ほんの数年のうちに、広がりを見せて、いまではほぼすべてのITCで認められるようになってきたようです。
ただ、看護師が主体となって開催するACLSプロバイダーコースは、まだ多くはありません。
BLSくらいなら病院での業務終了後に「放課後コース」として気軽に開催できますが、ACLSともなると時間的な面はもとより、機材の準備という点でも、ひとりで細々と開催するにはなかなかタイヘン。
また病院外で個人的にACLSを開催しようと思ったときに、ALSマネキンのレンタルはありますが、本物の除細動器を貸してくれる公式なサービスはありません。(医療機器メーカーへのコネがあれば借りる手はありますが)
そこがネックとなって、個人レベルでのACLS開催はハードルが高いのが現状。
そこで今回オススメするのが、tablet-based monitor simulator ACLSプロバイダーコースです。(なんだかテレビショッピングみたいな振りですが…)
ウン百万円するALSマネキンや除細動器を使わず、BLS機材とiPadを使ってACLSプロバイダーコースが開けるんです。
日本語化されていないためにあまり知られていませんが、iPadのアプリで、「モニター除細動器のシミュレーター」なるものがあるんですね。
他にもあるのかもしれませんが、比較的よく知られたDartSimというアプリがこちら。
タッチパネル上に除細動の充電ボタンやショックボタン、経皮ペーシングや、同期ショックなども再現できるようになっています。充電中は、キュイーンという充電音がでて、きちんと充電完了が確認できます。
心電図波形のコントロールは、別のもう一台のiPadか、iPhoneからリモコンで操作することができますので、使い勝手はレールダルのSim Padみたいな感じです。
血圧や酸素飽和度、終末呼気二酸化炭素濃度なども表示できますので、ROSC後の管理や、PALS、PEARSなどの非心停止対応のシミュレーションにも使えます。
これを使えば心電図波形の再現も除細動もiPad側で完結しますので、マネキンに心電図波形を作り出すジェネレーター機能は必要ありません。
つまり、BLS用のレサシアンや、腕はありませんがリトルアンでもOKということ。
問題となるとは、心電図モニターの電極や除細動のパドルをどうするのか、という点ですが、これはAEDトレーナーのパッドや、電気パーツ店で売ってるワニ口クリップ+コードなんかで代用可能。電気的にiPadと接続する必要はないので、モニターを付けました、という動作だけをしてもらえればいいわけです。
コードの根元部分がブラブラしているのはウソっぽいので、理想的にはプラスチックケースに穴を開けてそこからコードを出しておいて、その上にiPadを乗っけるとかするとそれなりに体裁は保てます。
除細動がパドルではなくパッドだけになってしまうというデメリットもありますが、そもそもAHAではパドルよりパッドを推奨していますし、ACLSプロバイダーコースのデモ・ビデオの中でもパッドショックでやってますので、この点はなんら問題ないかと思います。
こんな方法がありなんだ、と知ると、ACLS開催もちょっとは気軽な感じになると思いませんか?
厳密には、NPAとOPAの実習を考えると、気道管理マネキンも必要ですが、レンタルで借りても8千円ほど。ハートシムがレンタル料5万円ってことを考えればだいぶ割安に開催できます。
最後に、こんなインチキみたいなやり方をAHAが許しているか? という疑問については、2012年7月にAHAから出されたTraining Memoに書かれていますので、関係者の方は確認してみてください。"Use of Tablet-Based Monitor Simulators"というタイトルの文書です。
これを機に、敷居が低く、気軽にACLSプロバイダーコースが開催されるようになるといいなと期待しています。そして熱意のある看護職ACLSインストラクターさんが各地で活躍することを願っています。