2007年03月11日

AHAインストラクターへの途ーコアインストラクター・コース受講

AHAコアインストラクター・コース・マニュアル先日、AHA-BLSインストラクターへの第一歩として、コアインストラクター(Core Instructor)コースというのを受けてきました。これは大人が大人に教えるためにはどんな方法を使うと効果的かという点を学ぶ、いわば成人教育手法のセミナーです。

コア・インストラクター・コースの内容を紹介する前に、まずはアメリカ心臓協会AHAのインストラクター制度についてざっと説明しておきますね。

◆ AHAインストラクターの種類

アメリカ心臓協会(AHA)のインストラクター資格には大きく4つあります。

・PALSインストラクター(小児に特化した二次救命処置)
・ACLSインストラクター(一般的な二次救命処置)
・BLSインストラクター(一次救命処置全般)
・ハートセイバー・インストラクター(主に市民向け一次救命処置)

この中で私が取る予定なのはBLSインストラクター。この中にはハートセイバー・インストラクター資格も内包しているので、AHA-BLSインストラクターになれば基本的に一次救命処置はすべて教えられることになっています。

◆ 従来のAHAインストラクターになるまでの流れ

AHAのインストラクターになるには、BLSインストラクターならBLSプロバイダー認定を取っていることが前提条件。その上で「BLSインストラクターコース」を受講し、最後の修了試験に合格する必要があります。ただし「BLSインストラクターコース」を無事修了できたら即インストラクターになれるというわけではありません。次に「モニター」といって、実際にホンモノの受講生相手に指導しているところを試験官にチェックしてもらって、OKがでて初めてインストラクター認定がおりるという流れになっています。

◆ コアインストラクターの新設

今までは上のような流れでインストラクターになれたのですが、去年の夏あたりからAHAインストラクター認定制度が改定されて、コアインストラクター Core instructor コースというのができてしまいました。

これはなにかというと、これまでPALS/ACLS/BLS/Heartsaverと4種類あったインストラクターコースの中の共通部分、つまり成人教育の手法に関する部分を独立させて、ひとつのコースにまとめたということらしいです。

これによって、これからAHAのインストラクターになろうという人は、まずはコアインストラクターコースを受講して、その後でBLSなりACLSなどのインストラクターコースを受講しなければならないということ。ちょっと面倒くさくなりました。まあ、BLS以外にACLSやPALSインストラクター資格も取ろうという人にとっては、2つ目以降の重複部分がなくなるということでメリットでもあるのかもしれませんが。

◆ とてもユニークなAHAコアインストラクターコース
このコアインストラクターコースは、これまでにないとてもおもしろい形態をとっています。e-learningと言うんでしょうか? インターネットもしくはCD-ROMを使って独習するというのが基本スタイルになっています。

コアインストラクター・マニュアルを手に入れると、そこにはCD-ROMが入っています。そいつを自分のパソコンに入れると自動的にビデオクリップが流れ出して、その映像のレクチャーを見ながら自分で学習をしていきます。途中でいくつも問題が出てきますので、クリックして正しい答えを選択、そうやって全カリキュラムを修了するとコアインストラクター修了証をプリントアウトすることができる、という仕組みになってます。(おなじことはインターネットを使ってオンラインサービスでもできるようになっています。AHAの専用ウェブページに接続して、コアインストラクター・マニュアルに書かれているパスワードを入力するとインターネット上でもビデオ講習が受けられます。)


次のステップとしてBLSインストラクターコースやACLSインストラクターコースを申し込むときには、その修了証がないとダメ、というわけです。

パソコンで独習するコアインストラクター、なんだか簡単そうな気がしますが、全行程を終わらせるには7-8時間はかかるとか。しかも全部英語なので、ふつうの日本人にとってはちょっと厳しいものがあります。

英語に不自由がなければテキストだけを買って自宅で好きなときに細切れで勉強してコアインストラクター資格を取れるのですが、一般的な日本人の場合は、映像を見ながら日本人インストラクターが解説をしてくれるコアインストラクター・コースに参加する必要があって、テキスト代の他に受講料というのが別にかかってしまうのが難点。

◆ コアインストラクターコースで学ぶこと

コアインストラクターコースでは、心肺蘇生のテクニックがどうのこうのという話は一切ありません。内容はというときわめて教育学的な実践の話ばかり。

私たちが知っている教育とか人のものを教える方法というのは、実はほとんどが「小児教育」というのか「学校教育」というのか、つまりは子どもにものを教えるやり方なんです。仕事場で後輩に指導するときなど、無意識のうちに自分がこれまで受けてきた学校教育のやり方をマネしているはずですが、実は大人が大人にものを教えるには学校教育の手法では効果的ではないと言われるようになっています。

子ども相手の場合、九九みたいに意味も分からず詰め込み教育をするのもありですが、自我がはっきりとした大人の場合、まずはモチベーションをしっかり固めてあげることが重要。目的を再確認させて、自分から学びたいという気持ちに持っていって、そのための道筋を示すことが重要になってきます。

それに大人が大人を教えるのですから、「そこダメ! できてない!!」とモチベーションをそぐような指導の仕方はダメ。

とにかく根本的に小児教育と成人教育は違うんだ、というあたりを学んでいくコースです。コアインストラクターコースで学ぶことは、心肺蘇生教育だけではなく、看護師であれば職場での後輩指導にも活かせますし、ありとあらゆる教育活動に使える内容だと思います。これまでの日本の常識からすると目から鱗的な感じで、興味深く学べました。

ただ実際のところ、英語圏で作られた教材を使って英語での勉強になりますので、我々日本人にはストレートには入ってきづらい部分もあります。文化的に理解しがたいシチュエーションも多々ありましたし。世界のトレンドの先を行くAHAが取り入れた手法なので、今後こうした成人教育の方法は、別の形で日本の医療界・教育界に広まっていくような気もします。

いつか、医学界全体の教育制度の改善のためにも、日本の風土も前提に入れた日本版成人教育プログラムのようなものができるといいなと思っています。
posted by めっつぇんばーむ at 18:04 | Comment(8) | TrackBack(0) | AHA-BLSインストラクター
この記事へのコメント
CIC受講してきました。
まず自宅での独習に二日半かかり、前日の夕方までパソコンの前に座っていました。
確かにG2000のインストコースでも成人教育というところとインストラクターの責務については結構時間をとっていたと思いますが、さらにわかりやすく、詳しくしてあると思います。“教えるためのスキル”についてもしっかり実例を挙げながら説明がしてあるし。言語の問題さえなければすごくいいテキストとCDだと思います。
これは今後も繰り返し独習することに価値があるのではないかと思いました。
これまでインストラクターとしての経験は20回くらいありますが(HS-AEDも含めて)経験した後で見るとまた違った発見があると思います。

人にモノを教えるって・・・特に成人の場合は、難しいですよね。
Posted by nori_co at 2007年10月10日 19:03
nori_coさん、コアインストラクターコース、お疲れさまでした。

あの内容自体はAHAオリジナルではなく、他の学術団体が作成した成人教育プログラムに準拠して作られています。その大元の理論の本の翻訳作業がいまはじまりました。私も少しだけお手伝いさせてもらう予定なのですが、それが実現すればきっと医療界全体に影響する画期的なことなんじゃないかなと思っています。医師にしてもナースにしても師弟的なOJT環境がまだまだあたりまえで、特にナースの場合、人間関係の問題でドロップアウトしてしまう人があまりに多いという現状があると思っています。それを社会の厳しさと言い切って反省しない人たちを見るにつけ、なんとか自分の職場でもこうした成人教育の基礎を浸透させたいなと思っています。

あと、もう一点。けっこう長いコースですけど、せっかくだから英語のヒアリングの勉強もかねて、あのCDを熟読(?)するのもいいかなと思っています。ちゃんと字幕もでるしそういう視点でのコア・インストラクターCDもおもしろいかも。
Posted by めっつぇんばーむ at 2007年10月11日 07:49
...そうですね。
わたしは英語が苦手で、今こうやって勉強しているのが不思議なくらいです。でもこのCDは繰り返し見なきゃと思っています。
PAMもインストラクターネットワークも英語ができなくては宝の持ち腐れですから、何とかがんばってみようと思います。
Posted by nori_co at 2007年10月11日 09:53
私も英語は得意ではありません。中学、高校、大学教養課程と平均以上の点数を取れたことはなかったくらい。でも大学後期で必要に迫られて、英語の文献に目を通すようになって、なんとなく慣れてきたというか、要は読めなくても必要な情報が拾えればいいんだと発想の転換ができたのが大きかったと思います。

特に看護の世界では日本国内の日本語情報がほぼすべてで、海外の先行研究なんかは数年遅れで日本語訳がでないかぎり日本ではまったくなきものに等しいというのが現状。

ですから英語文献を毛嫌いしないというだけで、今ならきっと得することが多いはず。そのうち看護師全体のレベルが上がってくるとそうも言ってられなくなるので、英語を勉強して活用するというのは今だからこそがんばり甲斐があることなのかもしれませんよ。
Posted by めっつぇんばーむ at 2007年10月13日 12:25
現在、LA留学中ですが、
コアインストコースを日本で年末に受けられることになりました。留学してても、やはり、専門的なことは理解できるとは言いがたく、今回こういうチャンスをもらえてよかったな〜と思います。
いずれは、LAでもRN取って、日本でもLAでも、BLSインストラクターできればいいな〜と思っています。
また、いろんな情報アップしてください。
Posted by Mai at 2007年10月30日 10:58
Maiさん、遠くロサンゼルスからコメントありがとうございました。

日本ではなかなか開講されないクラスルームスタイルのコアインストラクターコースですが、よく見つけられましたね。本当はとっくに移行期間は終っているのですが、日本ではまだ修了していない現役インストラクターがわんさかといるらしいです。

今後海外での活躍を考えられているならBLSインストラクターコースはなにがなんでもアメリカ本国で受講されることを強くお薦めします。

あまり知られていませんが、アメリカで取ったライセンスの人だけにワールドワイドに活動することが許されているからです。ですから日本でインストラクターになったらアメリカでの活動はできません。英語の壁、なんとしても乗り越えてくださいね。
Posted by めっつぇんばーむ at 2007年10月30日 18:31
今回は、タスクなどでお世話になってたDrから連絡があったのと、ちょうど、年末で、一時帰国している時期と重なったため、受けられることになりました。
そうですか・・・アメリカでインストラクターコース・・・英語の壁は高そうですが、RN取れたら、挑戦したいです。
そのためにも、今は英語を・・・頑張って勉強します!!
ありがとうございました。
Posted by Mai at 2007年10月31日 09:24
明後日、コアインストラクターを受講するんですが、仕事が忙しくて全く勉強できていないんです(>_<)。。。

明日一日で勉強できますかね?本当に不安で。。。

Posted by jake at 2016年03月17日 00:40
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