おそらく日本で唯一といっていいくらいのデファクト・スタンダードな医療者向けBLS講習です。
日本救急医学会のBLSコースなんてものも最近できましたけど、開催しているところは事実上ゼロに近い状態ですから、医療者が本格的にBLSを学ぼうと思ったらAHAのBLSに頼っているのが日本の医療界の現状です。
そんなAHA-BLSだからこそ、病院内で医師・看護師の標準教育に使えばいいと思いがちですが、全国を見回しても、そんなことしている病院はほとんどありません。
不思議に思うかもしれませんが、それが現実。
つまり、日本の病院ではAHA-BLSは馴染まないのです。
なぜか?
理由はいろいろあります。
1.講習時間が長い
2.乳児の蘇生までは要らないんだけど、、、
3.受講料が高い
まずは、なんといっても 時間 でしょうね。
病院内の研修って、たいていは業務終了後の18時くらいかですよね。
そこからヘルスケアプロバイダーコースが始まると考えたらどうですか?
私は受講生一人に1体のマネキンを使ってますから、4時間程度で終わりますけど、それでも終了は22時。
医師・看護師が全員受ける研修としては無理ですよね。(私は希望者向けにこの時間枠でやってましたが)
かと言って休みの日に出てきてやってもらうというのも非現時的だし。
この点で、BLS-HCPコースは決定的にダメなんです。
病院としては、「一般的なBLSは習得していてほしいけど、赤ちゃんの蘇生まではいらない。それは小児科だけでいいよ」と思うかもしれません。しかし「コース」であるAHA-BLS-HCPからは、乳児や小児のパートは省略はできません。これも日本の病院側からすると融通の効かなさなんですよね。
あとは受講料の問題。
今でこそ、値段に幅がありますが、いちおう日本標準価格で言ったら1万8千円ですよね。
この費用を誰が出すの? という話。
院内研修として標準化するなら、職員が受講に要する4〜6時間分の賃金を出しつつ、受講料の1万8千円を負担しなくちゃいけないってことになります。
経営者がそこまでやるには相当のメリットがないとやりませんよね。
つまり、ふつうにやったら病院内の標準教育プログラムとしてAHAコースを採用するというのは、どう考えてもありえない話なんです。
自分の勤務先病院でAHA講習をやりたいと考えている方は、まずこのへんの現実をわきまえておくのが第一歩。
この障害に打ち勝つだけのメリットを打ち出さなければ、院内開催は難しいということです。