蘇生ガイドライン2010、日本でもだいぶ広まってきましたね。
日本循環器学会も日本ACLS協会も、2月末日のタイムリミットに向けて稼動を始めたようです。(余談ですが、G2005コース開催期限が3月末日までにひっそり変更されてましたね)
ただ、残念ながら日本で開催されているのは、BLSヘルスケアプロバイダーだけ。
ハートセイバーAEDもガイドライン2010 Interim(暫定)コースがAHAから公式に提供されていますが、これらの市民向けコースをやっている団体・サイトはほとんどありません。
とても残念です。
なぜなら、ガイドライン2010のBLSの本質は、ヘルスケアプロバイダーではなく、市民救助者(Lay Rescuer)のためのものだからです。
日本国内でもすでにガイドライン2010暫定コースとしてのヘルスケアプロバイダーコースを受講ないしは指導されたインストラクターはそこそこいると思いますが、受けてみて/教えてみて、違和感を感じませんでしたか?
・ホントに気道確保もしない視認だけの呼吸確認でいいの?
・呼吸原性心停止の小児の場合もC-A-Bの流れ?
・反応確認と呼吸確認した後で通報して、その後、脈拍触知? わかりにくい!
こうした不自然さは、本来市民向けにチューンナップされたアルゴリズムを無理やり医療従事者向けにアレンジをした結果である、といったらどうでしょう?
ガイドライン2010そのものや、CoSTR 2010を読めばわかるとおり、あらゆるベクトルはバイスタンダーCPR向上に向かっています。
新しく新設されたEIT(Education, Implementation, and Teams)という章などはその最たるものです。
私が最近、よく言うのは、ガイドライン2010がメインフォーカスしているのは、
・成人
・目の前の卒倒(心原性心停止)
・病院外
・市民救助者(バイスタンダーCPR)
ということをしっかり認識しておきなさい、という点です。
ガイドライン2010は、なんにでも対応できる万能の急変対応プロトコルではありません。
AHAなんかは特にその点が顕著で、BLSやACLSをECCプログラム、と言っています。
ECCはEmargency Cardiovascular Careの略で、日本語では救急心血管治療。
だから、小児や溺水などの呼吸原性の心停止はメインストリーム外なのです。
ガイドライン2010に、医療従事者のための蘇生の質を向上させる変更点はほとんどありません。
そのほとんどは、いかに市民にCPRを実施してもらうか、のためのもの。
であれば、本当にガイドライン2010が生きてくるのは、BLSヘルスケアプロバイダーコースではなく、むしろハートセイバーAEDコースや、ファミリー&フレンズCPRと言った市民向け講習プログラムです。
つまりガイドライン2010の本質を理解するには、BLSヘルスケアプロバイダーコースだけでは不十分。
この点を認識しているBLSインストラクターはどれだけいるでしょうか?
ガイドライン2010の本質を理解して、AHAインストラクターとしての責務をまっとうしようと思ったら、ハートセイバーAEDやファミリー&フレンズCPRをやらないわけには行かないと思うのですが、、、、
私の持論ですが、BLSのファカルティや、インストラクター・トレーナー、コースディレクターなど、AHA-BLSコース普及に責任を持つ立場をトレーニングセンターから与えれている人間は、AHA-BLSコースの内容はすべて熟知しているべきだと思っています。
すべてのAHAコースを教えられるポテンシャルがあってしかるべきです。10種類以上ありますから、すべてが難しいとしても、せめて日本語化されているすべてのコースの受講経験がないとまずいでしょう。
ガイドライン2010正式教材からは日本語ラインナップが増えます。
・BLSヘルスケアプロバイダー
・ハートセイバーAED
・ハートセイバー・ファーストエイド
・ファミリー&フレンズCPR
せっかく市民を対象とした日本語プログラムが増えるのに、もし、ぜんぜんその開催数が伸びないようなら問題です。
つまるところ、指導者側がガイドライン2010の本質を理解していないということの現れとも捉えられますから。
前にも書きましたが、ハートセイバーAEDやファミリー&フレンズCPRは、ヘルスケアプロバイダーコースの簡略版では決してありません。
むしろ、その難易度と奥深さ、実行性への寄与は、ヘルスケアプロバイダーコース以上です。
資格授与や営利とは無縁なコミュニティープログラムであるファミリー&フレンズCPRもそうです。
その洗練された内容は、AHAインストラクターとしての宝である、といったら大げさでしょうか?
誰にでも手軽で安価に指導できるマテリアル。これを知っているのと知らないのとではインストラクターとしての才能を発揮できる場に雲泥の差がでます。
AHAコースを自由に開催できる立場の人間が、この選択肢を持っていないのは罪だと思います。
ということで、AHA-BLSインストラクターなら、ガイドライン2010への認識を新たにするとともに、市民向けコースにもっと目を向けてください。
最後に、まだ公式には日本語化されていないファミリー&フレンズCPRですが、3月に横浜で公募開催があります。
都合の合うインストラクターは、ぜひ、参加をお勧めします。
市民から医療のプロまでを対象としたダイナミックなG2010 AHA ECCプログラムの本質を実感できるはずです。
2011年02月18日
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