2010年11月12日、アメリカシカゴで開催されたAHAガイドライン2010 インストラクター・カンファレンスに参加してきてきました。
この国際的なイベントは、ガイドライン2010のインターネット上での発表後、初めての公式なインストラクターアップデートになります。
そこで発表された今後のAHA ECCコースの展開について、概略のみですが、ご紹介します。
ちなみに今回は新しいDVD教材の視聴などはなく、補足教材を用いてG2005教材を使ってG2010対応コースを行うための案内が中心でした。
・新しい教材ができるまでは、G2005教材をベースにレッスンマップに変更を加え、G2010対応としていく。
・2011年3月1日以降はG2010対応コースを開かなくてはいけない
・G2010対応コースはアップデートを済ませたインストラクターが行う
・インストラクターアップデートはonlineで行う。オンライン教材は日本語版もできる予定
・新しいスキルチェックシートとCABシーケンスのデモンストレーションビデオはインストラクターネットワークで公開される
・新しい筆記試験問題はトレーニングセンターを通して提供される
・G2005教材を使っていいのは、G2010日本語教材が出てから60日(参加者からの質問に対しての回答)
・新しい筆記試験やスキルチェックシートのダウロードに関しては、質問に対してsoonと答えていた。目安としては12月の第一週
いろいろ書きたいことはありますが、全体的な印象としては、具体的なコース内容についてはまだ十分に整理されていない感じです。
今回、最大の変更点かもしれない C-A-B の流れにしても、どうやって呼吸確認をするのか、インストラクターは受講者の動作をどう評価したらいいのかは、参加者からの質問への回答を見ても、十分なものとは言えませんでした。
ハートセイバーコースとヘルスケアプロバイダーコースの新しいスキルチェックシートが提示されましたが、そこでは、反応の確認と呼吸の確認が別のチェックボックスになっています。
あれ? 同時に確認するんだったよね?
ん? 5秒以上、10秒以内?
このあたりの流れを説明するために、インストラクターネットワークを通して、C-A-B Sequence Video というのが配信される予定になっています。
現コースビデオの傷病者評価の部分では、それを流すことでG2010対応とすることになるのですが、そのビデオの出来が今は試作品のためか、ちょっとイマイチです。
反応の確認の時に、マネキンの胸腹部がスクロールするようにアップで写されるので、このように胸の動きを注視して呼吸がないか、死戦期呼吸かどうかを確認しろ、ということなのでしょうけど、思いの外サラッとしか説明されていません。
このとき、マネキンの衣類ははだけられています。
麻酔科医師や手術室のナースならわかると思いますが、通常呼吸確認は服をはだけて直接胸を見ます。そうでないと分かり難いです。
さて、新しいBLSの手順の中では、どう扱うのでしょう?
胸骨圧迫の手順を遅らせないというガイドライン改定の最大のポイントからすると、反応確認の段階で、胸をはだけるなんてあり得ません。
かといって、今のような季節で服を着込んでいるときに服の上から胸の上下運動を視認するのはかなり困難。
ビデオのサラッとしたつくりや、あまり具体的ではないAHAの説明からすると、実は私たちが考える以上に呼吸確認は重要ではないと考えるのが妥当と思えます。
方法云々はこだわらず、ぱっと胸のあたりをみて、明らかに正常な呼吸をしていると自信を持って言えるとき以外は、深く考えずに胸骨圧迫開始、という感じなんでしょうね。
もともとHands only CPRを提唱して、呼吸確認なんてなしで胸骨圧迫を始めさせていることを考えれば、訓練を受けた人は可能ならちょっとは呼吸も気にしてみてね、という程度に軽く考えればいいのかもしれません。
以前もどこかで指摘した新しいシーケンスでの人工呼吸の開始のタイミング、それについては具体的な方向性は見えませんでした。
とりあえず胸骨圧迫を早く開始するのが今回のガイドライン2010の基本方針です。
30回の圧迫後に準備ができていれば人工呼吸を2回行うわけですが、一人法である限り、ここでは口対口人工呼吸以外の選択肢はありません。
応援が来て、バッグマスクやフェイスマスク(ポケットマスク)を準備してくれていればいいのですが、そうでなければ、胸骨圧迫を中断すべきではありませんので、ポケットマスクの組み立てを行えません。
この点、新しいコース展開ではどう教えるのか? 疑問です。
ちなみにアップデートで提示されたデモビデオでは、緊急通報をして、次に脈の確認をするときにはなぜかすでに口の上にポケットマスクが置かれており、これに関しては会場からもブーイングの声が(笑)
12月の第1週くらいまでには、正式な映像教材とスキルチェックシートなど、G2010への移行コースの資料が揃うはずなので、そこでもうちょっと具体的な指示があればいいのですが、そうでないと、インストラクターの間でも相当混乱が起きそうです。
以上、簡単ではありましたが、シカゴでのインストラクター・アップデートの速報でした。
2010年11月13日
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C-A-Bは自分の中ではイメージ(自分だったらこう対応する)がありますし皆さんもそうだと思います。ただ人に伝える時にはある程度画一されないといけないでしょうからその辺をAHAがどう示してくれるかですね・・・
楽しみにしたいと思います。
前回の2005の教材でもそうでしたが、アメリカ人はインストラクターも受講者も日本人みたいに細かいところにはとかく無頓着。
今回も私たちが知りたいような詳細な指示はあまり期待できないと思っています。
スキルチェックシートでは呼吸確認がどくりつしたボックスになっていますので、この部分のディスクリプションシートの評価方法がキーポイントになりそうです。
おそらく受講者に「正常な呼吸なし!」と言ってもらうんだろうな。
呼吸の確認はどう教えるかとっても気になるところで、
早く正式に発表が聞きたいです。
その冬には新しい基準が出てしまうんですね(苦笑)
教える側の苦労っていうのも、大変なんですね☆
なんだかんだ言ってAHAの組織ってアメリカですから、インストラクターとしては英語は避けて通れませんし、日本語教材が出るまでは自分たちでどうにかしなくちゃいけないから、いろんな知識・技術が必要というのもおもしろいところだと思っています。