2007年06月17日

ITOインストラクター

英語の勉強を兼ねてアメリカ心臓協会の規約集 PAM ( AHA Program Administration Manual )をパラパラと眺めているのですが、そこで気になっているのが、本家本元のAHAインストラクターITOインストラクターの違いについてです。

ITOというのは International Training Organization の略で、

ITOs are entities that supervise and provide AHA training in countries outside the United States. (PAM p.13)

と定義されています。日本にあるAHAコースを開催する団体は基本的にこのITOに相当します。

AHAの本部だろうとITOだろうと、カード発行元がどこであっても、AHAのインストラクターには変わりないと思っていたのですが、PAMを読んでいると、ITOの場合は○○、みたいな例外事項の記載がけっこうあって、実は区別されているんだなと意外でした。

例えば、PAMの84ページからは、Reciprocity with Other Organizations ということで、他のCPR普及団体資格との互換性が書かれている部分があります。

American Red Cross(ARC:アメリカ赤十字)のインストラクター資格を持っていれば、オリエンテーションとモニターを受けることでAHAインストラクターにもなれますよ、みたいなことが書かれているのですが、その中のひとつとして International Training Organization Reciprocity が載っていたりします。

最初、これをみたとき、アレ? という感じでした。ITOであろうとAHAのトレーニングセンター(TC)のひとつと思っていたのですが、この扱いをみると、あくまで ITO は ARC などと同じで AHA とは「別組織」という位置づけなんだなぁと思った次第です。

本家本元のAHAインストラクターはアメリカ国内に留まらず、世界中どこでも教えることができるのに対して、ITOインストラクターは自国内が原則だったり、細かいところで違いがあるようです。

そうやって考えると、AHAインストラクターというのは、あくまで本家本元であるアメリカ国内のトレーニングセンター所属の人のことであって、日本のITOの下でインストラクターコースを修了した人たちはあくまでもITOインストラクターということで、別物と考えた方がすっきりするのかなと思いました。

アメリカで資格を取ったBLSインストラクターは、First Aidコース(ハートセイバー・ファーストエイドなど)を教えられるけど、日本で取得したBLSインストラクター資格では教えられないなど、同じライセンスのはずなのにいろいろ違いがあるのはなんなの?

そのあたりが気になって今 PAM を読み込んでいるのですが、まだイマイチよく分かっていません。(引き続き、調べてみるつもりでいますが、誰か詳しい人いたら教えてください!)

いずれにしても言えるのは、本当の意味でのAHAインストラクターは、アメリカのトレーニングサイト所属のいわゆる"USインストラクター"(日本にも少なからず存在しています)だけであり、日本でAHAインストラクターと思われている大半の人たちは制限付きのITOインストラクターであり、まったく同等であるとは限らないということ。

この辺の違いを認識しておくことが、今後の日本のAHA教育展開を理解する上で重要なキーポイントになるのかもしれません。


最後に少し補足ですが、一般受講生が手にするプロバイダー・レベルのカードに関してはITOが発行しようがアメリカのTCが発行しようがまったく同等で互換性が保証されていますので、受講生レベルではここに書いたようなことは一切気にしないで大丈夫です。
posted by めっつぇんばーむ at 00:51 | Comment(8) | TrackBack(0) | PAMを読み解く
この記事へのコメント
 いつもながら,いろいろと勉強されていますね.僕個人として良い刺激を受け“勉強しなければ...”と感じるのですが,英語の壁は結構大きいですね.

 ITOとUSの違いは,特に問題となるような内容ではなかったはずです.受講生にとっては同じ教材で勉強して同じカードをもらえるわけですから.

 でも,最初に日本でITOとなって勢力を伸ばした団体のエゴが,事態を変な方向に進めてしまったのが悪かったと思います.まるで自分たちがAHAの全てであるように宣伝し,受講生にもそう思いこませて...当時の経営手腕としては良いかも知れませんが,今の時代の流れを考えると最悪ですね.
 ITOの名前からして二次救命処置を行う人の事しか考えていませんので,その底辺の一般市民に対する講習をほとんど考えていないのは当然の事かも知れません.

 USのHCPインストラクターがそのままFAを指導出来るようになったのは極最近の話だと聞いています.ですから一般市民に対する門戸を全開にしているITO J○Cは,これから更に良い方向に変わってくるのではないでしょうか?頑張りましょう.
Posted by mimimi at 2007年06月17日 06:45
mimimiさん、さっそくのレスポンス、ありがとうございました。
ITOインストとUSインストの違い、確かにほとんどないようです。本文中でも触れたReciprocityについても、結論的にはアメリカ国内の場合と同等と書かれていますし。ただしITO Instructorという表現がPAM上にもみられ、いちおう別格扱いになっているようです。

今のところPAM上で確認できているのは、ITOインストが自国内でしか活動できないという制限くらいなのですが、ファーストエイドに関する話などなんだか釈然としない部分がいくつか残っていまして、これらが組織としての契約の問題なのか、個人レベルでの資格に関する部分なのか、それとも純粋なAHAではないITOだからの問題なのか。

いずれにしてもインストラクターレベルのポジションを考えると、アメリカとまったく同等とは考えない方が現段階ではすっきりするようです。

実は今回の話は、まだあまり根拠性が確認できていません。今後調べていきたいことの導入編というか前置きみたいなつもりで書きました。最大の狙いはmimimiさんもおっしゃるとおり、「国際レベルでAHA活動を考えましょう」という今の日本に欠落している視点の提供。そんなふうに理解していただけたらうれしいです。

FAに関してはAHAだけではなく、別の組織も絡んでの話だからややこしいんでしょうか? 今ネット上で公開されいているPAM上では触れられていない部分ですし、もしかしたら私は持っていないハートセイバーのインストラクターマニュアルにはしっかり書かれているのかな、と思ってます。
Posted by めっつぇんばーむ at 2007年06月17日 09:54
 ちょっと誤解があるようですので、、、mimimiさんは色々と頑張っておられる方のようですね。
 私はたぶんmimimiさんがお嫌いな方の団体のインストラクターですが、底辺の一般市民への講習を考えていない訳ではありません。例えば長崎県ではHeartsaverAEDという一般の人向けの講習会をたくさんしていますし、私の所属する件でも回数はまだまだですが、やっていますよ。それから、BLS for HCPコースは医療従事者向けと書かれていますが、私の所属するサイトでは一般の人でも受けています(制限はないと聞いていますが、、、、BVMを使うのでそれが難しいかもしれないというお話だけはしているようです)。先日は普通の大学生が受けていました。
 今までは人手が足らなかったのと、日本ではまだ医療従事者にBLSが普及していなかったので、まずそちらからという風なだけです。日本には4つでしたかITO?ITC?ができましたので、これからはどんどん広がって行くと思います。所属する団体が違っても(そして、上の方でいざこざがたとえあったとしても)底辺の人間は仲良くやって行けたらなあ、、、と思います。
 私の所属するサイトでも、地方開催の回数が増えてきていますし、今後は離島でも行われます。
 個人の力は大した事ありませんので、お互い出来る範囲で(例えばBLSしか教えられなければ、それだけでも充分だと思います)頑張りましょうね。
Posted by Kim at 2007年06月18日 11:39
それから、日本で最初にITOとなったのは、確かJRCですよ。日本ACLS協会は脱退?したんです。
Posted by Kim at 2007年06月18日 11:41
Kim様

 コメントありがとうございます.JRCが先でしたか.リサーチ不足ですいません.

 別に協会が嫌いなわけではないのですが,なぜか協会の方からいわれのないひどい仕打ちを受けていて...でも,そんな事で感情的になるのは良くないですね.

 もちろん協会にも良い方が沢山いらっしゃると思います.私はスクーバダイビングのインストラクターをしていますが,PADIとかSSIとか,指導団体による違いよりも,インストラクターの個性で善し悪しが強く出ていました.AHAも同じで,USカードにも変な人はいると思います.

 AHAとかMFAとか,指導団体によらず,ITOにも左右されず,変な事であまり感情的にならずに,共に救命処置法を普及出来るように頑張ります.(反省)
Posted by mimimi at 2007年06月18日 21:55
kimさん、mimimiさん、こんばんは。なかなかコメントが難しいところなのですが、控え目に私見をば。

ITOに関しましては、kimさんのおっしゃるように、JRCが日本初のITOということで間違いありません。契約母体はJapan Resuscitation Councilで、講習等の実務はJapan ACLS Associationに委託していたというのが最初の姿です。

2004年くらいに取得したカードのウラ面を見ると、

AHA Region:Japan Resuscitation Council
Community Trainning Center:Japan ACLS Association

と書かれています。

ところが最近発行されたカードを見ると、

AHA Region:JAPAN
Community Trainning Center:Japan ACLS Association

と変化しています。

これは何年だったかは忘れましたが、ACLS協会がJRC傘下を抜けて独自にAHAとITO契約を結ぶようになったための変化のようです。

次にBLSの受講資格についてですが、以前は医療従事者or医療系学生という限定をつけていたところが圧倒的に多かったように思います。実際、民間人で何度申し込みをしても都合をつけて断られると言う話は直接の話でも複数聞いています。

しかし最近は受講生の選別をしないで純粋に申し込み順にしているというサイトも増えてきているようです。インストラクターの数も増えて、受講生を裁けるようになってきたということなんでしょうね。ただ残念なことに協会本部のオフィシャル情報としての「参加対象者:医師、看護師、救急救命士、その他コメディカル」というのは訂正されていないようです。そして非医療従事者がHCPコースを受講できるという情報はほとんど知られていないのが実態だとは思います。

mimimiさんがおっしゃるような「自分たちがAHAの全てであるように宣伝し,受講生にもそう思いこませて...」という点は私も多いに感じるところです。別の項目で書いた「インストラクター責務」に関する誤解(欺瞞?)という話もまさにその弊害のひとつですし、アメリカ心臓協会というグローバルな組織に関係する人間であるというのであれば、フィルターのかかった日本語情報を鵜呑みにするのではなく、原典をみて正しく理解してほしいという点は私も訴えていきたいと思っています。

そういった意味で、日本ACLS協会がすべてだった時代から、人々の誤解に苦労されつつも正しい本場のAHA世界観を発信してくれていたUSインストラクターのmimimiさんはすばらしいと思っています。

私自身、特定団体に偏ったことはなるべく書かないつもりでいますが、PAMをはじめとする原典からあまりにかけ離れた「誤解」がまかり通っている場合などは、客観的事実として書かせてもらうつもりでいます。

AHAの理念からすれば相互互換性と協調なのですが、まあ上の方では何があるんだか正直よく分かりません。ただAHAという大きな枠で継がれているもの同士、さらに言えばBLS/ACLS普及という点で同じ思いを抱いているもの同士ということで、建設的な情報交換していけたらなと思います。
Posted by めっつぇんばーむ at 2007年06月18日 23:39
mimimiさん、めっつぇんばーむさん、ご意見ありがとうございます。
まあ、人間色々なので、、、、人に色々言われても大事な事は見失いようにしたいですね。
Posted by Kim at 2007年06月19日 09:27
kimさんのおっしゃるとおり、基本はCPRの普及。それに携わる個人個人が考えていることはみんな同じはずです。日赤指導員だろうと消防の普及員だろうとMFAインストラクターだろうとAHAインストラクターであろうと。

要は日本の救命率が上がればいいわけですから、それぞれの立場でがんばっていきましょう。
Posted by めっつぇんばーむ at 2007年06月20日 19:52
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