さて、AHAのハートセイバー・ファーストエイドコースはアメリカのOSHAという労働安全衛生局の基準に則った法定講習で、その講習を修了したファーストエイド・プロバイダーは、ざっくりいうならば日本で言うところの職場の衛生管理者(労働安全衛生法)のようなものです。
アメリカの労働法規や労働安全基準は驚くほど発達していて、ホント良くできています。たとえばAHAハートセイバー血液媒介病原体コースなんかも同じOSHA規格コースなのですが、これが医療従事者以外の一般市民の立場の労働者のためのコースというから驚き。
日本では血液が怖いと認識しながら働いている人がどれだけいることか。
日本の労働安全基準とアメリカの労働安全基準を比べると、まるで天と地くらいに違っていてびっくりします。
今日、ちょっと調べてみて驚いたのが、日本の法律が規定している事業所に置くべきファーストエイドキット(救急箱)に関する基準。
以下、労働安全衛生規則(最終改正:平成19年3月30日厚生労働省令第47号)からの抜粋です。
第9章 救急用具
(救急用具)
第633条 事業者は、負傷者の手当に必要な救急用具及び材料を備え、その備付け場所及び使用方法を労働者に周知させなければならない。
2 事業者は、前項の救急用具及び材料を常時清潔に保たなければならない。
(救急用具の内容)
第634条 事業者は、前条第1項の救急用具及び材料として、少なくとも、次の品目を備えなければならない。
(1) ほう帯材料、ピンセツト及び消毒薬
(2) 高熱物体を取り扱う作業場その他火傷のおそれのある作業場については、火傷薬
(3) 重傷者を生ずるおそれのある作業場については、止血帯、副木、担架等
職場に救急箱を置きなさいという決まりなのですが、その内容が古くさいったらありゃしない。
決定的にダメダメなのが、消毒薬。
いまどきこんなものを他人に勝手に使おうものなら傷害罪です。
消毒すると痛いですよね。これは正常な細胞が消毒薬の毒性で死んでいる証拠。
微生物を殺す以前に健康な人間の細胞を殺しまくって、しかも余計に傷を治しにくくするという百害あって一利なしの迷信の産物です。
止血帯。これも今は否定されています。
火傷薬? なにそれ? そんなものを勝手に塗っちゃまずいでしょ。
ということで、アメリカの労働基準に則ったファーストエイドを前にしたとき、日本の応急処置は歴史の遺物以下と言わざるを得ません。
いまだに幼稚園や保育園で子どもがけがしたら勝手に消毒されたという「傷害事件」を耳にすることがありますが、法律で消毒薬を準備しなさいと規定されているんじゃ、責められませんよね。
ひどいもんです。
別にアメリカ礼賛するつもりはありませんが、ファーストエイドの一端を見てみるだけで、こりゃ絶対にかなわないなって気になります。
今まで日本にあった消毒という概念が変わるまで、長い時間がかかりそうですね。
患者側の問題というのもありましたね。
「医者にかかったのに消毒すらしてもらえなかった」
「傷を消毒された、傷害罪だ!」
いずれの場合も、十分な説明が必要そうですね。
インフォームドなんちゃらで。