段から普及活動を実施している実績や毎月開催される普通救命講習等に出向き講習会のお手伝いをしている(指導技術向上の為)事が、前提ですが・・・
やはり、自治体によりホントにマチマチですね…!
私も、普及員の認定を受けております。
>静岡県のとある自治体では、普及員の責務として上級救命講習も個人活動が出来る事
参考までに、どちらの市町村なのでしょう?。
自治体でマチマチ・・不思議ですよね。
ご質問の答えですが、浜松市です。
平成6年頃からとの事でした・・・が、私は取得して2年経って初めて事実を知りました。
というのも、実際に普及員資格を取得しても活動する人がほとんど居ない為、あまり宣伝していない・・・との事でした。
まぁ、現在300名弱の普及員がいるらしいのですが、実際活動しているのは自分含めて3名しかいない・・・との事なので・・・
でも、普及活動している方にとっては、一種誉れでは・・・?ないでしょうか。
私は応急手当普及員です。
臨時職員として消防署で救命士や消防士にまじり、普通救命講習の指導をしてきました。
その消防署では、日にち設定での来署の普通救命講習のみの指導しかしていません。市民からの、「主張で新入社員の研修で来てくれないか、町内の防災指導員に三角巾法を教えてくれないか」などの問い合わせは全部断っています。
もし、応急手当普及員である私が有料で行えるものならば
仕事をやめて資器材を購入し起業したいくらいです。今現在は、危機管理や防災意識が高まっているので需要はたくさんあります。終了証を渡す講習でなくても個人的に有料開催することは不可能なのですかね?
なので、団体講習は指導スキルを磨く場所と考えて、ほんとうに必要な講習展開は自分独自でやった方が世の中のためにもなります。
修了証だってご自身で作ったらどうですか?
なんでしたら、形だけでも任意団体を作ってもいいですし。個人活動、応援しています。
参考まで、私はAHA講習をやりつつも、他に独自講習プログラムをいくつか作って公募開催してますよ。
いろいろな活動とともに普通救命講習・上級救命講習そして応急手当普及員の資格を取得しました。
当初は、消防署員が講習している会場の傍らに待機していました。火事等で消防署員が出動した場合に私たちが引き続いて講習をするのです。
そんなことがしばらく続いたあと、消防署員に代わり私たちの団体がメインになって講習をしています。
講習会場は、消防署ではなく、別の会場で毎月定期開催しており、また、定期開催以外にも希望があれば日中はもとより夜でも自治会館や介護施設なども出帳して開催しています。
いずれも規定時間・規定内容を講習すれば私たちの報告に基づいて消防署からの修了証が発行されます。
多いときには、年間受講者は1,000人を超えたこともありました。
一般の方は一回だけの受講では半分以上忘れるので何回でも受講されるようにおすすめしています。受講・修了証発行は、無料です。知識と,勇気、と行動によって、たくさんの方が受講されて救える命が増え、社会復帰が出来ることを願っています。