◆ 意外と知られていないアメリカ心臓協会AHAの実際
アメリカ心臓協会AHAのBLSインストラクターコースの受講が決まったのですが、AHA公認のインストラクターになるからには、母体であるアメリカ心臓協会(AHA)とはなんなのか、きちんと知っていなくては、と思い、インストラクター・マニュアルとは別にあれこれ勉強しているところです。アメリカ心臓協会とはその名のとおり、アメリカに母体をおく学術団体(学会?)です。心肺蘇生の国際ガイドラインの制定に主導的に関わっていたり、世界中で心肺蘇生教育活動を展開している世界最大規模の学術団体なのですが、日本にAHAの教育プログラムが正式に入ってきたのは2003年と、実はかなり最近のこと。
そんなこともあって、アメリカ心臓協会(AHA)という組織に関する日本語での情報はかなり限られています。ACLSとかBLSなどのプロバイダーレベルの話であればしっかり本にもなっているのですが、インストラクターに関する情報や組織に関してはネット上でも日本ACLS協会のウェブサイトに載っているのが、おそらく日本語唯一の情報源なんじゃないでしょうか。
私も最初は日本語情報しか見ていなかったので、それがAHAの方針なんだと思っていましたが、どうもアメリカ本国のAHA公式ウェブを見てみると感じる印象がぜんぜん違うんですよね。もしかして日本のAHAとアメリカ本国のAHAは違う....? そんな気すらしてきました。
例えば日本では BLS for Healthcare Provider コースを受講できるのは、「医師、看護師、救急救命士、その他コメディカル」となっています。でもアメリカ心臓協会の規約を読むと、実は受講条件なんてことはどこにも書かれていないんですね。
しかもインストラクターの条件としてはプロバイダー資格を持っていることと、16歳以上が好ましいと書かれているだけ。なんじゃそれ? と思いません? アメリカでは医療資格の有無なんてレベルではなく、高校生であってもAHAインストラクターになれちゃうってこと??
【Instructor Courses】
An AHA Instructor Course is designed to teach the methods needed to effectively instruct others in resuscitation courses. The AHA recommends that Instructors be at least 16 years of age.
【Instructor Course Prerequisites】
All prospective participants in an Instructor Course must have current Provider status in the discipline the candidate wishes to teach.
An AHA Instructor Course is designed to teach the methods needed to effectively instruct others in resuscitation courses. The AHA recommends that Instructors be at least 16 years of age.
【Instructor Course Prerequisites】
All prospective participants in an Instructor Course must have current Provider status in the discipline the candidate wishes to teach.
実際、アメリカでBLSインストラクターをやっている人の大半は非医療従事者だとか。まあ、あちらでは職業的にBLS講習を定期的に受けないと仕事を続けられない職種がたくさんありますから、BLS講習がビジネスとして確立しているということも関係しているのだと思いますが。
少なくとも受講生(プロバイダー)もインストラクターもみんな医療有資格者ばかりというのは日本だけのことみたいですよ。
◆ 日本ACLS協会≠AHA日本支部
2007年3月現在、日本でアメリカ心臓協会AHAと契約を結んで、AHA公式コースを開催できる団体(AHAカードを発行できる団体)は実は4つあります。・日本ACLS協会
・日本蘇生協議会
・日本循環器学会
・日本小児集中治療研究会
・日本蘇生協議会
・日本循環器学会
・日本小児集中治療研究会
以前は実質上、日本ACLS協会の独占でしたので、日本では「AHA=日本ACLS協会」という暗黙の図式ができていましたが、実はそうではなかったんですね。
私も以前は日本ACLS協会がアメリカ心臓協会の日本支部だと信じていました。ですから「USカードグループ」などと呼ばれている日本ACLS協会以前からAHAカードを発行していた団体のことや、日本ACLS協会は手がけていない小児専門の二次救命処置PALSコースを開催する日本小児集中治療研究会の存在が不思議でなりませんでした。
でも、アメリカ本国の規定を読んでわかるのは、AHAのトレーニングセンターの設置条件は比較的緩やか。一国一団体みたいなきっちりとした体系的なものではないんですね。条件さえ整えれば誰でも新しいトレーニングセンターを開設できるし、日本ACLS協会のその数あるトレーニングセンターのひとつに過ぎなかったということです。
ちらっと話に出た「USカードグループ」というのは、アメリカでAHAインストラクター資格を取り、アメリカ国内のトレーニングセンターに登録している日本人インストラクターたちの集まりです。
2003年に日本に正式なトレーニングセンター(ITO)ができる以前から、アメリカ本国から日本へ出張してきたような形でAHA公式コースを開催、AHAカードを発行していた団体があったんです。(言ってみれば、ヘンな日本のローカルルールに縛られない純粋なAHAコースを開催している人たちと言えるかもしれません)
例えばUSカードを発行する団体のひとつ 福井BLS というグループの公募を見ると、AHAのBLSコースなのに受講者の制限が一切ないと書かれています。「職業にかわらず,どなたでも受講していただけます.HPを検索しますと,BLSの講習は医師や歯科医師,看護師などが対象という記載をみることがありますが,それは過ちです.どなたでも受講できます.」だそうです。
日本ACLS協会のアメリカ心臓協会AHAコースに関する規約を読むかぎり、かなり制約が多いような印象を受けますが、実は国際組織としてのAHA自体はずっとずっとフレキシブルな組織で、制約が多いのは日本ACLS協会のローカルルールの方だったというのが現実のようです。
アメリカ心臓協会の公式ウェブからの情報を直に読んでみると、びっくりすることがたくさん書かれていてホントおもしろかったです。
かなりディープな、というかマニアックな話になってしまいましたね(^^;
きっと日本のこれまでのAHA事情を知っている人にとっては、かなり目から鱗的な話だったと思うのですが、いかがだったでしょうか?
あまり語られることのないAHAコース運営の裏話としてAHA JRC-TC 獨協越谷トレーニングサイト運営者の方のブログ記事 「アメリカ心臓協会『ガイドライン2005年』BLSコース」 もおもしろかったですよ。
また、ACLSコースに限っていえば最初の頃は、まず実際に治療を行う医師の受講を優先していましたし、医師グループとコメディカルグループに分けて受講していたようです。わたしが受講したのは昨年の6月でしたが、その時から医師とコメディカルが同じグループで受講しました。ネット友達の鹿児島の救命士さんも5回以上福岡サイトに申し込んで受講できず、うちのサイトで受講されました。コメディカルにとっては心電図が難しくてなかなか大変のようです。わたしがこれまで受講したどの心電図の講習会より、わかりやすくておもしろかったんですけどね。
BLSはともかく、ACLS職種によってばらつきが出そうですね。心電図は確かにACLSの合理的なというか余計なことは一切排除した目的一点手技の教え方が私にも斬新でわかりやすかったです。アレがなければ心電図嫌いのめっつぇんばーむになってたと思います(^^)