2010年11月06日

日本ACLS協会、ハートセイバー・ファーストエイドに参入

日本ACLS協会さんが、ついにハートセイバー・ファーストエイド Heartsaver First Aid コースに参入してきたようです。

JAA-ITC関連会社のシェパードで、ちょっと前からハートセイバー・ファーストエイドのインストラクターマニュアルやDVD、テキストの取り扱いを開始していたので、おやっとは思っていましたが。

10月に福岡で開催されたハートセイバー・ファーストエイドコースでは、ファーストエイド・インストラクターコースを兼ねると説明されていたようです。

詳しいことは知りませんが、ガイドライン2010から公式に日本語化されるのに向けて、BLSインストラクターへのトレーニングが始まった、ということなんでしょうね。

おそらく2005バージョンは公募はせず、2010から本格稼働するのかな。



ハートセイバー・ファーストエイドコース、日本国内展開の系譜


数年前までは、その存在自体が日本では知られておらず、本当にAHA公式の修了カードが出るのかと疑問符が投げかけられることもあったAHAのファーストエイドコース。

2006年頃、ハワイのAmerican Medical Responseトレーニングセンターが日本に初めて持ち込んで、その後、日本蘇生協議会ITC(現日本医療教授システム学会ITC)が、ITCとして初めてコース展開を始めたのが、確か2008年だったと思います。

そんな日本ではマイナーなAHAハートセイバー・ファーストエイドコースですが、実はAHA-BLSインストラクターになるためには受講が必須と位置づけられているものでした。

以前から、Healthcare Professional以外がBLSインストラクターになる場合は、ファーストエイド・ステイタス(OSHA基準)が必要と"BLSファカルティガイド"(AHA Instructor Networkで、ファカルティ以外でもダウンロードできます)に書かれていましたが、2008年版のファカルティガイドからは、ただのファーストエイド・ステイタスではなく、AHAの現に有効なHeartsaver First Aid修了カードが必要と改められました。

また2008年版のBLS Instructor course DVDには、ファーストエイドの指導方法を解説したモジュールも標準で含まれていて、インストラクターアップデートですべてのBLSインストラクターはその内容を見ているはずです。

Healthcare Professionalの意味をどうとらえるかが問題ですが、少なくとも医療資格を持たない一般市民の方にはハートセイバー・ファーストエイド受講が必要というのは疑問の余地がありません。

おそらくHealthcare Professionalが、ファーストエイド受講を免除されているのは、アメリカの医師・看護師・救命士免許を持っている人間なら当然OSHA基準のファーストエイドの内容は承知しているから、と考えられます。

しかし、日本の医療従事者は米国のOSHA基準なんて知りません。それにそもそも日本の医師教育にも看護師教育にも院外で行う応急処置(ファーストエイド)は含まれていません。であるならば、日本国内では実はすべてのBLSインストラクターにハートセイバー・ファーストエイド受講が必須と考えるのが妥当といえます。

少なくとも2008年以降は、AHAのルールでそうなっているのですが、日本語化されていないことにかまけてか、日本のITCではほとんど顧みられていなかった現状がありました。


BLSインストラクターは、9つのコースを指導できる資格です


日本では、当のBLSインストラクターの間でもまだあまり知られていないのかも知れませんが、AHA BLS Instructorという資格は、BLS for Healthcare Providerを指導できるだけの資格ではありません。

AHA公認のBLSインストラクターになるということは、下記のすべてのコースを教えられるポテンシャルを持っているのです。

1.Family & Friends CPR
1.Family & Friends First Aid for Children
3.Heartsaver CPR
4.Heartsaver AED
5.Heartsaver First Aid
6.Heartsaver Pediatric First Aid
7.Heartsaver CPR in School
8.Heartsaver Bloodborne Pathogens
9.BLS for Healthcare Provider

家庭向けファーストエイドとCPR、対応義務のある人向けのCPRとファーストエイド、そして小児ファーストエイドと血液媒介病原体、最後は医療と救命のプロのための蘇生法まで。

この機会に、日本のすべてのBLSインストラクターに、ぜひ医療者向けBLS以外の指導にも目を向けてほしいなと思っています。


先日開催された日本救急看護学会では、看護師向けに開発したファーストエイドコースがリリースされました。

これまでは市民向けと思われていたファーストエイド、今後は医療従事者もうかうかしてられませんね。

きっと、BLSやCPRより、市民生活を送る上では役立ちますよ。



参考まで、過去に書いたハートセイバー・ファーストエイド関連記事へのリンクを挙げておきます。ある程度選んで載せたつもりですが、相当な量、書いてるなぁ(^^;

注:古い順です。

「ハートセイバー・ファーストエイド」を受講してきました
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/81123877.html

教職員のエピペン注射解禁−AHAファーストエイドコースの日本展開
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/94759048.html

AHA Heartsaver Firstaid with CPR and AED
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/106924652.html

AHA-BLS 2008マイナーチェンジ
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/108850828.html

New BLS Instructor Course DVD
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/110746110.html

ハートセイバー・ファーストエイド
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/112397503.html

BLS/HSインストラクターに求められるファーストエイド資格
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/113378755.html

ハートセイバー・インストラクターになるには…
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/113539484.html

AHAに血液感染予防コースがラインナップ!
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/114302525.html

意外と人気のハートセイバー・ファーストエイドコース
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/123852189.html

日本のITCでのPEARS、HS-FAの開催
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/134898159.html

ハートセイバー小児ファーストエイド Heartsaver Pediatric First Aid
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/136902540.html

AHAハートセイバー血液感染性病原体コース
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/139931989.html

ハートセイバーカードのモジュール塗りつぶし
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/132341862.html

市民へのAHAコース普及を願って
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/129988536.html

ファーストエイドはおもしろい!
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/145722331.html

日本の法定救急箱の中身、ひどいです
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/147520666.html

AHAハートセイバー・ファーストエイドを巡る国内の動き
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/152564299.html

AHA CPR&ファーストエイド for IPhone
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/154784143.html

OSHA(オーシャ)という組織について
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/155821127.html

ガイドライン2010のファーストエイド
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/168090121.html






posted by めっつぇんばーむ at 12:49 | Comment(1) | TrackBack(0) | ファーストエイド(FA)
この記事へのコメント
今年初めてBLSのプロバイダー認定をとりました。
たまたま見つけ、数年前に消防庁の講習を受けたままだったのを思い出しての受講です。
医療業界と関連が全くない、普通の会社員と言うこともあり、"AHA"がどんな団体かも
わからないまま受講してきましたが、非常に影響力の大きい団体ということにびっくりしました。

実は今、30歳を目前にして、医学部学士編入学の勉強をしています。
先月、学科合格して面接に進んだ時、消防庁の救命講習には教授陣は無反応でした。
しかし、AHAのBLSプロバイダー認定を取った話をしだした時の反応に自分がビックリ。
(残念ながら時間切れでBLSの話はできず、結果も残念でした。)

ファーストエイド、自分も受講してみたいですね。その前に、脱・"一般"、かな。
まだまだ未知の事が多いので、これまでの記事で勉強させてください。
よろしくお願いいたします。
Posted by 晃史 at 2010年11月18日 22:19
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