世間一般では、AHAインストラクターになるということは、サイト単位の共同作業で講習開催する一要員になる、という意味でしかないかもしれませんが、自分ひとりで講習開催できるスキルがない以上、それはいつまでたっても半人前。
私はそう考えていますので、最初から、ひとりで講習開催できることにフォーカスした支援を行っています。
逆に言うと、自分で講習開催する意志がない人は、インストラクターコースに受け入れません。
つまり、下記のような条件を満たしていることを求めています。
1.受講者を集めることができること
2.会場確保ができること
3.(将来的に)講習機材を確保できる目処があること
4.兼業制限がないこと、もしくはクリアできること
病院勤務の看護師で、自分の勤務している病院内で職員向けにAHA講習を開催したいという場合でしたら、上記の1と2のハードルは低くなります。病院でBLSマネキンなどを所有していれば理想ですね。(もっとも乳児マネキンはないことが多いですが)
しかし意外とハードルが高いのが4番目。これがキモと言えます。
公立病院の看護師は公務員。基本的に兼業禁止ですし、その他の一般病院でも兼業禁止という就業規則がある場合がほとんど。
この部分をどうクリアするかが最大の焦点です。
さらにいうと、AHA講習はプロのためのプロの講習ですから、インストラクターには対価が支払われるべきですし、カード発行手数料やマネキン肺の消耗品など、どうしても費用が発生します。
つまり、AHA講習開催には金銭授受が発生します。
そのことを含めて、病院の中で会議室を貸してくれるのか、また病院内で堂々と受講者を募ることができるのか、という点が問題となります。
病院の施設、機材を使って商売をすることは許されない、と言われてしまうケースをよく聞きます。
つまり、上記4に関連して、AHA講習の位置づけと院内インストラクターの位置づけをクリアにしておかないと、話が最初から進んでいかないのです。
法律で兼業が制限される公務員であっても、現実、AHAインストラクターとして堂々と講師料を受け取っている人もいますので、決して無理な話ではありません。詳しくはまた別項で書きたいと思います。
他にも病院内には様々な抵抗勢力があります。
・AHA講習を看護師個人が開催するなんてありえない、という誤解
・後輩のくせに生意気よ、的なやっかみ
・認定看護師でもないに、私をさしおいて調子に乗ってるわね、的意見
・院内開催は好ましいけど、受講料とか地域との格差が生まれるのはマズイ
・BLS? 院内研修をやってるから十分でしょ
・AHAがなんだか知らないけど、ヘンなものを持ち込まないでちょうだい
・あなたひとりで何ができるの?
・受講した人としない人で差がつくのは良くない
こう考えていくと、個人の熱意だけでは潰されるのは目に見えています。
大事なことはインストラクターとしての経験や権限ではなく、それ以前に病院組織に対する交渉だったり、根回しだったり、将来的なビジョンをどう打ち立てるか、という、営業能力・プレゼン能力です。
そしてそれは、一朝一夕のものではなく、普段から病院組織に貢献しているかどうかという点も大きく関わってきます。
例えば院内でBLS研修が行われている場合、その指導担当でもない人がいきなりAHA講習をやります、といっても理解されないのは、当然ですよね。
そういう下積み、基盤を作ってあってこその話です。
また看護部は決断力がありませんから、診療部へ話をつけておくことも大切。
特にキーパーソンとなる診療部の部長クラスの医師を仲間にしておくことは肝要です。
病院で機材もあるから、ぜひ院内で! と簡単に考える人は多いですが、実際のところ、自分の勤務先病院内で講習開催出来ているケースが少ないのは、インストラクターの権限の問題だけではなく、病院組織の内部問題であることが多いのです。
戦略的に自分の病院内での立ち位置を見て、院内AHA講習開催を目指すなら、まずは病院内で今できることを始めてください。
過去ログ参照 → インストラクター活動を職場に公認してもらう方法
すでにインストラクター資格をお持ちで、院内開催を目指してる方は、いくら外部のトレーニングセンターでがんばっていても、同時に自分の足元を固めないと、残念ながらそれは方向違い、ではないでしょうか。