結論から書きますと、2007年7月現在、AHA-BLSインストラクター資格を取るための正式な流れは次のようになります。
1.コアインストラクター Core Instructor コースを修了
2.BLSインストラクターコースを受講
3.「モニター」評価を受ける
1.コア・インストラクター
コア・インストラクターというのは去年あたりから導入されたAHAの新しい制度で、2006年10月1日以降に、新しくAHAインストラクター(Haersaver、BLS、ACLS、PALS)になる人は、このコア・インストラクター講習を受けて修了証を持っていなければならないことになっています。
新規にインストラクターになる人はもちろんですが、以前からインストラクター資格を持っている人も、ACLSインストラクターやPALSインストラクターなど他のAHA資格を取る際にはこのコアインストラクターの認定が必須とされています。
その他、地域ファカルティとトレーニングセンター・ファカルティは2007年6月30日までにこのコアインストラクター・コースを修了していなければなりません。
このコアインストラクター・コースは、成人教育の手法を学ぶ教育プログラムで、心肺蘇生に関係ない部分でも、例えば職場の新人指導などにもかなり役立つとても良い内容になってます。もともとIBSTPIという教育関係の国際組織が作った教育プログラムのライセンスを受けて作成されたものなんだそうです。
コースの具体的な内容については、このブログの過去記事で取り上げたことがありますので、そちらをご覧下さい。かなりユニークな内容で驚くと思いますよ。
「コア・インストラクター」という言い方、ちょっと誤解を招く名称かもしれません。聞くところによると、インストラクターの中でも中心的な(コアな)人たちが受講するもので、下々のヒラのインストラクターには関係ないと勘違いされている方もいるそうです。
ここでいうcoreという言葉は、「人に物事を指導する上で"核"となる基本的な事柄」という意味のコアです。ですからハートセイバーであろうとBLSであろうとACLSであろうと、人にモノを教えるインストラクターであれば誰もが知っていなければならない内容です。
本当は既得を含めてすべてのAHAインストラクターに受講を義務づけたかったようですけど、費用や時間の問題から強制もできず、上記のような感じに受講義務を定めたようです。でも、既得であっても意識が高いインストラクターであればきっと自主的に受講するはず、ですよね(笑)
2.BLSインストラクターコース
ここでは、具体的にAHA-BLSインストラクターに求められている役割についてや、コースの準備・進め方の講義・練習、トレーニングセンターに提出する書類の書き方などを教わる1日のコースです。
主に座学で、一部インストラクションの実技練習が入ります。ガイドライン2000のときは修了試験があって合格基準はちょっと厳し目だったと聞きますが、いま行なわれているガイドライン2005のBLSインストラクターコースには実技試験も筆記試験もありません。一日コースを受講すればおしまい。
ただし、それだけでインストラクター・カードが発行されるわけではありません。
3.モニター
インストラクター・コースを修了したあとに待っているのが、「モニター」と呼ばれる実地試験です。これは後日、正式なヘルスケアプロバイダーコースが行なわれる際に、ホンモノの受講生の前で実際に指導を行なうというもの。その様子をファカルティーやリードインストラクターといった上官がチェックして、インストラクターとして認めて良いかを判断するシステムになっています。
このモニターに合格すると、はじめてAHA-BLSインストラクターとして認定されます。1回ですんなり通る人もいれば、何回かモニターを受けてようやく認定される人も。それはその人の技量とモニターする上官およびトレーニングセンターの意向というか、さじ加減、ってなわけです。
これが2007年現在のAHA基準に基づく基本的なインストラクター取得までの流れです。
AHAインストラクターになりたいと思ってインターネット検索をすると、おそらく某協会本部のページに辿り着くと思います。で、そこに書かれている内容とはちょっと違うのでおやっと思った方も多いかもしれません。
某協会のウェブに書かれているのはガイドライン2000時代の古い内容です。コアインストラクター・コースのことも一切載っていないし、インストラクター・コースでは筆記試験はもうなくなっているし、、、
ということで、古い内容&協会独自のローカルルールも多分に含まれていますのでご注意を!
少なくとも、新しくAHAのインストラクターになる人は、どこの所属であろうとコアインストラクター認定は取らなくちゃいけないのは事実。おそらく某協会さんもやってはいるんでしょうけど、公式ウェブからはそのあたりのことは読みとれないのが現状です。
その他、ちょっと気になった点をふたつばかり。
「タスク参加はしなくていいの?」
AHAの基準では何も書かれていません。PAMの中にはtask forceという表現は出てきますが、インストラクター認定とはなんの関係もない部分での話です。
現実問題、インストラクターの役割や実際の仕事、コースの進め方などの予備知識があった方が話がスムーズなので、プロバイダー資格取得後、コースの手伝いという形で見学に入るのはいいことだと思います。しかしインストラクターになるための絶対条件ではありません。これは各トレーニングセンター/トレーニングサイトがローカルルールとして勝手に決めているだけです。
「インストラクターポテンシャルって?」
この言葉もPAMの中に出てきますが、それほど重要な意味はないような気がします。別にインストラクターの条件という形で書かれているわけでもありませんし。
Instructor Potential: This term is used to describe an ECC Provider who has demonstrated exceptional Provider skills and has achieved a high score on the weitten examination. This Provider has leadership ability. (http://www.americanheart.org/downloadable/heart/1082066617425App%20F.pdf)
少なくとも筆記試験で90%以上とは書かれていませんし、タスク参加で熱意を示すことみたいなことも書かれてないです。
良いとか悪いとかそういう話ではなく、原典であるAHAの規則ではこうなっていて、AHAの規則と思われている制度もモノによってはあくまでローカルルールなんですよというお話しでした。
私(たち)はぎりぎりで2000インストラクターコース(終了後にそのまま2005のupdate講義)→モニターの形でインストラクターになれました。
BLSのインストラクターコースでは、一応予習は必要になります。
PWW, 普通の実技、Presentationの3つに対してそれぞれ実技を行い、それに対して他の人とDiscussionします。
ちなみに筆記試験はありました。結構侮れない内容で、再試験になる方も数名いました。
ただ、2005になると形式は変わるかもしれません。
そして、一番大変なのはモニターだと思います。とにかく緊張します。
実際に受講生に教えながら、上官であるLead instructor以上の方々のチェックを入れていただきます。あんまりにひどい内容だと上官が介入してフォローしてくれます。
そして、コース終了後に上官からの講評があります。
その上で上官と相談してモニター合格かどうか決めます。
私は2回目でPassでした。
task forceについてですが、実際には不可欠です。
お手伝いをしながらインストラクターの教え方を見学し、そのサイトの方々との人間関係を作るのは、その後のことを考えても非常に重要です。
そして、サイトのボスがその中から「選抜」してインストラクターコース受講を「推薦」してくださいます。
コアインストラクターコースは是非受けてみたいです。
でも、私は英語苦手だからなぁ、、、(汗
救急マニアックです。
めっつぇんばーむさんもご存知の通り、自分もついにAHA BLSインストラクターとなりました。AHAインストラクターとなった以上、AHAの方針やシステムを理解していく必要があると感じ、このブログ記事をこまめに目を通しております。毎回、貴重な情報を提供くださり、ありがとうございます。
各ITCにより、AHAインストラクターになる過程で違いがあるようです。これは、それぞれのITCのインストラクターに対するポリシーの違いからくるものではないでしょうか?
某協会のインストラクター養成に対するポリシーは『インストラクター資格だけ取得して、コース運営に協力しない名前だけのインストラクターは養成しない』『コースの質を維持するために、レベルの高いインストラクターを養成する』といったところでしょうか。そのため、タスクという義務をつくり、何回もコースに参加する姿勢を示すスタッフをインストラクターに推薦し、見かけのみのインストラクター希望者をふるい落とす作戦をとっているのではないかと思います。
また、あるITCはAHAの方針を親身に受け入れ、『インストラクターになりたい人がなればよい。しかし、コースでしっかりと活動できるかは各個人の責任ですよ』と言ったように、インストラクター資格を取得するのは比較的簡単であっても、その後の活動は各個人の責任次第といった方針を掲げている団体もあります。
どちらが悪くて、どちらが正解とは判断が容易につきませんが、どちらにしても、同じAHAコース教育団体として、もう少し統一した基準を作ってもらいたいものです。でないと、今後のAHAインストラクター資格を目指す人の間で混乱が生じる可能性があります。
また、各ITC間において横のつながりを大切にし、1つのITCに原則として所属義務のあるインストラクターが他のITCのコースにおいても参加できるよう、活動範囲を広げていくことが今後の課題ではないかと思います。
AHAコース開催団体が4つとなり、今まで生じなかった問題が少しずつ明確化してきております。今後の経過を冷静な目で見つめながら、自分自身も積極的にAHA教育に力を入れていきたいと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。
「ぎりぎり」ということは、いま現在は2005バージョンのインストラクター・コースが開催されているってことなんですね。
モニターがいちばん大切というのは同感です。インストラクターコースから筆記試験と実技試験がなくなったということで、実質的に「モニター」が実地試験ということになるわけですもんね。相手はお金を出して受講しているホンモノの受講生。筆記試験はないかわりにどんな質問をされるかわからないし...
タスク参加の意義に関して、私は特別に否定的な思いは持っていないつもりですが、あまりにたくさんのタスクがひしめき合っているコース会場の雰囲気に異様なものを感じた印象があります。(自分が受講生のとき)
タスクの中でも序列関係のようなものがあったり、推薦をもらえるためにやけに献身的だったりと、なーんとなく不健全なイメージがあるんですよね。タスク活動を通じて、インストラクター推薦者を決めるというサイトの方針はわかるのですが、なんだか組織をコントロールする手段として利用されているような、、、
救急マニアックさん、こんばんは。
定期的に訪問してくださっているようでありがとうございます。貴重な情報とおっしゃってくださいましたが、私が書いているのは基本的には公になっているAHAの公式文書が情報源だったりするんですよ。
公になっていてインターネット上で誰でも読めるのに意外と知られていない事実が多いんですよね。救急マニアックさんもぜひAHAの公式文書に目を通してみてください。きっと驚くような発見がいっぱいあると思いますので。
さて、今回、後半部分でちょっと批判めいたことを書きましたが、特に良い悪いという話をしているつもりはないです。少なくとも言いたいのは、「AHAインストラクター」になる手順と「日本ACLS協会インストラクター」になる手順を混同しないで、という点なんです。
インストラクター候補生に特別な基準を設けて選別するというのはAHA規約的にも認められている部分です。例えばアメリカに多い企業内トレーニングセンターでは、社員以外のインストは認めないというのは自然な話ですし、日本でも学会系のTCで学会員以外はダメというのもアリな話です。
ですので、きびしい基準のところがあっても優しい基準のところがあっても自由裁量の中でOKなんですけど、問題は某協会がアメリカ心臓協会日本支部と名乗って、ただのITOにも関わらず、アメリカ心臓協会の公式サイトを名乗って間違った情報を発信しているところにあります。そろそろ全面的に修正を入れなければならない時期にきているとは思うんですけどね。
ITOが4つに増えていろいろな問題が顕在化してきたというのはおっしゃるとおりだと思います。今後、この業界、どうなっていくんでしょうね。
タスク参加については、都会のサイトでは多いみたいですね。私も参加していた時期がありますが、、、、確かに各ブースに2名とかついているのを見ると異様な気がしますね。私の所属するサイトではアシスタントが少なくて毎回数名という事が多く、運営が大変です。どちらにしても、希望者が多い場合には、何かの条件を付けざるを得ず、それがアシスタント参加という事になりますよね。これは仕方ないですね。それからいつも言われる事なのですが、高い受講料を払ってくれている受講生に教える以上、かなり高度なインストラクションが要求されるので、ちょこっと参加してインストラクターになれるんだと言う気分では困りますよね。
BLSインストコースは試験がないんですね。知りませんでした。こちらの協会の方では最近やっと始まったので、、、教えて頂きありがとうございました。
そのあたりの事情も地域によってだいぶ違うんですね。
某協会のインストラクターコースの開催事情はまったく未公開になってますが、どの程度の頻度でやっているんでしょう? 10人いるファカルティがそれぞれ独自にインストコースを開催できるはずですが、サイト毎に行なっているのか、それとも協会としてまとめてコース開催をしているのか。いずれにしても開催数がきっと少ないんでしょうね。
西日本の関係者さんによるとコアインストラクターコース導入の直後あたりから1回もBLSインストコースが開催されていないとか。日本語準備等で開くに開けなかったのかなと勝手に思ってしまいましたが。
わたしの所属するサイトに限っていえばアシスタントの数はそんなに多くありません。外回りのこともあるので各ブース一人とかは無理です。わたしたちがインスト参加せず、外回り参加することもしばしばあります。
そして先日から話題になっているように、“質”の維持という問題があります。やはり肩書きだけ欲しいようなインストでは困るし、受講生は高い受講料を払って参加しているわけですし、受講生との関係は一期一会だと思います。たまたまAというインストに当たったからいい指導が受けられた。Bというインストラクターに当たっていまいちだったというのでは困りますよね。わたしもこの10月にインスト更新ですが、コアインストコース受講は必須で、うちのサイト長はうちでは試験もしたいと言ってます。今月インスト更新期限の人が数名いらっしゃるので、今はどうするのか様子を見ている段階です。
さらに、新規でインストになろうという人にはアシスタント参加はしてもらいたいと思っていらっしゃるようです。最低でもサイト長が推薦するんだから、ある程度その人のことを知ってから推薦したいと。まあこれは当たり前ですよね。
この土日は離島でBLSとHS-AEDコースが行われたのでインスト参加してきました。離島は救急車の数も少なく、現着までにかかる時間も都会より長いです。時間がかかって助けられないのが当たり前になってしまわないようにと願いながら続けてきた活動です。住民の皆さんの理解も得られて、病院職員のほとんど(検査技師・放射線技師・看護助手・事務員)の方がBLSを受けられています。今回のHS-AEDには学校職員、給食職員、介護福祉士、介護員、保育士、郵便局員の方の参加がありました。しかもプロバイダーの方々は毎回送迎の運転から会場設営、外回りからブース付きのアシスタントまで、たくさんの方に参加していただきました。アシスタントの方々は本当に純粋に自分たちのスキルを磨きたい、本土から来てくださるインストさんのお手伝いをしたいと思ってきてくださいます。本当に有り難いことです。そのせいかどうかわかりませんが、実は離島の方のインストさんは少ないです。
でも、離島でインストが増えれば、わたしたちがわざわざ離島に行かなくても、コンスタントにHS-AEDコースを開くことができるようになりますから、できればそうして欲しいという話になりました。もちろんわたしたちが行くのは全然かまわないのですが(楽しみですらあります)、なぜかコースにでてくるインストはいつも決まった顔ぶればかり。そうなってくるとやはりきついものがありますし、コースを開く回数が減ってしまうので、もう少しインストを増やしてもいいのではないのかなあと思います。もちろん質を保つことは必要ですが。
”Instructor Core Course”のほうが核心を突いているような気がして個人的にはよい気がしています.
ところでCICは,classroom-based以外に,個人でCD-ROMを終える方法,インターネットで受ける方法もありますね.
英語が障壁にならないようでしたら,コアのテキストを購入されてもいいんじゃないかと思います.
ただ各ITCでそのcertificationを受理してくれるかどうか,方針はわからないですよね.
・・・・わたしたちもそれでいいと言われたのですが、やっぱり英語が分かりません。一応テキストは買いました。
熱病さん、コアインストラクターコースの名称は私も疑問に思っていました。おっしゃるように”Instructor Core Course”という言い方、いいですね! コアインストラクターコースはAHA関係者以外でも受講可で制限は一切ないと言っているわりにはCDがTCを通してしか買えないという図式が私には理解できません。CD-ROMの独習で修了することもできるのにそのCDを手に入れることができないなんて。きっとそんな疑問を感じる私はCICの戦略がまだ理解できていないということなんでしょうね。
最後にまたnori_coさん、CICに関して貴重な情報ありがとうございます! 私が知っている某協会のとあるTCではインストラクターコース受講に関してCICのアナウンスを一切しておらず、所属インストもCICについてほとんど知らないというのが現状だったりします。TCの責任者の意識によってずいぶん違うということなんでしょうかね?
ちなみにそのかた,ICLSのワークショップも参加したことがないと仰ってました.ここまで辿り着くには相当のご苦労があったはずですが,ある意味,受講生が練習台になっていた感もあり,CICで体系的に修得するのも悪くないといいますか,むしろ経験を充分に積まれた方こそお受け頂くべきかと率直に思いました.
後ろ指さされることなくAHAインストできますし.
そうなんですよ。某協会さんではコアインストラクターはファカルティーなど上層部のインストラクター向けの特殊コースと思われている方がいるようなんです。まあ、名称自体、そう勘違いされてもおかしくないわかりにくい名前だとは思いますが。とかく上層部で情報操作をしている組織ですので、AHAオリジナルの情報を見てみたら? というメッセージを込めていろいろ書いてます。たまに「偏った情報・考えで書くのはいかがなものか」みたいな意見を頂くこともありますけどね(笑)