2015年02月01日

ACLS受講のついでにBLSプロバイダーカード取得も可能って知ってました?

ACLS受講にBLSヘルスケアプロバイダーコース受講は必要か?

なにをいまさら? な命題ではありますが、最近、Twitterで異論を見かけたので、改めて最新の情報を確認してみました。

少なくとも、ひとつ前のガイドライン2005年版のACLSプロバイダーコースの受講には、AHAのBLSヘルスケアプロバイダーコースの受講や、有効期限内のBLS修了カードの提示は求められていませんでした。

詳しくはブログの過去記事をご参照ください。

「ACLS受講にBLS資格は不要って知ってました?」(2007年12月24日付)
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/81123980.html



これが現行の2010年版になってからは、もう少し踏み込んだ形で「不要」を打ち出しています。

ACLSインストラクターマニュアル2010の22ページをご覧ください。

BLS for Healthcare Provider Course Completion Card

という項目があり、私の手元には英語版しかないために日本語で要約しますが、「AHAはACLSコースをBLSスキルを基礎としてデザインした。もし、BLSヘルスケアプロバイダーカード発行するためには、BLSインストラクターが臨席し、1人〜2人法チェックリストと筆記試験を完了する必要がある」と書かれています。

つまり、ACLSプロバイダーコースの中で、BLS-HCPコースの実技試験と筆記試験を別途行えば、ACLSだけではなくBLSヘルスケアプロバイダーカードも発行できるということです。(この場合、ACLSインストラクターではなく、BLSインストラクター資格をもった人が必要です。逆説的にいうと、BLSインストラクター資格がなくてもACLSインストラクターになれるってこと)


この点は、BLSインストラクターマニュアルにも明記されています。

BLSインストラクターマニュアルG201032ページの「二次救命処置(ACLS)/小児二次救命処置(PALS)コース」という項目に次のように書かれています。

「AHAはBLSスキルを基礎とした二次救命処置コース(ACLSおよびPALS)を考案した。BLSインストラクターは、二次救命処置コースの受講者でBLSヘルスケアプロバイダーのカードを必要としている人の試験を依頼されることがある。BLSの試験は、BLSヘルスケアプロバイダーのスキルテストシートを使用して行うことができる。このような受講者もBLSヘルスケアプロバイダーの筆記試験を受けて84%以上の正答率を得る必要がある」

ACLSやPALSに有効期限内のBLSヘルスケアプロバイダーカードが必須だというのであれば、このような措置はありえない話なわけで、AHA資格制度的に「ACLSやPALSにBLS資格は求められていない」とは断言できます。

さらに言えば、BLS資格に関しても、1日がかりの受講は必須ではなく、要は実技試験と筆記試験に受かればいいということをAHAは示しているわけです。この点は、BLSインストラクターマニュアルに書かれている更新コースの取り扱いについてを見てもらってもわかると思います。



ACLSやPALSは、BLSを基盤として作られたものなので、BLSヘルスケアプロバイダーコースを受講していることが望ましい、という点は否定しません。

そして、ACLSのACLSチックな部分は医学的根拠が薄く、質の高いCPRこそが救命の要という点でも、BLSスキルは欠かせないという事実も否定の余地はありません。

しかし、そのことと、AHA-BLSヘルスケアプロバイダーコースを受講しなければ、ACLSプロバイダーコースに合格しても、それは無理やりの産物というのは言いすぎでしょう。

もともとACLSで求められるBLSスキルと、BLSヘルスケアプロバイダーコースで求められるBLSスキルはイコールではないからです。

その点は、2012年7月20日付で公示された【Training Memo:BLS for Healthcare Providers Course Completion During an ACLS Course】の中でも、明示されています。

The American Heart Association has designed its advanced life support courses with basic life support skills as the foundation and includes limited BLS skills testing as part of ACLS course completion requirements Because of this limited testing that is unique to ACLS, BLS for Healthcare Providers course completion requirements cannot be incorporated with in the ACLS Provider or ACLS Update Course.

ACLSやPALSで求められるのは、BLSヘルスケアプロバイダーコースの限定的な一部です。

そこをクリアすれば、ACLSプロバイダーカードが発行されるというのは、ゴールオリエンテッドなAHAの教材設計からすれば至極当然の話です。

ACLSで求められるBLSスキルは成人の一人法CPRだけです。ハートセイバーCPR AEDコースの実技試験とほとんど変わりません。

その技術を教えるのに4時間も使う必要はありません。私の経験上、まっさらな素人であっても15分〜30分もあれば十分です。

ということで、私はACLS受講にHCPを要件にしていませんし、忙しい医療従事者の現状を考えたら、最初から成人の蘇生だけを考えている人には、HCP受講なしにACLS1日コースを受講してもらうというのがもっとも理想的だと考えています。そして、実際、私はこの4年ほどずっとそうしてきました。

公募講習としてやるならいざ知らず、病院の中で医師・看護師全員に二次救命処置を習得させようとして、BLSで1日、ACLSで2日、計3日もかけるなんてあまりに非現実的。

私の勤務していた病院の場合は、BLSもACLSも開催するのは私でしたから、限られた私の時間で一人のACLSプロバイダーを育てるのに3日も割くなんてありえない話。

だからこそ世間ではICLSが優勢なわけですが、AHA正規講習も実はACLS1日コースの中にすべて内包することが可能だという点はあまり知られていません。

いままでAHA講習は地域の○○トレーニングサイトに行って受講するというのが常識でしたが、病院の中にトレーニングサイトを置くことの意義が叫ばれるようになってきました。

ぜひ、その上では、ACLSプロバイダーになるために、BLSヘルスケアプロバイダー「資格」は必要でない点、またさらにはACLSプロバイダーコース受講時にBLS-HCPカードを取得することも可能である点、さらにはACLSは2日かけずに1日で修了可能である点は、もっと広く知られてもいいのではないかと思います。




posted by めっつぇんばーむ at 21:50 | Comment(2) | TrackBack(0) | ACLS(二次救命処置)
この記事へのコメント
これからBLSとACLS取得を目指す医療従事者です。
両資格をとるのに休日の3日間を要するのでなかなか予定が合いません。
めっつぇんばーむ様がおっしゃるとおりに1日または2日の受講でBLSとACLSの2つを取得する方法は具体的にはどうすればよいのでしょうか?
Posted by aaa at 2015年06月27日 18:17
aaaさま、現実的にはビジネス的にAHA講習を展開しているところでは上記の対応をしてくれる可能性は低いと思います。院内にAHAインストラクターがいて、権限を持っていればやってくれるかもしれませんが。。。スミマセン、インストラクターを刺激するための情報で、一般ユーザー向けではなかったかもしれません。
Posted by めっつぇんばーむ at 2015年06月30日 05:50
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