PALSは総合芸術的な感じで、非常におもしろく、満足度の高いプログラムなのですが、残念だなと思うのが、BLSとの整合性。
特に傷病者評価、つまりアセスメントの入口がちょっと違うんですよね。
PALSは非心停止対応コースと思われがちですが、ACLSと同じ心停止対応ケースが含まれます。
VF/無脈性VT、PEA/心静止に加えて、徐脈、頻脈。
つまりACLSの要素がそのまま入ってます。
特に心停止ケースでは、最初から心停止とわかる映像が提示されて、シミュレーションが始まるのですが、そこで問題となるのが、PALSの体系的アプローチ法は、まずは、ぱっと見の第一印象だということ。
「大丈夫ですか?」(=反応確認、つまり神経学的評価)の一声じゃないんですね。
・見た目による意識状態
・呼吸
・皮膚色
この3つを傷病者に触れる前に評価をして、そこでBLS適応か、一次評価を進めていくかを判断するのですが、手を触れずにぱっと見ただけで、BLS適応と判断できて、普通のBLS手順に立ち返ればいいのですが、微妙な場合は、一次評価のABCDEアプローチの流れに入ってしまいます。
となると、気道、呼吸、循環、神経学的評価、体表面評価、という流れになっていき、心停止の判断が遅れがち。
まあ、現実問題、コースでの練習みたいに時間をかけるものではないし、わかるでしょ? 的な部分もあるんですけど、なんだかコースの中では引っかかるんですよね。
そもそも「第一印象」による評価というのは、傷病者に近づきつつの数秒間で評価するものだから、いいといえばいいんです。その先、そこでABCDEアプローチを使うか、BLSの評価アプローチでいくかを判断しろって部分がトリッキー。
こんなふうに、枝分かれするんじゃなくて、リニアな直線の流れの方がいいのになと思ってしまうんです。
私はファーストエイド講習の中では、基本、誰もが知っているBLSの評価アプローチからはじめます。
反応と呼吸の評価をもって、まずは心停止か否かを判定。心停止の可能性を除外できたところで、ファーストエイド的なABCDEアプローチに入っていくという流れ。
こうすると、BLSとの整合性がばっちり。
ファーストエイドは難しいという人には、心停止を除外できれば、あとは慌てることないじゃん、救急車を待てばいいんだからさ、と言い切れる。つまり、ファーストエイド講習といいつつも、最低限必要なBLSレベルを落としどころにすることもできる。
まずはBLSから始まって、心停止を除外したら、非心停止アプローチに切り替える、みたいな発想の方が、自然な気がしちゃうんですよね。
PALSのアプローチはそもそも非心停止を前提としている、そこに心停止ケースを当てはめることで、ちょっと無理が出ていないかなと思うのですが、PALSインストラクターとして先輩の皆様方、いかがでしょうか?