2009年01月06日

「コース受講料に定価はない」の話

いつの間にか新年が明けていましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?

病院当直が続いた上に遠方への泊まりがけの出張講習、自宅待機の on call 番で呼ばれまくりで、怒濤の年末年始を通過して感じのめっつぇんです。

最近、愚痴っぽい日記を書き散らかしていただけでしたが、今日は少しマジメに一本のテーマで書いてみようと思います。

今日のテーマは、AHA ECCプログラムコースの受講料について。

BLSヘルスケアプロバイダーコース・・・1万8千円
ACLSプロバイダーコース・・・3万8千円


なんとなく、どこもこんな値段でコース開催をしていますが、AHAコースに定価、というか料金規定はないってご存じでしたか?

そう、実は主催するトレーニングセンター、またはインストラクターによって値段は自由に決めていいことになっているんです。

根拠はこちらです。

Course Fees:
The TC and/or Instructor determine the course fee(s). The AHA does
not set or receive fees for courses.
(PAM 2008, p.22)


AHAのコース運営マニュアルにはちゃんとこんな風に書かれているんです。

あとよく勘違いされていますが、受講生が払う受講料は、一部たりともアメリカ心臓協会へは支払われていません。すべてインストラクターと、その所属するトレーニングセンターへ支払われるものです。大元の本部への上納金のようなものは一切ないんですね。

いくら日本で年間何万人がAHAコースを受講しようとも、AHAにはお金が入りません。

じゃあ、AHAはどうやって収入を得ているのか、どうやってあんなお金をかけたDVD教材やマテリアルを開発しているのかと言えば、その主な財源は受講生の皆さんに買ってもらうAHAテキスト(プロバイダーマニュアル)なんです。(インストラクターマニュアルやDVDもですけど)

だから、AHAは受講生ひとりひとりが自分用のマニュアルを準備するように、と求めているわけですね。

ですから皆さん、テキストはきちんと購入してくださいね。

テキストが売れないと、次期ガイドライン2010のコースDVDは、ガイドライン2000時代みたいなしょぼい舞台袖での演技、みたいなのに戻っちゃうかも知れませんよ(笑)



さて、話は逸れましたが、AHAコースの受講料に定価はないという話でした。

じゃあ、どのようにしてAHAコースの料金が決まるのかという点ですが、これはひとえにコースを主催するトレーニングセンターや、運営を行なう法人や個人の懐事情によります。

日本でITCとしてはじめてコースを開催した日本ACLS協会が決めた料金がなんとなくの日本標準になっている感じがありますが、どのようにしてこの値段になったのかは私もよく分かりません。(確か当初はBLS-HCPは1万6千円だった気がするのですが、途中で値上がりしたんでしたよね?)

カード発行はトレーニングセンターが行ないますので、トレーニングセンターが定めたカード発行手数料というのが、最低限の「原価」ということになります。

これにはAHA国際ルールに基づいて加入される障害保険料とAHAから購入するカードのマテリアル代(アメリカでの定価は1枚1ドル25¢くらいです。日本に輸入すると送料・関税で倍くらいになりますが)、それに登録・カード発行事務手数料、トレーニングセンターという法人を運営維持するための経費が最低限加算されているはずです。

この最低限の原価に、さらに加算されるのがマネキンやDVDなどの器材の減価償却費、人工肺等の消耗品代(AHAコースでは1回ごとの交換義務があります)、会場費、インストラクター人件費、事務連絡経費などです。

こうして、本来は受講生に負担してもらう受講料が決まるはずなのですが、なぜかほとんど横並びなのが現状。

もしBLSで1万8千円というのが妥当な金額だとしたら、私はふだん受講生ひとりにマネキン1体を専用で使ってもらっていますので、マネキン:受講者比=1:3で開催しているところに比べて消耗品代は3倍かかることになります。これで単純計算で3,000円アップ。また一回に講習を行なう人数も、自分ひとりで行なう場合は6人までに留めていますので、会場代等の配分も割高気味に。

そう考えれば、本当はもっと高い値段をとってもいいのかもしれないなとも思います。
実際、マネキン:受講者比=1:1にすることで、マネキンに触れる練習時間は増えますし、少人数制ですから受講生のニーズに合わせたきめの細かい指導ができます。このクォリティをもって、他より割高にする妥当性はあると思います。

あと、計算が難しいのは、器材の減価償却やインストラクター資格維持のための経費等をどう乗せていくかです。私はマネキンを成人・乳児各4体ずつとAEDトレーナーやバッグバルブマスクを個人購入して私物として持っています。

そういった初期投入費用を考えると、少なくとも50万円くらいはかかっているかなぁ。

それに加えて、インストラクターとして独立するまでには、手弁当であちこちに修行にいったりもしてますし、トータル費用でいったら100万円は超えているはずです。

もしこれを本気で取り返そうと思ったら、一体どんな金額設定になるのか、、、
もしアメリカのようにビジネスとして活動するなら、本気で考えなくちゃいけない部分なんでしょうね。


ACLSプロバイダーコースなんて、考えてみたらスゴイです。

ハートシムが200万円くらい。TCP機能付き除細動器が2-300万円。

たいていのところは病院の器材を無料借用しているのが現状で、コースのためだけにこれらを購入したら、間違いなく現行の4-5万円前後の受講料ではコース開催できないでしょうね。


反対に値段はどこまで下がるかという話ですが、私もインストラクター個人として、いちおう1万8千円を標準にしていますが、この金額でコース開催することは少ないです。

というのは、私の場合は自主開催する場合は勤務先の病院内がメインで、その場合、会場費は無料ですし、マネキン等の主な器材は病院のものを使っていますので、とうぜんその分は1万8千円から値引きします。

もしこれで、病院側が交換用の肺を用意してくれて、講習自体を"病院業務"と見なして業務時間内にやらせてもらえれば、ほんと最低限のカード発行手数料+傷害保険代だけで済むことになります。

本当は病院職員全員が、院内義務研修としてAHA BLSコースを受ける、というくらいにまで持っていきたいのですが、それにはもうちょっと時間がかかりそうです。

でも、もしそうなれば、病院の宣伝になりますよね。

地域住民や利用者にとっては、「あの病院のスタッフは全員蘇生の国際資格を持っているから安心」ということになりますし、研修医とか医療スタッフ募集の時も、「あの病院に就職すれば普通は1万8千円かかるAHA BLS資格がタダで取れる!」、とかね。

そんな提案をなんども上層部に出しているのですが、いまいちピンとこないようで、もったいないなぁと常々思っています。

病院機能評価で、そのうち職員へのBLS教育に関する項目ができるのは間違いないと思いますので、そうにでもなれば、動いてくれるのかなと期待しています。


2009年に入って、AHA日本循環器学会国際トレーニングセンターが、トレーニングセンターとして受講料の大幅値下げを行ないました。

BLS HCPコース、ACLSプロバイダーコースの受講料改定について(2009.1.5)

2009年1月開催のJCS・ITC主催のコースから受講料を下記の通り改定します。

AHA BLSヘルスケアプロバイダーコース
旧18,000円→新15,000円

AHA ACLSプロバイダーコース
旧38,000円→新32,000円

両コースとも会員・非会員に関わらず受講いただけますので、より一層のお申込みをお待ち申し上げております。


これまでは、日本ACLS協会に習って横並びでしたが、今回の料金改定、きっと業界には大きな波紋になるでしょうね。

私のところはもともとPAM通り料金は自由設定でしたから、いいですけど、これを機に、受講料ってどうやって決まるの? という受講生の皆さんからの疑問が湧くかなとおもって、今回のような記事を書いてみました。


posted by めっつぇんばーむ at 23:19 | Comment(8) | TrackBack(0) | AHA-BLSインストラクター
この記事へのコメント
日本ACLS協会の中でも、トレーニングサイトによっては受講料に差があるようです。

BLSで2,000円くらい(リニューアルとの差ではなくて・・・ですよ)、ハートセイバーAEDだと6,000円くらいの違いがあったと思います。
探せばもっといろいろな金額設定があるかもしれません。

めっつぇんばーむさんの記事にありましたように、会場費などの関係によって、器材を適正に維持管理しつつ経費を安くあげながらコースを開催していけるなら、それを受講料に還元することは、受講者さん側からみれば嬉しいことですよね。

循環器学会ITCも受講料改定するようで、皆さんいろいろと工夫されているのでしょうね。

今年もちょこちょこといろんなことがありそうです。
そんなこんなの積み重ねが続けば、年末には受講料以外のことでも、今は予想もできないような出来事というか状況が生まれているかもしれないなぁ・・・なんて(^.^)

今年も勉強させてくださいね。
Posted by IDFU at 2009年01月07日 07:02
いつも拝見しております。某大手ITCでBLSインストをやっております

めっつぇんばーむさんの病院内改革たいへん参考になりました。確かにAHAのコースが激安で開催できるのなら病院としてのアピールとなると思います。地域住民へのアピールもさることながら、モチベーションの高い医療従事者の採用にもつながると思います。

循環器学会ITCも受講料改定について初めて知りました。このブログは本当に情報の宝庫ですね。基本コースの価格改定もさることながら、更新コースの新設も画期的ですね。高いAHAのコースですが、資格維持のためには多少の割引があったとしても再受講が基本でしたので
半額以下で受講できるのはすばらしいと思います。
資格だけでなく、スキルを維持する意味でも更新コースの持つ意味は大きいと思います

私の所属している所では、価格改定は当分しないと思います。むしろ、インスト料などを切り詰めて予算を確保している状況です。理由としては、地方に出張開催して地域への普及をしたり、物品を購入するためです。
受ける人にとっては高い受講料ですが、コースを維持するのには大変お金がかかります。
循環器学会ITCも受講料改定は天晴れですが、脅威でもありますね。

今後も勉強させていただきますのでよろしくお願いいたします。
Posted by 777 at 2009年01月07日 07:25
年末年始も仕事三昧ということでお疲れさまでした。

受講料は安いに越したことはありませんね。
特に私は一般市民ですのでやってみたいけれども金額が・・・
という人も多くいると思いますので。

非会員でも受け入れるJCS-ITCもかなり気合が入っている様子は十分に
伝わってきますね。
その上、値段がほかのITCよりも割安となればどこかのITCを十分に
脅やかす存在になるでしょうし。

もっとも非会員=一般市民とは限りませんので循環器医師満載のコースで
BLSはともかくACLSプロバイダーを受けるのはチョット.....

ですので、プロバイダー受けまくり予定の私は別のITCを選択します。
(でも1回ほかのITCで受けて試しにJCS-ITCにも行ってみようか、ん〜)

ちなみに病院全体でのAHA資格の取得については良いことだと思いますが
患者側からの見方としては「そんなもんなくてもちゃんとできるのでしょ!」
ですね。
資格がないとできないものではないですからその辺りを上の方々は
お考えになられているのではないでしょうか。
(私が仮に上であったとしたら全員PALS/ACLS-EPまでは取得させたいですが)

BLSにしても経費がものすごくかかっているのは間違いないので
私は18,000円でも安いと思います。
(消防は無料に近いのですがその分、マネキンの服が真っ黒だったり)

ムリに下げたりせずにAHAのPAMで謳っているいる高い質の講習を
提供してもらえればそれで十分です。
Posted by サブ at 2009年01月07日 10:43
いつもながらの質量ともに充実した情報発信、ご苦労様です。
書き出すときりがないので、一つだけコメントさせていただきますと、、、

>本当は病院職員全員が、院内義務研修としてAHA BLSコースを受ける、というくらいにまで持っていきたいのですが

いい看板にはなるでしょう。
でも、蘇生技術を身につけるという本質的な意味ではいかがでしょうか。

昨年、当院でBLSコースを開催していただいたのですが、研修医を実質的に強制参加にしたら(お恥ずかしながら)モチベーションの低さやマナーの問題などで評判が悪かったです。
外的要因と内的要因、モチベーションの高さ低さでコースのやりやすさは全く異なってきます。

如何に院内のモチベーションを上げるかが大事なのでは、とその痛い経験以降考えるようになりました。
Posted by おぢさん at 2009年01月07日 12:51
IDFUさん、ACLS協会の中でも料金差、あるみたいですね。
ハートセイバーAEDコースなんて、ITC公式ウェブは9,000円ですけど、公募で2-3,000円でやっているのを見たことがあります。

でも一方で疑問に思うのは、私の地元では公立病院を含めあちこちの病院内で某協会主催のBLSコースを頻繁に開催しているのですが、会場となった病院の職員であっても受講料は1万8千円で変わらないという点。会場を提供する病院とどういう契約になっているのかはわかりませんが、不思議です。

777さん、私の今年度の目標は、今の勤務先病院を(いわゆる)トレーニングサイトとして地域に認知させて公募コースを開催するという点です。病院内にBLSインストラクターが約10名誕生して、一気に夢が現実に向かって動き出しました。AHAコース開催も病院職員対象でしたら、病院会計課も動きやすいみたいですが、公募コースとなるといろいろやっかいなようで。。。おそらく最初は病診連携の開業医さんたちに対するセミクローズドなところから始まることになると思います。

更新コースですが、循環器学会関係者からはACLSに関しても成功裏に終ったと聞いていますが、現実、かなりきびしいのでは? というのが私の見方です。プロバイダーコースを修了して2年後にいきなりメガコード練習を1回しただけで、実技試験にパスするのか、、、おそらくみんなBLSの部分で落ちるんじゃないかな。

HCPのリニューアルコースにしても、私、一回開催したことがありますが、ふつうにやったらリミディエーション(補講)なしに合格させる自信がありませんもん。

更新コース、本当にできる人には良い制度ですが、その恩恵にあずかれるだけのバリバリの人はいったいどれだけいるのか。。。。

サブさん、サブさんへのお返事は、一部1月8日付けの日記本編で取り上げさせていただきました。"プロバイダー受けまくり"ということですが、同じコースを何回も受けたりされているんですか?? 「一番の学習は教えること」なんて説もありますが、さっさとインストラクターになられてしまっては?

ただ、AHAの国際ルールのマイナーチェンジで"ヘルスケア・プロフェッショナル"以外の方がAHA-BLSインストラクターになるためにはHeartsaver Firstaid修了カードが必須になっちゃいました。このせいで志がありながらもインストラクターへの途が閉ざされている状態の方も多いと聞きます。会場さえ準備していただければ、プライベートでもHeartsaver Firstaid Course、開催しますので必要でしたらご相談くださいね。


"おぢさん"さま、いつも鋭いご指摘ありがとうございます。

お話しを聞くに及んで、コアインストラクターコースを思い出しました。やる気のない受講生をどう巻き込んでいくかというあたりの話ですが、日本ではある意味恵まれていますよね。受講生は基本的にみんな自主的に自腹を切って受けに来るわけですから、一部資格狙いのDr.を除けばみんなモチベーションが高い。でもそれはAHAからすると日本の特殊事情なんだと思います。

アメリカ本国では2年おきのdutyですから、昨年おぢさんさまが経験されたような状況が本来のAHAコースの雰囲気なのかも知れません。

いまはまだ希望者だけが受けに来るのが現状ですが、やがて間違いなく日本もアメリカのようになります。というか、そうならなくちゃマズイです。(受講義務と言う話です)

そんな嫌々受けに来る人をいかにノせるか、そんなところにインストラクターの力量が反映される時代がもうすぐそこまで来ています。

他の方面からもよく言われるのですが、受講料が安くなればなるほど受講生の質が落ちるとか、外部から講師を呼ぶからモチベーションが上がるんだとか、、、。まあ、それも否定はしませんが、今の状態が特殊すぎるだけと私は思っています。
Posted by めっつぇんばーむ at 2009年01月08日 02:55
僕はちょっと前まで
ひとりあたり10ドルをAHAに寄付してきました
Posted by hidemd at 2009年01月10日 07:12
某ACLS協会でも受講料はバラバラですよ。限定コースなんて10000円以下でやっている事もあるみたいですよ・・・
Posted by 通りすがり at 2009年02月08日 23:04
通りすがりさん、コメントありがとうございます。

限定コースってBLS-HCPでの話ですか?

どなたかのブログで某協会のカード発行手数料は5000円だって書いてましたから、5000円+肺交換代で1000円、送金手数料等雑費で500円程度。合わせて7000円程度でも出来るんじゃないでしょうか。送金とかを別の有料コースと混ぜちゃえばもっと安くなるでしょうし。

ただそういう自由な金額設定を出来る裁量を持っている人がどれだけいるのか、というよりコースを自由に開催出来る人って限られそうですね。
Posted by めっつぇんばーむ at 2009年02月09日 18:57
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