2009年12月04日

特殊なプロトコル、日本の常識との違い、法的問題

さて、アウトドア・ファーストエイド講習2日目です。

今日のヤマ場は、脊椎損傷を疑った場合の脊椎固定。

JPTECなどの外傷コースでおなじみのパターンで、状況などから脊椎損傷が疑われる場合は、頭部保持を行います。そのまま、さらに評価を続けていくわけですが、困ってしまうのが、ここが救急車が入れるような都市部ではないという点。(そういう想定のファーストエイドを学ぶコースです)

救急隊向けのコースでもありませんから、バッグボードなんてものがあるわけではなく、それ以上の問題がなければ頭を両手で保持したところで動きはストップしてしまいます。

そこで、アウトドア・ファーストエイドでは、頭部保持を解除していい場合、というのを教えています。

簡単にいうと、両手両足のしびれ具合を確認、脊椎を一つ一つ圧迫して圧痛を確認、筋力検査、知覚の検査を行って、問題なければ明らかな脊損がないと判断します。

JPTECやITLS(BTLS)を受けたのはずいぶん前であまり自信がありませんが、こういったプロトコルはITLSでもなかったですよね?

いま受講中のコースでも、これは Wilderness Protocol ということで、容易に救助が得られない場所での特別事項として扱われています。

この Wilderness Protocol というのが、アウトドア・ファーストエイドの肝でもあり、私が学びたかったことでもあるのですが、実際に受けてみると違和感があったというのも正直なところです。


いちおうコースの最初で、 Wilderness Protocol は特殊な条件下で許させる特別なことなんだよという前置きというか、前提条件の説明はあるのですが、コースが進むにつれてその意識はだんだん薄くなっていきます。

私の場合、JPTECなどで脊椎固定の大切さはたたき込まれましたし、それを解除していいのは病院到着後、X-Pで明らかに脊損がないとわかった場合、という原則も知っています。

だからこそ、この Wilderness Protocol の特殊性がよくわかるのですが、普通にこのコースだけを受けると、脊椎損傷疑い時の標準的な対処方法が、この「脊椎テスト」を行うことかのような印象を受けます。

この教育カリキュラムの中でも、この「脊椎テスト」を行うことは、たとえば東京の町中の交通事故の対応では適応されないという前提になっているのですが、そのことが適切に受講者に伝わったとは正直思えませんでした。

まあ、もともとアウトドア現場、それも救助まで何日もかかるような場所を前提としたコースを受けに来た人たちで、町中はそもそも想定されていないと言われれば確かにそうなのですが、日本での外傷処置の「常識」つまりベーシックを知らないままにアドバンスドの部分だけを知ってしまうというのがどうなのかなと感じています。

今回の講師はアメリカから招聘されてきた生粋のアメリカ人です。

日本の法律や、業界の常識などはまったく知りません。

通訳に当たっている人たちも、日本の医療や法律に造詣がある人ではありません。

つまり、このコースの内容を日本で適応する場合の注意点、また問題点について理解している人が誰もいないのです。

そもそもアメリカの団体が日本で出張コースを開くのを、お手伝いしているだけというのが日本側企画者の主催者のスタンス。

本来はアメリカに行かなくては学べなかったことが日本で、日本語を介して学べるというのは非常にありがたいことで、とても感謝していますし、否定をするつもりはまったくありません。

基本スタンスはアメリカに行って現地のコースを受けてきたになるわけですから、なにも問題はないのですが、これを正式に日本に導入するとなると、日本の医療・法律事情についても検討してカリキュラムに追加していく必要があるのかなと思います。

考えてみれば、似たような問題は、ITLSやACLSにもあります。看護師や救急救命士が国家資格的に許されない薬物投与や外科的気道確保などを学ぶわけですから。

でもこれはみんな国家資格を持っている人が受けると言うことで、法律的な枠組みはわかっていて当たり前という前提条件があります。

しかし、このアウトドア・ファーストエイドに関しては、なにも知らない一般市民受講者を前提としています。

だからこそ、余計なことかもしれませんが心配してしまうのです。

コース開催に日本の資格を持った医師を立ち会わせろ、とは言いませんが、少なくとも周辺の日本国内事情について説明できる人、質問に答えられる人がいてほしいと思います。

日本の提携団体としては、そうした情報を持っていてもいいと思うのですが、そこまでは介入しておらず、ただ通訳をしているだけで、主催はアメリカの団体というスタンスでいるようです。

反対に考えると、そういうスタンスだからこそ、この医療法規の厳しい日本で開講できているのかもしれません。

マジメに考えて、医療監修を立てたり、厚生労働省に問い合わせをしたりすると、かえって面倒くさいことになって、そもそも日本では開講は無理ということになってしまいかねない点も想像に難くありません。


考えてみれば自分自身、AHAのハートセイバーファーストエイド・コースを日本で開講するためにずいぶん苦労したのを思い出しました。(日本では一般に使用が認められていないエピペンの使い方を教えることの是非について)

聞くところによると、AHAファーストエイドコースと同じOSHA規格で動いているメディックファーストエイドでは、実は日本ではエピペンは教えないことにしているという噂も。


今受講中のアウトドア・ファーストエイドコース、日本にも絶対に必要と思います。

本来は法律的な問題もクリアして堂々と開講できるようになるべきと思いますが、現状としてはアメリカのコースだから、という免罪符付きで開講されているというのが現状のようです。

それだけでも実は十分ありがたいこと。

今回受講の機会が得られたことに感謝しつつ、残りの2日間、学ばせてもらいたいと思います。


posted by めっつぇんばーむ at 23:06 | Comment(0) | TrackBack(0) | ウィルダネス・ファーストエイド
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