2008年10月24日

着実にひろがる非医師ACLSインストラクター

恥ずかしながら、私はAHA公認のACLSインストラクターです。
職種は看護師です。
当然、医師免許は持ってません。

ちょっと前までは、ナースでACLSインストラクターだなんて「えっ、あり得ない〜」と言われてしまうような感じだったのですが、ここ1年くらいでだいぶ世相が変わってきました。

これまでは頑なに医師以外にACLSインストラクター資格取得を許さなかった日本ACLS協会(JAA-ITC)でも、救急救命士や看護師にACLSインストラクターコースへ進む道を開きだしたそうです。

⇒『コメディカルのACLSインストラクター誕生』(ブログ:毎日が元気印)


それはこっちから言わせると反対に「えっ、あり得ない〜」という感じです(笑)

それがITCとしての大規模な方向転換なのか、それとも各トレーニングサイト単位での判断なのかはわかりませんが、少なくともかつての常識が崩れはじめたのは確実。

◆   ◆   ◆


日本で5番目にAHA本部とトレーニングセンター契約を結んだ福井県済生会病院。たまたまその院内広報紙(?)を見る機会があったのですが、記事の中にナースでACLSインストラクターの方が紹介されていました。日本でいちばん新しいACLS-ITOである福井県済生会病院ITCでも、ACLSインストラクターを医師に限定しているわけではないようです。

日本蘇生協議会ITCでは、ナース・ACLSインストラクターによるナースのためのACLSプロバイダーを開催すると公式ウェブで宣言しています。 → "ACLSプロバイダーコース for Nurses")

日本循環器学会ITCはどうなのかなぁ。JCS-ITCではACLSインストラクターになれなかったからといって、JRC-ITCへ流れてくる人もいますので、まだ認めてないのかな。

◆   ◆   ◆


ちょっと前にこのブログでも熱い議論が飛交ってました。

ナースがACLSインストラクターになることの是非について。

ICLSなんかはナースや救命士が中心にやっていたりするのに、なんでAHA-ACLSになると「あり得ない」と言われるのか、私にはさっぱり理解ができませんでした。

おそらく誰かが作り上げたAHA-ACLS神話という幻想があったんだと思いますが、複数のトレーニングセンターが共存する社会になって、ようやく本来のAHAの精神が日本にも根付いてきたのかなと思っています。

というのはアメリカでは、ACLSインストラクターといえど、医師よりコメディカルの方が圧倒的に多いからです。

私がACLS Instructor資格を取ったのはアメリカでした。米国内のトレーニングセンターに行って資格を取ってきました。(余談ですが、日本国内の米軍基地の中でもアメリカTCのインストラクター資格が取れるそうです。以前そんな人のレポートを読んだことがあります)

そこで ACLS Instructor コースを開いてくれたアメリカ人の ACLS Training Center Faculty(TCF)さんは、免許でいえば看護師さん。

モニターをしてくれた別のACLS-TCFもナース。

日本では、医師以外がACLSインストラクターになるなんてけしからんというところを、あっちではファカルティであっても医師免許を持っていない場合もあるのです。

まあ、アメリカのナースと日本のナースでは質も資格の意味も違うんだよといわれたら、そうなんですけどね。

ちなみにインストコースをやってくれたナースのTCFさんは、自宅のリビングに救急カートが置いてあるといってました。講習に持ってきた除細動器も私物なんだそうで、、、

ふだんは自宅でACLSコースを開いているって言ってました。

つまり、お茶の間ACLSプロバイダーコース??

日本の常識に毒されていた私には、正直、すごい世界だなぁと思っちゃいました。


いまはまだ駆けだしで、ドキドキしながらコースの片隅に身を置かせてもらっているところですが、数年もしたら、今のAHA-BLSコースのように、自分ひとりでACLS Providerコースを開催できるような日が来るのかなぁと、おぼろげながら将来を思い描いたりもしています。

かつてはACLS Provierコース開催には医師のACLSインストラクターが必要といわれていました。しかし今のAHAコース運営マニュアルPAM2008の規定ではそのような条項は一切なくなっています。ACLS EPコースでは医師と電話連絡できる体制を取る必要があります)

つまり現実可能なんですよね。


新たな夢に向かって、歩き出そうと思います。

思えば、まさか自分がひとりでAHAのBLSヘルスケアプロバイダーコースを自由に開催して、AHA公式修了カードを発行できるようになるなんて夢にも思いませんでしたもん。

それがいま普通にできている現実が信じられません。それと同じように、、、、
posted by めっつぇんばーむ at 01:54 | Comment(8) | TrackBack(0) | AHA-BLSインストラクター
この記事へのコメント
 そうですね.頑張りましょう.

 例えばACLSインストラクターの場合,ナースとして仕事をしている立場のインストラクターとしてナース(候補)受講生を指導すると,お互いの気持ちがよく分かりやすくてコースを進めやすいのではないでしょうか?

 ナースのACLSインストラクターは少ないですが,歯科医師のACLSインストラクターはもっと少なく,さらに非医療資格のACLSインストラクターはもっと少ないですよね.でも,みんな立派なインストラクター.すごいですよね.

 自宅で自分だけでBLS-HCPやHS-AEDはやりますが,さすがにACLSやICLSは視野に入れていません.出来たら楽しいでしょうね.受講生側も怖がらずに,気楽に参加できると思います.

 手動式除細動器,ついに2台目を購入してしまいました.次はSIMか?やっぱり“自宅 de ACLS”?
Posted by mimimi at 2008年10月24日 06:31
AHAのA-Iって医師は少ないでしょ?
ほとんど看護師で
少し救命士で
ほんのちょっとの医師でしょ

今はCMDも居なくても良くて
NS EMSだけで開催出来るはずだし

一応ACLS-Pに居ればCMDとして名前は書いてくるけどさ
Posted by hidemd at 2008年10月24日 06:41
めっつぇんばーむさん、こんにちは。
「コメントではお久しぶりです」の救急マニアックです。

本当に非医師のAHA-ACLS Instructorが増えましたよね。びっくりしました。

自分はUS所属のACLS Instructorではありませんので、指導経験を積み、モニターを受けて、コース開催可能なCD資格を持つACLS Instructorに認定されなければいけません。
でも、自分は単独でACLS Provider Courseを開催する予定はありませんが、資格取得だけでもしておいて損はないかなと思いますよね。

その域に達するまでにはクリアしなければいけない壁がたくさんありそうです。場数を踏むためにも1日だけでも参加できそうなACLS Provider Courseには積極的に参加して、努力を重ねていこうと思います。

ともにがんばりましょうね。
Posted by 救急マニアック at 2008年10月24日 08:58
皆さま、さっそくコメントありがとうございました。

mimimiさん、除細動器を買おうかななんて話は聞いていましたが、いつの間にかお持ちだったんですね。しかも2台目、、、確かAEDも実機をお持ちでしたよね?

アメリカ事情と高をくくっていた「お茶の間ACLS」が実現しそうな場所がすでにあったとは驚きました!

hidemdさん、アメリカにいって、ホント医師のインストラクターって少ないんだなぁと感じました。
日本では医師しかダメとか言っているのが馬鹿らしくなるくらい。

このことは日本ではじめてACLS-ITOが立ち上がる時の派遣組がニュージャージー(でしたよね?)にインスト資格を取りに行ったときのレポートにもしっかり書かれていた事実なんですが、その後どのような情報操作が働いたんだか。。。

救急マニアックさん、アメリカで資格を取ってもモニター受けなくちゃいけないし、経験を積まなくちゃダメというのはおんなじです。経験を積むにしてもUS登録で開催するコースが少ないから、その点では参加チャンスが多いITCインストラクターの方が有利かもしれませんね。

私の場合、新幹線に乗って泊まりがけでないとUS ACLS Providerコースに参加できませんから、更新のための2年に4回というのがギリギリだと思います。そのペースでいくと、コースディレクター認定が取れるのはずいぶん先の話になりそうです。まあ、夢というか目標というか。高いところに設定して置いた方がいいと思うので。ただそれだけです(笑)

転職が決まったBLSインストラクターの友人は、自由にAHA-BLSコースを開催してカードを出せるというのが大きなポイントだったと言ってました。そういった意味で、自宅でACLSというのは極端にしても、勤務先の病院で内科認定医に必要なACLS Providerカードを出せますよ、というのは大きな強みになりますよね。きっと。

お互いがんばりましょう。どうぞ今後ともご指導をお願いいたします。救急マニアックさん。
Posted by めっつぇんばーむ at 2008年10月24日 10:41
こんばんは。

えっと、非医師のACLSインストラクターについてはうちのサイトで今回ようやく誕生したのは事実ですが、これまで他のサイトでいなかったわけではないんですよ。
各サイトでの判断なのか、JAA全体での判断なのかはわたしにもわからないんですけど。
過去には看護師のインストによる看護師だけのACLSプロバイダーコースもやってたけど、受講生の中でリーダー的存在の人がいなくてなかなか大変だったということでした。
うちのサイトでもG2000のころの、本当に最初の数回だけは医師ブースとコメディカルブースに分けて実施したことがあるようですが、それじゃあグループダイナミクスの意味がないので、すぐに職業資格を無視したコースになっていましたね。
ただし、残念なことにACLSについては、基本病院の中で実施するものなので現在は医療従事者のみの受講になっています。
わたしも原則的にはそれでいいと思うんですよ。
一般の方で実際にACLSを行う機会があるとは今の日本では現実的に考えられないことだし・・・・。
それはインストについても同じで、うちのサイト長のお考えは「現場を知っている人にインストラクターになってほしい。」です。わたしもそうだと思います。

BLSはもちろん違いますよ。
バイスタンダーを増やすことはとても重要だと思いますし。要は実際にその資格、スキルを使う立場にあるかどうかだと思うんです。
Posted by りっち〜も at 2008年10月25日 20:30
情報操作って大事だよね
僕はその辺が下手というか
真実しか言えない人間です

PAMの日本語化から始まった大津波は
これからどんなことになるのか
興味津々です
Posted by hidemd at 2008年10月26日 03:54
りっちーもさん、いつも貴重な情報、感謝しています。
結局、JAA組織内でのサイト長の力と考え方によるんでしょうね。
組織的にはダメといっていても、それを越えた決断をできるTCFさんも
いるでしょうし。

ナースインストによるナースオンリーのACLSコースがあったとは驚きです。しかも過去に、ですよね?

まあ、受講生のなかにリーダー的存在の人がいないというのはあたりまえの話で、それをリーダー役割できるように育て上げるのがACLSのインストラクションですから、たいへんなんてことは言っちゃおしまいじゃありません?(笑)

hidemdさん、「PAM日本語化から始まった大津波」という表現、いいですね。
別記事で書いた組織の方向転換もそこに関係あるのかもしれませんね。私も興味津々です。

なんだかんだこのブログをはじめてからも、すごい変化が起きています。
やがてはここが歴史書になるといったら大げさでしょうか?(笑)
Posted by めっつぇんばーむ at 2008年10月27日 21:31
ACLSも覚めた目で見れば、特定の条件設定下でのゲームですから…。


実場面のことを考え出すときりがないので言及しませんが、どんな立場のかたがインストであろうが全く関係ない気はしますよ。


これから勉強するかたにインストラクションするのはさほど苦労はない気もしますが、古いと言っては失礼ですが我流が身に付いてしまっているかたに対するのであれば、さらにはoutcomeを期待するのであれば、それなりのバックグラウンドは必要悪かとも思えるし…。


目的は結果を伴うことなんで、こっち側の視点だけではいけないと思うんですよね。


と、偉そうに言ってしまう…。




Posted by こち熱 at 2008年10月28日 01:12
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック