2011年10月02日

G2010正式版BLSヘルスケアプロバイダーコース雑感

どっかのITCは、しれっとやってるようですが、建前上、日本人向けコースとしては、新しいG2010正式のBLSヘルスケアプロバイダーコースはまだ開催できないことになっています。

というのは今回、なぜか筆記試験の翻訳が禁止されましたので、英語で試験を受けてもらわなくてはいけない。

ということで、広く公募開催できるという段階ではありません。

なので、日本国内ではG2005の教材に変更を加えつつG2010の内容を教えるInterim Course(暫定コース)が正式なものとなっています。

まあ、それがアメリカ本国AHAからの通達でしたので、日本医療教授システム学会も日本循環器学会もまじめにしたがっていたのですが、ここまで日本語のリリースが遅れると、いい加減やきもきしてきます。

裏でどんな密約があったのかはわかりませんが、その他のITCでは独自に筆記試験を翻訳して受講者に日本語版筆記試験としてやらせているようで、大手の力で、それが日本標準と認識されつつあるのが悔しいところ。

さて、そんなG2010正式版のHCP。

遅ればせながら、私も開催の乗り出しました。



私が所属しているアメリカ本国のトレーニングセンターには、筆記試験の翻訳禁止令は及んでいないのですが、いちおう日本国内事情に配慮して、日本語版筆記試験を作成するのではなく、英語版筆記試験を読み解くための「補助資料」を参照してもらう形にしました。



まあ、筆記試験についてはいいとしてコースの内容。

今回のDVDは冗長さがない、というかDVDでしゃべっている内容に無駄がなく的を得たことだけで、かつ大事な点はテロップが入りますから、日本語で説明を加えながら進行する場合でも、比較的やりやすいという印象です。

部分練習も含めすべて5サイクルさせますので、個々では時間がかかりますが、廃止された手技練習(口対口人工呼吸、高度な気道確保、小児のPIT、成人窒息解除)も多いので、全体的には速く終わる感じです。

実技試験も成人の一人法〜二人法 with AEDと乳児の一人法〜二人法ふたつだけ。

PWWの部分の始まりがカウントダウンで明確になったのは評価できる反面、BVM練習などでは、手の置き方などはPWWに含まれずにいきなり換気から始まるので、事前にちょっとした介入をするなど、工夫が必要。

また全体の流れ(PIT)練習もPWWでやることになっていて、公式に日本語吹き替えされればまだしも、現時点、英語のままや日本語字幕でPWWやってもらうのは結構困難。

ファミリー&フレンズもそうですけど、今回のガイドライン改訂では、インストラクター主導の自由練習のセッションが削減されて、画面にあわせて練習する場面が増えています。

ファミリー&フレンズCPRのファシリテーターガイドを見ると、はっきりわかりますが、これはインストラクターがいなくても受講者がビデオを見ながら「独習」できるようにという教材設計理念の表れ。

日本語吹き替えがされれば、ある程度有効に使えるかもしれませんが、英語音声の今はちょっと厳しいかな、と思います。

今は統合練習の時はインストラクター主導でやってもらうほうが現実的な感じでした。



今回、スキルチェックシートの内容も含めて、とにかく受講者に長く胸骨圧迫をさせる設計になっています。

かなりハード。

これはきっとG2010のEITの章にある、

It is reasonable that participants undertaking CPR training be advised of the vigorous physical activity required during the skills portion of
the training program (Class IIa, LOE B).

というのを体言しているんだろうなと思いました。

現実の厳しさを伝えるのもいいけど、それ以前に傷病者発見からCPR開始までの部分を集中的に練習する部分があってもいいのにな、というのが正直なところ。



またBLSにチーム蘇生の概念を入れる努力など、ガイドラインをどう具現化するかという点で興味深い構成です。

総合的にみて、BLSのテクニカルスキルをさくっと習得するためのコースとしては悪くないと思います。中途半端な想定練習的な部分がなくなったので、このテクニカルスキル・トレーニングだけでは不十分という点が明確になったのは評価できます。

今回は、午前中にHCPをやって、午後には、傷病者と救助者に別れてのファーストエイドも含めたシミュレーショントレーニングをやりましたが、このようなスタイルで進めるにはG2005よりシェイプアップされてていい感じ。

10月半ばには、いよいよ日本語版テキストがリリースされるという情報も入りました。

いままでは待ちだったけど、そろそろG2010正式版本格稼動に向けて動き出そうと思います。



ちなみに英語版のG2010 BLS-HCPのテキストを買うなら アマゾン が安いですよ。そのときの為替レートで若干変動しますが、現時点、1,073円、送料無料。ちなみに国内代理店のシェパードは1,750円(international限定の格安版なのに)。

アマゾンでは1回に10数冊程度入荷しては掃けて、というのを繰り返しているみたいで、大量購入には向きませんが、個人レベルでタイミングがあえば格安で手に入ります。



posted by めっつぇんばーむ at 13:14 | Comment(2) | TrackBack(0) | AHAガイドライン2010
この記事へのコメント
こんにちは。
いつも読ませていただいております。

こちらのブログを参考にして、最近BLSプロバイダーコースを受講しました。
パソコンで検索したらすぐ出て来る大手の所です。
めっつぇんばーむ様が「どこかのITC」ってお書きになってる所はここかな?と思います。

DVDは字幕が英語で日本語訳のパンフも見ながらだったので、追うのに大変でした。
2010の内容そのものだったのではないかと思いますが、まだ禁止なんですか?

もうすぐ2010日本語版が出るんですね〜買ったばかりなのに…!
ちょっと残念!

つぎはACLSです。
テキストはもう買ってあるのですが(2005を中古で買いました)、BLSとは違って来年頭位の発売予定なんですよね?

Amazonで見たのですが、大阪ライフサポート協会出版の「改訂版 ALS:写真と動画で分かる二次救命処置」というのがありました。
AHAのより分かりやすそうなので買おうかなと今思ってます。

この本について何かご存知でしたら教えて下さい。

またこの協会が出してる「あっぱ君」ていう胸だけのマネキンと平面の絵だけの練習用のが安価で良さそうので、買おうかなと思っています。

インストラクターは自信がないので目指しませんが、職場で勉強会を開いてもいいんですよね?
胸骨圧迫がこんなに大切なんて知らなかった!まず気道確保が先でしょ?と思い込んでるナースはおおいと思います。

だから問題がなければうちの部署で簡単な勉強会やりたいと思います。
 
またお邪魔させていただきます。
Posted by at 2011年10月02日 17:35
受講お疲れさまでした。

英語のDVDを使っていたなら、それがG2010正式版コースです。手元のハンドアウトを追いながら、っていうのは厳しそうですね(^^ゞ

G2010正式コースは開催が禁止されているというと正確ではありません。英語版しかない筆記試験の翻訳が禁止されているんです。(これまではそんなことはなかったのですが、、、実際G2005のACLSとPALSはいまだに日本語正式版が出てません。だから各ITCが翻訳して試験を受けてもらってます)

だから英語で試験を受けてもらわなくちゃいけなくて、一般的な日本人には非現実的でしょ、ということです。

勉強会、ぜひやってください!!

教えることは最大の学びでもありますし、どうぞG2010を広めてください。
Posted by めっつぇんばーむ at 2011年10月03日 08:35
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック