おかげさまで全員がG2010-BLSヘルスケアプロバイダーコースに合格。いつも選手と一緒にいる人たちが、医療者レベルでの救命スキルを身につけているというのは、とても頼もしいことです。
これまでも、プロサッカーチームのメディカルスタッフや、プロレーシングチームのトレーナーさんなどにもBLSを指導してきましたが、個人で申し込んできたそれらと今回大きく違うのはチームを挙げてスタッフ全員が同じ知識・スキルを身につけたという点。
G2010でも強調されているようにBLSは個人プレイからチームプレイへ思考が移り変わってきています。
チームワークも含めて緊急対応技術をトレーニングできるのは、職場でのon the job研修ならではのこと。
この仲間がいれば助けられる! そんな手ごたえを感じてもらえたんじゃないかと思います。
考えてみれば、公募講習の場合、いくら個人が高いスキルを身につけても、職場に戻ったときは一人ぼっち。そこで講習会場で体感したような即席でも手ごたえのあるチームワークが発揮されるかというと、かなりあやしいものがあるでしょう。
今回は、急変が起こりうる現場がみんなの共通認識として非常に具体的でした。球場のマウンドであり、トレーニングルームであり、練習グランドなど、また遠征先のスタジアム。
そこにどんなメンバーがいて、どこにAEDがあるのか?
具体的にどういう役割分担をして、どう行動すればいいか? そんなことを休憩時間にディスカッションし、具体的なイメージを膨らませていたのが印象的でした。
だからこそ、私も具体的なアドバイスができ、選手の服は前開きではなく、中にもアンダーシャツを着ていて生地は厚いという話であれば、ハサミは明日からでもすぐにAEDに入れてください、という話になりますし、外国人選手の胸毛の話になれば、やはりカミソリも必要でしょう、とはっきりいえる。そしてすぐに改善できる。
いつもだと抽象的な理想論的な話になりがちな部分が、今回は非常に具体的でリアルな提言となりました。
またこれは受講者さんたちが自らで気づいた点ですが、ポケットマスクをAEDと一緒に入れておいても人工呼吸ができるのは一人に限定される。だったらやはりバッグマスクを買うべきではないか? とか、胸骨圧迫はまわりにいる選手にやってもらった方がいいんじゃないか? その場で即興で指導するにはどうしたらいいか? など。
指導している私も、非常に手ごたえのある充実した講習を展開できたと感じています。
今度は実際にマウンドでシミュレーションをしたいとか、選手に胸骨圧迫を教える場を設定したいとか、1回きりの講習では終わらない今後につながる提案もありました。
このようにインストラクターが、単なるインストラクターではなく、ある意味危機管理アドバイザーとして機能できるというのも公募講習ではないon the jobトレーニングのいいところです。
指導に当たった側の勝手な自負ですが、今後、このチームが関わる試合で心停止者が出てもどうにか彼らが対応してくれるはず、と感じていますし、それがずっと長続きするように引き続き支援をしていけたらとも思っています。
今回の受講者さんたちがいざCPRをする場面に直面した場合、それが全国にTV中継される可能性は否定できません。そのときにポケットマスクなりバッグマスクを使って、ヘルスケアプロバイダーとしての蘇生を展開し、それが映像として全国に流れたときには、きっと社会的に大きなインパクトになるはず。(もちろん、そんな事態はないに越したことはないのですが)
BLSインストラクターとして、強く社会的側面を感じた貴重な体験でした。