TwitterやFacebookの上でも話題持ちきりです。
この報道、一般市民向けには、「胸を押すだけで助かる! だからためらわず押して!」という強力なメッセージとしては大歓迎です。
でも、医療従事者は、それだけで済ましてほしくない。
もしこの報道を見て、「じゃ、人工呼吸はもうしなくていいんだ。むしろ、しない方がいいんだ」と早合点するナースがいたら、ちょっとイタイです。
私自身は、この報道のソースになった論文は読んでいませんので、あまり偉そなことは言えませんが、この報道内容だけでも、ちゃんと調査結果の前提条件が読み取れます。
報道内容をよく読んでみてください。1376例というのは「誰かの前で倒れて心肺蘇生が行われ」たケースなのです。
つまり、この業界でありがちな表現をすると「目撃された心停止」に限った話ですよ、という点。
医療従事者はこの部分に着目すべきです。
目の前での卒倒というと、そのほとんどが心室細動が原因です。その倒れ方だけで、いわゆるVFだとわかっちゃうくらい。この場合、血流が止まると脳に血液(酸素)がいかなくなって、10秒程度で意識を失って卒倒します。つまり倒れた直後には血液中に酸素がたくさん溶け込んでいますから、人工呼吸はそれほど急ぐ必要はありません。
この条件下では、人工呼吸はさほど重要ではなくて、ただただ胸を押し続けて、血流を途絶えさせない方が効果的、という仕組み。
このことを全部の心停止事例に置き換えてしまうのは危険です。一般市民の方は、別にいいんですが、医療者がそう思ってしまうのは罪。
もし、これが、原因がわからないすべての心停止事例でデータを取ったら全然違うものになるはずです。
特に病院での心停止の8割は、予兆がある心停止ということで、呼吸不全とかショックが心停止の原因じゃないかと示唆されているわけですから。(ACLSプロバイダーマニュアルG2005, p.17とか)
もちろん、なにもしないよりは胸骨圧迫だけでもした方がよいのは間違いありません。しかし、対応義務のある救助者、特に医学的知識があって、その傷病者の心停止原因にフォーカスして最適化された蘇生を行うべき立場にある看護師が、人工呼吸は不要と割りきってしまうのは非常に危険です。
無脈性電気活動(PEA)で救い得る可能性が高い二大原因のひとつは低酸素。この場合、蘇生の決め手は酸素投与と人工呼吸です。もちろん電気ショック(除細動)は不要。
ということで、医療従事者はこの手の報道に踊らされないで、ちゃんと裏を読みましょう、あくまでも一般市民向け報道なんですから、というお話でした。
心臓マッサ−ジだけに集中で高救命率
(NHKニュース12月31日 4時19分)
突然心臓が止まった人に行う心肺蘇生について、人工呼吸と心臓マッサージを併用するよりも、心臓マッサージだけを行うほうが、救命率が高くなるという分析結果を、日本循環器学会がまとめました。
専門家が作った心肺蘇生のガイドラインでは、胸の真ん中を強く押して、血液の循環を維持する「心臓マッサージ」のほか、可能であれば、口から空気を吹き込む「人工呼吸」を行うことが求められています。
しかし、人工呼吸をしている間は心臓マッサージができず、血液の循環が止まることから、日本循環器学会は効果を検証するため、平成21年までの5年間に、誰かの前で倒れて心肺蘇生が行われ、さらに電気ショックで心臓の動きを元に戻すAEDが使われたケース、1376例について詳しく分析しました。
その結果、心肺蘇生で人工呼吸と心臓マッサージが併用されたケースは63%あり、心臓マッサージだけが行われたケースは37%でした。
しかし、1か月後に社会復帰できた人の割合は、人工呼吸と心臓マッサージが併用されたケースは33%だったのに対し、心臓マッサージだけが行われたケースは41%で、心臓マッサージだけのほうが救命率が高いことが分かりました。
これについて、分析を行った京都大学健康科学センターの石見拓講師は、「人工呼吸を行わない、心臓マッサージだけの心肺蘇生とAEDの電気ショックという組み合わせが、最も心停止になった人を救える可能性が高い。心臓マッサージとAEDを使った措置を行う人が増えれば、救命率はもっと上がると思う」と話しています。
記事拝見させていただきました。
私は、近々ファーストエイドの学生wsを行おうと思っています。
オススメの教材がありましたらいくつか教えてほしいです。よろしくお願いいたします。
救急車搬入なのに、PAO2が20しかなくて、
かっこよくとったCPA患者のAラインをv疑いされましたからね・・・・
心拍再開後に波形でそれがaなのは証明されたけど。
間違いなく低酸素脳症。
初療室で接する人たちにはしっかりと伝えていますけど、、、新しい人(医療従事者)達には伝わりにくいです。