さて、捻挫や打撲の応急処置といえば?
そう、答えは、R.I.C.E.(ライス)ですね。
どこかで聞いたことがあると思います。
・Rest(安静)
・Ice(アイシング)
・Compression(圧迫)
・Elevation(挙上)
日本でもよく聞くこの覚え方ですが、昔からCompression(圧迫)がちょっと意味不明とはよく言われていました。
今日のファーストエイド講習の中でも、このあたりがちょっとした議論に。
その疑問は世界中、同じだったようで、実は2010年から、このRICEの定義が少し変わったようです。
新生RICEは次の通りです。
・Rest(安静)
・Immobilization(固定)
・Cool(冷却)
・Elevation(挙上)
結果的には、圧迫がなくなって固定となった、というのが結論です。
coolというのは他と語調がちょっと違って違和感を感じなくもないのですが、まあ、わかりやすくはなっています。
これは先日のアメリカ赤十字ARCのウィルダネス&リモート・ファーストエイドで学んだ最新情報。
ちなみに担当インストラクターはファーストエイド・ガイドラインの策定委員会のARC代表者です。
数年後には日本にも広まるかな。
この新しいRICEの元となる文献か、ガイドライン策定元の団体から公開されているホームページがあれば教えて欲しいのですが。
自分なりに調べたのですが、見つかりませんでした
この原本の開示はされていないようで、各団体の指導マニュアルに反映されている分しか確認できていません。
例えば、Boy scouts of Americaの"Wilderness First Aid Curriculum and Doctrine Guidelines"などが参考になるかと思います。これ、密かに貴重な資料です。アメリカ赤十字でいうところのインストラクター・マニュアルの内容がほぼ網羅されています。
http://www.texasonsitecpr.com/resources/boyscoutswfacurriculum.pdf
(PDF直リンクです)
少し古い記事へのコメントになってしまいますが,疑問点を二つほどありますので,お時間あるときにでもお答え頂けると幸いです.
(i) その後応急処置の世界では(旧)RICEが廃止され,新生RICEが広まっているのでしょうか.
(ii) Immobilization(固定)には生理学的な機序があるのでしょうか.
(i)についてですが,打撲・捻挫等への応急処置としてCompression(圧迫)は重要な生理学的意味があると考えています.
具体的には,Compression(圧迫)は炎症徴候の一つである腫脹のコントロールに寄与し,二次的な障害の軽減につながるのではないかと考えています.
この考えは私独自の考えではなく,以下の書籍から推論できることです.
『魚住広信翻訳.クライオセラピー―理論、テクニック、生理学.メディカル葵出版.2001』
なお,私はリハビリテーションに関わる医療者なのですが,(旧)RICEにおいてCompression(圧迫)は技術的に最もレベルが高く,適切なCompression(圧迫)がなかなかできていないという経験をよく目にします.
いずれにしろ生理学的に十分有効と考えられるCompression(圧迫)を応急処置から抜いてしまってよいのか疑問に感じます.
(ii)についてですが,Compression(圧迫)とは異なる意味でImmobilization(固定)も必要ではあると思いますが,勉強不足なため生理学的機序が分からない状況ではあります.
もちろん外傷の悪化という素朴なレベルでは十分に理解できますが,これはRest(安静)に含まれると考えられます.
あえてImmobilization(固定)をRest(安静)とは別に提示するだけの意味があるようでしたらご教示頂ければと思います.
Compressionが削除された理由についての私なりの考えですが、医学的云々より、ひとえに「難しい」のではないでしょうか? 医療者がやるのではなく、素人がやることですから。
北米の救急法では包帯などの時には、必ずCMSというのを教えます。末梢循環不全に注意しろってことです。
打ち身・捻挫などでCompressionをすると巻いた直後は適切な圧力だったとしても、その後腫れてきますから、より締め付けられて末梢循環が阻害されます。
腫れよりも、末梢循環障害の方が問題としてはクリティカルです。そんなリスクを考えると、あえて素人に圧迫させるべきではないという考えは妥当性があると思います。
固定と安静の違いがあるのかというご指摘は、なるほどと思いました。わかりません。