2010年05月12日

使える救急法には傷病者アセスメントシステムが絶対必要

今月末に日本で開催予定のアメリカ赤十字のウィルダネス・ファーストエイド(Wilderness & Remote First Aid)コースの資料がボチボチと届きはじめました。

テキストはまだで、内部資料的なものなのですが、そこからコース内容がだいぶ見えてきました。

やっぱり、実践的なファーストエイドには、「傷病者評価・アセスメントシステム」が必須なんですね。

今回受講するコースは2日間で、ウィルダネス・ファーストエイドとしては、Basicの位置づけになります。

以前、受講した別団体のウィルダネス・ファーストエイドは、Advancedコースで4日間。

上級コースだから、あそこまで細かく心拍数や呼吸数から体の中で起きていることをアセスメントするのかなと思っていましたが、今回の資料の中にも、American Red Crossの傷病者アセスメントシートがしっかり入っていました。やはりファーストエイドでは必須なんだということを再確認。



傷病者アセスメントシートに含まれている内容は、状況評価から始まって、心拍数、呼吸数、意識レベル(ABPU)、問診(SAMPLE)、全身評価など。

きっと繰り返されるシナリオトレーニングで、この用紙を記入しながら、傷病者アセスメント、何を観察し、なにが問題でどう優先順位を付けて対処していくか、を訓練していくのでしょう。

私が以前に受けた Wilderness Advanced First Aid でも、この思考パターン形成と、そのバッググラウンドにある医学知識の理解・習得に主眼が置かれていました。

骨折だったらどうするとか、火傷ならどうするとか、そういう各論的なことは、ある意味おまけみたいなもの、サプリメントといったら大げさでしょうか。

幹となる傷病者アセスメントができないで、サプリメントだけを知っていても、優先順位が付けられず決定的に悲しい出来事が起こりそう。

とかく日本の救急法は、枝ばっかりの羅列で、それらの有機的なつながりを教わることがないような気がします。

傷病者アセスメントの理屈がわかれば、その後に学ぶ各論の意味が有機的につながってきて、本当に使えるファーストエイドになると思うんですよね。(ショックの病態とバイタルサインの見方がわかるとだいぶ違いますよね)


CPRはある意味簡単です。

やることは決まっていて、不確定な要素があまりないから。

だからCPRは体育の授業と同じで繰り返しのトレーニングが強調されますが、ファーストエイドは体育会系のノリだけではダメ。

エビデンスのあることが少なく、この先も大きく変わっていく可能性が大です。ですから、幹となる医学知識と考え方をしっかり理解して、その末端部分はフレキシブルに対応。

そんなスタンスがファーストエイドを極めることになる気がします。


日本でもCPR教育はだいぶこなれた感じになってきました。煮詰まってきています。

しかしファーストエイド(応急手当)はまだまだ未開の地。

だからこそ勉強し甲斐があるというものです。


医療従事者にとっても、ファーストエイドの傷病者アセスメントの訓練は意味があることなんじゃないかなと思います。
posted by めっつぇんばーむ at 22:01 | Comment(6) | TrackBack(0) | ウィルダネス・ファーストエイド
この記事へのコメント
めっつぇんさん

お世話になっております。十夜です。

上記のWilderness & Remote First Aidの傷病者アセスメントシステムはFirst Aidに特化した形でしょうか?

ペアーズもアセスメントがメインかと思いますが、全然別物な感じでしょうか?

尚、ペアーズは看護士向けに開催しているとの事ですが、公開される事はございますでしょうか?
Posted by 十夜 at 2010年05月18日 16:47
十夜さん、こんばんは。

PEARSとの比較、いい視点ですね。

この場合、ファーストエイドは、CPAも含めてありとあらゆる急変・緊急事態の総称とご理解ください。意識がなければBLSになるし、意識があって会話ができれば、SAMPLE聴取とか全身評価に入っていって、いわゆる応急手当になります。

評価システムの根幹はPEARSもウィルダネス・ファーストエイドも同じです。アメリカでは傷病者評価ということである程度完成されたものなんでしょうね。

ただ、PEARSは小児の急変にフォーカスしていますから、呼吸状態とショックに関する鑑別がメインになっていて、医療者レベルですから、それなりに深いです。

PEARSの公開というのは、看護師以外でも受講可能かという点でしょうか? 十夜さんはよくご存じと思いますが、受講する妥当性があれば大丈夫だと思います。

でも結構難しいですよ。たぶんACLSよりタイヘンです。評価鑑別の仕方ですから、事前学習しようがないので。
Posted by めっつぇんばーむ at 2010年05月20日 02:42
めっつぇんん

お世話になります。十夜です。

お返事有り難うございます。
Wilderness & Remote First Aidの方が範囲は広そうですね。
PEARSは深さがある感じでしょうか?

PEARSに関しましては、傷病者評価に興味があります。
BLSも大切ですが、CPAになる可能性有無の評価が最優先かと考えています。傷病者評価の勉強が出来る教材を探していましたので、頭に浮かんだのがPEARSでした。
日本では教材販売が無いでしょうか?

Posted by 十夜 at 2010年05月20日 22:05
十夜さん、PEARSのプロバイダーマニュアルとインストラクターマニュアルは、ちょっと前まで日本でもACLS協会の子会社が売っていたんですが、初期入荷した分がぜんぶはけてしまったようで現在は欠品となっています。

もともと売れる本でもないので、今後はACLS協会が正式にPEARSを開催しない限りは入荷しないんじゃないかなと思っています。

仕方ないので今はアメリカからまとめて輸入して受講者には事前送付しています。


傷病者評価という点では、JPTECなどの外傷系コースが実践的でおすすめなんですが、オープンコースが少ない上に、医療者以外の受講がきわめて困難なのがネックです。

そこでウィルダネス・ファーストエイド、と私は考えています。

PEARSも確かにその考え方はバッチリと身につきますが、映像を通しての小児の呼吸様式の判断など、何度見てもわからなくてイヤになっちゃうという可能性もなきにしもあらず。それに用語が難しいですし(英語も日本語も)。

ですから、ファーストエイドの理解を深めたいという理由での市民の立場での受講はあまりお勧めしないというのが正直なところです。
Posted by めっつぇんばーむ at 2010年05月21日 03:14
めっつぇんさん
お返事有難う御座います。

やはりPEARSのマニュアルは入手困難なんですね。
アメリカから輸入は結構送料がかかりそうですね。
しかも日本語ではなく全て英語だと認識しております。確かに難しそうですね・・・。

JPTECはこの書き込みを拝見した後に考えましたが、おっしゃる通り医療者以外の受講は困難なようですね。
PEARSよりも敷居が高そうです。

そこでウィルダネス・ファーストエイドなんですね。
こちらは医療従事者であれ一般人であれ関係無い感じですよね?

何らかの形で傷病者評価のスキルを身に付けたいと思います。
Posted by 十夜 at 2010年05月21日 12:08
十夜さん、傷病者アセスメントの勉強会、たまにやってます。今度はARCの教育手法も取り入れてやっていこうと思ってますのでよければ遊びに来てください。
Posted by めっつぇんばーむ at 2010年05月24日 02:45
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