2009年07月30日

インストラクターの報酬について その1

今日は、もしかしたら禁断かもしれない「お金」の話をしようと思います。

ここでいう「お金」とはAHAの業界用語でいうinstruction fee、つまりギャラ、報酬、講師謝礼金のことです。

まずはじめに当たり前の前提条件ですが、アメリカ合衆国で生まれた資格制度であるAHA Instructorは、かの国では職業資格です。

たとえばダイビングのインストラクターとか、ヨガのインストラクター資格など、アメリカの認定資格が日本でもメジャーになってきましたが、そういうインストラクター資格を取ろうとする人は基本的にはダイビングの先生、ヨガの先生としてお金をもらって生徒に教えるのを前提としています。

心肺蘇生法(CPR+AED)もそういったダイビング業界と同列で考えると非常にわかりやすいです。(まあ、実際そうですし)

日本では、蘇生技術を教えるのは消防だったり日本赤十字社だったり、「ボランティア」というイメージがありますが、アメリカではそうじゃないんですね。

というのは「心肺蘇生技術を持っている」ということが社会的にステイタス(というより常識?)として認められ、対人関係の職種ではCPRが職業上の義務ともなっているため、学びたい人、学ばなくちゃいけない人がたくさんいて、それは社会的要求でもあるからです。

まあ、ここは日本だから、という意見もありますが、ところがどっこい日本国内で日本人が取得したとしても、AHA BLSインストラクター資格は、American Heart Association公認資格で世界で通用しますので、日本においても立派な職業資格です。まずこの点をきちんと認識しておく必要があります。(AHA規約上、日本でとった資格を元にアメリカに行って商売として職業講習を開くことも可能ですから)

その点、同じアメリカ系のCPR+ファーストエイド普及団体であるMFA(メディックファーストエイド)なんかは偉いなと思います。

MFA JAPANウェブサイトの中で、「MFAインストラクターは、プロとして講習活動に従事して頂くことが前提となっておりますので、公務員などサイドワークに制限がある方には向いておりません。」とはっきり銘打っています。

本来はAHAインストラクターであっても同じ状態なわけですが、あまりこのあたりのことが表だって語られることはないようです。

どちらかというと、日本救急医学会認定のICLSコースのような手弁当のボランティア活動の流れで語られるのには、正直違和感を感じます。

別にいいんですけど、本来のAHAインストラクターの活動スタイルが正しく日本に伝わらないというか、なんだかボランティア的な隠れ蓑を着せているだけのような気もしてしまうのです。


さて、ここにはいろんな所に所属するAHAインストラクターさんが集っていると思いますが、皆さんのところの報酬規定はどうなっていますか?

日本であっても、原則的にお金は出てますよね?
(そうじゃないと言い切られてしまうと、先が続かなくなってしまうのですが、、、)

あまりおおっぴらには語られないAHAインストラクター報酬の相場ですが、私の知る限り、日本ACLS協会傘下の岐阜トレーニングサイトさんだけは、ネット上で大公開してくれちゃってます。

AHA岐阜トレーニングサイト 講師謝金規定

これによると、サイト所属インストの場合は一日5000円とあります。外部からの参加は1万円。

これ、高いと思います? 安いと思います?

今のところAHAインストラクターのほとんどは医療従事者です。世間的には高給取りの人たち。それが一日がんばって5000円なんて安すぎ! と私は思います。

よくAHAインストを、「休みの日は講習会と称してバイトに励む」なんて陰口をきくことがありますが、こんな程度で「でもお金もらってるんでしょ?」と言われるのは心外。バイトというよりは有償ボラティアの範疇と私は理解しています。

お金は発生していても、儲けようという思いでは続けられないでしょうね。

アメリカでは職業義務、日本でも学会規定の義務ともなっている公認資格を発行できるAHAインストラクター資格なのですから、もっともっと評価されていいと思います。

金銭というのは評価の目安の一つでしかありませんが、BLS指導という特殊技能への評価も含めてもっと高くていいと思うのですが、さて皆さんはどう考えますか?
posted by めっつぇんばーむ at 22:22 | Comment(12) | TrackBack(0) | AHA-BLSインストラクター
この記事へのコメント
プロフェッショナルのパフォーマンスを向上する学習を促進するインストラクター(ファシリテーター)は、いわば超プロ、です。
医師、看護師、救命士が高度な気道確保やチームダイナミクスを学習し、現場でのパフォーマンスを向上することを支援する、しかも個人個人のやり方ではなく標準化された指導法を身につけて、受講生に応じた指導法を工夫する・・・これがACLSのインストラクター(ファシリテーター)です。
プロの仕事に報酬を支払うのは当然です。素人は有償ボランティアでいいでしょう。その区別をすること、これが世界標準です(AHAもERCも)。

引用されているインストフィーは明らかに安すぎます。
こんな額で陰口をたたかれるような風土を変えるには、まずインストラクターが自らの役割をプロとして自覚し、役割に見合ったスキルを身につけることが必要でしょう。

報酬はスキルに対して生じます。「インストラクター」というバッジだけでは報酬は生じません。

インストラクターは、自分自身に、「自分は報酬を取れる仕事をしているか?」と問うてみる必要があるでしょう。
Posted by 救急医 at 2009年07月30日 23:21
私自身はAHAのほかに,ICLSも細々と(少人数で趣味程度に)続けています.指導医クラスを相手にグッと気合の入ったコースをやる一方で,逆に裾野/底辺を開拓していくような地道なコースもやります.とくに院内BLSやICLSって,後者のニュアンスが強いですね.
底辺を広げる上で,ある程度のコストダウンはやむを得ないと思います.だって,コースに来ていただかないことには何も始まらないですから.そして,こういう受講生にとってAHAのコースは一見,高価すぎると感じられるのでしょうね.
インストラクター稼業が商売ならば,その利益は,客の評価との折り合いの中で決まっていくものです.悲しいことですが,半ばボランティアとして安売りしているのが私の現状です.
アメリカのように,資格がなければ病院に就職できないようになれば,われわれの評価もようやく認められるようになるのでしょう.あと何年かかるのでしょうね?

そういえば昔,まだ駆け出しのころ,今は無き某サイトでこのウン倍の報酬をいただいて,「今日の俺の仕事,こんなに出来なかったんだけど・・・」と,封筒片手に一人赤面したのを思い出しました ^^;)
Posted by Cozy at 2009年07月31日 01:57
ちょっと話がずれたので,前に続けて.

協○系は全国どこも,似たようなものではないでしょうか.いかがでしょう,今の相場は?
上納金がどの程度なのか,私は知りませんが.
日△系は学会のバックアップがあるので?,もう少し良いですよ.
Posted by Cozy at 2009年07月31日 02:10
救急医さん、早速のコメントありがとうございました。
AHAはもともとアメリカの組織で、そのアメリカでの前提条件とか実際を知らないで日本に輸入してもいろんなねじれやひずみができてしまいます。それが今の中途半端なAHA-JAPANなんじゃないかなと思います。問題は日本のAHAインストラクターがPAMすら読まずにアメリカ事情にまったく疎いという点。最近はコアインストラクターコースのおかげでだいぶアメリカ事情が浸透してきたようには思いますが、まだまだプロ意識は弱いですよね。

それなりの報酬を取れるプロのインストラクターを育てるわけですから、インストラクターコースの受講料はそれなりにかかって当たり前ですが、日本の風土からすると「高い!」とまだまだ思われてしまっています。そんな事情を説明するのも正直疲れました。(スイマセン、最近そんな話でけっこう疲れているので、、、)

Cozyさん、興味深いメッセージありがとうございました。
岐阜サイトのあの料金設定、実は私が聞き及んでいる相場からするとかなり安めです。まあサイトごとに懐事情や考え方が違うのかもしれませんが、どの程度まで統制されているのかは正直わかりません。

ちなみに私が属しているところでは、PAMに則り、受講料は開催インストラクターが独自に決めるということで受講者が払う金額もばらばらで、ギャラに関しても統一指針はありません。
Posted by めっつぇんばーむ at 2009年07月31日 02:49
そうですよね。
何が原因なのか、日本ではBLSのインストが
非常に軽く扱われているという感じを払しょくできないのは私だけでしょうか?

きちんと、コア・B-I・タスク・教育実習を受けて
インストになるのは結構大変でした。

でも、ある団体では、そんな段階を踏まずに
うまく書類だけごまかしてインストになっている人が
多過ぎて、実際に院内で教えている姿を見ると、
どれだけインストスキルを学んだのだろうかと
疑問に思うことがあるんです。

そういう人たちに、「インストなんて誰でもなれる」
と言われると、いささか腹が立って仕方なかったあの頃です。。。

あ・・・愚痴になってしまいました。
ごめんなさい(TOT)
Posted by まち at 2009年07月31日 21:06
インストラクターになってそれを維持するのが
非常に大変なのはわかりますが
インストラクターの報酬を上げるったって
どこから上げ分をひねり出すんでしょう・・・


受講生負担がこれ以上 上がるなら
よっぽど心肺蘇生に興味があるひとでなければ
AHAの講習は受けないでしょうね。
(良い悪いはともかく、
医療従事者だからイコール心肺蘇生に興味がある
わけではないですよね。まして一般市民ならなおさら)

興味のない人から見れば
「好きでやってるんでしょ〜」
「嫌ならやめれば〜」と言われるのが
オチのような気がします。
Posted by とおりすがり at 2009年08月01日 17:41
とおりすがりさん、こんばんは。
同じハンドルネーム方がこれまで何人かいらっしゃいましたが、「はじめまして!」の方でよろしかったでしょうか?

さて、ご意見ありがとうございました。
興味がない人は興味がない、というのはおっしゃるとおりです。

特に一般市民に関しては、日本ではとかくハートセイバーAEDを押してしまいがちですが、あれは「義務としてのCPR」を教える職業訓練ですから、日本で流行らないのは当然です。AHAインストラクターとして本当に市民に普及したいのであれば、ボランティアコースとしての位置づけのファミリー&フレンズCPRプログラムを活用するべきですが、残念ながらそういう気概の日本人インストラクターはなかなかいないようです。

さて本題のどこからインストラクター報酬をひねり出すかというお話しですが、受講者:マネキン比を3:1でやっているところは、それなりの報酬を出せるはず(出てるはず)ですよ。どこかの病院を使って会場費は無料なんてことも少なくないようですし。

それでも、報酬が低いってことは利潤分はどこに消えているんでしょうね?(私は知りません)

今のところ、AHAコースを受ける「義務」があるのは、日本では循環器専門医、それと来年からは麻酔科専門医くらいですが、昨今の気運からすると、どんどんひろがっていくでしょうね。

日本が独自の統一された標準化コースを作れない以上、AHAが受け皿とならざるを得ない状況はG2010になっても変わらないわけで、そうなるとAHAインストラクターの存在価値は今以上に高まります。
Posted by めっつぇんばーむ at 2009年08月01日 19:43
はじめまして でよろしいです(笑)

3対1でやっているところも、マネキン買ったり トレーナーも複数買ったり ハートシム買ったり(病院から文句を言われるので 除細動器を買ったり?!) いろいろ出ていくものはあるようです。報酬は5000円ってことはなさそうですが。私の知っているところはBはともかくAのインストラクターのなり手がいなくて大変なようです。

ところでアメリカ心臓病学会がらみの講習ですから
循環器は当然でしょう。麻酔科も義務になるんですか?インストも多いですからね。ドクターのインストはほとんどが循環器 麻酔科のように思います。

少なくとも内科や外科認定医はICLSでよい という風潮は当面変わらないでしょう。AHAコースが義務としてひろがるとはとても思えません。医者でも「(AHAは)講習料が高いからICLSで構わない」と言っているところに持ってきて、ものすごい人数ですよ?キャパが足りないです。
また幾多の困難を乗り越え、AHAのインストラクターにこの医師不足、看護師不足の最中、身を削ってでも名乗りを上げる人はそうたくさんはいません(救急救命士も限界があるでしょう)。そもそも循環器や麻酔科、救急にいる人以外で(助けないといけない)突然の心停止に遭遇する人は あまりいません。小児の心停止も院内では(小児循環器医くらいしかお目にかからないでしょう)めったにいません。循環器や救急以外では AEDを含め、除細動を行ったことがない人の方が多いでしょう。食事時の窒息が介護施設に多いのでそっちの方の教育に力を注ぐほうがいいかもしれませんが、たいていの方に基礎疾患があり、一般病院以上の人手不足のうえ、看取りの方に重点を置かれていることを考えると・・・
良くも悪くもその辺が医療従事者の間でモチベーションの差になってくることは否めないと思います。遭遇頻度と心肺蘇生のモチベーションの比例関係は 一般市民と同じような感じですね。

AHAインストの価値は今でも十分高いと思いますよ。
医療従事者全体からの割合を見てもそうじゃないですか?
Posted by とおりすがり at 2009年08月02日 01:23
インストラクター報酬に関して,
資器材購入にもお金がたくさん掛かる事は確かですね.

でも・・・
利潤が流れていく先があるってことです.
大きな声では言えません.

もちろんAHA本部でないことは確かです.
Posted by cozy at 2009年08月03日 13:26
とおりすがりさん、確かにACLSインストラクターは敷居が高い感じ、ありますよね。でもきっと医師限定という暗黙の了解がなくなれば、それなりに増えるんじゃないでしょうか? だってICLSインストラクターなんて、多くが看護師と救急救命士ですよね? 興味があってボランティアで教えたいと思う人がこれだけたくさんいるのですから、入り口を狭めなければACLSインストラクターになりたい人はそれなりにいるんじゃないかというのが私の考えです。昔はAHA ACLSは難しいというイメージがありましたが、今ではICLSと完全に反転している気がしています。実際、ACLSの方が簡単というか取っつきやすくて、ICLSの方が変に難しくなってやいませんか?(教わる内容も教える側としても)

麻酔科学会のACLS受講義務化については、http://www.anesth.or.jp/news/000997.htmlをご覧ください。

心停止に遭遇する可能性を考えると、、、というお話、もっともだと思います。ただ私が思うのは「医療者として恥ずかしくない?」という点です。世間では医師・看護師というと急変対応のエキスパートと信じています。実際のところ教育カリキュラムを考えると"幻想"なのかもしれませんが、市民の期待は、医師・ナースはどうにかしてくれると思っています。ナース以外の友達と歩いているときに町中で人が倒れたときの友達の視線。。。。なーんてことを考えると医療者として恥ずかしくないレベルはキープしたいなと私は考えてしまいます。でも周りの友達ナースに聞くと、見ないふりをする、なんて人、けっこういるんですよね。モチベーションの差といえばそうなんですけど、下手すると市民以上の意識の低さ、世の中の人がしったらびっくりだろうなとは思います。

考えてみれば、私がいまこうして活動しているのも、そんなちょっとした思いからなのかもしれません。



話は変わって、cozyさん。利潤が流れていく先。まあ、私みたいに個人で活動していれば本業とは別の趣味の範囲ですから、もうけようと損しようと関係ありませんが、組織的に動く以上、運営費だったり人件費がかかってきます。また組織を大きくしていかなくちゃいけないでしょうし。蘇生教育で黒字を出すことは悪いことではありません。赤字だったらボランティアだって長期的な継続は不可能ですから。お金の流れの原理はそんなところ何だと思います。あとは透明性が問題かな。アメリカのAHAが料金を決めているから、「高い」といわれても自分たちにはどうにもできないというような嘘ないいわけは罪ですよね。
Posted by めっつぇんばーむ at 2009年08月07日 01:15
はじめまして。現在2016年8月であり、このブログ記事から7年ほどたって初めて拝見しました。
私はこれから、AHA、BLSインストラクターの資格を取得し講師として仕事をしていきたいと思っています。
そこで仕事ですが、企業や施設などに営業し個人で契約してそこで職員に指導していくような感じで仕事をしていきたいと思います。形態は個人事業主かなにか申請してと思いますが、まずは収入がなければ申請し得ても仕方ないので、まずは完全個人で売り込みバイトAHAのBLSインストラクターの指導するやり方などできませんか?
Posted by OOKEN at 2016年08月07日 09:16
できますよ。私はそれで1年ほど生活していた時期もあります。ただAHA講習の需要は医療者が中心なのが日本の現状ですから、やるんだったらMFAとかEFRの方がいいんじゃないでしょうか?
Posted by めっつぇんばーむ at 2016年08月14日 10:40
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