2007年08月29日

(消防)上級救命講習を受講してきました

自治体の消防本部が主催している市民向け"上級救命講習"というのを受講してきました。

自分がBLSインストラクターとして活動していく上で勉強になることがあるかなと思っての参加だったのですが、なかなかハードな一日でした。

インストラクター3名で受講生は40人。

AHA育ちの自分には信じられない比率です。

それでもなんとかやっちゃうもんなんですよね。
日本でいちばん普及している救命講習がこの消防のものです。つまり反対にいえば消防のこのスタイルこそが、日本で標準のBLS講習。

リード・インストラクターによってやり方はぜんぜん違うのかもしれませんが、私が受講したコースのCPR部分はこんな感じ。

まずはデモンストレーションを交えた全体説明が1時間半くらい。ここで救命の連鎖の話から成人のCPR+AED、小児と乳児のCPR、成人の気道異物除去の説明があります。

その後、パートナー相手に意識確認から胸骨圧迫・人工呼吸の真似事を練習。その後です、ようやくマネキンに触れるのは。

マネキン対受講生比率は1:4。

人形相手に30:2を3サイクル練習して、最後はAEDを含めた全体の流れを1回だけ練習。

つまり人形に触れたのは回数で言えば2回だけ。まあ、2回といっても最後の全体を通した練習ではいつまでたってもAEDが到着してくれず、救急車の到着も遅く、12分間もひとりでCPRを続けるという恐ろしいシナリオになってます。結果的にはそれなりの練習量は稼げていそうな気もするのですが、疲労困憊を感じるのは必至。果たして効率がいいことなのかどうか。。。受講生は自信を持って帰れるのかなぁ。

インストラクターはブースの間を巡回していて、指導が必要な受講生には声を掛けてますが、問題なさそうなところは素通り。仮にうまくできていたとしても、本当にそれでいいのか受講生は不安に感じると思います。できている点を評価して誉めるということの大切さを感じました。

インストラクター数名で数十人の受講生を教えることができるこの方法は確かに数を稼ぐための効率はいいと思います。AHAにはないメリットを感じつつも、受講生の満足度・自信はどうなのかなという点は正直気になります。ただ少なくとも言えるのは、もしものときはどうにかしようというモチベーションが上がるきっかけとなるのは間違いないと思います。受けないよりは受けた方がいい。

ただもしかしたらマイナス効果になるような指導員の一言は多々気になりました。

「そんなに(胸骨圧迫が)弱いと助けられませんよ〜」

決して威圧的な言い方ではないのですが、10分以上のCPRで疲労困憊したところにはキツイセリフでした。ビリーブートキャンプのような効果を狙っているのでしょうか(笑)


一般市民の受講生を相手にしているということで、指導員さんの説明の仕方は大いに参考になりました。ビジュアル教材を一切使わずに言葉だけで説明していくのはすごいですよね。

受講費1500円で、テキストの他に、キーホルダータイプのキューマスク(フェイスシールド)とラテックス手袋、三角巾が付いてきました。さすが行政ならではの採算度外視ぶり。

せっかく払っている税金ですから、市民ならぜひ一度は受講してほしいものですね。それで興味を持ってもらって、さらにもっと実践的な教育で実力と自信をつけてもらえば...

◆ 救急現場のABCって...

最後の皆さんに聞きたいのですが、「救急現場のABC」って知ってますか?

Always
Be
Calm

(いつも落ちついて)

なんだって。

消防上級救命講習の教科書に書かれてました。

救急現場のABC「いつも落ちつて」

行政によってテキストは違うので、私のところだけなのかもしれませんが、こんな言葉があるんですね。

出典がどこなのかご存じの方、いますか?

救急のABCといえば、ふつうはAirway、Breating、Circulationですよね。最近ではD:Defibrillatorも含めてABCDと言われることが多いですけど。

◆ 小児・乳児の心肺蘇生

それともうひとつ追加。乳児のCPRについてです。いま日本では成人のCPRはいろんな団体で学べますが、小児、特に乳児のCPRを学ぶ機会は非常に少ない気がします。

消防の上級救命講習の案内には、乳児・小児のCPRも含まれると書かれていたので期待して行ったのですが、結果はガッカリでした。マネキンが1体だけあって、インストラクターがデモンストレーションをするだけ。昼休みに興味がある人は触ってみてねと言ってましたが、ほとんど手を出す人はいませんでした。

乳児のCPRとか気道異物除去なんて、小さい子どもがいる家庭では必須でそれこそ需要が高いと思うんですけどね。母親学級などできちんと教えるようなものなんでしょうか? この辺の詳しい事情はわかりませんが、子どもの心肺蘇生の普及が気になるところです。
posted by めっつぇんばーむ at 01:06 | Comment(7) | TrackBack(0) | 応急手当普及員
この記事へのコメント
こんにちは。
先週の土曜日、BLSを受けてきました。
消防の救急講習育ちの私には衝撃的でした。
必ずインストラクターになろうと決意致しました。

さて、私も6月に上級を受けて参りました。
一日8時間・・24:4の指導比率、人形4:1で、
めっつぇんばーむさんよりはCPRの練習を人形で
出来ました。
結構ハードでした。
12分一人CPRなどというすごい設定はありませんでしたけれど、とにかく実践実践というかんじで、
何度も何度も二人一組でAEDを交えたG2005の基本を繰り返しました。
内容は良かったと思います。

ちなみに私が受けた上級は参加費無料でした。
Qマスクやその他もろもろのおみやげもありません。
薄いテキストだけ頂きました。

救急現場のABCは知りませんでした。
Posted by Rico at 2007年08月29日 11:29
はじめまして。
いつも興味深く見させていただいています。

消防の救命講習についてですが、私の地元ではAHAの
コースを参考にしたような、ビデオを見ながらの練習がありますよ。
しかも講習が始まって10分後くらいには、圧迫の「ビデオ見ながら練習」が始まります。

無料で、1回の講習では1班に受講者:指導員が5:1でそれとは別に説明&ビデオ担当の進行役が1名います。

地域(消防)ごとに特徴があるんですね。地元のやり方しか知らないので「へぇ〜」という感じです。

ホームページ(…でいいんですかね?)にコメントするのは初めてなので、文章にマナー違反的な要素がないか心配ですが、いろいろ勉強させていただいてますので、今後ともよろしくお願いします。
Posted by IDFU at 2007年08月29日 20:30
色んなコースがあるのですね。消防も地方によって色々違うみたいですね。ハートセーバーを行う所もあるようです。どちらにしても、おっしゃるとおり、日本で一番沢山の受講生を出しているのは消防です。頑張ってもらいたいですね。
一度の講習で終わりと言う訳ではない(我々もインストラクターをしながら毎回勉強している訳ですよね)ので、きっかけになれば充分ではないかと思います。もう嫌だ!と思われない程度が良いのでしょうね。
Posted by Kim at 2007年08月30日 13:50
消防でハートセイバーコースを行なっているところがあるのですか?それはすごいですね。
救命の連鎖を繋げるためには、一番最初の輪が一番大切なわけで、そこが機能しなければ話になりません。
バイスタンダー養成の本丸・消防には頑張っていただきたいですね。


ところで現在渡米中。AHAの本場にて、集中特訓&レビューを受けています。F&F、HS、BLS、ACLS、PALS...
いやぁ、奥が深いです。
Posted by BlueMoon at 2007年08月30日 22:51
Ricoさん、こんにちは。私は日赤を継続して5-6年受講していたのですが、はじめてAHA式の講習を受けたときは、ほんと目から鱗というか、「これだ!」と思ったのを思い出しました。消防のは自治体によってもバラバラですし、指導員によってもまったく別講習かと思うくらいに統一されていないみたいです。私が受講したのが標準より良かったのか悪かったのか、それは自治体の問題なのか指導員個人の問題なのか、イマイチよくわかりません。

IDFUさん、貴重な初コメント(!)、ありがとうございました。
自治体によってはAHA式みたいなところもあるんですね。ビデオ教材の有用性についてはガイドライン2000の段階でしっかり明記されているにも関わらず、日本古来の教育機関ではちっとも取り入れないのが疑問でしたが、やるところはしっかりやっているんですね。すばらしいです。IDFUさんもCPR指導に関わってらっしゃる方なんでしょうか? よろしければこれからも情報交換、よろしくお願いいたします。

Kimさん、自治体でハートセイバーを取り入れているという話は私も聞いたことがあります。(もしかしたらここでkimさんから聞いたんでしたっけ? 出典を忘れました)福井だか京都だかその辺だったような記憶が...地元の有力者がAHAの関係者で条例制定の際にどさくさ紛れで入れ込んだという感じに聞いた覚えがあります。疑問なのはそれが正式に認可されたHSコースなのかという点です。つまりAHAカードが発行されるのか。だとしたら受講生が払う費用とインストラクター確保の問題が非常に気になるところです。関わっているとしたら恐らく某協会さんでしょうけど、ハートセイバーインストラクターの養成はしてないはずですしね。なにか詳細をご存じですか?

BlueMoonさん、お忙しい中、アメリカからのコメント、ありがとうございます。また現地からの最新情報、目からウロコな事実など、お話を聞くのを楽しみにしています。資格の方も、またグレードアップして帰られるのでしょうか?(^^)
Posted by めっつぇんばーむ at 2007年09月02日 10:00
IDFUです。【追加】読ませていただきました。先日もコメントさせていただいたのですが、同じ『上級救命講習』でも違いが大きそうなので、地元の上級をもうちょっと詳しく・・・

・1班に受講者:指導者=5:1

・説明&ビデオ担当の指導員1名

・人形は成人、小児、乳児が1セットで1つの班に1セットずつ

・圧迫、人工呼吸、圧迫と人工呼吸の組み合わせ等、パートごとにビデオ見ながら練習

・反応確認から30:2数サイクル(+AED)を各班ごとに練習

・成人のハイムリック&乳児の背部こう打の練習

・・・という感じで全受講者が練習します。『ビデオ見ながら練習』は成人、小児、乳児の区分によっては省略してるのもありますけど。

この違いって、その地域の特色・・・とか、そういうことじゃないと思うんですよね。

 一般の方に救命講習を受けていただく、その目的とそれを達成する為に必要な質の高い手技をいかに身につけていただいて、しかも長く身体に記憶しておいてもらえるか・・・

 全国の消防の指導員の方々の中にだってAHAのBLSインストラクターの方はいらっしゃるでしょうし、救命講習についての良いアイデアを持ちながら何らかの事情で実現できずに歯がゆい想いをされている方もいらっしゃるかも・・・。

 私も勉強不足で知りませんでしたが、あまりにも地域によって内容が違うようなので、そう感じてしまいました。(長くなっちゃってすみません)

 めっつぇんばーむさんの「CPR指導にかかわっている方?」・・・で自分のことを何も書いてないことに気づきました。
失礼しました。
私もAHAのBLSインストラクターです。
こういう情報交換って、すっごい良いですね。
ありがとうございます。
Posted by IDFU at 2007年09月03日 11:06
IDFUさん、自己紹介ありがとうございました。
AHAのインストラクターさんだったんですね。トレーニングサイトの先輩から学ぶことは多いと思いますが、こんなふうに横のつながりで自由に情報交換・意見交換できるのっていいですよね。どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。

さて、消防救命講習の話ですが、

> この違いって、その地域の特色・・・とか、そういうことじゃないと思うんですよね。

この問題は、AHAガイドライン2000で指摘していたビデオ教材を推奨する理由、そのまんまじゃないかと思います。まあ、地域によってどこまで踏み込んだ指導要綱を作成しているかにもよりますが、究極的にはインストラクターのキャラクター/資質によって大きな差異が生じる教育方法を選択している結果なんでしょうね。
Posted by めっつぇんばーむ at 2007年09月05日 01:17
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック