インストラクターとして、日々受講者と対峙する私たちは、こういった疑問や批判の矢面に立つ機会に直面するかもしれません。
自分なりに、どのような答えを用意しておくか考えておくことも大切です。
ということで、いくつか抜粋してご紹介します。(引用元はこちら)
一次救急のスキルを身につけたい全ての方にお勧めできる本書ではなるが、他の方も指摘しているように本書の内容や厚さ、また社会的な意義(一次救急は広く一般市民に普及させるべき物)という観点からは、価格的にどうなのかと思うところがある。実際にBLSヘルケアプロバイダー受講料と本書、CPRマスクをセットで購入すると2万円を超える価格になる。このような高価な物を一般の市民救助者になろうという善意の心のある方に、金銭的な負担を課すのは如何なものか、と思うのは私だけではないと思う。これは国策としても考えるべき物だと思う。("もえちゃん"さん、医学部学生)
期待して購入したら透明パッケージ入りの薄っぺらい冊子が到着。これで3500円とはいい商売です。
中身が確認できないから買ってみるまで分からない、なおかつ、講習の参加者は事前学習を求められるという、強迫観念のもと、買わざるを得ない、開封せざるを得ない状況。
病院などの勤め先で参加を指示されて、講習料含めて経費を請求できる人ならいざ知らず、15000円以上の講習会の講習料を支払って参加するのに。「救命措置を身に付けたい!」と望んできた人から、金銭かすめ取るなんてこの本を購入する人はホントにかわいそう。
BLS(一次救命措置)は社会に還元すべき医学知識であり、受講者マニュアルは参加費に含めて事前に配布またはPDFで全世界に公開すべきです。("μ±£´ "μ±£´"さん)
皆さんだったら、もし講習会場でこんなダイレクトな意見を頂戴することがあったら、どのように答えますか?
値段が高い、というのは私も正直感じます。
でも医学書として考えたら、そんな目くじら立てるほどの感じはしません。
そう、つまりこのお二人の意見は一般書という視点で書かれているのがポイント。
よく読むと「一般の市民救助者になろうという善意の心のある方に」とか「『救命措置を身に付けたい!』と望んできた人から」という表現があるとおり、市民にとっては高いと主張されているわけです。
ここがそもそもの誤解。
BLSヘルスケアプロバイダー講習は善意でCPRを行うような一般市民向けコースではないという点。ここはインストラクターとして明確に伝えるべき点です。
米国の医療従事者は、このライセンスがないと医療機関で働けません。そのための職業ライセンス。そしてBLSヘルスケアプロバイダーコースは職業トレーニング。企業セミナーでそこそこの受講料がかかるのと同じです。消防や赤十字の市民普及コースとはまったく別次元の話なのです。
高い安いの価値判断は主観的なものですから、そこには踏み込みませんが、BLSヘルスケアプロバイダーコースの位置づけを勘違いされている方には、それを明確に伝えるのは私たちコース提供者の努めでしょう。背景を知らないと正しい価値判断もできません。
もう一度いいます。BLSヘルスケアプロバイダーコースは市民向けにCPRを広めるために作られたコースではありません。
市民向け普及というのであれば、ファミリー&フレンズCPRコース。これこそが日本の消防や赤十字の講習に相当するものです。
幸い、今回から公式日本語化されたので、今後はAHA講習は「ぼったくりだ!」的な意見は減るものと期待できます。
そのためにもインストラクターは、このファミリー&フレンズCPRをもっともっと宣伝していく必要があるでしょうね。
それとやっぱり、インストラクターなら、自分が教えられるAHA-BLSコースの種類と受講対象は把握しておかないとマズイと思いますよ。BLSヘルスケアプロバイダーコースとハートセイバーCPR AEDコース、そしてファミリー&フレンズCPR。この3種類のBLSコースの違い、ちゃんと把握していますか? 正規受講しろとは言いませんが、せめてテキストは読んでDVDを見て内容は把握しておくべきでしょう。
おまけ:医療者向けっていうのはなんにしても高いです。例えば免許の発行手数料。医師免許は6万円です。運転免許みたいな数千円レベルではないのです。事務手続き自体はそんなに変わらない気もしますが、まあ、現実そうなっています。そのあたりを考えてもらっても、BLSヘルスケアプロバイダーコースにかかる費用は納得しやすいんじゃないでしょうか? ちなみに看護師免許申請費用は9千円。薬剤師は3万円。