ついに待望の蘇生ガイドライン2010が出ましたね。
予告通り日本蘇生協議会JRC版ガイドライン2010もほぼ同時発表で快挙です。
2005年は英語だけだったので、地味にひっそりという感じでしたが、今回はAHAも日本語でのサマリーを即日公開したりと大いに盛り上がりました。
私も眼科のオペを担当しながらも、公開時間には別の人に変ってもらって病院の図書室に直行。
ホヤホヤのデータを手に入れ、世界のお祭り騒ぎに密かに同調していました。
2005と2010でずいぶん違うなと思ったのはTwitterの存在。
リアルタイムに盛り上がってましたねぇ。
さて、今更ながら、情報のありかの再確認です。
まだガイドライン2010に触れていない方は、まずはこちらをダウンロードしましょう。
「AHAガイドライン2010のハイライト」
http://eccjapanheart.org/pdf/ECC_Guidelines_Highlights_2010JP.pdf
なんと日本語でAHAガイドライン変更の要点がまとまった立派なリーフレットが
PDFで公開されています。
それと日本版ガイドライン2010の草稿。
http://jrc.umin.ac.jp/
ABCからCABに変ったとか、「見て聞いて感じて」がなくなったとか、まあ、盛り上がるに足りるだけのインパクトはありました。
今はまだこなれていませんが、この先、どんどんガイドラインの解説ページができたり、雑誌で取り上げられたりするでしょう。
そのあたりのことは放っておいても自然に情報が入ってくると思うので、ガイドライン2010に関して私なりの視点でちょっと書いてみます。
まずは、この先の問題提起として、日本版ガイドラインとAHA版ガイドラインの共存関係のややこしさ。
前回の日本版ガイドラインは、日本はILCOR会議に参加していなかったので、情報が遅れてAHAガイドライン2005とERCガイドライン2005からいいとこ取りして作られました。
しかし今回は日本蘇生協議会もアジア蘇生協議会のメンバーとしてILCORに正式参加していましたので、ガイドラインの原本とも言うべき国際コンセンサス CoSTR 2010 から直接ガイドライン策定に入ることができました。
つまりAHAやERCと平行して完全独立でガイドラインを作りました。
ですから、コンセンサスがない部分ではAHAとの整合性などは配慮されていません。
翻って日本の蘇生教育の原本はなにかと考えてみると、消防や日赤、あと一応日本救急医学会は日本版ガイドライン準拠。
それに対して日本麻酔科学会や日本循環器学会、日本口腔外科学会などをはじめ、多くの医療従事者ならびに病院はAHAガイドライン準拠で臨床で動いています。
たいした問題ではないのかも知れませんが、市民や救急隊は日本版蘇生ガイドラインで動いていて、病院内に入るとそこはAHAガイドラインの世界。
なんだかおかしいなぁと思うのです。
救命の連鎖とか言いながらも、わっかは途中で別の種類に変ってしまう。
アメリカなんかは、ひとつのガイドラインのもと、市民から医療従事者まで一貫して連鎖をつなげていて、実に明快です。
特にAHAの家族向けのファミリー&フレンズCPRから対応義務のある市民向けハートセイバーAED、そしてヘルスケアプロバイダーコース、さらには枝分かれしてACLSとPALSと多様性があるように見えて、1本芯が通っている。
本来はそうあるべきなんでしょうけど、日本は本格的なダブルスタンダードの世界に突入してしまいます。
日本がここまで成長したのだから、もう日本にAHAは要らないというのが本来の形なのかもしれません。しかし残念ながらガイドラインの仕上がりを比べてしまうと、まだちょっとダメだなぁという感じ。
ガイドラインはともかく、それを普及させる教育システムがまったくダメです。強いて言えばICLS。でも教材設計やゴール設定がない。また小児領域や市民コースとの連携もない。
やっぱりしばらくは医療者向け教育はAHAに頼らざるを得ない状況が続きそうです。
もう一点、感染防護具の扱いについて、びっくりな記載が日本版ガイドラインに載っていたんですが、それは改めて別項で書きます。
2010年10月19日
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