2009年07月28日

G2010、市民の人工呼吸省略、ほぼ確実に

いつも勉強させてもらっている「興部進歩の会OPS」ウェブサイトからの情報です。

心肺蘇生時の人工呼吸省略の妥当性と、AHAが発表したハンズオンリーCPR(Hands only CPR)、ならびにヨーロッパ蘇生協議会ERCならびにILCORがそれに反発している点は、初期の頃からここで取り上げてきました。

人工呼吸はもう教えない!? 東京発のLANCET論文
人工呼吸なしの心肺蘇生法(LANCET論文)に関するAHAの公式見解
「胸骨圧迫のみのCPR」に対するアメリカ心臓協会(AHA)の立場−"Currents"の最新号より
3月31日にAHAから重大発表!?
速報! AHAが胸骨圧迫のみの Hands-Only CPR を正式採用
胸骨圧迫only心肺蘇生法=日本版救急蘇生ガイドラインも見直しへ
実は目新しくはない!? これまでもこれからも Hands-Only CPR
ハンズオンリーCPR/日本蘇生協議会のプレスリリース


これまで意見を保留、というよりむしろ反対していた世界の大御所、ヨーロッパ蘇生協議会(ERC)が、このほど、バイスタンダーCPRに関して、人工呼吸を省略するという方向性を打ち出したそうです。

ヨーロッパ蘇生協議会の機関誌であるResuscitation誌に発表されたそうですが、私は原著は確認していません。

以下興部進歩の会ウェブコンテンツである「090712ガイドライン2010:バイスタンダーは人工呼吸不要」からの要約です。(表現は私なりに変えています)

新たにERCが打ち出した市民向け教育プログラムは3段階。

1.入門編
2.標準コース
3.対応義務のある市民向け

このうち、幅広い啓蒙活動として普及させる入門編では、胸骨圧迫の習得に重きを置いて人工呼吸は教えない、ということにしているようです。もちろんこれで終わらすのではなく、ぜひステップアップしてより上級のコースを受けてねというスタンスは残しているようですが、これってきわめて実践的と思います。

2の標準コースにしても、人工呼吸については「必要な場合がある」ということは伝えるにしても、必須ではなく、抵抗がある場合には省略することもあるようです。

現在の一般的なスタイルのCPRは市民としては最上級の対応義務のある人向けでしか教えられません。つまり義務で行うCPR以外はハンズオンリーが標準という位置づけ。

こうなると、これまでは一緒くたにされてきた市民向けCPRの中でも、義務としてのCPRと善意で行うCPRの違いが明確に切り分けられてくるので非常に好ましいと私は感じています。

これまでもここで何度も主張してきましたが、有料講習・無料講習のジレンマも、大本の問題は日本には「義務としてのCPR」という概念が存在していないのがネックだと考えています。

ERCのこのスタンスがそのままガイドライン2010に反映されるかどうかはわかりませんが、かつて医療者向けCPRと市民向けCPRが区別されたように、市民CPRもさらに区分されることで、教える側も教わる側も意識付けが明確になり、BLS普及が進むのではないかと思います。



ERCの胸骨圧迫オンリーCPRの際だった点として、AHAのハンズオンリーCPRと違って、その対象が「目の前で卒倒した成人」に限定されないという点も非常に興味深いです。

これまでさんざん批判していたのに、ふたを開けてみれば鷹派であるAHAより過激(?)な内容というのはなんともおもしろいです。むっつりとしたイギリス紳士がにやりと笑っているのがなんとなく目に浮かびました(笑)


ということで、これまで時期尚早として反対していたERCが、人工呼吸省略という方向性を打ち出したので、時期ガイドライン2010で、市民向けCPRでは基本的に胸骨圧迫のみというのはほぼ確定と考えられます。


あとは人工呼吸の省略の形で指導する対象をどこで線を引くかという点が、ERC対AHAでせめぎ合いが続きそうですが、いずれにしても何となく安心する形に収まりそうでほっとしました。
posted by めっつぇんばーむ at 20:54 | Comment(6) | TrackBack(0) | AHA-BLSインストラクター
この記事へのコメント
暑い中でも精力的な情報収集に、毎度ながら感服しております。

ハンズオンリーCPRは、自分のところでも市民啓蒙のキーとして目玉にしてます。

6月7月と某練馬区の啓蒙活動でも、小学生低学年の女子児童にハンズオンリーCPRで体験してもらいました。
教わる方の年齢制限(理解し実践できるか)を研究していた事例があったのですが、小学校低学年が対象でも自分的には「学んでもらえた」感触はあります。
なにせ時間が20分もなかったので…
今後、どの年齢層にはどこまで学んでもらえるのか?を独自に調査実験してみたいです。

2010ガイドラインが楽しみだなぁ。
Posted by のりぷ at 2009年07月30日 13:35
暑い中でも精力的な情報収集に、毎度ながら感服しております。

ハンズオンリーCPRは、自分のところでも市民啓蒙のキーとして目玉にしてます。

6月7月と某練馬区の啓蒙活動でも、小学生低学年の女子児童にハンズオンリーCPRで体験してもらいました。
教わる方の年齢制限(理解し実践できるか)を研究していた事例があったのですが、小学校低学年が対象でも自分的には「学んでもらえた」感触はあります。
なにせ時間が20分もなかったので…
今後、どの年齢層にはどこまで学んでもらえるのか?を独自に調査実験してみたいです。

2010ガイドラインが楽しみだなぁ。
Posted by のりぷ at 2009年07月30日 13:36
お久しぶりです。大阪の某団体では、PUSH キャンペーンとして胸骨圧迫のみのCPRを広めようとしています。DVDとあっぱくんなる箱型のCPR人形(受講者1人につき1個使用)を使って、1時間のコースで、胸骨圧迫とAEDの使い方に特化しています。3月の大阪の会議では、うちの理事が発表してERCの先生から批判を浴びましたが、バイスタンダーCPR率の低い国だから、フルコースの講習を行うより、短時間で取り組みやすい講習を多くの人にやってもらうんだと切り返しておりました。時期尚早かと心配もしましたが、ERCも同じような方向になったようで、これからは全国に広めていけたらいいなあと思っています。
Posted by さっちゃん at 2009年07月30日 17:06
のりぷさん、コンプレッションオンリー、ガイドライン2005発表の時点から「これだ!」と思って、プライベート講習の基本骨格にしちゃってます。人工呼吸はAEDと一緒に感染防護具が到着してから使用するという前提で進めてます。それが一番現実的だと思うんですよね。

さっちゃんさん、どうもお世話になっています。

> 3月の大阪の会議では、うちの理事が発表してERCの先生から批判を浴びましたが、
> バイスタンダーCPR率の低い国だから、フルコースの講習を行うより、短時間で
> 取り組みやすい講習を多くの人にやってもらうんだと切り返しておりました。

この場面、私もよく覚えています。
会場にいた大半の人たちが岩見先生の切り返しに「拍手!」立ったと思いますよ。
それくらいにERCの反駁は説得力のないものでした。
それが今回のこんな発表。大人の事情って大変だなって他人事風にまとめちゃいましょう(笑)
Posted by めっつぇんばーむ at 2009年07月31日 02:38
ぎゃー

携帯から書き込んだときに二重投稿してました。
めっつぇんさん、後のコメント消しちゃってください><

ハンズオンリー(コンプレッション)CPRの場合、めっつぇんさんが仰る様に、人工呼吸はAEDと感染防護具が来てから、それも「(人工呼吸)できる自信があれば」と教えています。「悩むなら押せ」と。
市民向けなので、手順も判断部分も簡易にそして明確にしたほうが「とっつきやすい」ですから。難しいと思わせないこと、重要ですね。
Posted by のりぷ at 2009年08月05日 11:00
難しいとは思わせないこと、おっしゃるとおりとっても大切なポイントだと思います。

でも、責任ある立場の人たちに教える際には、どこまでそうすべきか、悩むところでもあります。
Posted by めっつぇんばーむ at 2009年08月07日 01:30
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