ありがちな突然のVF。今回はまだ2回目ということで、オペ開始前で、ふつうにCPRも除細動もできる状態にしました。
今後、回を重ねるごとに、よりリアルに、例えば開腹手術の真っ最中でお腹がぱっくり開いているとか、側臥位とか腹臥位とかもやってみて、現実問題、何ができるか、麻酔科医と執刀医の協働、そこを取り持つナース、といったこともやっていきたいと思っています。
急変対応といって、まっさきに頭に浮かぶのはBLS/ACLSですが、勘違いしがちなのは修了カードを手にすれば万事OKと思うこと。カードの有効期限の向こう2年間は安泰と安心している人はさすがにいないと思いますが、AHAのBLS/ACLSは所詮タスク・トレーニングと割り切って考えたほうがいいかもしれません。
理想化された条件の中でのテクニカルスキル・トレーニング。シミュレーションには程遠いのがAHA-ACLS。そのまま臨床で応用できたらラッキー、です。
教室のタスク・トレーニングで身につけたテクニカル・スキルを前提として、応用力・実践力といったノンテクニカル・スキルをかぶせて使えるように鍛えるシミュレーションは、できれば実際の現場でやった方がいいに決まってます。
たぶんG2005まではAHAも勘違いしていたのだと思います。
例えば、ガイドライン2005のBLSヘルスケアプロバイダーコースDVDでは、「あなただけが頼りです。あらゆる年齢の人の命を助けられますね。十分訓練したのですから」と最後に言っていますが、この手の過信ともいうべき「よいしょ」はG2010教材からは消えました。
いくらビデオベースのAHAコースでコースメニュー化されたスキルトレーニングをしても、現場で使えるものにはならないという反省があったのでしょう。
implementation(実行性)がメインテーマのガイドライン2010。
いくらAHAコースを終了しても、それは単に機械的に技術を習得したというだけ。それを現場で応用して使うための訓練はまた別。
AHAガイドライン2010の「教育・実行性&チーム(EIT)」のページにも、「AHA ECCプログラムは最初のステップにすぎず、個人やシステムとして力を発揮するための大きなトレーニング概念の中の一部でしかない」みたいなことが書かれています。
Instructors and participants should be aware that successful completion of any AHA ECC course is only the first step toward attaining and maintaining competence.
AHA ECC courses should be part of a larger continuing education and continuous quality improvement process that reflects the needs and practices of individuals or systems.
AHA ECC courses should be part of a larger continuing education and continuous quality improvement process that reflects the needs and practices of individuals or systems.
現実、オペ室でのシミュレーションにしても、麻酔器の使い方を知らなければ人工呼吸はできませんし、通報の仕方も、院内一斉のコードブルーを掛けても、オペ室の中まで入ってきてくれる人がどれだけいるのかという問題とか、救急カーとの中に入っている薬。うちはエピクイックがないから、ボスミンをアンプルから吸わなくちゃいけないし、、、、
現実問題、講習会場のACLSでは対応できない点がたくさん。
なにより、スタッフがACLS講習のメンバーのように共通認識をもった人たちばかりではない、これは実際の急変に当たって痛感するところではないでしょうか?
完璧にACLSをできる人がひとりいても、思うほどの効果は上げられません。
ですから、本来は、急変対応トレーニングは、職場内のリアルな環境・条件でいつものスタッフで行うべきものなのです。
現状の考え方としては、各人がAHA-ACLSなどでスキル・トレーニングをして、共通の土台を作ってから、次の段階として職場でシミュレーション・トレーニング。これでようやくひとつの形として完成形になるのではないでしょうか。
病院で年に2回義務付けられている避難訓練。それを関係ない他の病院施設でやるなんてナンセンスですよね。それと同じです。
ということで、ACLSまで取ったのに、どうも思うようにならないと感じている人は職場で防災訓練〜急変版〜をやってみることをお勧めします。
ICLS/ACLSインストラクターが職場で本領発揮し、貢献するチャンスです。
追記:ここまで書いて思ったけど、結局ACLSは個人で受講して身につけるようなスキルではなく、患者安全として職場単位でやるべきものなんですよね。病院の避難訓練の例を出しましたが、個人単位で避難訓練を外部施設に受けに行くなんて、ありえない話だし。日本のACLS教育導入時の方向性がそもそも間違っていた!?