2010年01月16日

ウィルダネス・ファーストエイドの受講対象と特殊性

前回取り上げたウィルダネス・ファーストエイドに関してご質問をいただきましたので、この場でお返事させていただこうと思います。

ウィルダネス・ファーストエイドをネットで調べてみましたが、アウトドア等で有効な救命処置との事ですが、地震等で救急車や医療機関への搬送がすぐには困難な場合にも応用的に当てはまりますでしょうか?


その通りです。ウィルダネス・ファーストエイド(WFA)は必ずしも大自然の中という訳ではなく、医療資源(病院だったり医療従事者)に容易にアクセスできない環境すべてを「ウィルダネス環境下」として扱っています。

ですから、東京のど真ん中であっても大災害時は「ウィルダネス」となり得ます。

そう考えますと、ウィルダネスファーストエイドの受講対象は、

 1.アウトドアフィールドで活動する人
 2.高度な救急法・ファーストエイドの必要を感じる人
 3.災害時救急法に興味関心がある人

ということになりそうです。

高度な心肺蘇生法に関しては、アメリカ心臓協会(AHA)の BLSヘルスケアプロバイダーコース や、ACLSプロバイダーコース などがありますが、高度なファーストエイドとなると、実は日本にはありませんでした。

強いて言えば、日本赤十字社が展開している 救急法救急員講習 (24時間)が、災害時ボランティアを意識した高度なファーストエイドを含んではいますが、後述しますが、ウィルダネス・ファーストエイドとは中身は全然違います。


日本の既存の救急法・心肺蘇生法と比べて、ウィルダネス・ファーストエイド講習の特殊性を大別すると以下の二つに集約されると思います。

1.傷病者アセスメントシステム
2.ウィルダネス・プロトコル

傷病者アセスメントシステムというのは、乱暴に言ってしまえば診察法です。なにが起きたかわからない状況下で傷病者と接する際、何を観察して、どう評価して、どう判断(分類)して、優先順位をつけて対処していくか、という流れをシステマチックに学びます。

具体的には、呼吸器系・循環器系、神経系の解剖生理を学び、その評価観察の仕方を身につけます。ウィルダネス・ファーストエイドでもランクがありますが、上級コースになれば聴診や血圧測定(うろ覚え、、、ごめんなさい)なども含まれ、それらのバイタルが意味することを理解し、判断できるように訓練します。(予備知識のない市民が理解して判断できるようにさせるという点がポイント。インストラクショナル・デザイン的にこれが日本の救急法に欠けています)

ウィルダネス・プロトコルというのは、医療資源への搬送が間に合わないようなウィルダネス環境下でのみ許容される特殊な判断基準・処置です。たとえば脊椎保護を解除する脊椎テスト法、アナフィラキシーへのアドレナリン注射・抗ヒスタミン薬投与など。


これらの二本柱のうち、ウィルダネス・プロトコルに関しては、日本の医師法の関係上、注意が必要な場合がありますが、前者の傷病者アセスメントシステムは、ウィルダネス環境下に関わらずすべての場面で有効に使えます。

この部分を学ぶだけでもウィルダネス・ファーストエイドを学ぶ価値があると私は考えています。

やることは、救急隊員向けの外傷標準化プログラム( JPTECITLS )とほとんど同じなのですが、それを予備知識のない市民にどうやって教えてどう訓練するかというのが、アメリカで培われてきたウィルダネス・ファーストエイドの数十年のノウハウなんだと思います。

それにITLSもJPTECも一般市民には受講の機会を与えていませんので、市民の立場で学びたい人が学べる環境というのはこれまで日本にありませんでした。

ウィルダネス・ファーストエイド(WFA)に関して書きたいと思ったことはほぼ言ってしまいましたが、なんとなくWFAの概要が伝わったでしょうか?
posted by めっつぇんばーむ at 17:02 | Comment(4) | TrackBack(0) | ウィルダネス・ファーストエイド
この記事へのコメント
ウェルダネス・ファーストエイド、興味津々です。
以前からJPTECを受講したいと思っていたけどツテがなくて、、、

私も一応、災害医療支援の団体に所属しているので(被災地に行った事はまだありませんが)、できれば受講してみたいです。詳しい事がわかりましたら、また情報提供お願いします。

それと、先日AMR-ACLS受講してきました。1日コースってとってもハード!?とドキドキで参加しましたが、とっても楽しかったです。
Posted by M at 2010年01月17日 21:23
Mさん、ACLS1日コースおつかれさまでした。
楽しく修了できたと聞いてなによりです。

JPTECはメディカルコントロール下で行われていることが多いので入り込むの難しいですよね。

その点、アメリカのITLSは公募で受けやすいのですが、聞くところによると今ではJPTECを受けた人でないと受講資格がないらしいので、結局ダメですね、、、、

WFAは、今回私が関わっているのはおそらく受講人数的に公募はないと思います。関係者だけで受講枠は埋まってしまうと思います。

それ以外でしたら、富士山の麓でたまに別団体がやってます。また春以降くらいにあるんじゃないでしょうか。

ただしAdvancedコースなので50時間です。
仕事を休むのが大変かも。
Posted by めっつぇんばーむ at 2010年01月18日 15:55
そうなんですかぁ、、、残念です。
また機会があれば受講してみたいです。
Posted by M at 2010年01月20日 01:04
Mさん、ウィルダネス・ファーストエイドにもいろいろなランクがあって、市民向けの最高峰コースだと確か80時間って言ってた気がします。

北米の山岳救助隊とかアドベンチャーガイドに必要な資格になります。

私が受けたことがあるのは50時間コースですが、これが16時間だとどの程度になるのか気になるところです。
Posted by めっつぇんばーむ at 2010年01月22日 23:54
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック