【ロンドン共同】22日に起きたロンドンの国会議事堂周辺での襲撃事件で、犯人に刺され、倒れて血を流す警官を助けようと、口移しで人工呼吸を試みた英下院議員に称賛の声が上がっている。
外務政務官(中東アフリカ担当)を務める保守党のトビアス・エルウッド下院議員(50)。救急隊員が到着するまでの間、警官に付き添い、自らの顔や手に血が付くのも気にせず、胸に手を当てて人工呼吸を行った。警官は努力のかいなく死亡した。
エルウッド議員は軍出身で、2002年のインドネシア・バリ島での大規模テロで兄弟を亡くしたという。
外務政務官(中東アフリカ担当)を務める保守党のトビアス・エルウッド下院議員(50)。救急隊員が到着するまでの間、警官に付き添い、自らの顔や手に血が付くのも気にせず、胸に手を当てて人工呼吸を行った。警官は努力のかいなく死亡した。
エルウッド議員は軍出身で、2002年のインドネシア・バリ島での大規模テロで兄弟を亡くしたという。
(共同通信)
このニュースを書いた記者が言いたかったことはなんだったのでしょうか?
無我夢中でやったこと、なのかもしれません。
現場での判断と行動。立派だと思います。
しかし、それを報道に乗せる以上、社会的なメッセージとしての意味が生じます。
礼賛される=正しい行動
ではありません。
蘇生に関する国際コンセンサスや各国ガイドラインでも、CPRによって感染したという報告はほとんどなく、危険であるとする根拠はない、と言われています。
しかし、蘇生法の国際コンセンサスは論文ベースで作られているということは忘れてはいけません。
BLSのガイドラインとファーストエイドのガイドラインを見比べてもらえば分かる通り、プレホスピタルでデータが取りにくい部分では、そもそも研究されておらず、良いも悪いも判断するデータそのものがなかったりするのです。
そして、なにより蘇生科学という限られた世界の中では、「口対口人工呼吸が危険とはいえない」という結論になっても、より広範な医療の世界では、ユニバーサル・プレコーションとか、スタンダード・プレコーションが標準です。
医療現場で、医療者が患者に対して口対口人工呼吸を行えば、それはむしろ、不適切な事象、つまり医療事故といえるかもしれません。
賞賛は、ねぎらいの意味で、ご本人の周辺にとどめてほしいなと思います。
以前、大阪だったか、駅で心停止に陥った男性に対して口対口人工呼吸をした若い女性看護師を探しているという報道がありました。傷病者は嘔吐していたにも関わらず、それを顧みずにMouth to mouthをした勇気ある看護師という論調でした。
その後、その看護師が名乗り出たのかどうかはわかりませんが、バイスタンダーの立場だったとは言え、看護師という職業を考えたときに賞賛される行為であったのかどうかという点で、世論とご本人の受け止めは違っていることが容易に想像ができます。
自分の命を顧みずに電車の線路に侵入しての人命救助の報道。助かっても助からなくても礼賛。
かたや芸能人が無人駅のようなところで線路に入って写真を取って書類送検とか。
報道は、世論を形作り、論調を誘導するものです。
だからこそ、今回の報道スタンスが気になりました。