待望のAHAガイドライン2010対応コースを開催するための動画補助教材がリリースされました。
トレーニングセンターとAHA本部に正規登録されたAHAインストラクターは、AHA Instructor Networkから自由にダウンロードできます。
https://myportal.americanheart.org/eccportal/ecc/ecc
※登録がまだの方は上記ページの右上の"New User? Register Now"というところから新規登録できます。TCの承認が下りた後、インストラクター専用エリアに入れるようになります。
今回、公開された動画はWMA形式で、全三点です。
1. ACLS Update Overview (For ACLS and PALS Instructors ONLY)・・・176MB
2. CAB Sequence HCP Option 2 (For BLS, ACLS, and PALS Instructors)・・・19MB
3. HS Sequence Option 1 (For BLS and Heartsaver Instructors)・・・13MB
インストラクターの皆さんは既にご存じと思いますが、来年春以降にリリースされるガイドライン2010の正式な教材(DVD、プロバイダーマニュアル、インストラクターマニュアル)を待たずして、AHA ECCコースはガイドライン2010準拠に切り替わります。
つまり、現行のG2005のDVDとプロバイダーマニュアルに追加修正する形で、ガイドライン2010対応コースとして開催していくことになっています。
具体的には、インストラクター向けレッスンマップの変更と、受講者に配る変更点一覧表、そして新しい C-A-B の流れですすむBLSの手順を示した動画教材(C-A-B sequence video)、新しいスキルチェックシートと筆記試験問題。
これらの Interim Training Materials を使うことで新しいDVDやテキストを待たずにガイドライン2010の流れで教えていくことになっています。
そのための動画が、ようやく配信開始になったというわけです。
"ACLS Update Overview"という実に173MBもある大きな動画ファイルは、ACLSプロバイダーコースのときに受講者に見せるもので、ガイドライン2010で変更になったことが22分間にまとめられています。
これについてはとりあえず置いておいて、今日話題にしたいのはBLSに関する動画2本。
"CAB Sequence HCP Option 2"というのが、医療者向けの新しいBLSの手順をまとめたものです。BLSヘルスケアプロバイダーコースとACLSプロバイダーコース、PALSプロバイダーコース、PEARSプロバイダーコースで使います。
これはシカゴで開催されたナショナル・ファカルティ・オリエンテーションと、インストラクターアップデートの際に公開されたのと同じ動画。
シカゴで見たときは、あまりにおおざっぱな出来で、試作品かと思っていましたが、そのままの形で出ちゃってびっくり。
AHAガイドライン2010 インストラクター・カンファレンス,シカゴ速報
で書いたとおりです。
ACLSやPALSならいいですけど、ヘルスケアプロバイダーコースまでこの動画を使うことになるとは意外でした。
だって、場面は完全にACLSのシーンなんですもん。
使うのは手動式除細動器だし、BLS的には過剰な説明やシーンが盛りだくさんで必要以上に長いし、ヘルスケアプロバイダーコースを中心にやっている人間にはかなり不本意な感じ。
まあ、ヘルスケアプロバイダーコースの教材は比較的早い時期(3月〜4月)に出される予定で、2月末日まではガイドライン2005のまま開催していいことになっているから、この Interim Training Materials は使わないという選択もできるからなのかなといいように解釈しました。
さて、今回新しいのは市民向け(ハートセイバー)の動画教材がお目見えした点。
"HS Sequence Option 1"
というヤツです。
構成は既存のハートセイバーCPRコースの映像の切り貼り+新規に撮影した部分の合成でできています。(16:9と4:3で画面比が変るのですぐわかります)
この動画は医療者向けに比べるとわかりやすいです。
前から気になっていた点がいくつか解消しました。
1.呼吸確認の時は服ははだけなくて良い
2.呼吸確認は胸と腹の動きを見て5秒以上10秒以内で判断する
3.呼吸確認時は気道確保はしない(傷病者に触れていなくて良い)
ただ、新たな疑問点も。
映像を見る限り、市民救助者(ハートセイバーレベル)の場合は、こういう流れになるようです。
反応確認 → 通報 → 呼吸確認(5秒以上10秒以内) → 胸骨圧迫開始
つまり、市民救助者は反応確認と呼吸確認が別々のアクションになる模様。
また5秒以上10秒以内で確認する旨がはっきりアナウンスされています。
これはガイドライン2010のS687ページに文章としてもきちんと書かれているのですが、アルゴリズム表(フローチャート)からは読み取れない事実です。
ちなみにヘルスケアプロバイダー向けの手順では、
反応・呼吸確認(手短に) → 通報 → 胸骨圧迫開始
となります。
"CAB Sequence HCP Option 2"の動画を見る限り、この場合は本当にサラッと見るだけで、呼吸確認に5秒以上はかけていません。ガイドラインのハイライトでも「反応確認時に手短に確認する」と表記されており、5秒以上10秒以内ではない模様。
これが間違いではなく、正しいとすれば、市民向けと医療者向けでアルゴリズムがずいぶん違うことになりそうです。
市民には5秒以上10秒以内という時間をかけてきちんと(?)呼吸確認するように教えて、医療者はチラ見でいいよ、ということ??
結局、新しいきちんとしたガイドライン2010のDVDが出ないと、このあたりは不明瞭なままになりそうな予感。
さて、今回、動画教材が配信開始になりましたが、これだけではガイドライン2010コースは開催できません。
CPRの手順が変るからには、それに対応した新しいスキルチェックシートが必要。
またヘルスケアプロバイダーコースでは筆記試験の内容も変ります。
同時配信してくればいいのに、これらはまだの模様。
年内には出そろうと思うのですが。
2010年12月11日
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緊急通報・AEDの手配のあとの5−10秒で上記(医療従事者ー脈、市民ー呼吸)を評価し、心停止の判断をするのです。
その後、スキルチェックシートも出されましたが、結果的にヘルスケアプロバイダーは5秒以上10秒以内で呼吸確認をし、脈拍確認も5秒以上10秒以内ということで、ガイドラインに書かれていた「手短に」ではなくなった模様。。。。