2012年04月05日

新人研修医向け急変コース- 気づき〜BLS〜ACLS

先日、かねてから頼まれていた新人研修医向けの急変対応研修企画が無事終了しました。

持ち時間は3時間。新入職研修医は12名、最初の1時間は全員でBLSを終わらせて、後の2時間は二部屋にわかれてACLSと非心停止の対応と急変の「気づき」を交代で、という3部構成。

気づき(安定化) → BLS → ACLS

今回初めてこんな編成にしてみましたが、これが非常に良かったです。

やっぱ、非心停止の対応と心停止以前の「気づき」がポイント。ここまでやって初めて急変対応の全体像が見えてきます。

BLS〜ACLSの限界を最初から知っておくというのは大事。BLS/ACLSは最後の切り札ではあるけど、あくまでツールのひとつに過ぎません。

急変の気づきと非心停止の対応、そして心停止になってしまったときのBLS、ACLS。

この3つをまとめて有機的に学ぶのって大事だなと、やってみてつくづく実感。

どうしてもダイジェストにはなってしまいますが、今後学んでいく方向性を示す上で新人研修医の最初に触れる急変対応研修としては良かったんじゃないかと思います。

せっかくなので、それぞれの内容をざっと紹介しておきます。なにかの参考になりましたら。


1.BLS

これは基礎中の基礎なので、最初に全員で。12名に対してマネキンは6体。胸骨圧迫の練習部分はAHAファミリー&フレンズCPRのDVDを使って1分間のHands only CPRとして手技の練習。

その後、一人法CPRの流れはヘルスケアプロバイダーコースのやり方を採用。つまり、反応と呼吸を同時に確認してから通報、脈を確認して胸骨圧迫開始、という流れ。ただしこの段階では人工呼吸は行わず、胸骨圧迫のみを続けるという流れ。

だって、病院内でポケットマスクを携帯してもらっているわけではないので、発見段階で人工呼吸は不可能。口対口はありえませんし。

ここまでを数回練習してもらって、その後、バッグマスクの使い方練習。

最後にPut it all togetherということで、第二救助者がAEDとバッグマスクをもって到着した設定で、一人法〜二人法CPRの通し練習。

この通し練習では3人一組にして、一人はオブザーバー役。チェックリストを渡して第一救助者、第二救助者役の手技を観察、チェック。その後、3人でチェックリストをもとに手技を振り返るという受講者主体のデブリーフィング形式にしてみました。

基本、BLSの素養はある医学生上がりの研修医ですから、活発に意見交換ならびに改善策が出てとっても有効。少ないインストラクターでも無理なく進められました。


2.非心停止の対応と急変の「気づき」、アセスメント

これは参加者を半分にわけて6名で進行。

まずはマネキンではなく、研修医同士で救助者役と傷病者役に別れてもらい、生体でBLSの手順を再確認。

ここでは「反応なし、呼吸あり」という設定だけど、救助者役にはナイショ。

「胸の動きをみて呼吸確認」、さっきのマネキン練習でちゃんとやっていたかどうかが露呈する場面です(笑)

ここで呼吸があった場合、どうしたらいいのか? たいてい皆さん、困った顔をしてインストラクターを見つめてきます。

ここは考えてもらう場面。

ちょっと知った人は、回復体位にしようとするのですが、すんなりとできる人はそうそういません。

日本の古典的な救急法では、ここで「回復体位」がいちおう正解ではあるんですが、ホントにその必要性があるのか? 回復体位のリスクは? そんなことを考えてもらいました。

結論からいうと「回復体位」って、適応場面はほとんどないです。街中であってもそうですし、ましてや病院内なら。

って、ことで必要な技術として、「頭部後屈あご先挙上」と「下顎挙上」を研修医同士の体を使って練習。


こんなBLS/ACLSの限界を認識するところから始まって、後半は急変アセスメントの講義。これはPALS/PEARSプロバイダーコースでおなじみのACDAサイクルと、パッと見の迅速評価、ABCDEの一次評価、SAMPLE聴取と全身観察の二次評価の流れを説明しました。

ACDAサイクル

アセスメントの手順

分類

演習としてはAHA-PEARSプロバイダーコースDVDの症例を見てもらって、みんなで迅速評価と一次評価を体験。

これがなかなか面白かったです。

カテゴライズということで心停止にいたりかねない呼吸と循環のトラブルはかなり体系化されて整理されています。

だから、問題が循環か呼吸かをざくっと判断して、分類さえできれば、安定化の方法は決まっている。

もちろんすべてがそこに当てはまるわけではありませんが、ある程度パスウェイが出来ているという安心感。

そこを出発点にすれば、少なくとも手も足も出ないという状態は避けられる。それが米国の医学系教育のすごいところだと思います。

日本だと職人芸的に経験を踏まなければ身につけられないとされているコツを合理的に体得できるように工夫しているところ、さすがです。

研修医ですから、きっと医学部で診断学とでもいうでしょうか? 診察・アセスメントは訓練を受けていると思いますが、それでも映像を使ってアセスメントの模擬体験をするというのは新鮮だったみたいです。


3.ACLS

このパートはACLSインストラクターの救急部長に丸投げでお願いしちゃったので、どんな風にやってたのかはわかりません。おそらく、除細動器の使い方から始めて、VFの対応、その後心静止・PEAを体験しながら学んでもらったのだと思うのですが、、、、



ということで、今年度、それなりに工夫してやってみた研修医向け急変対応プログラムの概要をかいつまんでご紹介しました。

ガイドライン2010のこの時代、皆さんの施設ではどんな工夫をしているでしょうか?

ほんとはこんな感じで新人看護師向けの急変研修も組み立てたいのですが、いかんせん人数が70名と多くて、ファシリテーターの数がぜんぜん追いつかず。それとACLSのパートなど、ナース向けには1時間でざっと動けるようになるまでの訓練は無理、、、 ということで今度5月にあるナース向けプログラムでは頭を悩ましているところです。




posted by めっつぇんばーむ at 23:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | AHA-BLSインストラクター
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