2011年02月14日

BLSノンテクニカルスキル・トレーニング

先日、横浜で開催された「Advanced CPR」という講習にお手伝いで行ってきました。

もちろんAHAのプログラムじゃありません。

既存の各種心肺蘇生法講習(BLSヘルスケアプロバイダーコースを含めて)の上位講習として、ハートセイバーコースを専門に教えているインストラクターさんが独自に開発したオリジナル講習。

前から話には聞いていましたが、今回、初めて目の当たりにして衝撃でした。

これはガイドライン2010時代にふさわしい、新しいスタイルだなって。


簡単にいうと、BLS実施のためのノンテクニカルスキル・トレーニングです。

昔はBLSでも凝ったシナリオで練習していましたが、ガイドライン2000以降、シンプルに、ストレスなく教えるという方向にシフトし、それから10年。いまでは心肺蘇生法講習はBLS講習は運動スキルとしての技術習得がメインとなっていました。

しかし、それだけでは、蘇生率は上がらない、そもそもCPRの着手率が上がらないという点にフォーカスがあたったのが、今回のガイドライン2010(コンセンサス2010)。

CoSTRやガイドラインにEIT(Education, Implementation, and Teams)というチャプターが新設されて、BLSやACLSなどのサイエンスと同列で、教育手法や実施率を上げる方法、チーム蘇生が議論されるようになっているのは皆さんご存知のとおり。


現場で救命処置できなかった理由として、ガイドラインに載っているのは、たとえば、

「パニックになった」(37.5%)

これ、大きいですよね。

いくら手技を身につけていたとしても、パニックへの対処がトレーニングされていなければ、実施は難しいという現実。

まだまだ始まったばかりの視点なので、この問題をどうしていくかという具体的な方策はまだ出されていませんが、この先の5年間のCPR教育では、Implementation、実施率を上げるためには、どのように蘇生手技以外の問題点に対処する力を養うかという点が問題となっていきます。

つまりノンテクニカルスキル・トレーニングをどうBLSに盛り込むかというのがポイント。

そんな時代を先取りしたのが、今回見せてもらったAdvanced CPRでした。



大まかな構成をご紹介しますと、


1.ガイドライン2010のポイント解説:特にEITという新しい概念について
2.新しい蘇生法のポイントである呼吸確認について練習
3.G2010の流れでCPR練習
4.群集心理とリーダーシップの理論
5.シナリオトレーニング:リーダーを決めて、その他の受講者は現場にいる群集として与えられた役割を演じる。
6.デブリーフィング/ディスカッション

面白いなぁと思ったのは、受講者同士で呼吸数を数えあってもらって、5秒以上10秒以内という呼吸確認時間について考えてもらったり、暗闇で呼吸確認をするにはどうしたらいいか? うつ伏せで呼吸確認をするにはどうするか? という命題でのディスカッション&実験。

答えは提示せずに受講者同士が気づき学べるような構成。

まさにファシリテーションでした。



シナリオトレーニングのデブリーフィングなどは、ACLSプロバイダーコースさながら。

3-4人グループのうち、1名がリーダー。その他の人はシナリオにしたがって救急現場にいるバイスタンダーの役を演じます。

協力的であったり、非協力的であったり、邪魔をしたり、不適切なCPRをしていたり、野次馬根性で傷病者の写真を撮っていたり、、、、

想像してみてください。10人近くの人が輪になって取り囲む中、ひとりでCPRをする場面を。その人たちが、ひそひそ声で否定的なことをつぶやいている場面と、自分は手を出さないまでも応援のつもりで一緒に胸骨圧迫の数を数えてくれている場面。

雰囲気がぜんぜん違います。

そして雰囲気しだいで、CPRをしている気持ちがぜんぜん違います。

手技的にはパーフェクトと自信があっても、周りのみんなが否定的なことを言っていると、気持ちがどんどん沈んできて、やがては手が止まってしまう、、、かも。

インストラクターはシナリオとディスカッションのポイントは設定していますが、そこから話がどう派生して、どう解決していくかは受講者次第。

そこをインストラクターはうまくファシリテートしていました。

私はアシスタントとしてヒョコヒョコとお邪魔させてもらったのですが、正直、高度すぎてついていけず、返ってヘンな介入をして混乱させちゃいました(ごめんなさい)。



ガイドライン2005までは、心停止というシビアな状況をあえて観念化してオブラートに包み、受講者にとってストレスフリーな学習環境を提供していたように思います。

しかし、実際の蘇生現場は市民にとって心的外傷が必発というくらいシリアスな場面で、しかも周りを取り巻く人間模様が、対傷病者以上に問題だったりします。

そうしたあえて目をそらせてきた現実に迫るのが今回の講習ですが、それが行き過ぎると返って着手率が下がります。

そのさじ加減が難しいところです。かつてガイドライン2000以前の権威主義に似た厳しいだけの講習とは一線を画するためのポイントが、やはりファシリテーションという手法なんだなと強く感じました。

「こうすべき!」という押し付けは脅迫観念を植え付ける可能性があります。

しかし、問題を提示し、その答えを自ら見つけ出すという方法をとることで、主体的に問題に立ち向かう姿勢ができあがっていくのではないでしょうか?


以上、コースを見学させてもらった立場としての私の考えです。コース開発者の意図したものと違っていたらたいへん恐縮なのですが。

将来性を感じる画期的な講習プログラムでした。

今後、こうしたアドバンスドなプログラムが増えればいいなと思いますが、下手にやるとG2000以前の悪しき暗黒講習の世界に舞い戻ってしまうので要注意。

インストラクターのスキルとしては、BLSインストラクターのレベルでは難しいと思います。ACLS/PALSのファシリテーション能力が必要。

そういった意味では今後も広がりを期待するのは難しいかも。

でも、絶対に必要です、こういう講習って。

まじめにBLS普及を考える人にはぜひ体験してもらいたいプログラムです。


次回開催は4月3日(日)だそうです。

詳細は下記ページをご覧ください。

http://yokohama.bls-aed.net/ff/advanced_cpr.html




posted by めっつぇんばーむ at 00:07 | Comment(1) | TrackBack(0) | AHAガイドライン2010
この記事へのコメント
早速申し込みさせていただきました。
いろんな場面での経験が、実際の場面での落ち着いた行動に、結びつくと思います。
楽しみにしてます!
・・・・とりあえず最低参加人数をクリアしてほしいなぁ(ー`´ー)うーんドキドキ
Posted by たまにゃん at 2011年02月14日 22:37
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