ICLSは"Immediate Cardiac Life Support"の略で、日本救急医学会認定の医療者向け蘇生トレーニングコース。
ICLS公式ウェブによるとICLSは「突然の心停止に対する最初の10分間の対応と適切なチーム蘇生を習得することを目標としたコース」ということで、内容的には一次救命処置のBLSと二次救命処置ACLS(ALS)の初歩(VF、Pulseless VT、PEA、Asystole)を1日で学びます。
ICLSコースなんてプロバイダー・レベルで受講したこともない私がなんでインストラクター参加? と私自身不思議なのですが、ICLSコースのインストラクターの条件はけっこう柔軟みたいです。
ICLSかそれに準ずるコース(AHA-ACLSや日本循環器学会のコース)を修了していれば即アシスタントインストラクター。
アシスタント・インストラクターとして5回コースに参加すれば正式な認定インストラクターになれるというような感じ。
私の場合ガイドライン2000時代に取ったACLSプロバイダー資格で参加させてもらいました。本来はアシスタントインストラクターのはずなんですが、名札とか名簿上では正インストラクター扱い。
コース中もBLSはおろかALS部分まで指導を担当させてもらって、びっくりするやら恐縮するやら。最後には受講生のスキルテストの講評まで任されてしまいました。
私はAHAのコースしか知りませんので、アシスタントインストラクター=タスクフォースと思っていました。会場セッティングや弁当の配布など裏方仕事を中心で、コース中は見学かなぁなんて思っていただけに、ここまでやらしてくれるとは正直感激でした。(もちろんブース長の監督下で、放し飼い状態だったわけではありませんよ。コースの質は維持されていたハズ)
◆ AHAのBLS+ACLSとICLSの違い
こうしてなぜか一段とばしでICLSコースに初参加させてもらったわけですが、1日でBLSからALSの初歩まで学べるっていうのはいいですね。よく言われることですが、AHAのコースが本家本元なわけですが、AHAのBLS+ACLSは敷居が高いというか、内容が多く難しすぎるというか。
医師向けには隅々まで学べるAHAコースがいいと思いますが、ナースや救急救命士などコメディカルには入門編としてICLSがいいよなぁと思いました。(英語の壁もないし)
簡単にICLSとAHA BLS+ACLSとの違いをまとめてみますと、
日程 | ||
費用 | ||
BLSの対象 | ||
気道異物除去 | ||
ALSの対象 | ||
ALSの内容 | 心室細動,無脈性心室頻拍,無脈性電気活動,心静止,急性冠症候群,徐脈,不安定な頻拍,安定している頻拍,急性虚血性脳卒中 | 心室細動,無脈性心室頻拍,無脈性電気活動,心静止 |
準拠するガイドライン | 救急蘇生法の指針 改定3版 | |
教科書 | 日本救急医学会ICLSコースガイドブック 改訂第2版 | |
公募による参加しやすさ |
つまりICLSは成人の心停止に特化したBLS+ALSプログラムです。一般の医療従事者が遭遇する可能性が高い部分を要領よくまとめた実践的なコースがICLSと言えそうです。
ちょっと前まで、ICLSは「ACLS基礎コース」という言い方をしていました。まさにその通りだと思います。ICLSで医療者としての救命処置の基礎を学んで、さらに必要に応じて上級コースであるAHA ACLSに進んでいくという図式が自然な感じ。
私自身、勤務病院の看護師にACLSを学ぶことをことあるごとに奨めているのですが、実際問題AHAコースは時間と費用と内容の難しさからあまり強くは推せないのが現状。
その点、ICLSだったら気軽に「行ってきなよ」と言えそうです。
ただ、残念なのはICLSはあまり公募されていないという点。地域のMC協議会などが主催することが多いみたいで、身内の口コミ募集ということが多いみたいです。
私の住む地域でもそんな感じで、公式ウェブを見ても募集のことは書かれていませんし、どうやって参加したらいいのかもわからない状態。
その点、AHAはウェブ上からの申し込みフォームがしっかりしている場合が多いですから、いいですよね。
このあたりの問題はやっぱり受講費との関係もあるんでしょうね。ICLSはインストラクターも運営者も採算は無視してボランティアベースで動いているという点がポイントかもしれません。
◆ 受講費の問題
AHAは高い、ICLSは安いこの問題をどう読み解くかですが、「AHAは高すぎる!」のではなく「ICLSが安すぎる」というのが実際のところじゃないでしょうか。
ACLSやICLSで使用する心電図波形が出せる蘇生人形、あれって一体200万円くらいします。それを自前で揃えて、減価償却しようと思ったら、ひとり5,000円や8,000円の受講費で賄えるはずがありません。
それに保険の問題もあります。AHAはアメリカ本部の規約(PAM 68ページ)でコースの受講生・インストラクターに対して総額$1,000,000以上の損害保険をかけることが義務づけられています。AHAの受講費にはそういった部分も含まれているわけですが、ICLSはどうなんでしょう?
その他、事務費やインストラクターの人件費や交通費、会場費の問題なども組織だった運営には重要な問題です。
つまりICLSとAHAの根本的な違いは、独立組織としてコース運営できているかどうかという点にあると思います。
独立採算で、きちんと組織だってコース運営しようと思ったらAHA程度の受講費は当然必要でしょうし、もしかしたらまだまだ「安い」のかも。
今のところ、入門編としてのICLS、しっかり勉強したい人のためのACLSと棲み分けがなんとなくできている感じもしますが、長期にわたってコースを続けていくためには、安すぎるコースというのは大丈夫なのかなという気もします。
受講生にとっては安ければ安いほどありがたいと思われがちな「受講費」ですが、必ずしも安ければいいという話ではありません。
質の高いコースを維持するためには、どうしても経費はかかります。現在は主催者やインストラクターの個人の献身的な努力によって、また地域の病院やMC協議会のバックアップでどうにか成り立っているというのが現状。政府などからきちんとした助成金が出るようになればまた話は違うのかもしれませんが、現状ではこれをあたりまえとは思わない方が健全なのかもしれません。
偶然ですね。自分も本日ICLSコースにスタッフとして参加してまいりました。昨年9月に認定インストラクター資格を取得し、指導にあたっています(自分の場合はICLS指導者養成ワークショップ受講+指導経験2回以上で認定インスト資格を取得しました)。
自分の県は比較的ICLSコースは積極的に開催され、受講も全国的に見ればしやすい地域なのかなと感じています。だからこそ、インストラクターも可能な限りコースに協力し、受講希望者にコース受講のチャンスを与えてあげなければと思っています。
AHAコースとICLSコースはやはりAHAコースの方がしっかりとした教育システムが確立できているような気がしますね。ただ、普及という観点で見ると、ICLSコースの方が明らかに先行しています。
我々看護師を含め、医療従事者の場合、あまり多くの時間を休暇として取れません。そうなってくると合わせて3日間かかるAHAコースよりも1日で修了できるICLSコースの方が受講しやすい状況となっています(看護師の場合、AHAコースはBLS HCPのみの受講で終わってしまい、ACLSコースを受講しようとする看護師はごく少数しかいません)。
いくら優れた教育システムが確立していても普及しなければ意味がありませんよね。AHAコースはさらにしっかりとした知識を学びたいという医療従事者が受講すればよいのではないかと思います。まずはICLSでしっかり基礎を習得する。自分もこの考えを推奨します。
今後、わが国日本にも様々なトレーニングコースが導入されてくると思います。優れた教育システムも重要ですが、受講する側が気軽に参加できるようなトレーニングコースが今後増えていくことを願うばかりです。
自分もめっつぇんばーむさんに負けないよう、積極的なトレーニングコースの参加に努めていきたいと思います。また貴重な情報があれば、教えてください。楽しみにしています。
私もこの様な活動に参加する前にネットで調べまくったのですが、、、見つかりませんでした(当時は私の住む県にAHAのサイトもありませんでした)。
ICLSは研修医教育のためというのがあると思いますので、とにかくこういった活動の入り口としては良いと思います。
ICLSで流行っている「今日から私はVFハンター!}とみんなで言わさせられる?のはどうも、、、です。私の参加している全国でやっているICLSではやっていません(良かった!)。
良いか悪いかは別として教育システムではAHAにかなうものはないんじゃないでしょうか。私は成人教育とか標準化プログラムというとAHAしか知りませんでしたので今回ICLSに参加してびっくりしました。
てっきり日本救急医学会の方できちんとした運営基準や指導マニュアルを作って全国統一内容でコースを開いているのかと思ったら違うんですね。コースに盛り込む内容を末端の人たちが議論して方向性を作っているのをみてびっくりしました。議論の中でAEDはデモを見せるだけで十分、なんて意見も出てきて、えっ、そんなのでいいの? と驚いてしまいました。
AHAとICLSの状勢、地域によっても違うんですね。
私の住む地域ではICLSは一切公募なし。ACLSだったら電車で1時間程度で行かれる範囲で3-4つのトレーニングサイトがあります。実際になんのコネもなく受けようと思ったら、ACLSの方が受けやすいという状況です。といいつつも私が勤務する病院のナースでAHA-ACLS Providerは私を含めて二人だけなんですけど。私としてはICLSがもっと広まって欲しいと思ってます。ただしすべての作業が献身的なボランティア作業になってしまうためかコース開催数は少ないし、ウェブ制作にも力が入りにくいのかなと思っています。もう少しビジネス的側面から基盤を固める必要があるのかもというのが私の見方です。
kimさん、「今日から私はVFハンター!」なんて言わされるんですか?
確かにナース向けに作られたACLSだとかICLSの本では、合い言葉みたいにVFハンターって書かれてますけど(笑)
そしてKinさんのサイトにもお手伝いに行きたいですね。実は今年の3月のBLSとハートセーバーAEDにはわたしが行くことになっていたんですが、末っ子の保育園の卒園式と重なってしまい、行くことができなくなってしまったんです。次に機会があればぜひ行きたいと思います。他のサイトの雰囲気とか知りたいし、インストラクターさん達とお友達になりたいし・・・。
さて、残念ながらわたしの住む県ではICLSは行われていません。参加したい気持ちもあるんですが・・・。
めっつぇんばーむさん、コメント欄利用してすみません。
それから指導ポイントを忘れないためのチェックリストは、「星は何でも知っている」というんですよ。ネットで検索したら出てくると思いますが、、、、今見つかりませんでした。