2010年09月16日

ウィルダネス・ファーストエイドの医行為に関する法的考察

またまた Twitter でつぶやいた一連の話のまとめ記事です。

ウィルダネス・ファーストエイドとは、北米で発達した人里離れた場所で活動する人向けの野外救急法。日本では考えられない高度な内容で、部分的に医療行為も含まれています。

ここ最近、北米からやってきたインストラクターが日本国内でウィルダネス・ファーストエイドを開講していて、業界ではそこそこ知られるようになってきていますが、医行為を巡る日本の法律的な問題については、外国人インストラクターは関知しておらず、いろいろ問題もあったりします。

そんなことをテーマにつぶやいた内容です。




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北米で市民向けに開催されているウィルダネス・ファーストエイドに含まれる医行為=脱臼の整復、アドレナリン注射(場合によってはアンプルからシリンジで吸って)、抗ヒスタミン剤の経口投与、骨折の整復、頸椎保護解除のためのSpine test。他になにかあったっけ? あ、止血帯もあった。



ウィルダネス・ファーストエイドの医行為について書きますが、あまり耳障りのいい話ではない点はあらかじめご了承くださいませ。結論のある話ではないので。ただ、日本の法律上の混沌とした現実は知っておいた方がいいと思ってます。




一回限りの医行為を規制する法律は日本にはない。だからウィルダネスで必要に応じて例えば脱臼の整復を行っても即違法とはならない。ただし、うまくいかず、かえって状況を悪くした場合は、その必要性があったのか、また手技に問題はなかったか、などは問われる可能性あり。もし罪状がつくならおそらく傷害罪。

手技の妥当性が問われた場合、日本では医師以外は行わないことになっている行為だから、訓練を受けアメリカのライセンスを持っているといっても、日本の司法に通用するかは疑問。うまくいけばいいけど、そうでない場合を考えると、ホントにいま自分がそこで行う必要がある行為かは吟味する必要がある。

ウィルダネス・ファーストエイドとふつうの救急法の適応の違いを十分認識して「大人の判断」で行う上では、とても有用。アウトドアをする人すべてに知っていてほしい知識と技術という私の思いは変わらない。



別の視点で注意しなくてはいけないのは、山岳ガイドや自然教室の引率者など。この場合、「業として処置を行う」という視点がでてくるので、反復継続の意志があると見なされ医師法違反を問われる可能性がでてくる。ここでもホントは必要としている人の方が制約が大きいというAEDと同じジレンマが発生。

反復継続を拡大解釈すると、ウィルダネス・ファーストエイド講習を受けていざというときに備えようとした時点で、すでに「反復継続の意志」があると見なされるという解釈もある。

こうなると八方ふさがり。訓練は受けるがライセンスは受けないことで受講事実を隠して医師法違反を棄却する? とか不思議な発想にもなっていく。


もう考えるべきは、法律上の「緊急避難」。ホントに必要性があり、やむを得ない場合は違法性が棄却されるというもの。これが適応されれば傷害罪も医師法違反も問われないけど、正当防衛と同じでこれが認められるまでのプロセスは大変。ましてや日本の社会通念では医師以外の医行為は「あり得ない事」なので難しそう。

そこで私が自分自身の「保険」として知識武装しているのは、国家資格である船舶衛生管理者の業務について。医師でも看護師でもないのに薬剤投与や注射が許されている資格があることはあまり知られていない。すぐに医療機関に書かれないRemoteな状況下では、ほとんど素人と変わらない船舶衛生管理者に注射まで許可しているのだ。これとの対比でウィルダネスでの医行為の妥当性を説明できるのではないか、と。


posted by めっつぇんばーむ at 02:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | ウィルダネス・ファーストエイド
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