勇気づけられる良いニュース、こういうことが増えていくといいなと思った次第ですが、その反面、ちょっと複雑な思いもありました。
そもそも、これは表彰されるような出来事だったのかな? という点です。
駅員が駅構内で業務時間内に行った救命処置。
駅にAEDが配備されている以上、その職員は業務として救命の訓練を受けており、その職務範囲にも救助は含まれているという状況です。
つまり想定された状況下で、ごく当たり前に業務を遂行しただけ、とも言えます。
通りすがりの人が善意で救助をしたというのとは少しニュアンスが違います。
例えるなら、「病院勤務の看護師が入院患者の突然の心停止に対してAEDを使って救命に成功、消防から表彰された」というのに近い話かなと思うのです。
確かに駅員さんは医療従事者ではありません。しかし、心肺蘇生法は医療行為ではありません。特殊技能でもなく地球市民としての常識レベルの話。
看護師の例が分かりにくければ、例えば、老健施設で業務中に介護士がAEDで救命を行った場合、表彰されるような行為なのか? と考えてみてもいいかもしれません。
ここで焦点にしたいのは、表彰を決定した 消防側の意識 です。
駅員が業務として行う蘇生行為と、通りすがりの市民が善意で行う蘇生をまったく区別していないんだなって思ってしまうわけです。
そして、それを報道するマスコミもこのあたりを疑問に思わないんだなって。
今回の駅員さんたちの素晴らしい連携と行動に難癖をつけるつもりはありません。
救命をめぐる世論の認識に関して、ひっかかりを感じるなという指摘でした。
とある救命士です。
先日うちの管内でも不特定多数が出入りする場所でAEDが使われ社会復帰した事案がありました。
この事案については、その会社が月に一回自主的に訓練していたことを含めて、会社を表彰しました。個人ではありません。
助からなかったら表彰しないという事実も含めて、表彰制度は検討課題だと思います。
救命にトライした勇気は賞賛されるべきですが、表彰はむずかしい問題ですよね。「誰が何に対して」表彰するのでしょう。
業務中に業務をすることは当然です。私たちから見れば、いまや駅員とてCPR+AEDはできて当然だし、やらない方がおかしいです。消防の意図がよく分かりません。
社内表彰は身内同士の表彰になる反面、他の社員に蘇生の気運が高まるという考え方もあります。大人のいやらしい話になりますが、社内表彰なら勤務成績にも影響があるでしょうし、リスクに見合った評価をしなければ、蘇生率は上がらないかもしれません。
ただ、個人的には身内同士の表彰は賛成しません。
私は、署長から救急業務に関して精勤表彰されましたが、はっきりと辞退しました。医師や看護師と同じで、救急救命士も救急救命が仕事です。
いずれにせよ、「誰が何に対して」表彰するのかが不明確です。