2011年12月30日

除細動の遅れが法的問題になる時代になった

法律事務所のウェブに興味深い記事がありました。

院内での心室細動に対する早期除細動
(原総合法律事務所ウェブ)

「入院中,心室細動を起こした患者に対する除細動が遅れたことを争った事件の訴状の抜粋」ということですが、、、

午前6時30分ころ,被告病院内のトイレで倒れているところを発見され,看護師が午前6時34分に心室細動を確認しながら,午前6時43分になって,ようやく除細動が行われている。

これが遅すぎる! というのが訴えの骨子。

ご存知のようにAHAガイドライン2005の時点で、院内では心室細動の認識から3分以内に除細動を行なえるべき、という勧告がされて、日本国内でも広くそのことは知られています。

病院側の主張としては、心臓だけでなく呼吸も停止していたので(あたりまえです!)、バッグマスク換気が必要で、その換気のために除細動器の準備が遅れた。除細動器は準備出来次第使えばいいので、今回は過失はない、とのこと。


まあ、いろいろ突っ込みどころはある内容ですが、私たち医療者は明日は自分の身として真剣に考えたほうがよさそうです。

日ごろ、早期除細動の大切さとか、質の高いCPR(強く速く、しっかり戻す、絶え間なく、過換気を避ける)とは言ってますが、それをどれだけ実践しているか? 中断は相当ありますよね? 除細動器もすぐに使える場所にはなかったり、、、

そのほか、自分たちとしては最大努力をしたつもりでも、客観的に評価されたらダメダメなことも往々にしてあるんじゃないでしょうか?

例えば心静止に除細動をかけるとか、、、今でもたまに聞きますよね。

心静止だったら、もともと助かる可能性は低いとは思いますが、そこでアルゴリズム的には推奨されていない除細動をしていたという事実が取りざたされた場合、無意味な除細動が死を決定付けたと言われたら否定するのは難しいかも。

たかだがガイドラインではありますが、いちおう最新の標準は知っておいたほうがいいし、医療者として恥ずかしくないスキルは身につけておきたいものです。

患者の命のためにも、自分の医療者人生のためにも。



posted by めっつぇんばーむ at 02:05 | Comment(1) | TrackBack(0) | AHA-BLSインストラクター
この記事へのコメント
昨年は大変勉強になる記事をありがとうございました。
目撃されていない心停止患者への対処はVFの時相説に従っても許されるのは2分間5サイクルの胸骨圧迫だけで、VF認識から9分間空いてるのは確かにアウトかもしれません。VFの治療は胸骨圧迫と除細動が基本であり、気道確保が優先事項にくるなんて主張は脆いですね。
そうはいっても私たちは第三者であるから、救急カートなどの配置など自分たちのこととして受け止めないといけないですよね。1分1秒の世界ですから。
Posted by Ruru at 2012年01月01日 18:05
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