AHA講習といえば、病院と親和性が高いと思いがちですが、実際はなかなか難しいんですよね。
私が関わったケースで、うまく病院内トレーニングサイト立ち上げにこぎつけて軌道に乗っているケースは次の2つです。
・病院が患者安全教育としてAHA ECCプログラムを組織的に採択した
・救急センター師長が発起人となり救急部長を巻き込んで院内サイトを立ち上げた
比較的トップダウンに近い感じで、完全なボトムアップ型というのはあまり聞かないのが現状です。
米国と違って、HCPカードやACLSプロバイダーカードがなくても就労できる現状があり、救命スキルの習得義務も技術証明も求められていない日本にAHA講習はそぐわない、と言われればまさにその通り。
医療者が確かな救命スキルを維持するべきというのは道義的に正しいのですが、それは法律や日本の医療制度が必ずしも求めていないという現実を理解する必要があります。
それでは、ボトムアップ式にAHA ECCプログラム開催にこぎつけるにはどうしたらいいでしょうか。
病院の安全対策部門の責任者や、発言力が大きい診療部の部長クラスの医師を巻き込んで、病院としての取り組みにAHA講習を組み入れるのがもっとも理想的かもしれません。
そうした大きな動きを起こすためには、どのようなアプローチをしたらいいか?
仲間は多いほうがいいでしょうね。
安全対策関係の委員会委員に根回しをしておくことも重要です。
また自分が所属する部署の師長は絶対に仲間にしておかないとダメです。
救急認定看護師も外せませんし、救急科があるなら、その部長も。麻酔科、ICU、循環器なんかも。
大病院ならたいていあるクラブ・同好会活動制度を利用するというのも手です。救急サークルみたいのを立ち上げて、個人からの発信ではなく、団体からの発信という図式にするとか。
そうやって有志が集まったら、まずはその活動や考えをPRする機会を作ります。
手堅いのが、AHAのファミリー&フレンズCPRコースDVDを使ったミニCPR講習がお勧め。
1時間程度で無料でできて、AHAコースの特色のPRにも使えます。
もともと職員向けBLS講習をやっているような病院だったら、きっとそこでも抵抗勢力が出てきますので、職員とその家族向け、親子で学ぼうとか、そういう切り口なんかもお勧めです。さらには外来に張り紙でもして、地域住民に参加を呼びかけるというのもいいでしょうね。
これって、病院が使命として掲げている地域貢献の絶好のPRになりますから、病院事務部なんかは歓迎してくれるんじゃないでしょうか?
このように個人の発想を、まずはチーム力に変えて、それを病院を動かすムーブメントに持っていく。
トップダウンの決定がない以上、このような地道な活動で下積みをすることが肝要と思います。
結局、一気に高みを目指すから、構想だけで立ち消えに終わってしまうのです。
熱意があるなら、まずは動きましょう。ここまで言っても何も行動しない人は、きっと最初からやる気がないのです。